https://kanchu-haiku.typepad.jp/blog/2009/01/post-4b74.html 【岡井省二句集 『大日』】より
岡井省二最後の句集。
著者はあとがきで「諸行無常とする日本文学の閉塞的な負の流れを、私は俳句において大日の開放系思想の場へと転換させた」と揚言し、第9句集『鯨と犀』、第10句集『鯛の鯛』とあわせて「華厳・密教三部作」と位置づけている。
この『大日』に関しては今週頭に「―俳句空間―豈weekly」に拙稿を載せていただいたので、総論的なことはそちらを見ていただくとして、こちらでは内容の深浅とは別に、語釈がつかないことには何を詠んでいるのかもよくわからない句が幾つもあるので、そうしたものを中心に拾いなおしてみる。
玉虫貝に昼月の虚空かな
「玉虫貝」という名の貝がいるわけではない。
国立近代美術館工芸館の工芸用語集から「青貝」の項を引くと《鮑(あわび)の貝殻の玉虫色に輝く部分を選び、薄くし、その破片を大小にふるい分けて、それぞれ意匠にしたがって蒔き、あるいは置く。このうち特に美しく玉虫色に輝く僅かな部分からとった青貝のことを玉虫貝といい、これは蒔かないで、主として置き並べて文様をつくる。》とある。
アワビの貝殻から取れる微量の真珠層と昼の月という、この世離れした素材同士の取り合わせによって現出する虚空を愛でた句。
五芒星六芒星と星月夜
「五芒星」は陰陽道では魔よけの呪符として使われ、古代西洋では地水火風の四大元素に霊を加えた5つのエレメントにそれぞれの頂点が対応させられた図像であったという。
一方「六芒星」はイスラエル国旗にも用いられ、ユダヤ教の聖なる図形として知られているが、日本でも魔除けとして用いられることがあり、伊勢神宮周辺の石灯籠にはこれが刻まれ、「籠目紋」と呼ばれているらしい。
いずれにしても強力な聖性と象徴性を帯びた文様で、これらが入り混じって頭上の実際の星空に平然とあらわれるさまは、自然と象徴体系、宇宙と聖性の一体化をずばりと提示し、かすかな戦慄を呼ぶ。
數霊盤(すうれいばん)の霊座(たまくら)は5天の川
数霊盤は古神道で用いられたものらしい。
縦横斜めの和が全て15になる。5を真中としなければ和することができないという一つの思想が埋め込まれており、この真中の5の位置が霊座(たまくら)と呼ばれる。
つまり上五中七はそっくり数霊盤の説明で、数秘術的な観点からこの世の秩序を言い表し、それを宇宙と照応させて肯定の意を示している。
蛇なれやポタラの穹(そら)の二重虹
17世紀に成立したチベット政府の本拠地ラサに「ポタラ宮」という宮殿があるのだが、この名はもちろん、サンスクリット語の「ポタラカ」(=補陀落。観音菩薩が住むとされる)。
この句の前後、「蛇がまぐはひ真空に虹また虹」「舌出しおどけるアインシュタイン虹の蛇」と虹/蛇の句が並ぶ。
虹蛇というのがそもそも、世界各地で創造と雨を降らせる力があるとして伝承されてきた神獣らしいのだが、「真空」や「アインシュタイン」までが出てくると単なる自然の神格化には留まらず、物理法則と自然科学的知見を超えた彼方までをも「蛇」として受肉させ、性交のメタファーを負わせ、省二的密教空間に捉えこもうとしている。物質とエネルギーの秘密を開示しておどける「アインシュタイン」もここでは菩薩として扱われているようだ。菩薩とは「覚りを求める人/悟りを具えた人」の謂である。
梟は手毬にもたれ寝まりをる
師・加藤楸邨の「ふくろふに真紅の手毬つかれをり」を踏まえた句。
不眠症の強迫的な幻覚とも見える楸邨句に対し、省二句は怪異そのものを安らがせて応えた。手毬をつかれるといった受身の句がそもそも省二には少ないのではないか。世界をつかんで腹に収めようとする能動性の方が目につく気がする。
『大日』のオビの裏側には「岡井省二俳語録より」として《「実即実と投げ出して、それが反転して虚であった」これが俳句表現。私はそう詠む。》とある。
これは単なる句作の心得ではない。受肉・具体の相においてとらえられた世界を、空と色との絶え間ない生成の流れに差し戻して認識し、そこまでの射程を句の中に実現せよとの謂である。
岡井省二…1925年三重県生まれ。内科医。加藤楸邨・森澄雄に師事、「寒雷」「杉」同人。1971年第1回杉賞受賞。1991年「槐」主宰。2001年9月23日没。
https://emmi.jp/page/column/yogini/2021/vol22/?plan=em20210521Yogini 【自分らしく生きられるようになる5エレメントとのつき合い方】
自分らしく生きられるようになる5エレメントとのつき合い方
ヨガやアーユルヴェーダでは、よく「5エレメント(五元素)」という言葉が出てきますが、
これは普段の生活にあまり関係ないって思っていませんか?
実はこれらを日常的に意識できるようになると、生き方が一変するかもしれません。
今回は、この5エレメントについてお話しましょう。「5エレメント」とは何?
