https://www.newsgawakaru.com/knowledge/18655/ 【なにが違う? 飛べる鳥、飛べない鳥】より
世界には約1万種の鳥類が生息しています。ほとんどの鳥は飛べますが、飛べない鳥も60種ほどいると言われています。翼(つばさ)を持つ同じ鳥の仲間なのに、飛べる鳥と飛べない鳥がいるのはなぜでしょう?
そのヒミツは「進化」にあります。
姿かたちを見ると、飛べる鳥は体の大きさに比べて翼が大きく、羽ばたくために胸の筋肉が発達しています。それは、自分をおそう敵から逃げたり子孫を残すために飛ぶ能力が必要で、とても長い時間をかけて進化した結果です。
飛べない鳥が生まれたのは、周りに敵がいない島などに生息するようになり、生きていく上で飛ぶ必要がなくなった、などの理由があります。もともといた場所が地殻変動や海面の上昇によって大陸から切り離され、長い年月をかけて独自に進化していったのです。特に、外からほかの生き物の出入りが少ない島には飛べない鳥が多く、日本にも、世界中で沖縄にしかいない固有種のヤンバルクイナがいます。
飛べない鳥の代表的なものとして、ダチョウ、エミュー、キーウィ、ペンギンなどが知られています。飛ぶ能力はなくなっても、早く走ったり水中にもぐるなど、それぞれの環境で生きていくために、より有利な能力を発達させた鳥もいます。飛べる鳥も飛べない鳥も、生き残るための進化によって生まれてきたのです。(編集部)※写真は茂みから車道に出てきたヤンバルクイナ=沖縄県国頭村で2021年7月30日
http://blog.bird-research.jp/article/187606149.html 【飛べる鳥と飛べない鳥はどこが違う? -クイナ科の形態を比較-】より
クイナ➁.jpg ヤンバルクイナ➁.JPG
飛べるクイナ(上)と飛べないヤンバルクイナ(下)
鳥類は飛ぶために「大きな翼や発達した胸筋とそれを支える骨、左右非対称の初列風切羽が必要になる」事を以前、ニュースレターで紹介しましたが、この特徴は、ヤンバルクイナのように飛べる鳥から飛べなくなり様に進化した場合、消えてしまうのでしょうか。今回は飛べないクイナ科と飛べるクイナ科を比較した研究を紹介し、飛べなくなるとそのような形態変化が起こるのかを紹介します。
捕食者がいないと飛ばなくなる進化が起こる
鳥は飛ぶことでハワイ諸島やガラパゴス諸島など、一度も他の大陸とつながった事のない海洋島にも分布を拡げる事ができます。そういった島では哺乳類などの天敵がいない事が多く、飛べることによるメリットが小さくなり、飛ばなくなる進化が起きる事があります(Olson 1973、樋口1996)。日本で唯一飛べない鳥であるヤンバルクイナが属するクイナ科は全部で130種以上おり、そのうちの30種以上が飛べません(Gaspar et al. 2020)。飛べる種と飛べない種両方で構成されている分類群の中では、最も飛べない種が多い分類群です。
飛べないクイナ科は翼が短く、胸部の筋肉と骨も小さい
75種のクイナ科の体長や翼の長さ、胸骨の大きさなどを比較した結果、飛べない種は飛べる種より相対的に翼と胸骨が小さい事が分かりました(図1)(Gaspar et al. 2020)。飛べないクイナ科は飛べるクイナ科よりも翼や胸部の筋肉や骨が発達していないようです。また、ヤンバルクイナはクイナと比べると、体の大きさに対して翼は短く、胸部の筋肉量は小さいです(Kuroda 1993)。飛翔を可能にする筋肉や骨の維持にはエネルギーが必要であるため、孤島のような餌資源に乏しい脆弱な環境では、維持するのが大変です。維持のコストを減らして、孤島での生活に適応したと考えられています(樋口1996)。
翼長ー体重.jpg 胸骨の深さ-体重.jpg
図1.飛べるクイナと飛べないクイナの体重に対する翼の長さの比率(左)と体重に対する胸骨の厚さの比率(右)。データはGaspar et al.(2020)より。
初列風切羽の形は左右対称?
初列風切羽はどうなのでしょうか?飛べる鳥は初列風切羽が左右非対称で、飛べない鳥は左右対称に近い形をしていると言われており、クイナ科の中にもニュージーランドクイナやマメクロクイナはほぼ左右対称の形をしています (Feduccia&Tordoff 1979、McGowan 1989、樋口1996)。しかし初列風切羽が左右非対称の形をした飛べないクイナ科も9種以上います (wang et al. 2017)。なぜ、クイナは種によって異なるのでしょうか。筋肉や骨と違って、左右非対称の風切羽は必ずしも維持に多くのコストがかからないのかもしれません。その場合、飛べなくなっても形状は変化しない可能性があります。ニュージーランドクイナやマメクロクイナは左右対称になったのは、たまたまそのような進化が起きて現在に至っているのかもしれません。しかし、鳥全体で見たとき、飛べる鳥の方が飛べない鳥よりも左右非対称に比率は高い傾向にあるので(Speakman & Thomson 1994)、飛べないクイナは飛べるクイナと比べると左右非対称の形をしているものの、左右対称に近い形をしているのかもしれません。残念ながらクイナ科だけの比較で数十種以上のデータを用いた研究は見つかりませんでした。クイナ科同士で比較した場合どのような結果になるのでしょうか、気になるところです。
脚部は発達している
飛べないクイナ科は翼や胸部が小さい一方で、体重は重く、大腿骨と骨盤の幅は広い傾向にあるようです(Gaspar et al. 2020)。またヤンバルクイナの胸筋はクイナと比較して小さいと先ほど説明しましたが、脚部の筋肉量は胸部の5倍以上あります。クイナの場合ですと約1.2倍です。飛べなくなった分足を使うことが増え、これによって脚部の発達に影響を与えたと考察されています(Kuroda 1993)。
まとめ
今回は飛べないクイナ科は翼や胸部の筋肉と骨が小さく、飛べる種とは違うという事、初列風切羽は左右非対称の形をしている種も複数いて、飛べる種と似ている可能性がある事、脚部は非常に発達しているという事を紹介しました。翼や脚の大きさであれば外見からでもわかるかもしれません。もしヤンバルクイナなど飛べないクイナ科を観察できるチャンスがありましたらぜひ確認してみてください。
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