https://ameblo.jp/catfish69/entry-12764122215.html 【尾池和夫の記録(285) 俳句から考える地球の環境 8月9日】より
尾池和夫の記録(285) 俳句から考える地球の環境 8月9日
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尾池和夫
水素やヘリウムなどの軽い元素は、宇宙の初期、ビッグバン直後に合成された。炭素より重い元素は、星の内部で核融合反応によって合成された。そして、超新星爆発によって元素が宇宙空間にばらまかれ、私たちの体を構成する素になった。カール・セーガンは「私たちは星くずでできている」と表現した。一方、宇宙空間は暗黒物質で占められている。私たち知っている宇宙はほんの一部なのである。
太古より宇宙は霽れて飾松 正木ゆう子
大部分宇宙暗黒石蕗の花 矢島渚男
そんな宇宙の中の銀河系の中の太陽系の惑星にいて、その自然を破壊する活動を人類は続けてきた。なんと不遜のことかと今さら思う。地球はちょうどいい大きさを持ち、太陽からの距離がちょうどいいので、水と空気があり、生物が生まれた。
銀河鉄道疾走の後の星しぶき 能村登四郎
銀河濃し三途の川は渡りしや 後藤比奈夫
太陽が歪んで沈む麦の秋 片山由美子
地球には大きな衛星が一つだけある。その月の引力で安定した自転を続け、二三・四度の傾きで中緯度の日本列島には四季折々の変化があり、季語が生まれ俳句を詠んでいる。
虫の夜の星空に浮く地球かな 大峯あきら
日をめぐる地球に生れ手毬唄 野見山朱鳥
その中で文明が繁栄し、はてしない欲望のために自然を破壊し続けてきた。ここでは、私たちの祖先が生まれ出た海のことを考えてみたい。今、海には石油からの人工物質であるごみがあふれている。そのごみを私たち自身が食べている。私たち人間の体内へ、どれくらいのプラスチックを摂取しているのかという問いに、答えが出た。二〇一九年のニュースで、一週間あたりクレジットカード一枚分を食べていることになるという。AFPニュースによると、世界中の人びとが毎週、五グラムのマイクロプラスチック粒子を摂取している可能性を指摘する研究結果が出たという。オーストラリアのニューカッスル大学の研究者たちの報告による。学術論文五二編kら導き出された結果では、人が一年間に体内に取り込むプラスチック量は、推定約二五〇グラムに上る。別の研究では、平均的なアメリカ人が一年間に口に入れるプラスチック粒子は約四万五〇〇〇個に上ると算出した。
この研究を委託した世界自然保護基金(WWF)のマルコ・ランベルティーニ事務局長は、「プラスチックは海と河川を汚染し、海洋動物を殺すだけでなく、われわれ全員の体内にも入り込んでいる。プラスチックを体内に存在させたくなければ、年間数百万トンのプラスチックが自然界に漏出することを阻止しなければならない」と述べた。
二〇二一年三月、海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、千葉県沖の海底で大量のプラスチックごみを見つけたと、海底のごみに関する調査結果を発表した。房総半島から約五〇〇キロの沖合で、太陽の光が届かない暗黒の、水深六〇〇〇メートル前後の深海底である。海に流れ出たプラスチックごみの集積する地の一つであることが、有人潜水調査船「しんかい6500」による調査で明らかになった。ごみの密度は、一平方キロあたり四五六一個で、大量のポリ袋、風船、歯磨きチューブなどがある。海底に横たわるチキンハンバーグの袋は製造が一九八四年とあり、劣化していない。
科学ジャーナリストで朝日学生新聞社編集委員の山本智之さんによると、プラスチックの大量生産は一九五〇年代に始まり、二〇一六年までの生産量は計八三億トン、世界で毎年一〇〇〇万トン超のプラスチックごみが海に流入し続けているという。海面に浮かぶ量はわずか四四万トン、残りの行方はよく分かっていない。
プラスチックごみは、さまざまな海洋生物の体内からも見つかる。神奈川県鎌倉市では二〇一八年、体長一〇メートル余りのシロナガスクジラが打ち上げられ、すでに死んでいた。その胃の中からプラスチックごみが見つかった。マイクロプラスチックは海流に乗って広がり、美しい南の島々の浜辺はもとより、南極海でも見つかっている。
SDGsの一七の目標のうち一四番が「海の豊かさを守ろう」である。この目標の中で、「2025年までに海洋ごみなどを含む海洋汚染を防止し、大幅に減らす」というターゲットが設定されている。暮らしを支えるプラスチック製品の作り方や使い方の問題でもあり、目標一二番の「つくる責任、つかう責任」とも重なる。さらに、燃やすことは目標一三番の「気候変動に具体的な対策を」ともつながる。
