葉擦れとも水の音とも夜の新樹

https://blog.goo.ne.jp/take10nbo/e/bf763789cab60a2a0b31dcf1781ae32f 【夜の新樹こころはげしきものに耐ふ 桂信子】より

夜の新樹こころはげしきものに耐ふ 桂信子七七五のリズムが心地よい

たたきこむように響いてきて素直に納得させられる

「夜の新樹」この措辞はこの作者の発見で後続の句を散見するがどれも及ばない

作者の「こころはげしきもの」を読者は邪推して止まない

(小林たけし)

【新樹】 しんじゅ

初夏の新緑の樹木をいう。日に日に緑を成長させる初夏の木は、みずみずしい中に力強さを感じさせる。「新樹」は語感も良く、特に近年好んで用いられる。

例句 作者

この新樹月光さへも重しとす  山口青邨

すつぽりと鎌倉五山新樹光  中島美代子

ひっそりと新樹の杜の百度石  古市あさ子

一族の遠祖供養や新樹光  倉迫順子

人を待つ夜は名前のない新樹  秋尾敏

余生から余生を引けば新樹仏  大畑蛍魚

信濃いま触れ合ふ音のみな新樹  甲斐由紀子

壺がみな人の顔する新樹光  加藤知子

夏樹さわさわ書架に絵本のあったころ  赤堀碧露


https://miho.opera-noel.net/archives/2944【第五百七十夜 山口青邨の「新樹」の句】より

 全ての予感を秘めて鎮もりかえっていた早春が過ぎて、桜の花へ心の高まりを一気に持ってゆき、その慌ただしさも過ぎて、花疲れの中でひと心地などついていると・・・。いつの間にか木々の梢は賑やかになり、いつの間にか少しだけ異なった色合いを見せて、木々は芽吹きはじめている。

 大好きな雑木林を見にいかなくては・・・。

 俳句を始めた頃、父とよく吟行した。初めて吟行は早春の小金井公園。ここで雑木林の木々の違いを教わった。

 いわゆる雑木林と言われるのは、落葉大木・中木のブナ科、カバノキ科の「櫟(クヌギ)」「アカシデ」「ミズナラ」「カバ」「クリ」等が主である。

 雑木林のステキなところは落葉樹だからだ。無から有、有から無の世界へと変化するのがいい。そして、芽吹きの頃に、初めて知ったことがある。

 「これがクヌギの花だよ」 「えっ! 葉っぱかと思っていた」

 クヌギの花とは、薄緑の簪(かんざし)のようにぞろりと六七本の花柱が穂のように垂れ下がっている。雑木林の芽吹きとは、葉と花との両方が一時に訪れる。同じ緑色なので、花だとは思っていなかったのだ。

 どの木も植物だから花が咲くのは当たり前かもしれないが、クヌギやイチョウやケヤキやヤナギやマツの木に、目立たない花を見つけたことに驚き、そして、うれしくなった。

 今宵の俳句は、若葉の茂りである「新樹」「新緑」を見てみよう。

■新樹

 1・この新樹月光さへも重しとす  山口青邨 『乾燥花』

 (このしんじゅ げっこうさえも おもしとす) やまぐち・せいそん

 句意は、初夏の瑞々しい若葉の茂った新樹である。月光が降り注いでいる。風もなく新樹は月光をうけて重そうな気配がしている。まだ若葉である新樹は、昼間の光の中であったり風が吹いていたりすれば、軽やかに感じるはずである。月光に照らされた新樹は、それだけで重さを感じているようですよ、となろうか。

 月光の中の新樹には影ができる。1つ1つの葉に影が生まれることは、昼間とは違う影という虚の重さを更に引き受けることになるとも言える。

 2・夜の新樹こゝろはげしきものに耐ふ  桂 信子 『桂信子全句集』

 (よのしんじゅ こころはげしき ものにたう) かつら・のぶこ

 句意は、夜の新樹というのは、激しく心が動いている時の必死に耐えている私の姿のようですよ、となろうか。

 桂信子は、大正3年の生まれ。日野草城に師事。俳句は、「表現は平明に内容は深く」が信条。第2句集『女身』では瑞々しく女の情念を詠んだ。戦後女性の開放感もあるだろうが、女性性の俳句素材は勇気ある先達と言えよう。

   ゆるやかに着てひとと逢うふ蛍の夜  『月光抄』

   ひとづまにゑんどうやはらかく煮えぬ  〃

   衣をぬぎし闇のあなたにあやめ咲く  『女身』

   暖炉ぬくし何を言ひだすかもしれぬ   〃

戦後も既に76年目になったが、俳句で性を扱った作品はほとんど見ることはないように思う。掲句の中七「こゝろはげしきもの」とは、怒りなどではなく、桂信子氏の若き日の恋の苦しさであるに違いない。季語は「新樹」。だが「夜の新樹」としたことで、明るさは消えて、新樹は闇を纏って、一気に黒々とした塊のように見えてきた。

