Facebook・竹元 久了さん投稿記事 🌏ミネラル豊富な自然食 「土」を食べる文化はなぜ生まれた!?
「土」って食べられるの? そんな文化ってあるの? そう思った人も多いのでは?
じつは、古くから世界各国で、土を食べている人種や、文化があったことがわかっています。それが現在も続いている場合も。
では、どうしてそんな文化が生まれたのでしょうか?
世界各国の「土食」の文化ついて、紐解いてみることにします。
■「土」を食べる文化がある国はどこ?
アフリカ大陸
アフリカの農村地帯では、現在も行われているといわれている土を食べる「土食文化」。
エリアも広く、アフリカのサハラよりも南のエリアで、西はギニア湾、東はインド洋あたりまで土を食べる風習があるのだそうです。研究によると、この風習は自然環境の中で生まれた生活の知恵で、65種類以上の人体に必要なミネラル成分が含まれた土を食べることで、下痢、コレラなどの疾病を治すともいわれていたそうです。
また、その食べる土も限定的で、地層を掘り、数メートルの深さから取り出した赤色の土壌を用いて、不純物を取り除き、水を加えて適当な硬さにして細くて長い棒の形にする、それをナイフで適当な長さに切って火で炙り乾かし、土の中に含まれる病原菌を殺し、食べられる状態にしています。
現在も行われているものの、都市部ぼ医療発達と、土を探すことが難しくなり、その文化も減ってきています。
ハイチ
貧しい人々の間で、ショートニング、塩、時に砂糖などを少量混ぜた泥粘土を、パンケーキやクッキー状にして天日で干した食べ物が「bon bon de terres」(土のボンボン)と呼ばれ、売られています。
マレーシア
一部の妊婦らは、胎児の順調な成長と安産を求めて粘土を食べます。
ベトナム
土を網で焼いて客をもてなす習慣があるそうです。
インド
一部では、新しく作られた粘土製のティーカップに茶を注いで、それを飲み干した後、そのティーカップを食べたり、シロアリの巣に行って、時々蜂蜜を加えて、シロアリと一緒にその土を食べるなどの風習があります。
フランス
フランスの料理には、山の土を煮込んでルッコラの根を添えたシンプルな料理もある。
アメリカ(先住民)
その昔、ネイティブアメリカンは、特定の食べるための土をイワーキー(Ee-Wah-Kee=癒しの土)と呼んで、疲れ果てた心を癒すために食べていました。蒸したり炒ったトウモロコシに、粘土、種子、ハーブなどをまぶして食べることもあるのだそうです。
日本(アイヌ民族)
アイヌ民族は、ケイソウ土を(アイヌ語でチエトィ「我らの食べる土」の意) 百合の根や、タデ、ウドなどを潰して加え、油を加えて食べていたこともあります。また、そのほかにも、加藤清正が建てた当初の熊本城は、籠城戦を想定し、土壁にカンピョウや、芋がらをつなぎに塗り込めケイソウ土が用いられていました。
■「土」を食べるのは異食症?