プレート運動で大陸が北半球に偏って集まってきた現在、地球自身は、一〇万年周期で急激な温暖化とゆっくりして寒冷化を繰り返すという氷河時代を迎えている。約二万年前には一面の氷に覆われていた地球は、その後の急激な温暖化が終わり、今、地球自身はこれから寒冷化しようとしてすでに冷え始めている。しかし、文明の繁栄で大気中の炭酸ガスが異常に増えたために、地球は人工的に温暖化しつつあり、住みにくい環境になりつつあるという予測もある。それをどのように防ぐかという技術を売り込む経済活動が活発に行われて、太陽光パネルや風車や電気自動車が大量の電力を使って生産されている。
炭酸ガスを出さないエネリギーを作るために導入された原子力発電所は大事故を起こして多くの放射性物質を生み出し、その後始末の知恵が追いつかないまま、核ゴミの処理場の誘致などの政治活動が盛んに議論される。
かぶとむし地球を損なわず歩く 宇多喜代子
茫として半眼世界極暑なり 能村登四郎
草むらも酷暑の夜勤もみな苛立ち 金子兜太
さて、俳人たちはこのような現在の世界をどのように詠み、どのように活動していけばよいのだろうか。多くの俳人や歌人たちはすでにそれぞれに主張しつつある。例えば夏の季語には日本列島の特徴と、そこに暮らす人びとの知恵が詰まっている。京都の蒸し暑さの時候の表現が豊かである。暑し、大暑、極暑、炎暑、溽暑、灼くとあって、その直後に涼しとあり、夏の果と続く。これが日本人の感覚である。
暑き日を海に入れたり最上川 芭蕉
百姓の生きてはたらく暑さかな 蕪村
茫として半眼世界極暑なり 能村登四郎
草むらも酷暑の夜勤もみな苛立ち 金子兜太
また、夏の生活の季語が非常に多いということにそのことが現れている。俳人協会での講演の田中裕明論で述べたように、ある歳時記の約二五〇〇の季語の中に、夏の生活の季語は二〇〇もある。暑さをしのぐ知恵が満載である。
朝涼の渡り廊下に言交はす 西村和子
朝涼の筆を走らせずに運ぶ 茨木和生
地球環境の行方を考えることも、ずいぶん昔から俳人たちの作品に現れている。自然を観察する鋭さが自ずから自然の未来へと目を向けることになるのであろう。その観察の中には人の営みと地球社会の共存とのせめぎ合いも課題となる。自然の中の水や海や光や草や木が自ずから句財となり、自然に表現されている。山頭火も春の水をさかんにん詠んだ。
春の水あふれるままの草と魚 種田山頭火
俳人だけではなく、歌人もさかんに水を歌う。
おれは茂りおまえは熟る惑星の地表に秋の水あふれたり 永田和宏
自然にはさまざまな特徴があり、必ずしも植物は毎年花を咲かせて実をならせるわけでもない。
竹の花乙訓滅ぶかも知れず 大石悦子
作者に尋ねると、「俳句」の平成一一年九月号に発表されたそうで、その年の五月末から六月、北摂から乙訓にかけての竹藪のあちこちで竹の花が咲き、次の年にも同じような光景を見たので、一年だけの現象ではなかったようだと教えてくださった。竹は、普通は花が咲かずに根からクローンの筍を産んで増えて新しくなっていく。しかし六〇年に一度ほどの割合で花が咲いて、同じ地下茎の竹がすべて枯れる。開花の原因は研究テーマであるが、竹の花が咲くのは豊作の前兆という説もあり、凶事であるという説もある。大石悦子さんの添え書きには「地震で滅ぶか竹の花で滅ぶか、出来ることなら竹の花を望みたいところでございますが、こればかりは・・・」とあった。竹の花でも地震でも、乙訓は滅ぶことはないだろうと私は思った。花が咲いても竹林は新しく生まれ変わるだろうし、震災があっても日本の町はたくましく復興する。乙訓の竹林は孟宗竹が主で、鎌倉時代に道元禅師が孟宗竹を中国から持ち帰り、日本で最初に植えたのが長岡京市の寂照院であるという説がある。活断層運動でできた破砕帯が崩れやすいので人びとの知恵で補強のために竹を植えた。だから明治の地図の竹林をみると活断層の地図と重なる。
海のことに戻ると、日本周辺の海は生物多様性が世界で一番豊かであることがわかっている。人間が自然を尊び調和しながら生きる「自然と人間との共生」をうたうコスモス国際賞は、二〇一一年、海洋生物センサス科学推進委員会委員長イアン・ポイナー博士(代表)に授与されたが、そのセンサスによって、日本周辺の海に豊かさが証明されたのである。月の引力による海洋潮汐が干潟を生み、生物が暮らす。その仕組みが大切で、豊かな海を守るためには山と里をきれいにしておかなければならない。
次の帆の現るるまで潮まねき 鷹羽狩行
