https://mag.nhk-book.co.jp/article/16305 【教養としての俳句を学ぶ意味 ——【学びのきほん『教養としての俳句』著者インタビュー】】より
日本の伝統文芸として今も盛んな俳句。しかし「俳句ってなぜ生まれたの?」「季語ってなぜ必要なの?」「よく知られているあの句の意味は?」——そのような疑問に答えられる人は多くはないのではないでしょうか。
数々の賞を受賞し、いま注目を浴びる気鋭の研究者・青木亮人さんが執筆した『NHK出版 学びのきほん 教養としての俳句』は、日本人として最低限おさえておきたい俳句の知識を解説した超・入門書です。今回は青木さんに「教養としての俳句」を私たちが学ぶ意味を伺いました。
聞き手:「学びのきほん」編集部
——『教養としての俳句』は、「俳句」の全体像が2時間で理解できるものになっています。本書で一番伝えたかったことを教えてください。
この本で読者の方に伝えたかったのは、俳句を実際に作るかどうかは別として、俳句という短い詩の特徴を知ることで日々の暮らしの捉え方に変化が生まれ、それが生活の豊かさにつながるのではないか、ということです。
俳句を知るとなると、まずは俳句を作ってみよう、俳句を詠むことで季節の豊かさ、すばらしさを体験しようと思われる方も多いと思います。もちろん、それも俳句と知ることといえますが、そもそも俳句独特の世界の切り取り方や季語の感覚にまず触れることで、日常の生活の解像度が上がる側面もあるのでは、と感じます。
たとえば、季語を知ると時間の流れに対する感性が今まで以上に敏感になると思います。季節の推移が細やかに実感できるからです。目の前にある一つ一つの事物や現象を春夏秋冬の出来事として認識したり、少しおもしろがりながら捉えたりする。そのような、小さな発見の積み重ねによって日常の捉え方が変わり、人生が豊かになるチャンスかもしれない。そんなことを本書を読んで感じてもらえればと思います。
——本書のタイトルには「教養」という言葉が使われています。本書で書かれている「教養」は、世に言われているような、知っておくべき知識としての「教養」と意味合いが違うのでは、と感じますが。
「教養」とは、「心の襞が深くなる」きっかけを作るものだと思っています。
俳句の教養を学ぶというと、例えば「連歌」以来の歴史を詳細に把握しよう、といったものがあると思います。歴史を詳しく勉強するという方向性ですね。もうひとつは、俳句で使われている言葉に関する知識です。季語の意味、表現の特徴、手法の歴史を学ぶ、といったことです。
本書の「教養」とは、それらが知識で終わるのではなく、暮らしの中でいきいきと根付き、自分の体験として実感する瞬間を味わう、といった意味に近い。ある時、点と点だった知識がふと結びついて目の前の景色が鮮やかに見えるようになったり、日常の実感としてしみじみ腑に落ちることがあった時、こころの襞が深くなるように思います。それが「教養を身につける」ことではないかと思っています。
——本書の第2章では、正岡子規や高浜虚子の人生に焦点をあてて「写生」について書かれています。彼らの人生の描かれ方にとても面白さを感じました。
俳句は、感情を直接述べることなく、情景を描いただけで終わる、という特徴があります。それではなぜ、情景を描くだけで俳句の作者は満足するのか。色々な理由がありますが、そのうちの一つを読者の方々に伝えたいと思い、子規や虚子に焦点をあててみました。
もちろん、俳句の作者も心中に様々な感情を抱くことはあります。でも、子規や虚子の「写生」は、作者の人生における悲喜こもごもをいったん遮断し、ただ情景のみを描くことで、人生の嫌なことをひととき忘れる桃源郷に近いものだったんですね。子規や虚子がなぜ、情景を描くだけで満足したかというと、一つには俳句の世界には言葉の楽園があったからなんです。現実逃避したままではいられないことはわかりつつ、詠むときだけはその世界を描くだけで満足したり、めぐりゆく季節の中に佇むだけで満足するということがありました。
多くの方は、歴史に残る偉人はいわゆる順風満帆の「勝ち組」と思われるかもしれませんが、子規や虚子は望んで俳人になったわけではなく、なりたいものになれず、多くのやりたいことができずに俳人になった人々でした。子規は挫折続きの人生を歩みながらも「写生」という認識を主張し、実践し続けたことを知って、本を手に取って下さった方々の力になればと思っています。
——俳句の実作者の方に、本書を通じて感じてほしいことはありますか。
まず、俳句には五百年、六百年の歴史があって、時代の価値観によって詩の形が変遷していったことを実感していただけたらと思っています。