5エレメントとは、「すべてのものを生み出す元になる五つの自然界のエレメント(元素/要素)」ということ。地、水、火、風、空の五つです。
地(ち)→土、地面 水(すい)→水 火(か)→火、炎 風(ふう)→風
空(くう)→空間、スペース
ヨガやアーユルヴェーダでは、森羅万象=あらゆるものはすべて、この五つの組み合わせでできていると考えます。
でも、これらは概念でしかなくて日常にはあまり関係ないように見えます。どうやって日常に落とせばいいのでしょうか?それには、五つのエレメントの意味するところを知って、
自分の暮らしに当てはめていきましょう。
地は土台・安定・育み 地は文字通り、地面。ものごとを作り出す基礎的な役割を持つエネルギーです。構造や骨格などを表しています。特徴としては重さ、遅さ、粘り強さ、冷たさ、湿度などがあります。また、大地は命を育む基盤。少しのことでは形を変えません。生命力、安定感の象徴です。自分の中で地のエネルギーが充実している時は、地に足が着き、落ち着いて考えたり、観察したりすることができます。
生命力が高まっているので、力強く粘り強く、周囲を盛り立て、守っていくこともできるでしょう。心身ともに重くてダルく、面倒、ガンコになっているような時は積極的に動くこと。
心が重たく何ごともやる気がなくなってきたら、スパイス料理を食べたり、ジェットコースターにのるなどワクワクするような刺激を与えること。動かず硬くなりがちな心を解き放ちます。
水は柔順・受容・共感 水は地と同じく構造部分をつかさどります。流動的で形が変わることから柔順であり、受け容れる力があるしなやかさも特徴です。
水のエネルギーが充実している時は、人との関係においては話をじっくり聞くことができ、共感上手に。相手を受け入れるために、争いごとはあまり起こしません。
感情も感受性も豊になり、ありのままの自分を表現できるようになります。反対にエネルギーが滞ると、水が濁ってしまうように、動きが鈍くなりどんよりした感じに。やる気がなくなってしまいます。
自分がじめじめとして何ごとも面倒になってきたら、刺激を与えて自分の中の水を動かすこと。リズミカルな音楽を聞いたり、ミントなどスッとする香りを用いるのもいいでしょう。
ワクワクするような状態を作って、心を動かし続けましょう。
火は情熱・鋭さ・変換 火は熱を作り出し、熱によって形を変えるエネルギー。行動のエネルギーで何かを動かす力を持っています。
火のバランスが取れていると、ムダのない行動力で周囲を引っ張っていく活力を発揮できます。また、しっかりした意思を持って周囲の変化にも対応していきます。
反対にバランスが乱れると、熱が燃えすぎてしまい、上から目線で周囲にマウントするようになり、思い込みで断罪したり、ハラスメントなどを無意識に行ってしまうかもしれません。
カッカして人に八つ当たりしているような暴走に気づいたら、熱を冷ます必要があります。
水を飲み、ゆるゆるとした時間を作ること。意識的に優しさを加えることで、飛び散りがちな火の粉を抑えていきましょう。
冷静になる、冷静であることを心がけることが大事です。風は軽さ・機動力・素早さ
風は不規則ながら素早く動き、機動力、軽さのエネルギー。自分の中の風のバランスが取れている時は、軽やかで頭の回転が速く、機動力があって、イキイキと日常を過ごせているでしょう。しかし、風のエネルギーのバランスが崩れてしまうと、ふわふわとして心が落ち着かず、ざわついて、散漫な状態になります。
焦りや不安が募り、一方で体はそわそわしているのに心と歩調が合わないために、何ごともうまく進みません。現代は風が暴風になりやすいので、心を落ち着かせるすべを持つことが必要です。最近落ち着きがないな…と思うような場合は、バランスが崩れているので赤い色を身に着けたり、地面に錨を降ろすようなイメージでゆっくりとした呼吸をしてみましょう。
移動を減らし、睡眠時間を増やします。じっくりと入浴するのもオススメです。
空はすべてを受け入れ・四つの元素を整える 空は「カラ」ではなくて、「虚空」。
中身はぎっしりと詰まっています。インドでは、この虚空から宇宙が生まれたとされるぐらい、ものごとの原点のようなエネルギーです。
他の四つのエレメントを受け入れる器であり、知恵の源。四つをバランスし、それぞれの特徴をうまく引き出す力を発揮します。
空はコミュニケーションの場でもあります。
自分の中の言葉を受け取って、自然のエネルギーと対話する。バランスが乱れると自分の感情を受け入れられなくなり、自然のリズムから外れてしまいがちに。
バランスを取るには、五感を大事にしましょう。自分の行いすべてを意識し、マインドフルに。目に入るもの、聞こえるもの、香り、味、触れるもの、どれも大事にし、それらとの触れ合いで自分がどう思うのかを捉えます。出てきた感情をすばやくキャッチし、やりすごさないことです。これを丁寧に行っていくと、自分の心ときちんと同調でき、うつろな状態から脱出できます。
他の四つのエレメントとのバランスも整い、全身の歯車がゆがみなくスムーズに動き始めます。5エレメントはどれも大事です。自分の特徴的なエレメントはありますが、五つはすべて備わっているので、どれも充実した状態にしたいもの。
焦らず、自分の状態を観察しバランスしていきましょう。
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