https://www.543life.com/seasons24/post20240219.html 【二十四節気と暮らしの道具/雨水うすい】より
雨水 2月19日~3月4日 正月節〈春の気立つをもってなり『暦便覧』〉
つげ櫛と椿油で、冬越しの乾燥に潤いを
雨水となりました。「雪散じて水と為る也」の言葉どおりのこの節気です。気温が少しずつ上がってきて、草木の芽も吹き始めるころ。ひだまりにはオオイヌノフグリの青い花が見つかるでしょう。春の訪れを少しずつ待つ、そんな季節です。
ところで、中国伝来の「二十四番花信風」をご存知でしょうか。それぞれの季節にあわせて、風に花の名を冠したものです。二十四節気の小寒から穀雨までの八節気の、初候、次候、三候の計二十四候の風なので、「二十四番」なのですね。
たとえば、雨水の初候は菜花、次候は杏花、三候は李花となっています。が、やはりこれだと日本の感覚とは少しずれますね。そこで、勝手にオリジナルの花信風を考えてみました。
実際の二十四番花信風では、椿は小寒の次候にあてられていますが、やはり少し早すぎる感じがします。雨水のころには、椿の花が咲き始めています。そんなわけで、雨水にあてる花信風には、椿を選ぶのはどうでしょう。椿は品種も多く、花期も長い花です。寒椿は寒い時季から咲き始めますし、各地の椿園では主に2月の後半から3月が見頃です。冷たい中にもかすかに暖かな春の粒が混ざる、そんな風をふと感じる雨水のころ。心が浮き立ちます。
さて、椿といえば、椿油。柔らかな使い心地で、お肌に髪に潤いをもたらしてくれるうれしいオイルです。伊豆大島産の椿油が有名ですが、先日伊豆へ行ったとき、同じ伊豆七島でも利島産の椿油を見つけました。こちらも試してみると、豊かなしっとり感でただいま愛用中。
冬の乾燥した空気をサバイブしてきた髪や肌には、椿油をたっぷり使って潤いを。そして、椿油と相性がいいのがつげ櫛です。使っているうちに、櫛の方にも油が浸透して柔らかに、しかも丈夫になってきます。髪を梳くにも通りがよく、使い心地満点に。
つげ櫛をつくる職人さんの技を見たことがありますが、目にもとまらぬ速さで一本ずつ歯を削っていくのですね。美しい一本の櫛が出来上がるまでには数多くの工程を経ます。バランスの取れた完璧な形は、遠く奈良時代にまで遡るとも。
つげ櫛は一生ものだといわれます。長く使っていると、次第に歯の角も取れてきて、全体がなめらかに。使うほどに愛着が湧いて、決して飽きることはありません。
女の子が生まれたらつげの木を植えて、その子のお嫁入りのときはそのつげの木で櫛をつくって嫁入り道具として持たせる地方もあるのだとか。それを聞いて、自分と一緒に育ったつげでつくられた櫛と一緒にお嫁入りする気持ちは一体どんなものだろう、と想像が膨らみました。
この春はぜひ、椿油とつげ櫛で冬ごしの乾燥に潤いを。
http://kenjiinoue.blog90.fc2.com/blog-entry-1087.html 【南天の花に雨 】より
朝から雨の日となる。
役場に向かう途中、用があって第二団地を回ると並ぶ家々の裏に何本もの南天があり、それぞれの木が花をつけている。
いつも「南天」という木を気にしてなかったものだから、南天の花が咲く時期を知ることとなったが・・・
なんでも、南天は「難を転じる」という語呂合わせが使われていて、それは子どもの頃に親から聞いて知ってはいたが、あとは赤飯の重箱に載せることくらいだろうか、この際だから、ちょっと調べてみると・・・
南天はメギ科ナンテン属の常緑低木で、日本や中国などでよく見られる植物です。この南天、中国では古来、「南天燭」「南天竹」などの名前で呼ばれており、日本名の「ナンテン」は中国での名称を簡略化したもの。これが訛(なま)ってナルテン、ナッテン、ナピテンとも呼ばれるようになりました。
ちなみに、南天燭の「燭」は、南天の実が「燭〜ともし火」のように赤く、南天竹の「竹」は株立ちが竹に似ているからこう呼ばれるようになったそう。
赤い実をつける南天は食べ物の少ない冬には鳥の大好物なので、この赤い実が鳥にとって「燭」に見えるという由来もあります。
南天は、難を転じて福となす縁起木。
日本ではナンテンが「難転」~難を転じて福となす~に通じることから、縁起木として愛されてきました。
戦国時代には、武士の鎧びつ[鎧を入れておくふた付きの箱]に南天の葉を収め、出陣の折りには枝を床にさし、勝利を祈りました。正月の掛け軸には水仙と南天を描いた「天仙図」が縁起物として好まれたようです。
江戸時代になると、南天はますます縁起木として尊ばれるようになります。江戸の百科事典『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』には、「南天を庭に植えれば火災を避けられる。とても効き目がある(現代語訳)」という記述があります。江戸時代にはどこの家にも南天が「火災よけ」として植えられるようになり、さらには「悪魔よけ」として玄関前にも植えられるようになりました。
こうした習俗は今も日本の各地に残っています。
お赤飯に添える南天の葉に含まれる作用とは?
初節句や七五三など、お祝い事に南天の葉を添えて食べるお赤飯。赤い色は厄除けの力があると信じられ、江戸後期から慶事に用いるようになりました。
井原西鶴の作品には「大きな重箱に南天を敷き、赤飯をたくさんつめて…(現代語訳)」という記述があり、江戸時代にも使われていたことがうかがえます。当時は病気が全快した時には「難を転じて」助かった幸運の印として南天の葉を表向きに添え、逆の場合は葉を裏向きにして不幸にならないようにと願いました。
今もお祝い時にこの習慣が続いているのは、厄よけだけが理由ではありません。南天の葉には「ナンニジン」という成分が含まれており、お赤飯の熱と水分により「チアン水素」を発生させます。このチアン水素にお赤飯の腐敗を抑える作用があるのです。
お手洗いに南天の木が植えられた2つの理由。
昔の家のお手洗い(厠)は家の外にあるのが普通で、そのお手洗いの周りには必ずといっていいほど南天の木が植えられていました。これは「南天手水(ちょうず)」と称して、お手洗いに水がないとき、南天の葉で手を清めるためです。
もう一つの理由は、お年寄りがお手洗いで転んだり、倒れたりすることが多かったため、「南天の木につかまる」(難を転ずる)ことが目的でした。つまり、「不浄よけ」と「生活の知恵」の両方が備わっていたのです。
ちなみに現代では、南天の茎や枝には抗菌力のある「ベルベリン」(アルカロイドの一種)が含まれていることが医学的に証明されています。(南天の持つチカラを科学的に分析 南天研究所 より)
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