https://seseragi-sc.jp/sasage/1911-4.htm 【中東の民族】より
最近、トルコ軍がシリア都の国境を越えて、クルド人を攻撃したことが報道されています。教皇フランシスコは、今月の意向に「近東での対話と和解」(註、教皇の意向ではNear Eastと記されていて「近東」の語を当てはめましたが、中東(Middle East)とほぼ同じ地域を指す言葉です)を掲げて、全世界でともに祈るように促し、また、ビデオメッセージでも「対話、出会い、和解の精神が、中東地域に湧きあがるように祈りましょう」と呼びかけています。その最中にこのようなニュースが世界を駆け巡っていることに、とても心が痛みます。
中東は宗教の坩堝(るつぼ)であるばかりか、民族の坩堝でもあるのです。トルコ人はアゼルバイジャン人と同じテュルク諸語系に属し、一方、クルド人はペルシア人やスキタイ人と同じインド・ヨーロッパ語族系のイラン語派系に属しています。歴史の流れの中で、この地域ではさまざまな民族移動が起きて、たいへん複雑な民族分布をなしており、言語のルーツの違いがその足跡として残っていることが特徴となっています。
フルリ・ウラルトゥ語族系のウラルトゥやフルリ人、インド・ヨーロッパ語族系ではインド語派系のミタンニ人とロマ(ジプシー)、アナトリア語派系のヒッタイト人とリディア人とリュキア人、イラン語派系のスキタイ人とキンメリア人とペルシア人とバルーチ人やロル人、バフティヤーリー人、そして紛争の最中にあるクルド人やザザ人、アルメニア語派系のアルメニア人、ギリシャ語派系の ギリシャ人とポントス人、イタリック語派系のローマ人やジェベリエ族やフリュギア人、カフカス諸語系の チェルケス人(アディゲ人、カバルダ人)とグルジア人とラズ人、テュルク諸語系のトルコ人(テュルク)とアゼルバイジャン人(アゼリー人)とトルクメン人、アフロ・アジア語族系ではセム語派のアッカド人とバビロニア人やアッシリア人やカルデア人、そしてまた聖書に頻繁に出てくるヘブライ人やユダヤ人やイスラエル人やサマリア人、そしてモアブ人やアンモン人やカナン人やアモリ人やナバテア人やフェニキア人やアラム人の現代アラム語話者(アッシリア人、ユダヤ人)、さらにアラブ人やマルタ人があり、クシ語派のソマリ人、ベルベル語派のベルベル人、チャド語派やエジプト語派の古代エジプト人やコプト語典礼使用者(コプト正教徒)。現在の中東地域では、これらの民族が混在しているのです。
今、世界の潮流は、多様性の一致です。教皇の来日を控えて、この一週間は教皇の意向に心を重ねて、中東での多様性の一致について思いをいたし、ともに祈ってまいりましょう。
http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/etc/slide/as【英語の歴史と語源・1 「インドヨーロッパ祖語の故郷」】
https://www.y-history.net/appendix/wh0101-022_1.html 【インド=ヨーロッパ語族】より
ユーラシアから西アジア、南アジアに広く分布する語族。印欧語族。現在の英語などをはじめとするヨーロッパに広がる言語と、インドのヒンディー語、イラン語などが同系統である。
現在のヨーロッパで広く分布しているゲルマン語(英語、ドイツ語、オランダ語、デンマーク語、スウェーデン語など)、ロマンス語(ラテン語、フランス語、イタリア語、スペイン語など)、スラヴ語(ロシア語など)、ギリシア語などと、インドのサンスクリット語、ヒンディー語、イランのペルシア語などは、起源が同じであり、インド=ヨーロッパ語族と言われている。インド=ヨーロッパ語族が世界でもっとも広範に分布している。
世界史上、インド=ヨーロッパ語族が登場するのは、紀元前2000年から前1500年頃であり、遊牧生活をしていた彼らが一斉に移動を展開し、西アジアや東地中海、インドなどに入って新しい文明をもたらしたときである。その代表的な例が小アジアに建国したヒッタイトと、エーゲ海域に南下したギリシア人、インドに侵入したアーリヤ人である。ついでペルシア帝国を建設したイラン人、地中海世界を支配したローマ帝国のラテン人、アルプス以北でケルト人、4世紀に大移動を展開したゲルマン人やスラヴ人などが登場する。かれらの源郷については不明な点も多いが、南ロシアの草原地帯(ステップ)説が有力である。
最近の研究では、彼ら以前にアナトリアでは鉄器の使用が始まっていたが、ヒッタイトを始め、彼らは鉄器製造技術を早くから身につけ、先行する青銅器時代を終わらせ、前1500年頃に鉄器時代への移行を押し進めたということが出来る。