今回の『俳壇』の特集「俳句から考える環境問題」をとおして、俳人たちがさらなる吟行を重ねて自然を観察し、地球の未来を詠み、地球社会の共存を目指す文化に貢献していくことを心から期待している。
水温む鯨が海を選んだ日 土肥あき子
https://note.com/chilli_koda/n/n69a1d442ae85 【俳句とSDGs】より
こんにちは。昨日の強風で花粉をたっぷり吸ったようで調子の悪いちりです🤧そんな日は家に引きこもってYoutubeを観ます。
ふと夏井先生の番組を観ると、「俳句 x SDGs」という面白い企画をしていました。
https://www.youtube.com/watch?v=x-9flAXBNPg&t=1s
愛亀のチリちゃんを飼って以来、環境問題に関心のある私。
夏井先生が、俳句を通してSDGsを考える機会を作ってくださりとっても嬉しいです🥰
そのSDGsを考える兼題は「牧開」です。
牧開まきびらきって何? 牧開(仲春)春になって牧場に牛や馬を放つこと。春の訪れを実感できる事柄である。きごさい歳時記「牧開」
これだけだと、正直、へぇ〜としか思いませんでした😅
そこで、牧開について書かれたこちらのサイトも参考に。牛の歳時記 第9回 牧開き 鈴木牛後【 不定期連載】 牛の歳時記 第9回 牧開き 鈴木牛後 牧開き四方の山々退けて 片山由美子 掲句、
読んでみると、とても面白い!牧草が青くなっただけでは牛も外に出る気にならない、とか🤣放牧の準備をしていると牛が興奮して興奮度MAXになる、とか🤣
いざ開放されても運動不足で転ぶ牛もいる、とか🤣そんなゴタゴタも2日目からは慣れて普通になる、とか🤣
これって…人気のお菓子の発売にうわーとなったり、運動会で頑張ってお父さんが怪我したり、というのと一緒でしょうか?結構、人間っぽくて笑えます😆
この話のおかげで牧開を少し身近に感じられました。
では、SDGsとしてはどうでしょうか。牧開をすると何がいいのか?酪農関係者ではないから
自分とは関係ない。そう思うかもしれませんが、これが大いに関係ありなのです。
私のリサーチから導き出した関係性はこういう感じ。
牛や馬のストレス減 開放的な外に出られ、自由に草を食べられるので、牛や馬のストレスが少なくなります。
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牛や馬へ健康的な草を提供 農薬や化学肥料を使わない自然の草なので、栄養もあり、健康的にも良いでしょう。
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地消地産のメリット海外からの輸入飼料を減らせたら無駄な空輸コストやエネルギーの節約になりそうです。
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牛糞が肥料に牛がした糞はそのまま肥料になり、草に栄養が行き届きます。
そこの生態系を壊すこともないので、自然環境の循環にも良さそうです。
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人間の健康
最終的に、農薬など使わないため牛乳や牛肉の質が良くなり私たちの健康にも繋がるのではないでしょうか。
これは、SDGsの目標17つのうち3, 12, 15あたりをカバーできそうです。
目標3 すべての人に健康と福祉を
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
目標12 つくる責任、つかう責任
持続可能な生産消費形態を確保する
目標15 陸の豊かさも守ろう
陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、並びに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
国際連合広報センター「持続可能な開発目標」
もしかすると間違いもあるかもしれませんがこうやって考えていくとSDGsも身近になります。まずは意識することから始め、少しでもこのSDGsの目標を達成できたら世の中も変わりそうです。
人間だけの地球ではありません。チリちゃんのような亀やその他の生き物たちにとっても
過ごしやすい地球になります。
きれいごとを言っても、何もしないよりは良いと思います。
春の訪れを感じそわそわする牛や馬を想像し、どんな句を詠みますか。
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