https://www.chugoku-np.co.jp/blog/article/article.php?comment_id=5299&comment_sub_id=0&category_id=199 【火山の苔】より
8月、ブラジルのリオデジャネイロでのオリンピックが始まり、終わった。卓球やバドミントン等、緊迫した試合にライブ映像で見たものもあり、暑さもふき飛んだ。
大会の最後の方に行われた新体操女子の演技は、スポーツ選手たちの興奮を美しい夢へと昇華したような演技で、うっとりしてしまった。私は、野球の「侍ジャパン」、女子サッカーの「なでしこジャパン」という呼称が、男性性、女性性を強制しているようで違和感を覚えるのだが、日本の新体操団体のチーム名につけられた「フェアリージャパン」という名称は、なんだか好きである。彼女たちは本当に可憐(かれん)で、フェアリー、と呼ぶにふさわしい。
結果的にメダルは取れなかったが、開催国に敬意を表した音楽と色彩でのリボンの演技も、日本国旗のような赤いハートの衣装のクラブフープの演技も、いつまでも見続けたい華やかさと躍動感に満ちていた。他の国の新体操の演技もみな、それぞれ個性があって素晴らしく、この競技に関しては、勝敗の行方は二の次でいいと思ってしまう。血のにじむような努力による、信じられないほどしなやかな体の選手はみな、「フェアリー」だった。
先日訪ねた箱根で、フェアリーが現れるとしたらこんな風景だろうな、と思える場所に出会った。箱根美術館の美しい庭である。夏の樹々(きぎ)の緑がつくる木漏れ日を浴びて、さまざまな種類の苔(こけ)が覆いつくすその空間は、人工的に造られた庭ながら、人類が生まれる前の原始的な世界を覗(のぞ)くような気持ちになった。苔に手で触れると、思いの外やわらかく弾力があり、大変気持ちがよかった。これなら、フェアリーの繊細な素足で跳びはねても、きっと大丈夫だろう。
箱根美術館には、小田急線の特急ロマンスカーと箱根登山鉄道を利用して強羅駅で降り、箱根登山ケーブルカーに乗り換えて到着した。美術館のすぐそばに強羅公園がある。こちらは日本初のフランス式整型の庭、だそうだ。左右対称で幾何学的に池などが配置されたモダンな造りである。涼しい飛沫(しぶき)を上げる噴水を背景に、色とりどりの薔薇(ばら)が咲いていた。
滝廉太郎作曲、鳥居枕作詞の「箱根八里」の中で、「天下の険」とうたわれた難所であった箱根。今は保養地として親しまれている強羅も、かつては岩ばかりの荒涼とした場所だったという。箱根の山は、火山なのだ。
ケーブルカーで終点の早雲山まで上ると、ロープウエーがあり、昨年春の火山活動により、立ち入り規制区域となった大涌(おおわく)谷にも通じている。一時は運休されていたが、現在は運行している。乗車する時、山頂付近の噴気ガス吸入予防のための医療用ウエットタオルが配られた。
ロープウエーから眺めた大涌谷は、淡い緑色に染まった岩肌からもくもくと水蒸気が上がり、江戸時代に地獄谷と呼ばれていたこともさもありなんと思える、迫力満点の景観だった。ここを訪ねた与謝野晶子もこんなふうに詠んでいる。
行方なくはてぞなりゆく奥箱根大涌谷の業のけむりも
(歌人・作家)
https://www.vixen.co.jp/lp/moss_world/cnts/02.html 【緑の絨毯が広がる、苔の森でコケ観察!】より
小さな芸術世界と出会う「苔さんぽ」
長野県 北八ヶ岳連峰の標高2115メートルにたたずむ小さな湖「白駒の池」は、八ヶ岳火山溶岩流の窪地に水が溜まってできた湖です。
池周辺はコメツガやシラビソ、トウヒなど亜高山性針葉樹林の原生林が広がり、ごつごつした溶岩でできた林床には様々なコケが緑の絨毯のように敷きつめられています。岩の起伏や陥没して出来た木の根の空洞、横たわる倒木などが神秘的な風景を作っています。
小さな芸術世界と出会う「苔さんぽ」
八ヶ岳には国内に見られるコケの約4分の1の種類が自生しており、 2008年に日本蘚苔類学会より「日本の貴重な苔の森」として選定され、保護をされています。
緑の絨毯が広がる神秘的な苔の森でルーペと一緒にコケ観察をしてみませんか?
