https://filmarks.com/movies/95712 【茜色に焼かれる】より
あらすじ
1組の母と息子がいる。7年前、理不尽な交通事故で夫を亡くした母子。母の名前は田中良子。彼女は昔演劇に傾倒しており、お芝居が上手だ。中学生の息子・純平をひとりで育て、夫への賠償金は受け取らず、施設に入院している義父の面倒もみている。経営していたカフェはコロナ禍で破綻。花屋のバイトと夜の仕事の掛け持ちでも家計は苦しく、そのせいで息子はいじめにあっている。数年振りに会った同級生にはふられた。社会的弱者―それがなんだというのだ。そう、この全てが良子の人生を熱くしていくのだからー。はたして、彼女たちが最後の最後まで絶対に手放さなかったものとは?
「茜色に焼かれる」に投稿された感想・評価
最近の見た事あるなーなやなニュースの詰め合わせた内容で終始しんどい映画でした。
そんな中でも主人公の息子に希望をもらいながら、辛いことだらけでも何かを見出せる可能性を感じました。
スカッとするシーンもあるんだけどやっぱ辛いシーンが心に残ってる。
数年前に、東池袋で起こった元官僚による自動車暴走による死亡事故。
この痛ましい事件をモチーフに、本作はスタートします。
この事故で夫を亡くし、コロナ禍で生活のために風俗で働く主役のシングルマザーなど、えぐる様な社会表現がエグくて惹きつけられます。
包み込む様に温かい「母ちゃん」を演じる一方で、理不尽な出来事への「怒り」を抑制するも、いつ発露するか分からない尾野真千子の狂気性の中、ストーリーが進んでいきます。
社会的に弱い立場の存在(本作では女性と子ども)に、次から次へとシワ寄せが降りかかる。
そして、シワ寄せの原因はいつも「クズ男」
もっと器用に生きる事も出来るけど、主人公「田中良子」は、真っ直ぐに正直に、そして時に「演じ」ながら生き抜いていく。
母ちゃん「田中良子」役を演じた『尾野真千子』さんと、息子の「純平」を演じた、新人俳優『和田庵』君、とても良かったです。
特に尾野さんは、「怖い」くらい良かった。
降りかかる物事の演出が大味すぎるし、不運で健気で理不尽にも立ち向かう女かと思いきや終盤ぶっ壊れでした、なんてありきたりすぎて絶句。
ほら、これえぐいっしょ?てまざまざと見せつけられても全然響いてこない。
大不運大理不尽
我慢して我慢して卑怯なことはしないで頑張るその限界がやってくる。
母子の希望とダークサイドの入口のような展開が良い。こんな展開・結末の邦画はあまりない気がする。
あいつら全員だけど厳選してバンド仲間の奴と熊木くんだけはぶっ飛ばしてやる!
【7/13 「悪い冗談みたいなことばかり起きるこの世界で、母ちゃんも、僕も、生きて、生きる」】
「茜色に焼かれる」鑑賞@ユーロスペース
えぐられすぎた。ちょっとここまで映画見てえぐられたことないかも。でもここまで励まされたこともない気がする。
途方もない理不尽にまみれた世の中に、どんなに踏みつけられても、田中良子は生きている。
丸腰で闘う母の姿は、茜色に焼けた夕焼けよりも美しかった。
石井監督の映画に共通項があるとしたら、やはり人間讃歌ってことなんだろうな。
今日の一曲:ハートビート、GOING UNDER GROUND
しぬほどよかったんです
誕生日に旅先の京都のミニシアターで鑑賞、という幸せ体験
同じ石井監督の「生きちゃった」とよく似た衝撃を受ける作品だった。人間というもの、を圧倒的に見せつけられるような。
この映画をみて、誰かの人生を真正面から受け止めるのって、殴られるような衝撃が、重みがあるんだと知った。田中良子の人生という、エネルギーの塊のような剛速球を食らって、反射的に涙が出た。感動でも共感でも憐憫でもない、ただただ田中良子の生の熱量に反応した涙。良子とケイちゃんの居酒屋のシーン、2回ともボロボロと泣いた。「良子さん、もっと、怒っていい!」
夫が死んでも、夫の浮気相手の養育費を払い続けなきゃいけなくても、バイトを理不尽にクビになっても、お金のために嫌な仕事をしなきゃいけなくても、同級生に嫌がらせをされても、アパートを追い出されても、いい年して遊ばれても、好きな人が死んでも、人生は続く。生きることは素晴らしい、なんて、手放しに言えたもんじゃない。それがリアルだ。でも、それでも、明日からも生きていく。生きていくために、小さな小さな希望を見つけて愛でる。それは今日の夕日が真っ赤で綺麗だってことでもいい。こういう素晴らしい映画に出会えたってことでも勿論いい。
「まあ、頑張りましょ」
お葬式の規模感の描写が秀逸で印象に残っている
尾野真千子、いい女優すぎます。疲れてる感がでてるのがいいよね。ヤクザと家族の時もそうだったけど、壮絶な人生を生きる強い女性の役がよく似合う。
何より冒頭にでてきたオダジョーがかっこよすぎてうっとりしてしまった、僅かな登場時間で残す爪痕の大きさオブザイヤー。
嫌な人間たくさん出てきて、こんなに救われない主人公たちを見たのは久しぶりだと思った。
それでも前を見て息子と生きていく田中良子を見習えってことなのかな?上映中ずっと辛いって気持ちが先行して汲み取るべきメッセージをちゃんと汲み取れなかった感じはある
2021年6月。初めて観る「コロナ禍の人びとを描いた」映画。
夫を交通事故で亡くした主人公良子。息子純平との二人暮らし。
謝罪を拒む「高級官僚」の加害者からの慰謝料を拒み、夫の遺した本が溢れる市営住宅で慎ましく暮らす。
パートの解雇、王様目線の客、母の職業で虐める息子の同級生、シングルマザーを善意を纏った悪意で食い物にする奴ら。
こんなに嫌なやつしか出てこない映画を見たのは久しぶり、というくらいクズばっかり。
そんな中、良子と純平、そして職場の同僚ケイのいたたまれない日常が描かれる。
真っ暗になる手前の「茜色」の空に包まれて映画は終わる。暗闇の後だか先だかの希望としての「茜色」。
尾野真知子の圧倒的な存在感。達観を装い、辛さや怒りを溜め込む。そして、一瞬しか登場しないオダギリジョーの「余韻」も大きい。
私たちが暮らす世界が「労り」や「優しさ」や「正しさ」を持てなくなった現代。絶望の手前に生きる意味を見出すことは可能なのか?
邦画大豊作の2021年、またしても傑作に出逢えた。
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