https://booklog.jp/item/1/4781416322 【リスボンの窓 (句集)】より
著者 : 坪内稔典 ふらんす堂 (2024年3月1日発売)
作品紹介・あらすじ
◆第十三句集
ころがしておけ冬瓜とこのオレと
七〇歳で大学を退職した私は、時折、リスボンの靴屋の裏へ行き、気ままに過ごしてきた。その気ままな気分がもしかしたらこの句集にあるかも。リスボンの空は今日も青い。
(あとがきより)
◆作者のある日の自選十句
柿くえばパウル・クレーと友だちに 水ぬるむカバにはカバが寄り添って
ついさっきホタルブクロを出た人か しっぽまで赤くて人参身がもたん
ねじ花が最寄りの駅という日和 あんパンと連れ立つ秋の奈良あたり
ころがってアリストテレスと冬瓜と 桜咲くくすんと蝶がうんこして
リスボンの靴屋の窓かヒヤシンス 緑陰で大工さんとか呼ばれたい
著者プロフィール
1944年4月22日、愛媛県伊方町生まれ。
2023年6月、ブログ「窓と窓」を中心に晩節の言葉を磨く場として「窓の会」を結成、主宰する。俳諧・俳句のコレクション「柿衞文庫」の理事長。市立伊丹ミュージアム名誉館長。大阪府箕面市在住。「2024年 『リスボンの窓』 で使われていた紹介文から引用しています。」
https://note.com/11030520na/n/n8dbe317cb1b3 【窓」春号と「リスボンの窓」】より
俳句グループ「窓の会」の季刊誌「窓」春号、刊行されました。「窓の会」主宰の坪内稔典先生の第13句集「リスボンの窓」も発売中です。
「窓」 2024年3月3日 春号 窓の会 創風社出版 1000円(税込)
「リスボンの窓」 坪内稔典句集 ふらんす堂 2530円(税込)
「窓」は、「窓の会」の常連たちの俳句とエッセイを載せています。107名の会員それぞれが俳句20句と「私の味方」をテーマにしたエッセイです。家族あり、天文あり、ペットや猫あり、食べ物あり、いろんな味方についてユーモア交えて、面白く読みました。
また、巻末には2023年10月に行われた窓の会常連秋の集いのシンポジウムがテープ起こしされて、載っています。「読みが句を育てる」をテーマに語られています。
「窓の会」主宰の坪内稔典先生の第13句集は「リスボンの窓」です。
79歳にして、「窓の会」を立ち上げてからの俳句が載っています。
あとがきによれば、リスボンのコメルシオ広場のそばに小さな靴屋があって、その裏のホテルに滞在している作者の句集だそうで、題名はそこから??
リスボンは行ったことがないけれど、素敵な街らしいです。今年の米アカデミー賞で最多11部門ノミネートのヨルゴス・ランテイモス監督「哀れなるものたち」で、知能が未発達な主人公ベラ(エマ・ストーン)が、弁護士ダンカンと最初に旅する街が「リスボン」でもあります。わくわくと想像力を掻き立てる街であり、「リスボン」という響きは軽やかです。
好きな5句です。
リスボンの靴屋の窓かヒヤシンス ころがってアリストテレスと冬瓜と
ついさっきホタルブクロを出た人か 秋晴れてアンパンたちに足がない
ごろごろと遠雷ころころと心
気ままにというより耄碌かもしれないが、リスボンの空は今日も青い、という一節が心地よく、時空の広がりを感じさせてくれる句集です。
https://note.com/saku_takimoto/n/n7ab9c3b3e554 【ポルトガルのおばあちゃんは噂好き?リスボンの“窓”の話。】より
ポルトガルの家は、窓が特徴的だと思う。カラフルな家に、縦に長い長方形の窓が、狭い間隔で並んでいる。海が近いこともあり、風が気持ちいいので、多くの家は日中は窓を開けて過ごしているようだ。
私の部屋にも窓があり、道を挟んで向かいの建物の様子が伺える。お向かいさんは、もしかしたらホステルかゲストハウスなのかもしれない。部屋に二段ベッドがあるのが見える部屋がある。
その部屋から一時期、若い男性がよく顔を出していた。彼は、夏の日が沈み始めた、涼しくて夕方のオレンジが夜の色に少しずつ染まり始めた時間から、すっかり夜になるまで通りの様子を眺めていた。
リスボンの住宅地を歩いていると、ギョッとすることがある。おばあちゃんが自宅の窓から顔を覗かして人間観察をしているのだ。近くに行くまで存在に気づかないことも多く、びっくりさせられるのである。ポルトガルのおばあちゃんたちは、噂話が好きだと聞いたことがある。窓からご近所の様子を伺っているのだそうだ。
ポルトガルのお土産屋さんには、ポルトガルのカラフルな建物の窓から外を眺めるおじいさん、おばあさんの写真が印刷されたポストカードがよく売られている。ポルトガルのご老人は本当に窓の外を眺めるのが好きらしい。
今日は犬が窓から顔を出していた。窓の近くの棚か何かの上に立って、窓の外を監視している。車にも人にも吠えないけど、トゥクトゥクには吠えていた。何かが気に障ったらしい。
目があった
日本にいるときは、窓の外をぼーっと眺めることが少なかった。ぼーっと眺めてる人がいてギョッとすることもなかった。日本では縁側とか、窓ではない別のものがその役割を果たしているのかもしれないけど、とにかくポルトガルの家では、窓が重要な気がしている。
「ころがしておけ 冬瓜とこのオレと」のフレーズから S・シルヴァスタイン作 「続ぼくを探しに ビッグオーとの出会い」を連想します。
https://www.youtube.com/watch?v=5HgS3P7jbHY
https://www.youtube.com/watch?v=Ly5UIJophsU&t=22s
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