また、実作者の方は俳句に日々親しんでいるために、俳句というジャンルの特徴を改めて捉え直す機会は意外に少ないかもしれません。小説や詩、短歌と違う俳句独特の感性とは何だろう、と改めて考えるきっかけにしていただければとも思っています。
ただ情景のみを詠んで成り立つ俳句文芸は珍しい短詩に感じます。劇的なこと、特別なことを詠まずに、言葉をひねることなく淡々と詠む。それで良い作品が生まれるチャンスがある文芸ジャンルは少ないのではないかと感じます。実作者の方々は、よりよい作品のために言葉をみがくことに日々努力されていることでしょう。時には自分の句が選に入るために特別なことを詠んだり、凝った詠み方をしなければ、と感じることもあるかもしれません。それも大事ですが、一歩ひいて、自身は何を大切と感じるタイプで、何を詠むべきものと信じる俳人なのだろう、私にとって俳句や季語はどのような存在なのだろう、と自身や俳句そのものを見つめなおすきっかけになれば嬉しいと思います。もしかすると、句作に打ちこんでいる時とは違う発見があるかもしれません。
実作者の方は季語を数多く知っています。でも、季語を表現の手段として見なすのではなく、例えば正月から年末まで途切れなく季語のある文化に生きているということは何を意味するのだろう、四季が移ろい、ほぼ永遠にめぐりゆくなかで自分が生きていて、多くの感情を抱いていることはどういうことだろう、と足を止めてみる。俳句を作るために季語や表現を考えるのではなく、また季節感をとりあえず否定したり、批判するのでもなく、そもそも私にとって季語とは、生活とは、人生とは、と振り返るきっかけにしていただければ、これ以上の喜びはありません。
本書の構成
はじめに
第1章 ——俳句とその歴史を知ろう
ハンカチと秋の空/戦争末期の大俳人/日常の些事を詠む/和歌から連歌へ/俳句と季語の源流/連歌から俳諧へ/江戸俳諧と松尾芭蕉/独りで詠む発句/与謝蕪村と小林一茶
第2章 ——「写生」って何?
「俳句」の誕生/正岡子規の人生/子規の「写生」とは/高浜虚子の人生/虚子の「写生」とは/「地獄を背景として価値がある」/「写生」とは、生きている手触り/歌から俳句までを貫く感性とは
第3章 ——「季語」を味わう
季語の意味とは/質感が変わる「風」/生活の解像度が上がる時/「季語を味わう」とは/日常を丁寧に暮らすこと/「日常はふつうでいい」/はっきりした美しさの経験が根本だ」/「親」のまなざしを育む/「今」を慈しむ
4章 ——俳句と生きているということ
同じことができる幸せ/小さなことに喜びを感じる/「驚き」に立ち止まる/「一点の慰安」を求める/人生を肯定する「笑い」/生きているということ
いろんな視点で俳句を深めるためのブックガイド
立ち読み
第1章 俳句とその歴史を知ろう「ハンカチと秋の空」「戦争末期の大俳人」(本書P10-P13より)
第1章 俳句とその歴史を知ろう「ハンカチと秋の空」「戦争末期の大俳人」(本書P10-P13より)
第1章 俳句とその歴史を知ろう「ハンカチと秋の空」「戦争末期の大俳人」(本書P10-P13より)
第1章 俳句とその歴史を知ろう「ハンカチと秋の空」「戦争末期の大俳人」(本書P10-P13より)
俳句を受け継いできた傑物たちの生涯をノンフィクションのように活写しながら、句作の読解から文芸としての特徴までを、俳句を知らない人でも分かるようにかみ砕いて解説。俳句界では珍しい評論家として活躍する著者ならではの解説で、『教養』としての俳句の面白さを、ぜひ、体感してみてください。
著者紹介
青木亮人 (あおき・まこと)
1974年北海道生まれ。同志社大学文学部卒、同大学院修了。博士(国文学)。現在、愛媛大学准教授。専門は近現代俳句研究。2015年、評論集『その眼、俳人につき』(邑書林)で第29回俳人協会評論新人賞、第30回愛媛出版文化賞大賞受賞。2015年、第1回俳人協会新鋭俳句評論賞受賞。2019年、『近代俳句の諸相』(創風社出版)で第33回俳人協会評論賞受賞。他の著書に『NHK カルチャーラジオ 文学の世界 俳句の変革者たち 正岡子規から俳句甲子園まで』(NHK出版)など。現在「NHK 俳句」にて連載中。
https://www.youtube.com/watch?v=DS63t4muMHY
田中英道◆封印されし群馬の古代文明 第1部◆高天原山と日航機墜落・縄文時代と日高見国・秦氏とユダヤ人埴輪…の謎!
群馬(ぐんまー)の古代史は超面白い!岩宿の旧石器時代から、縄文、弥生、そして古墳や埴輪も盛り沢山!
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https://www.youtube.com/watch?v=CHBv2ZewWdM&t=0s
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