蜻蛉や宇都宮市を見届ける

雨脚を捉えて青し蜻蛉の目  高資

 ベランダにまた蜻蛉が来ていましたが、今度は、小鬼やんまでした。宇都宮市

蜻蛉の抱く巻葉のほの赤き  高資


蜻蛉や宇都宮市を見届ける  高資

In every autumn

dragonfly sees Utsunomiya-city with another eyes  Taka


トンボのメガネは~~♬と歌われますが 色眼鏡で事象を見るのは人間の方。 複眼の眼は全体を見渡し見届ける目となるのでしょうね。フィルターを外して物事を観る力を養いたいものです。


目に空を映す塩辛蜻蛉かな  高資

A blue dragonfly -

the autumn sky is reflected

in his eyes       Takatoshi Goto


三千を見渡す深山茜かな  高資

Beyond the lotus leaf

a dragonfly fixes her eyes on the universe  Taka


せせらぎに身はうつせみのあきつかな  高資

Murmuring of streams -

dragonfly has left his spirit

behind this world     Takatoshi Goto


鬼怒川や熨斗目蜻蛉に導かる  高資

 鬼怒川河畔へサイクリングに行ったら、またしても熨斗目蜻蛉が待っていてくれました。


玉敷の内にまぎれるあきつかな  高資

透き通る蜻蛉の羽や細石  高資

 今泉八坂神社


https://www.odonata.jp/02odonatology/flight/index.html 【トンボの翅と飛行】より

 トンボは,誰が言ったのかは分かりませんが,その名称が「飛ぶ棒」から来ているという説があるくらい,飛ぶことに特化した昆虫です.その翅の構造や巧みな飛行術は,航空力学の研究対象として,専門的な研究がいろいろとなされています.ここではそういったことには深入りせず,その生態的学的な意味について考えることを中心にしたいと考えています.

 トンボには4枚の翅がありますが,はばたいて飛ぶときには,前翅と後翅の動き(位相)を少しずらせています(写真2左).特に空中の一点に止まって行う停止飛翔(ホバリング)を行う際には,ほぼ交互になるようにはばたきます(写真1左).つまり前翅を打ち下ろしたときには後翅が上がり,後翅を打ち下ろしたときには前翅が上がるという具合です.ただし翅の上下動は,体軸に直角ではなく,やや前方に打ち下ろしそのままやや後方に上がるような動きをしており,同時に翅を少しねじらせるような動きをしています(写真1左;写真2右).一方全くはばたかずに,風に乗るように滑空飛行(滑翔)をする場合もあります(写真1右).

写真1.停止飛翔するオナガサナエの翅のはばたきの動き(左)と,はばたかずに滑空飛翔するウスバキトンボ(右).

   写真の上にマウスカーソルを置くとアニメーションが始まります.

写真2.均翅亜目のはばたき.ハグロトンボの直線飛行で後翅が少し下の位置にありずれている(左).ホソミイトトンボの直線飛行時のはばたき(右).

 トンボの翅は横紋筋でできた筋肉によって動きます(Tillyard, 1917).トンボの翅を動かす筋肉は,神経のパルスと同期しており,1つのパルスで1回の収縮が起きます.このような筋肉を同期筋と呼びます.筋肉の一端は,支点となるクチクラの内側にある翅の基部,および外側の翅に直接結合していて(直接飛翔筋と呼ばれる),交互に収縮することで翅を動かします(図1左).トンボを捕まえて翅を背中側でたたむように持つと,そのつけ根の部分に,翅基部の外側に付いている,翅を打ち下ろすための筋肉(腱)を観察できます(右欄外図).Snodgrass (1935) によると,それらには basalar muscle, subalar muscle という名称がつけられており,前後翅にそれぞれ2本ずつあります.翅の筋肉付着部は,それぞれ肩板 humeral plate,腋板 axillary plate と呼ばれる堅いクチクラででできています.そしてこれら4本の筋肉の個別の動きによって翅の上下動やねじれの動き(内転・外転運動)など,複雑な動きを実現しています.

