https://www.uekipedia.jp/%E5%B8%B8%E7%B7%91%E5%BA%83%E8%91%89%E6%A8%B9-%E3%83%A4-%E3%83%A9%E8%A1%8C/%E3%83%A4%E3%83%96%E3%82%B3%E3%82%A6%E3%82%B8/ 【ヤブコウジとは】
・日本全国に分布するサクラソウ科の常緑小低木。山の木陰に群生しており珍しさはないが、秋から冬にできる赤い実が美しく、マンリョウ、センリョウ、ヒャクリョウなどとともに縁起の良い「金生樹」とされ、日本庭園や正月飾りに利用される。原産地は日本のほかに朝鮮半島、台湾、中国本土など。
・葉や実がコウジ(柑子)に似ていること、藪の中に生えることからヤブコウジと名付けられた。葉は3~4枚が集まって車輪状に生じ、縁には細かなギザギザがある。葉の色や模様の微妙な違いを楽しむ愛好家が多く、様々な品種がある。
・地下茎によって繁殖し、樹高は10~20センチほどにとどまる。地際に赤い実をつけるため、いわゆる「下草」として好まれる。
・7~8月ころに白又はピンクを帯びた白色の花を咲かせる。花は直径4~8ミリほどであまり目立たないが、よく見ると可憐で美しい。
【ヤブコウジの育て方のポイント】
・日陰でも育つが実を楽しむには半日陰程度が限界。また強過ぎる日差しも好まない。
・北海道から沖縄まで幅広く生育できる。
・花崗岩が風化したような土を好むが適応力は高い。
・特に剪定の必要はないが、繁茂しすぎた場合は刈り込むこともできる。
【ヤブコウジの品種】
・カマヤマコウジ~特に葉が大きい個体の俗称で庭師の職人用語
・シラタマコウジ~実が白い品種
【ヤブコウジに似ている木】
・シナヤブコウジ
中国、東南アジア、沖縄などを原産とする自生種で、黒紫の実がたわわにできる。個体数が減っており絶滅危惧Ⅱ類に指定される。別名をシナマンリョウ、シナタチバナという。
しなやぶこうじ
シナヤブコウジ
ヤブコウジの基本データ
【分類】サクラソウ科/ヤブコウジ属
常緑広葉/低木
【漢字】藪柑子(やぶこうじ)
【別名】十両/紫金牛/ヤブタチバナ
【学名】Ardisia japonica
【英名】Spearflower
https://www.aichi-kyosai.or.jp/service/culture/internet/japan/tradition/tradition_1/post_942.html 【山橘の実の美学】より
新年を言祝ぎ輝かせる万葉植物に「山橘やまたちばな」があります。
山橘は一般名を「薮柑子やぶこうじ、薮橘やぶたちばな」と呼称されるもので、晩秋の里山や林などの薮の僅かな丘陵地に生えますが、丈が低いことと、実が葉下蔭につくために見つけ出せないことがあります。そんな時には、葉をめくりあげると赤い実の輝きと出合うことができます。
その山橘を大伴家持おおとものやかもちは、
この雪の消残(けのこ)る時にいざ行(ゆ)かな 山橘の実も照るもみむ
(この雪の消えないうちにさあ行こう、山橘の実が赤く照り輝くさまを見よう)と歌っています。
万葉時代には雪は天から降りそそぐ素なる清らかなものであり、山橘の葉に雪を頂く姿はひと際清らかさが増幅されることから、その神聖さが重されたのです。
そして、さらに家持は次の歌でも
消残りの雪にあへ照るあしひきの 夜麻多知婆奈(やまたちばな)をつとに摘(つ)み来(こ)な(消え残る雪と照り映えあっている、あしひきの山橘を土産に摘んで来よう)と、庭先に積もった雪も山橘の実の赤さに染まっているその姿に、家持はことのほか感動して詠じたもので、「あしひきの」は山橘を高めての枕詞まくらことばです。
そんな雪を綿わたの木の実で見立てて山橘の葉に懸かけて、耳付銅花入に挿いけた作品(図版)を参照してみて下さい。
そもそも薮柑子を「山橘」と名付ける意は、3月の雛の節句飾りでもよく知られた「右近の橘、左近の紅梅」の2つの植物は、日本で最も位の高い建物である、紫宸殿ししんでん(現在の京都御所)の南庭に植えられています。橘は葉下蔭に小さな実を輝かせ、その姿に薮柑子が似ていることを重し、その尊い橘の名が符されたことから、万葉の往時の人々の山橘への観し方の高さを窺うかがい知ることが出来ます。そして、そのことから正月の祝儀の折りには譲葉と合せて飾られています。
どうぞ、この新年には赤く照り輝く山橘の実を観し、言祝ぎなる日を過ごしてみて下さい。できれば雪を頂いた山橘であれば、この上もなきことでしょう。
https://www.pharm.or.jp/flowers/post_11.html 【生薬の花 ヤブコウジ Ardisia japonica (Thunb.) Blume (ヤブコウジ科)】より
日本の正月には、「松竹梅」や「福寿草」とともに赤い果実をつけたヤブコウジが縁起物として門口(かどぐち)を飾ります。
ヤブコウジは山地の木陰に見られる常緑の小低木で、群生することが多く、葉は茎の上部に数枚集まって付き、長楕円形で、小さい鋸歯があります。花は7~8月頃に、白か薄紅色の五弁花の小さい花を下向きに付けます。
和名「藪柑子」は「藪に生える柑子(ミカン類)」の意味で、生育場所と果実の形にちなむようです。古名は山橘(ヤマタチバナ)といい、万葉集の数首に詠まれています。
日本では、11月ころ、根茎を掘り取り、水洗いして細かく刻んで天日で乾燥させたものを生薬「紫金牛(しきんぎゅう)」といいます。ところが、中国では、乾燥した全草を紫金牛といい、乾燥した根を紫金牛根(しきんぎゅうこん)として区別しています。
その用途も国によって異なり、日本では、紫金牛の煎液を咳止めとして服用し、また化膿性の腫れ物に対して患部を洗うと効果があるようです。中国では鎮咳や利尿作用をもとに、慢性気管支炎、肺結核や腎盂炎などの治療に用いられています。また、ヤブコウジはイヌ回虫、ウマ回虫、ウマ蟯虫に対して殺虫成分であるラパノンを含んでいます。
晩秋に鮮紅色に熟すヤブコウジの果実は、冬の間も落ちずに残って美しいことから、古くから愛されていました。同色の果実を有し縁起の良い名を持つ同じヤブコウジ科のマンリョウ(万両)やカラタチバナ(別名は百両)、センリョウ科のセンリョウ(千両)にならい、ヤブコウジは別名で「十両」とも呼ばれています。これらの命名は、どうやら植物体の大きさや果実の数などの見栄えの良さに関係しているようです。ちなみに赤い果実をもつメギ科のナンテン(漢名の南天、音が「難を転ずる」に通ずる)も縁起物として飾られる薬用植物の1つです。(高松 智、磯田 進)
[参考図書]
[参考図書]
三橋博 監修、『原色牧野和漢薬草大図鑑』、北隆館
上海科学技術出版社、小学館 編、『中薬大辞典(第2巻)』、小学館
朝日新聞社 編、『朝日百科植物の世界 第6巻』、朝日新聞社出版局
伊澤一男 著、『薬草カラー大事典―日本の薬用植物のすべて』、主婦の友社
蕭培根 編、真柳誠 訳、『中国本草図録(1巻)』、中央公論社
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