きのこの分解酵素

https://katosei.jsbba.or.jp/view_html.php?aid=864【きのこ類のキチン分解酵素と形態形成への寄与自身を壊して変身するきのこ】より

キチンは直鎖構造のポリ(1,4)-N-アセチル-β-D-グルコサミンで,主にカニやエビなどの甲殻類,昆虫の殻,いかの軟骨などに含まれることが知られている.またキチンは真菌類の細胞壁の構成要素でもある.特に糸状菌はその細胞壁中の10~30%程度キチンが含まれると報告されている.キチンは,植物細胞壁の主成分であるセルロース(β-1,4-グルカン)につぐ第二のバイオマスと呼ばれる一方,セルロースと比べると利用されている割合が低く,最後のバイオマスとも呼ばれる.近年,キチンもセルロースと同様にナノファイバー化することにより,新たな利用法の可能性が広がっている.また,キチンは分解産物であるN-アセチルグルコサミン(またはグルコサミン)の原料としても用いられる.普段われわれが食しているきのこ類も糸状菌の一種であることから,われわれは日常的にキチンを摂取していることになる.よって,キチンの食品への利用を考える際に,きのこ由来のキチンおよびキチン分解酵素は有用であり,その応用展開が期待される.

キチンは糸状菌の細胞壁構成成分であることから,キチンの合成と分解は糸状菌の形態形成に大きな役割を果たしていると考えられる.カビ類(主に子嚢菌類に属する糸状菌)の形態形成における,キチン合成酵素および分解酵素の役割はよく調べられており,これらキチン関連酵素を欠損した変異体では,菌糸形態や胞子形成に影響が出ることが知られている.一方,きのこ類(主に担子菌類に属する糸状菌)では,キチン合成酵素や分解酵素が形態形成に果たす役割は未知な点が多い.

近年の菌類ゲノム情報の増加に伴って,きのこ類が多数の(自身の)細胞壁分解酵素(自己消化酵素)をもつことが明らかになりつつある.特に,キチンと並ぶきのこ類の細胞壁成分であるβ-1,3-1,6-グルカンを分解する酵素(β-1,3-グルカナーゼ,β-1,6-グルカナーゼ)の研究が進んでおり,これまで,Glycoside hydrolase(GH)ファミリーのうち,GH5, GH16, GH30, GH55, GH128,およびThaumatin-like proteinなどが自身の細胞壁分解にかかわることが明らかになっている(1).それらの酵素は,菌糸伸長,子実体の柄の伸長,傘の自己消化の過程で発現が上昇することから,形態形成過程の細胞壁の再構築にかかわっていると考えられている(1).一方,キチン分解酵素(キチナーゼ)についても同様に,柄の伸長過程や傘の自己消化過程で活性が上昇することが知られているが,近年まで酵素精製から遺伝子クローニングまで完了したきのこ由来のキチナーゼはほとんどなかった.