新緑

 3・摩天楼より新緑がパセリほど 鷹羽狩行 『遠岸』

 (まてんろうより しんりょくが パセリほど) たかは・しゅぎょう

 句意は、アメリカ合衆国ニューヨークのマンハッタンにある超高層ビルの高階から地上のセントラルパークを見下ろした時のこと、はるかな地上の木々の新緑が、ちょうどパセリの束のようにみえましたよ、となろうか。

 鷹羽狩行氏がニューヨークへ仕事の出張で出かけたのは38歳であったというから、当時1番の摩天楼はエンパイアステートビル。高さが443.2メートル、102階の建物であった。

 その後も長いこと高層ビルの1位を誇っていた。「新緑がパセリほど」と言い切った俳句は、戦後生まれの読者にとって憧れの高層ビルであり、新鮮であった。


https://ameblo.jp/masanori819/entry-12851336988.html 【一日一季語 新樹(しんじゅ《しんじゆ》) 【夏―植物―初夏】】より

回向柱に触るるひとひと新樹光    小菅礼子

善光寺御開帳のシンボルと言えるのが善光寺本堂に建立される「回向柱」

善光寺本堂前の回向柱は7年に一度だけ行われる。2022年(令和4年)善光寺御開帳の期間は 4月3日(日)〜6月29日(水) ※感染症拡大のため2021年(令和3年)の御開帳は2022年(令和4年)に延期されたため。

回向柱は、本堂に安置された「前立本尊」とつながっており、回向柱に触れることで極楽往生が叶えられるとされ、来世へのご利益がある。

俳句の結社、歳時記によっては、新樹光を季語としていないものもある。

【傍題季語】

新樹光(しんじゆこう)、新樹の夜(しんじゆのよ) 新樹陰(しんじゆかげ)

関連季語 → 新緑

【季語の説明】

みずみずしい若葉におおわれた初夏の樹木。「新樹」はみずみずしい若葉ををまとった樹木を言う。立夏から、梅雨入ぐらいまでの期間で使う。

若葉のころは葉もまだ薄く、太陽光を通しキラキラ輝いて見える様子を「新樹光(しんじゅこう)」とも。新緑とは違った輝きを感じさせてくれます。

初夏の木々は、青々とした若葉が目にも美しく感じられます。「新緑」が若葉に焦点をあてた季語なのに対し、「新樹」は木の姿を印象づける季語です。

【例句】

新樹揺れ孔雀隠してをりにけり   坊城俊樹

風生る雨後の新樹の身ぶるひに   北川英子

新樹光弾く参道御影石       伊藤紀子

読み返す十四行詩夜の新樹     高橋秋子

ハイカーの声の賑はふ新樹どき   三橋玲子

【由来】

【解説】

若葉におおわれる初夏の木立をいう。新緑は風景、新樹は樹木を指す。みずみずしい新樹に包まれる山や野には生命力がみなぎる。

【来歴】

『増山の井』(寛文7年、1667年)に所出。

きごさい歳時記  引用


http://sogyusha.org/saijiki/02_summer/shinju.html 【新樹(しんじゅ)】より

 たとえば柿の木。空に突き出していた枯れ枝に、四月初め頃小さな芽が吹き出す。それがだんだんと、いかにも柿の葉らしい形を整えて大きくなってゆき、五月の声を聞く頃には枝を覆

い尽すほどに茂る。けれどもまだ真夏の柿の葉のような濃緑の照りは無くて、浅い緑色で柔らかい感じである。このように、若々しい薄緑で全体を覆われた立木を「新樹」と言う。詩歌独

特の言葉である。

 初夏の「葉」だけに焦点を合わせるならば「若葉」という季語があるし、林や森全体が浅い緑に包まれた様子を表現するには「新緑」がある。

 山本健吉は「日本大歳時記」(講談社)の中の解説で、「初夏のみずみずしい緑の立木を言う。新鮮な語感を持っている。ただし題目としては古く、『夫木抄』巻七、夏部に見えている。

……俳諧時代に入って、『新樹』は、『白雲を吹尽したる新樹かな』(才麿)、『伊勢船を招く新樹の透間かな』(素堂)、『新樹高く吉田の橋もすぐるなり』(巴人)などの例句が見え

るが、好んで詠まれるようになったのは大正期以降である。音感もよい『新樹』の語に、あたかも新題目であるかのような、新鮮さを感じたのである」と述べている。

 新樹の説明はこれに尽きていると思うが、あえて付け加えれば、「五月」の気分を一本の木に代表させたのが「新樹」という季語である。青空に薄緑の葉をつけた枝が伸び、爽やかな初

夏の風が渡る。大きく深呼吸すると力が湧いてくるような気がする。また、夜空の新樹もなかなかのものである。

  空暗くなり来新樹に風騒ぎ   高浜虚子

  この新樹月光さへも重しとす   山口青邨

  わが恋は失せぬ新樹の夜の雨   石塚友二

  月光菩薩の臍かくふかく新樹光   能村登四郎

  みはるかす塔も新樹も雨の中   八幡城太郎

  息合はせ漕ぎ出す舟や新樹光   小島由理

コズミックホリステック医療・現代靈氣

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