インド=ヨーロッパ語族の発見
遠く離れたヨーロッパとインドの言語が同一の系統に属する言語であるという発見は、18世紀の末のイギリスのインド学者W.ジョーンズの提唱による。彼は非常に語学力に恵まれた人で、インドで学んだその地の古代語であるサンスクリット語と、ギリシア語・ラテン語との構造上の類似に着目し、さらにそれらがヨーロッパの諸言語にも認められることから、これらの言語はみな一つの源から分かれ出たものに違いないと考えた。これがきっかけとなって比較言語学が盛んになり、今日の言語学が勃興した。その後、語彙の比較や言語構造の分析が進み、その起源の地の探求が続いているが、スカンディナヴィア説、南ロシア説、カスピ海沿岸説などさまざまな説が出されている。<風間喜代三『印欧語の故郷を探る』岩波新書 1993 絶版>
https://diamond.jp/articles/-/269541 【日本人が知らない!世界最古の宗教「ゾロアスター教」がその後の宗教に残した影響】より
世界1200都市を訪れ、1万冊超を読破した“現代の知の巨人”、稀代の読書家として知られる出口治明APU(立命館アジア太平洋大学)学長。歴史への造詣が深いことから、京都大学の「国際人のグローバル・リテラシー」特別講義では世界史の講義を受け持った。
その出口学長が、3年をかけて書き上げた大著がついに10万部を突破。さらに「ビジネス書大賞2020特別賞(ビジネス教養部門)」を受賞。
大手書店でも「GWに読んでおきたいビジネス書」として大きく展開されている。
本書は、BC1000年前後に生まれた世界最古の宗教家・ゾロアスター、BC624年頃に生まれた世界最古の哲学者・タレスから現代のレヴィ=ストロースまで、哲学者・宗教家の肖像100点以上を用いて、世界史を背骨に、日本人が最も苦手とする「哲学と宗教」の全史を初めて体系的に解説した稀有な本。
なぜ、今、哲学だけではなく、宗教を同時に学ぶ必要があるのか?
◎宮部みゆき氏(小説家)が「本書を読まなくても単位を落とすことはありませんが、よりよく生きるために必要な大切なものを落とす可能性はあります」
◎池谷裕二氏(脳研究者・東京大学教授)が「初心者でも知の大都市で路頭に迷わないよう、周到にデザインされ、読者を思索の快楽へと誘う。世界でも選ばれた人にしか書けない稀有な本」
◎なかにし礼氏(直木賞作家・作詞家)が「読み終わったら、西洋と東洋の哲学と宗教の大河を怒濤とともに下ったような快い疲労感が残る。世界に初めて登場した名著である」
◎大手書店員が「百年残る王道の一冊」と評した『哲学と宗教全史』。
ゴールデンウィーク特別企画として、出口治明氏のインタビューをお伝えしよう。(構成・藤吉豊)――(こちらは2019年8月19日付け記事を再掲載したものです)
人類初の世界宗教「ゾロアスター教」
――そもそも「宗教」は、いつ誕生したのですか?
出口:今から約1万2000年前、メソポタミア地方で起きた「ドメスティケーション」を経て、人間は宗教という概念を考え出したと推論されています。
ドメスティケーションには飼育、順応、教化などの意味があります。ドメスティケーション以降、人間は定住し、世界を支配し始めました。植物を支配する農耕に始まり、動物を支配する牧畜、さらには金属を支配する冶(や)金(きん)と、植物、動物、金属、すべてを人間が支配するようになりました。ドメスティケーションは、狩猟採集生活から農耕牧畜生活への転換であったのです。
周囲に存在するものを順次、支配していった人間は、次にこの自然界を動かしている原理をも支配したいと考え始めたのです。
誰が太陽を昇らせるのか、誰が人の生死を定めているのか、何者かが自然界のルールをつくっているのでは、と考え始めた。
そして、超自然的な神の存在を意識し始めた人間は、太陽神や大地母神信仰を経て、自然の万物に神の存在を意識するようになり、原始的な多神教の時代へと進みます。
その後、後世の宗教に多大な影響を与えた人類初の世界宗教が生まれました。ゾロアスター教です。
――ゾロアスター教の創始者は誰なのですか?
出口:BC1000年(プラスマイナス300年)頃、古代のペルシャ、現代のイラン高原の北東部に、ザラスシュトラという宗教家が生まれました。ザラスシュトラの英語読みがゾロアスターです。ザラスシュトラは古代社会には珍しく具象的な思考能力を有した人物だったようで、ゾロアスター教の教義はまことに論理的で、しかも明快でした。
ゾロアスター教には、善い神のグループと悪い神のグループが存在する
――ゾロアスター教とは、どのような宗教なのですか?