キチナーゼは主にGH18とGH19に属し,菌類からはGH18の報告が多く,GH19は菌類からはほとんど報告されていない.近年,ウシグソヒトヨタケ(Coprinopsis cinerea)というきのこから,傘の自己消化過程で発現するGH18遺伝子(chiIII)をPichia pastorisで発現させることで,その酵素活性を明らかにした論文が発表された(2).chiIIIは,キチン結合ドメインをもつ典型的なキチナーゼ遺伝子をコードしており,exo型の活性とendo型の活性の両方をもつことが示された(2).また,Coprinellus congregatusというきのこから,キチン結合ドメインをもたないGH18酵素(chi2)が得られ,キチナーゼ活性を有することが報告された(3).われわれは,シイタケ(Lentinula edodes)におけるトランスクリプトーム研究から,シイタケ収穫後の自己消化過程で,chiIIIのホモログ遺伝子(chi3)を含むGH18ドメインをもつ酵素の発現が上昇することを明らかにしている(4)(図1).そこでわれわれは,シイタケにおけるキチン分解酵素を特定する目的で,強い細胞壁分解活性が得られる収穫後の子実体からキチナーゼの酵素精製を試みたが,結晶性キチンを分解する強い活性を見いだすことができなかった.一方,結晶性キチンをシイタケ子実体抽出液と市販のエンド型キチナーゼ(Streptomyces属由来,SIGMA)で処理すると,キチナーゼを単独で反応させたときよりもN-アセチルグルコサミン生成量が大幅に増大することが明らかになった(図2).そこで,各種カラムクロマトグラフィーを用いてシイタケ抽出液からキチンオリゴ糖分解活性をもつ2種の酵素,LeHex20A(79 kDa)およびLeHex20B(75 kDa)を精製した.N末端配列をもとに遺伝子をクローニングしたところ,両酵素ともGHファミリー20に属した(5, 6).ほかの生物由来のGH20酵素群には,活性中心付近にHxGGモチーフが共通に存在することが知られている.しかしながら,LeHex20AとLeHex20Bでは共にこの部分がSxGGとなっており,これは担子菌類のGH20に特有のモチーフであると考えられた.LeHex20AとLeHex20Bはきのこ類(担子菌類)から初めて単離・同定されたGH20酵素であるが,各種データベースを用いた相同性解析の結果,これらのホモログがきのこ類に幅広く保存されていることが明らかになった.LeHex20AとLeHex20Bのアミノ酸配列における相同性は57%であった.シイタケにおけるこれら酵素の発現パターンを解析したところ,LeHex20Aは収穫後の子実体の自己消化に,LeHex20Bは子実体の柄の伸長に主に寄与していると予想され,2つの酵素で役割が異なることが明らかとなった(図1).酵素特性解析を行った結果,両酵素はN-アセチルグルコサミン系基質(pNP-GlcNAc)のみならず,N-アセチルガラクトサミン系基質(pNP-GalNAc)も分解できることから,β-N-アセチルヘキソサミニダーゼ(EC 3.2.1.52)と同定された(5, 6).一般的なβ-N-アセチルヘキソサミニダーゼは二糖を主に分解し,長鎖基質には作用しにくい.一方,LeHex20AとLeHex20Bは,長鎖キチンオリゴ糖(三~六糖)にも活性を示し,キチン二糖よりもむしろキチン四~六糖に対してのほうが高い基質親和性(Km)を有した.これらの特性から,ほかの生物由来のβ-N-アセチルヘキソサミニダーゼと比較して,エンド型キチナーゼとの高い協調性が期待できる.酵素反応生成物について分析したところ,単糖であるN-アセチルグルコサミンのみを生成する,エキソ型の酵素であることが明らかとなった.N-アセチルグルコサミンのような機能性食品素材を安心・安全に提供するためには,食品由来の酵素を利用して製造することが望ましいことから,LeHex20AとLeHex20BはキチンからのN-アセチルグルコサミン生産において有用な酵素であると考えている.

図1■シイタケの成長段階に応じて発現するキチン分解酵素

成長段階では,LeHexB(GH20)が高発現し,収穫後の自己分解過程で,LeHexA(GH20), chi1,2,3(GH18), cho1(GH75), chd1(CE4)の発現が上昇することが明らかになっている.

図2■収穫後シイタケ子実体より抽出した粗酵素溶液によるキチン分解活性の評価

収穫後の子実体の抽出液は,結晶性キチンに対する分解活性は低かったが,市販キナーゼの反応を促進することが明らかになった.

シイタケ子実体収穫後には,GH18, GH20以外に,キチン結合ドメインであるLyMドメイン(carbohydrate binding domain 50)をもつタンパク質の発現が上昇することも明らかになっている(4).これらキチン結合タンパク質は,GH18やGH20をはじめとするキチン分解酵素群と協調して,きのこ細胞壁のキチン分解にかかわっている可能性があり,今後の研究展開に興味がもたれる.また,シイタケはキチンが脱アセチル化されたキトサンの分解にかかわると考えられる酵素をもつことも明らかになっている.これまでの担子菌類のゲノム解読の結果から,ほとんどの担子菌がGHファミリー75に属するキトサナーゼ遺伝子をもたないのに対し,シイタケを含むホウライタケ科のきのこ類はGH75をもっていることが明らかになった(4).シイタケにおいては,GH75遺伝子(cho1)は子実体収穫後に発現が上昇する.また,キチンデアセチラーゼ遺伝子(chd1)の発現も同時に上昇することから(4),シイタケにおいては,キチン分解だけでなく,キトサン分解経路も有している可能性が示唆されている.今後は,P. pastorisや麹菌などで上記の遺伝子の組替え酵素を発現させて,きのこ類におけるキチンおよびキトサンの分解様式,およびこれら酵素群の形態形成への関与を解明していきたいと考えている.


https://www.sci.keio.ac.jp/eduproject/practice/biology/detail.php?eid=00008 【マイタケのタンパク質分解酵素】より

