https://www.awanavi.jp/archives/topics/21987 【お遍路はじめの一歩】より
はじめに
遍路
生まれてきた赤ん坊は自分の身1つ、それが生きるにつれ、年を重ねるにつれ、いろいろと必要なものから不必要なものまで自分の身辺にくっついてくる。そして死に当たっては親族・遺品・花・思い出に包まれて…。
ここら辺で一度立ち止まって、万物に平等で飾りのない自然そして宇宙に自分の身を放り込むのはどうだろう?動植物と同じように自然の営みに身を任せられる簡素、質素な世界がそこにある。
遍路という途方もなく深遠で、とらえどころのない概念に向き合い、終わりのない自問自答を繰り返す混沌の中をさまよいながらも再び遍路の旅に出てしまう自分がいる。そして人が精神的な「高み」を求める神聖な旅には終わりがない。人生は遍路なり。
1.遍路とは
四国遍路(「お四国」ともいう)とは、弘法大師(空海)[774-835]が修行したと信じられている四国に点在する八十八ヶ所の霊場をループ状に巡る壮大な寺院巡礼のことをいいます。全行程1142kmの道のりを札所に、沿道の自然に、風土に、人々に、文化に、石の仏に、そういう宝物に囲まれて「悟り」の境地に近づこうとする行為ではないかと思います。
さらに現代では、その目的は宗教的な修行のみならず、病気平癒、近親者の供養、家内安全などのほか、心の充実や癒しを求めて、リフレッシュや健康増進、山登りやハイキングの延長、観光旅行の一環など、人により実に様々で、現代人のいやしの旅として見直されています。
もともとは「聖なる修行の旅」なので土地の人々も温かく、かつ、厳しく迎えてくれます。かといってあまり堅苦しく考えずにとりあえず始め、巡るうちに信仰心が生まれ、自分自身を見つめ直す機会を得ることにより、新たな自分を再発見することもある可能性のある旅です。
また、その門戸は広く、その人の国籍、性別、年齢、社会的地位、服装、等々を問わず誰でも受け入れてくれます。
歩いていると様々なことが自分の脳裏をよぎります。たとえば自分の過去の行いが正しかったかどうか、道中で見たり聞いたりしたことを思い返して自問自答を繰り返すこともあります。このような機会を与えてくれる非日常的な空間が四国遍路です。
それではなぜ四国なのでしょうか?
遍路旅では、目的地に到達することよりも、大切なことはその道中にあります。あなたは、自分の行動に精神的な充実感を得ることができます。また遍路旅では、様々な局面に遭遇します。険しい山道・単調な舗装路・雨・道迷い、これらの1つ1つが忘れることのできない記憶となり、あなたのその後の人生に影響を与えるかもしれません。これらは、他のトレイルでも体験できるでしょう。しかし四国には、その旅の途中には、通過儀礼のようにスピリチュアルな札所があります。四国遍路は豊かな自然・風土の輝きといった明るい側面と、一方、哀しくはかない人生に正面から向き合うという落ち着いた側面の両方を兼ね備えているのです。
各札所では、納経を行い、その証として納経帳に朱印をいただきますが、朱印を集めるのみならず、旅を通して数え切れない有意義な経験を積み重ねる意味において、スタンプラリーとは異なります。自分の体だけでなく心までもリフレッシュしてくれるのが遍路です。
その1142kmの道のりを4つのステージ(道場:修行の場)に分けてあるのも上手な演出です。
https://shikoku-tourism.com/feature/henro/about 【弘法大師・空海ゆかりの札所を巡って】より
四国を全周する、全長1400キロメートルの遍路道。参拝の目的は人それぞれ。宗派も問わず巡り方も自由ですが、空海のことをほんの少しだけ学んでいくと旅に対する思いが一段と大きくなるかもしれません。
弘法大師・空海とは
数多く残るお大師さまの逸話
1200年ほど前の平安時代、香川県善通寺市に誕生した空海。真言宗の開祖としても知られ、お遍路では「お大師さん」という愛称で、没後は「弘法大師」という名前を授かり、多くの人に信仰されています。
空海ゆかりの地や逸話を紹介しながら、その軌跡をたどってみましょう。
〈身投げして天女に救われた⁉〉
7才の時、仏門の道に入ることを願い、家の近くの山から身投げをすると天女が表れ、空海を抱き留めました。命を救われ、願いが叶うことを示された空海は、青年になってお堂を建てましました。この山が「捨身ヶ嶽(しゃしんがたけ)」と呼ばれ、第73番札所出釈迦寺(しゅっしゃかじ)の奥の院となっています。
〈今や受験生の人気のスポットに!?〉
空海がすさまじい修行の中で、明星を飲み込むという神秘体験をしたのが室戸岬。「御厨人窟(みくろど)」という洞窟で寝泊りしていました。ここにお参りすると記憶力がアップすると言われ、受験生にも人気の巡礼地です。
〈霊水湧き出る泉を掘った⁉〉
空海は、この地を訪れた際、水不足に苦しむ村人たちのために井戸を掘りました。湧き出る水は霊水で、「長寿をもたらす黄金の井戸」とされ、多くの人が訪れるようになりました。水面を覗いて自分の顔が映ったら、長生きできるという言い伝えも。
〈死ぬことなくこの世に留まる⁉〉
空海は「この世に生を受けていることこそ仏」という考えを持っており、人間の中には皆仏の部分があるという信念を持っていました。その考えを「即身成仏」といい、段階を経て仏の境地に至ると説明しています。
故郷を救った!満濃池の治水事業
僧侶としてだけではなく、建築や治水など実利の面でも高い能力を示しました。その中で最も大きな功績といえるのが、讃岐の国にある満濃池です。 この池は国内最大級のため池で、当時からこの地域では農業用水として活用されていました。一方で大雨などにより度々決壊し、甚大な被害も出していました。そこで空海はこの池にアーチ状の堤防を築き、氾濫を防いだのです。
なぜ四国八十八カ所の霊場を巡るのか
お遍路さんを支えてくれる空海の存在
山に籠もり、厳しい修行を行うことで功徳を得るとされる修験道によって開かれていた四国遍路。空海への信仰が盛んになり、この地で修行を重ねた空海によって選ばれた八十八カ所の寺院を巡り、功徳を積むとして始まった四国巡礼。数々の伝説を残した空海の足跡を辿る旅が、今では人それぞれの心に寄りそう旅となって継承されているのです。弘法大師(空海)と共に歩むという意味の「同行二人」の思いを感じ、道中を見守ってくれる存在があるからこそ、辛く険しい道も乗り越えられるのかもしれません。
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