出口:ペルシャの地に移住したアーリア人の民族的な信仰を基本にしています。ザラスシュトラの没後、およそ千数百年後の3世紀に入って、ゾロアスター教の教典が編纂・整備されました。経典の名前は『アヴェスター』です。ザラスシュトラの言葉と彼の死後につけ加えられた部分によって構成され、全部で21巻あったといわれています。現在はその約4分の1が残存しています。
ゾロアスター教の最高神はアフラ・マズダーです。彼が世界を創造したのですが、世界には、善い神のグループと悪い神のグループが存在します。そしていつも争っていると、ゾロアスター教は教えます。
――ゾロアスター教には、善い神だけでなく、悪い神も存在するのですか?
出口:そうなんです。善い神のグループは、人類の守護神であるスプンタ・マンユを筆頭にして七神。悪い神のグループは、すべての邪悪をつかさどる大魔王アンラ・マンユ(別名アフリマン)を筆頭にして、こちらも七神です。
ゾロアスター教では宇宙の始まりから終わりまでを1万2000年と数えます。それを3000年ずつ4期に分けました。そしてザラスシュトラは、「今の時代は善い七神と悪い七神が激しく争っている時代なのだ」と説いています。
苦しい日々が続くのは、悪い神の親分アンラ・マンユが優勢なとき、楽しい日々が続くのは、善い神の統領スプンタ・マンユが勝利を続けているときなのだと教えたのです。
仮にこの世を、一人の正義の神がつくったとすると、正義が世界中にあふれていることになります。悪い君主も殺人鬼も存在しない理屈になります。清く正しく生きていれば、誰もが幸福になれるはずです。それなのになぜ、人生には苦しみがあるのか。神がいるのなら救ってくれてもいいじゃないか。そう考えて悩むことになります。
けれども、善と悪が存在する「善悪二元論」であれば、現世で生きる苦しみと来世との関係をわかりやすく説明できます。
ゾロアスター教には、偶像崇拝はなく、火を信仰しました。そのために拝火教とも呼ばれます。イランのヤズドの地にはザラスシュトラが点火したと伝えられる「永遠の火」が、今も燃え続けています。
バクーにもゾロアスター教の「永遠の火」を祀る聖地が残されています。また、インドでは火の神アグニが仏教に大きな影響を与えました。そして「永遠の火」を信ずる教えは中国にも伝わり、さらに日本にも伝わったと考えられています。その象徴的な存在が、比叡山延暦寺で今も燃え続ける不滅の法灯(ほうとう)です。唐から帰朝した最澄が延暦寺に灯(とも)してから、一度も消えることなく今日まで燃え続けていると伝えられています。
ユダヤ教、キリスト教、イスラーム教も、ゾロアスター教から学んだ
――1万2000年後、宇宙に終わりが訪れたとき、人類はどうなってしまうのですか?
出口:1万2000年後の未来、世界の終末にアフラ・マズダーが行う最後の審判によって、生者も死者も含めて全人類の善悪が審判・選別され、悪人は地獄に落ち、すべて滅び去ります。そして、善人は永遠の生命を授けられ、天国(楽園)に生きる日がくるのだと、ザラスシュトラは説いたのです。
ゾロアスター教は、最高神としてアフラ・マズダーが存在しますので、一神教のようにも見えますが、善神と悪神と多彩な神々が存在している点では多神教のようでもあります。このペルシャで生まれた世界最古の宗教に、一番多くを学んだのがセム的一神教でした。
――セム的一神教とは、何ですか?
出口:ノアの3人の息子(セム、ハム、ヤペテ)の中で、セムを祖先とすると伝えられる人々をセム族と呼びます。
セム族は、西南アジア(メソポタミア、パレスティナ、アラビア)の歴史に登場してきた人々ですが、彼らの中から誕生してきた一神教のことです。
具体的には、ユダヤ教、キリスト教、イスラーム教を指します。
セム族の一部が信じる唯一神YHWH(ヤハウェ)が人類救済のための預言者として選んだ人物が、アブラハムです。彼はユダヤ人の祖と目され、ユダヤ教やキリスト教そしてイスラーム教の世界でも「信仰の父」として尊敬されています。そのために、セム的一神教は「アブラハムの宗教」とも呼ばれます。
セム的一神教は、天地創造や最後の審判も、天国も、地獄も、洗礼の儀式も、すべてゾロアスター教から学んだのです。
セム的一神教の3つの宗教を合わせた信者の数は、21世紀の今日、世界で50パーセントを超えています。
ゾロアスター教は、今日ではインドや中東に少数の信者を抱える小さな規模の宗教になっていますが、世界の宗教に残した影響には多大なものがあるのです。
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