マイタケから抽出したタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)の活性を測定する。

実験のねらいと特徴

菌類(用語1)は生態系の中で分解者(用語2)という重要な位置を占めるが、生物学実験の材料としては比較的取り扱いが少ない。分解者として持つべき特性である分解酵素を抽出し、その役割を考えることを目的としている。本来は菌糸(用語3)を使って実験をすべきところであるが、子実体(用語4) (キノコ)にも分解酵素活性を強く持つものがあり、実験に使うことができる。身近な食材であるキノコが菌類であり、生態系では分解者であることを強く印象 づけることがねらいである。実際の実験では、既知の濃度のタンパク質希釈列によって吸光度の検量線を作成し、酵素を添加したタンパク質濃度の経時変化から タンパク質分解酵素活性を測定する。これによってグラフの取り扱い、特に検量線という考え方の理解を目指す。

実験の流れ

準備

マイタケ抽出液の作成

材料、試薬、器具の準備

前説明

生態系における菌類について

タンパク質分解酵素について

タンパク質の定量方法について

分光光度計の使い方と吸光度について

実験中

マイタケ入り茶碗蒸しの準備

タンパク質濃度と吸光度の検量線作成

マイタケ抽出液によるタンパク質の分解と定量

マイタケ入り茶碗蒸しの作成

実験後

レポート作成と提出

片付け

はじめに

生物は、生態系内での働きに応じて、「生産者」「消費者」「分解者」に分類できる。「生産者」は、光エネルギーなどを原動力に二酸化炭素や硝酸塩を材料に して有機物を生産し、成長のための資材やエネルギーとする。「消費者」は自ら有機物を生産することができないため、他の生物を食べることにより有機物を取 り込む。「分解者」は、環境中に存在する有機物(多くの場合、生産者や消費者の枯死体、脱落物、排泄物など)を取り込んで、無機物に分解する過程で生活に 必要な物質とエネルギーを得ている(図1)。 菌類は一般的に「分解者」であるため、セルロースをはじめとする様々な有機物を分解する酵素を菌糸から放出し、小さな分子に分解後、吸収する(外消化)。 その酵素の一部が子実体であるキノコ(食用部分)に含まれる場合もある。今回実験に用いるマイタケはタンパク質分解酵素活性が強いことが知られており、数 種類のタンパク質分解酵素について、至適温度や至適pHなどが調べられている。また、マイタケを生のまま卵液に入れ、茶碗蒸しを作ると、卵が固まらないこ とがあるというエピソード(文献1)から、酵素活性が身近なものとして感じられる材料と言える。

(lightboxで画像ウインドウが開きます)図1.生態系における物質循環の例

図1.生態系における物質循環の例

ここでは、炭素循環の主経路を示す。分解者は生態系の中で重要な役割をはたしている。

タンパク質は20種類のアミノ酸が、数十個~数千個に渡って直鎖状にペプチド結合したものである(図2)。従属栄養の生物(動物や菌類)は取り入れたタンパク質を、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)によってアミノ酸に加水分解し、自己の遺伝情報に基づいてタンパク質に再構築している。

(lightboxで画像ウインドウが開きます)

図2.タンパク質とプロテアーゼ

プロテアーゼは、作用部位により2種類のペプチダーゼとして分類されている。

すなわち、ポリペプチド鎖末端のペプチド結合を切断するエキソペプチダーゼと、

ポリペプチド鎖内部のペプチド結合を切断するエンドペプチダーゼ。

今回の実験ではマイタケの子実体を用いて、タンパク質分解活性を測定する。また、その酵素活性が、茶碗蒸しを作るときにどのように影響するか実験的に確かめる。

目的と課題

(目的1)タンパク質濃度と吸光度(O.D)の検量線を作成する。

課題1:横軸にタンパク質濃度、縦軸に吸光度(O.D)をとり、既知濃度のタンパク質溶液の吸光度をプロットし、吸光度からタンパク質濃度を推定するための検量線を引く(表3とグラフ1)。

(目的2)実験溶液の吸光度から各溶液中のタンパク質濃度を推定する。

課題2:実験溶液の吸光度から課題1で作成した検量線を用いて、タンパク質濃度を読み取り表4と5にまとめる。 

(目的3)マイタケ抽出液中のタンパク質分解酵素について考察する。

課題3:横軸に反応時間、縦軸にタンパク質濃度を取ってマイタケ抽出液によるタンパク質濃度の変化をグラフ2に表わす。

課題4:マイタケ入り茶碗蒸しの結果と課題3のグラフからマイタケ入り茶碗蒸しをうまく作成する方法とマイタケのタンパク質分解酵素について考察する。

(略)

コズミックホリステック医療・現代靈氣

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