白駒の池
奥入瀬渓流について
白駒の池はぐるりと一周、木道で散歩ができるように整備された小さな湖です。一周回るにには、大人の足で45分程ですが、コケを観察しながら散策する場合はもっとゆっくり時間をかけて周りましょう。
池の周りの木道からは何本か池からそれるコースがあり、そのコースの先には池の周りとは一味違う、苔の森が広がっています。この森を散策する場合は、一部登山ルートになっている部分がありますので、必ずトレッキングの装備でお出掛けください。
奥入瀬渓流について
池周辺には麦草ヒュッテ、青苔荘、白駒荘という山荘があり、季節の食材を使った料理やデザートなどを楽しみながら一休みすることができます。
豊かな自然とコケの不思議にせまる観察会を苔の森開き(5月末頃~10月)の期間開催しています。苔学会の先生が優しく教えてくれるので、初めての方にもおすすめです。
奥入瀬渓流について
麦草ヒュッテ、青苔荘ではシーズン中、予約制の「コケとの出会い観察ツアー」も随時開催しています。参加者2名以上であれば3日前の予約で、苔のスペシャリストに案内してもらえます。しかも、山荘のオリジナルのデザートまで味わえるお得なオプションツアーです。
宿泊とセットになった「コケと原生林体験ツアー」もあり、2日間、じっくりコケの世界を体験することのできるプランです。北八ヶ岳の苔の森のなりたちから、コケの不思議な生態を学んで、美しいコケの姿を堪能したい方におすすめです。
奥入瀬渓流について
白駒の池の駐車場や山荘の売店では、可愛らしいキャラクターに出会うことができます。その名も「コケ丸」。触覚のように伸びる2つの胞子体。この特徴のある胞子体を持つ苔は、北八ヶ岳の苔の森を代表するコケです。
コケ丸グッズは北八ヶ岳の苔の森の山荘や駐車場の売店などで販売されています。ピンバッチやキーホルダーに手ぬぐい。コロコロしたグリーンの不思議なキャラクターに癒されます。森の中で、コケ丸のモデルになった本物のコケを探してみるのも楽しいですよ。
苔の森のコケたち
比較的大きな個体で、葉に横ジワがあり表情のあるムツデチョウチンゴケです。胞子体を複数つけるチョウチンゴケの種類です。腐葉土や倒木など養分の多いところを好みます。
北八ヶ岳のコケの森を代表する種で、日本の固有種でもあります。
トヤマシノブゴケ
コケ界のアイドル、タマゴケは名前の通り、さくの形が玉のように丸いところからその名が付いています。細かく繊細な葉はルーペで覗くと透けるような美しさ。。
さくは透明感のあるグリーンから成熟すると褐色に変わります。日陰の岩上や腐植土などの垂直な面にクッションのように固まった群落を作ります。
エゾチョウチンゴケ
日当たりの良い岩の上に小さなマッチ棒のようなものが生えています。これはカムリゴケという地衣類でコケではありません。
岩にグレーの地衣体を広げ、マッチ棒のような2~3mmの小さな生殖器官が立ち上がるように生えます。
コケシノブ
日当たりの良い岩の上に生息しているクロゴケ。乾燥に強く、小さな群落を作り、水分を吸収すると瞬く間に、その姿を変えます。
黒かったコケはみるみる水を吸って緑の葉を広げ、光合成を始めます。 水の入ったスプレーボトルとルーペを持って観察しましょう。
コツボゴケとエビゴケ
樹間に群生するカギカモジゴケ、カモジは髢(髪文字)の意味で、髪を結う際に自毛の足りないところに添える髪という意味です。そのカモジによく似ていることから付いた名前です。
カギカモジゴケは葉がクルクルと巻き毛のようになっていて、柔らかく弾力のある手触りです。葉先が真っ直ぐの似たコケはタカネカモジゴケという異なるコケです。
ルーペで覗く
林床の腐植土や倒木の上に密生して生えるフジノマンネングサ。フサフサと羽状に枝を出し、繊細で美しいちいさな木の様なコケです。
一つの個体の茎から枝分かれした茎が地中を這って伸びて個体を増やしています。地中から出た新しい芽は落ち葉を突き破るほど、しっかりとした堅い茎が生えてきます。
下流から上流に向かって散策
北八ヶ岳のコケの森には、倒木が作った空洞の中に珍しいヒカリゴケを見つけることもできます。ヒカリゴケはその細胞が球体をしていて、弱い光を集めます。光合成をしようと葉緑体細胞の中を移動し光を受けるときに、反射するのでヒカリゴケはエメラルドグリーンのような色に反射します。
そのような珍しいコケに出会える北八ヶ岳コケの森。散策には、コケのスペシャリストに案内してもらうことをおすすめします。
狭い範囲に色々な種類のコケ
北八ヶ岳のコケの森は窪地にあるので、朝日の差し込む午前中や昼、日が傾きかけた頃と時間帯によって、光と影が様々な表情をつくりだす森です。ゴロゴロと転がった岩にコケの絨毯を敷きつめた様な林床はこの北八ヶ岳ならではの風景。
ゆっくりとコケの森を歩き、時間の流れによって刻々と変わるコケの景色を存分に味わってみてはいかがでしょうか?
コケ観察を楽しむポイント
コケのデザインをじっくり観察!
動きやすくて
汚れても良いスタイルで楽しもう
北八ヶ岳コケの森は八ヶ岳の山々に囲まれています。登山道のような少し険しい道や足場の悪い場所もあります。山道でも歩ける靴、汚れても良い動きやすい服装で散策しましょう。
森が作られたストーリーを知ろう!
視界を広くから
どんどん狭くしてみよう
北八ヶ岳のコケの群落は国内でも滅多にお目にかかれない規模。その壮大なコケの風景を広い視野で楽しみ、徐々に視野を小さくして、拡大していく楽しみ方がオススメです。小さなコケ達の姿を見ると、この大きな自然を形作るたくましさに心打たれます。
コケ目線で観察しよう!
コケの観察は散策コース沿いがオススメ!
北八ヶ岳コケの森では、散策コースを外れないように観察しましょう。登山道周辺が一番コケの種類が豊富だからです。落ち葉がたまらず、地面がむき出しの場所や、岩や倒木が横たわるなど、多様な環境があるため苔の種類も豊富なのです。(略)
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