http://kozui.sblo.jp/article/190961480.html 【みらいらん14号が完成した】より
今回の特集は「詩と俳句を貫くもの ──高岡修を中心に」。
小説家の藤沢周さん、城戸朱理さん、そして高岡修さんの三人による座談会「世界の中枢を言葉の針で刺す」は3月に鎌倉で行ったもの。私はこの時初めて高岡さんに会った。「洪水」や「みらいらん」には何回もご寄稿いただいていたし、詩集や句集も何冊も拝読していたが、書かれた作品から想像されるイメージとはかなりずれた、陽気で冗談好きで人懐こいお人柄は、初めて会うとは思えない親愛の空気を発出していた。座談会では詩と俳句と小説の相違する点、重なる点といった文学理論の面から、高岡さんの遍歴の物語まで、そして最新作(詩集『微笑販売機』と句集『蟻地獄』)の鑑賞も含めて、多岐にわたる内容となった。エッセイは、富岡幸一郎、堀田季何、石田瑞穂、渡辺めぐみ、松尾真由美、平川綾真智、うるし山千尋、八木寧子、柴田千晶の各氏が寄せて下さった。詩と俳句とを合わせて考える絶好の機会となったと嬉しく思う。
巻頭詩は、蜂飼耳、田中庸介、八重樫克羅、北條裕子、青木由弥子、肌勢とみ子の皆さん。
表紙のオブジェは國峰照子さんの「出口なし」と「虚ろ」。その他詳しくは下記のリンクからご覧下さい:
それから、今回、編集途上の5月にメインのパソコンの故障、買い替えという厄介な危機を経ることになった。それに関連して、最終ページの「巻末遁辞」で、「パソコン更新で最も繊細な齟齬は、古いパソコンに入っていたフォントが新しいパソコンに入っていないというささやかな障害だ。よくある明朝とかゴシックなら粛々と代替を考えるが、特殊なフォントで記事のタイトル部分に使っている場合はやっかいだ(アウトラインをかけておけという話だが)。なるべく変えたくない。補助のノートパソコンで見つかったり、昔購入したフォントのCDROMの中に入っていたりして解決できたものもあるが、どうしてもない場合は前号のPDFの該当部分を画面上で拡大してスクリーンショットで画像化するという乱暴な最終手段を取らざるをえなかった箇所もあり、今号のどこかがそうなっている。お気づきだろうか。」と書いているが、後でこれはナンセンスだと気づいた。版下に使うPDFはフォント情報も含んでいるから、スクリーンショットなど無用、PDFをそのまま使えばいいのだ。窮地に陥ったときに必ずしも最善のアイデアが浮かぶわけではないという見事な一例だろうか。
(池田康)
http://kozui.sblo.jp/article/190720218.html 【みらいらん13号】より
みらいらん13号が完成した。今回は小特集「『夜のガスパール』と詩の場所」を企画、19世紀フランスの詩人アロイジウス・ベルトランの散文詩の遺稿詩集が『夜のガスパール』だが、相当特殊なテーマということもあって、なかなか参加者を見つけることができず、ようやく有働薫さん、高岡修さん、浜江順子さん、松尾真由美さんのお力添えを得ることができて、なんとか形にした。最初は本当に小特集のつもりだったが、なんやかやとページを加えていくうちに、40ページを越えてしまった。これでは「小」とは言えないのだが、参加人数から言っても、気持ち的にも、「小特集」のままでいいかという結論になった。現代のわれわれの詩についても〈散文詩〉の観点でいろいろ考え合わせている。またこの詩集をもとに曲を作ったモーリス・ラヴェルについてずいぶん調べたのも思い出深い。『夜のガスパール』から新訳を数篇試みたのだが、考察したラヴェルの曲との絡みで作品選択をすることにした。他に上田敏、日夏耿之介の歴史的翻訳も一篇ずつ収録している。
巻頭詩は吉田義昭、黒羽英二、坂多瑩子、水嶋きょうこ、松岡政則、もえぎの六氏。
巻頭の連載詩は今号から渡辺めぐみさんにお願いした。15号まで、期待したい。
詳しい内容構成:
http://kozui.sblo.jp/article/182037856.html 【「みらいらん」創刊号】より
「洪水」の後継誌「みらいらん」が完成した。A5判で160頁。表紙の画像は神奈川県立生命の星・地球博物館の協力を得ている。
「みらいらん」は「未来卵」であり、「未来への乱」でもあり、あるいは「嵐」も「濫」もあり、「RUN」も考えられる。表紙のアルファベット表記の真中の「LYRE」は竪琴(リラ。英語読みはライラ)で、未来卵の中に竪琴が隠れているというイメージ。とすると、「みん(睡眠の眠)=ねむり」をライラの歌が破る、という解もありうるだろうか。
詩と批評を中心に、他ジャンルも広く視野に入れ、新鮮で刺戟にみちた創造精神の座標を拓くことを目指す。
創刊号の大きな企画は、詩人の野村喜和夫さんと作曲家の篠田昌伸さんにゲストとして詩人の四元康祐さんが加わった座談会「詩と音楽のあいだをめぐって」。あえて尖鋭な現代詩を多く取り上げて作曲する篠田さんに話を聞き、詩と音楽の現在について考える試みで、篠田さんが野村さんの詩に作曲した三作品(「街の衣のいちまい下の虹は蛇だ」「平安ステークス」「この世の果ての代数学」)が主な話題となった。最新の「この世の果ての代数学」は昨年のクリスマスイブの夜に女声合唱団暁によって初演された誕生したばかりのもの(このブログ2017.12.25の項を参照)。なおこの座談会は、昨年11月4日に詩とダンスのミュージアムで行われた。
インタビュー〈手に宿る思想〉は創造の方法論の中にひそむ実践に直結した思想を探る企画だが、初回は洪水企画の出版物をたくさん手がけているブックデザイナーの巌谷純介さんに、本作りの様々な秘話をうかがった。
ほかに小特集「裸の詩」(高階杞一、有働薫、渡辺玄英、高岡修、北爪満喜、水谷有美の各氏の参加)、東日本大震災を現在に呼び起こす伊武トーマさんの連載詩「反時代的ラブソング」、林浩平さんのあまり世に知られていない名作を掘り起こす「Hidden Treasure 現代詩 埋もれた名篇を探る」(初回は会田綱雄「大工ヨセフ」を取り上げる)、巻頭詩は嶋岡晨、麻生直子、紫圭子、廿楽順治、生野毅、三尾みつ子の皆さん。そして連載詩=小島きみ子さん、連載掌編=海埜今日子さん。そのほか、詳しくは次のリンク頁をご覧いただきたい。
コロンブスの卵から近代が生まれたとしたら、「みらいらん」の幻想の卵からは次の文明時代の胚芽が誕生するのであってほしいと祈念しつつ、千年の詩魂の卵を育み、現実を支配する論理に思想の乱を挑む、という最高次の難題に出発したい。
(池田康)
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