 このような規則正しい連続的なはばたき運動を実現する中枢神経回路はバッタや脊椎動物でよく研究されており,中枢パターン発生器 (Central Pattern Generator;CPG) と呼ばれています.最近の高校生物の教科書にも載るぐらい一般的です.特に意識しないでも持続するリズミカルな運動をつかさどる神経回路には,この CPG が存在すると考えられています.CPG によって生み出される運動は,視覚・触覚などの感覚情報によって動きを調整できるようになっており,とっさの場合にその強さ,向きなどを変更できるようになっています.例えば歩行運動を考えてみると,あまりよい例ではありませんが,スマホを操作しながらでも歩けるのは,CPG によって自動的に歩行運動が生成されているからです.そして人影が視界に入ったとき,とっさによけることも可能です.

 非常に大きな筋肉であり,力強く羽ばたくことができる.

図1.トンボの直接飛翔筋の模式図と,はばたきをつくりだす CPG の簡略化モデル(実際は感覚情報の入力などがありもっと複雑).

   図の上にマウスカーソルを置くとアニメーションが始まります.

 トンボのはばたきについてはまだ CPG の存在は確かめられていないようですが,おそらくよく似たしくみがあると思われます.そして風の強さ,向き,気温,視覚情報などの感覚情報を使って,微妙に飛び方を調整しているのでしょう.なお直接飛翔筋では,はばたきの回数はそれほど多くなく,例えば野外での計測で,Epitheca cynosura で43Hz や Anax junius で29Hz (May, 1991),実験条件下のギンヤンマで 26~29Hz (Azuma & Watanabe, 1988)など,せいぜい1秒間に数十回というところです*1.

 飛行速度については,Tillyard (1917) が偶然の機会に計測した非常に極端な例があって,「Austrophlebia 属*2のトンボ(ヤンマ科)が,80~90ヤードの直線部分を3秒で飛んだ」と記しています.1ヤードは0.9144メートルですから,時速に直すと,なんと約 88-98km/h になります.彼は,これ以上のスピードを出せるトンボがいるとは思えないと述べています.計画的に記録された別の速い例では,Aeshna cyanea で 10m/s (時速 36km),A. junius で 7.5m/s (時速 27km) という計測値がありますが,これは最大速度であり普段はもっとゆっくりと飛んでいるということです(Rüppell, 1989).

 はばたき飛行のエネルギー源はグルコースです.筋肉にグリコーゲンとして蓄えられており,これを分解してグルコースにして利用しています.筋繊維(筋細胞)内にはたくさんのミトコンドリアがあって,短時間に大量のエネルギーを生み出します.ただ長時間飛行の際にはグルコースではなく脂質を代謝するような変換が起き(Kallapur & George, 1973),より長時間エネルギーを生み出すことができるようになっています.Kallapur (1985) は,ウスバキトンボについて,糖類と脂肪の蓄積量から推定して,最大8時間ぐらい「はばたき飛行」ができると述べています.

 沖ノ鳥島はフィリピン海に浮かぶ岩礁ですが,ここでウスバキトンボが採集され,私のもとへ送られてきたことがあります(欄外写真).ここから最寄りの繁殖可能な陸地,例えばグアム島までは最短距離でも600kmはあります.ウスバキトンボは,多分時速88-98kmではばたき飛行できないと思われますので,その半分としても12時間以上,おそらくその数倍はかかるでしょうし,さらに遠くへ飛ばないと別の陸地には着けません.したがって,エネルギー論的に見て,このような長距離移動ははばたき飛行だけでは不可能で,風の助けを借りないと実現できないでしょう.

 以上から,日常の摂食飛行,パトロール飛行,産卵のための飛行など,敏捷に動き回る場合にはグルコースを使ったはばたき飛行を中心に行い,移住のような遠距離飛行の際には脂質を使った代謝に切り替えて,風に乗った滑翔を中心とした飛行を行っていると考えられます.ネットによく出ていますが,人間でも,マラソン選手は脂質代謝を行う方がより長距離をうまく走れると言われています.トンボも同じですね.



コズミックホリステック医療・現代靈氣

吾であり宇宙である☆和して同せず  競争でなく共生を☆

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