医学では、異食症や、土食症とよばれる病名があります。
前者は、土や紙、粘土、氷、チョーク、木炭など、栄養価のないものを好んで食べる症状のことです。また後者は、土に限定されたものですが、多くの場合、小児と妊婦に見られます。前者と後者は似ているものの、後は理にかなった説明ができます。
元来、土には豊富なミネラルが含まれています。
土食症は、亜鉛や鉄分が不足して、味覚異常を起こした際に発症しやすい行動のひとつであることが科学的に明らかになりつつあります。つまり、成長期の小児や、命を育てる妊婦が、ミネラル不足によって、衝動的に土を食べると捉えることが自然だと考えられています。
チンパンジーの研究で、ある注目すべきことが取り上げられたことがあります。それは、『Naturwissenschaften』誌に掲載された論文の中にまとめられています。それによると、ウガンダのキバレ国立公園のチンパンジーたちを観察したところ、チンパンジーが土を食べるのは、マラリア原虫を殺す成分を含むことで知られる植物を食べた直前か直後であったとか。
これらの葉のサンプルを採取し、単独で混ぜ合わせたものと、採取した土とともに混ぜ合わせたものを用意し、それぞれを消化器系を模した実験装置に置いたところ、葉のみでは何の薬効も現れなかったのに、土と葉を合わせたものは強力な抗マラリア性を発揮したというのです。
この結果は、人が土を食べる文化が誕生した理由にもつながるのでは?として、注目されているのです。
■地上の生物に必要なミネラルが「土」に。
地上の生物のほとんどが大地から生まれています。多くの元素で満たされた土は、まさに生命の根源です。実際に、紹介してきたように、土を食する習慣・文化は世界中で古くから存在してきました。そして現代では、そこには、大きな意味があるのだということに気がついた人はどれだけいるでしょう。
世界的に「土食」の習慣が存在し、食用の土も売られている場合がある。チンパンジーの観察で、特定の植物と土を食べることで、強力な抗マラリア耐性を得ていることがわかった。
チンパンジーに関する最新の研究が、人間の一見奇妙な風習を解明する鍵となるかもしれない。その風習とは、土を食べることだ。
『Naturwissenschaften』誌に掲載された論文の中で、フランスの国立自然史博物館の研究チームは、ウガンダのキバレ国立公園のチンパンジーたちを観察したところ、チンパンジーが土を食べるのは、マラリア原虫を殺す成分を含むことで知られる植物を食べた直前か直後であったと報告している。
研究チームはこれらの葉のサンプルを採取し、単独で混ぜ合わせたものと、採取した土とともに混ぜ合わせたものを用意し、それぞれを消化器系を模した実験装置に置いた。その結果、葉のみでは何の薬効も現れなかったが、土と葉を合わせたものは強力な抗マラリア性を発揮した。
このことは、人間に土食(Geophagy)の習慣があることの説明になりうる。土食は前近代のさまざまな文化圏で伝統的に行なわれてきたが、現在では奇妙な風習と見られるようになっている。
[wikipedia英語版によると、全世界を通じてこの風習は存在し、食用の土が売られているところもあるという。アフリカの風習が黒人の移住を通じて米国にも入りこみ、ミシシッピ州の1942年の調査では25%の子どもが土を食べるとされた。栄養素を補う手段になっていると考えられているが、味自体が好まれているという意見もある。日本語で紹介されているものとしては、たとえばベトナムの地方での習慣。]
話はそれるが、筆者の古い知人の中には、好んで土を食べる人が何人かいた。その知人たちが建設現場の土砂の山から一握り取って口に入れるのを初めて目にしたときは、ふざけているのだろうと思ったが、本人たちにそんなつもりはなかった。子ども時代に、地域の伝統の1つとして、その習慣を覚えたのだそうだ。別のときには、この知人たちは民芸品店で買った粘土まで食べていた。次第に慣れはしたが、嫌悪感を完全に克服することはできなかった。
チンパンジーと人間の行動の類似性をさらに調査するため、フランスの研究チームは、この地方のある民間治療者が下痢の治療に用いている土の組成を検証した。するとこの土も、チンパンジーが食べている土も、どちらも高陵石(Kaolinite、カオリナイト)を多く含んでいることが明らかになった。
高陵石はかつては下痢止めとしてよく知られており、米国で一般的な下痢止め薬の『Kaopectate』の商品名に、今なおその名前をとどめているほどだ。
では、チンパンジーの土食はどうして始まったのだろう? 群れの誰かが、土を食べると通じがずっとよくなると気付いたのだろうか? それとも、土の混じった葉の独特の味わいに、たまたま意外な副効果があって、その味わいを楽しんでいた一部の物好きに生理的な効果が現れたものだから、チンパンジーの社会全体にその風習が広まって――そしておそらく、われわれの遠いご先祖さまの社会にも伝播したのだろうか?
答えは歴史の中に埋もれてしまっている。だが少なくとも、筆者が知人たちに対して抱いていた印象はだいぶよくなった。
この記事は、『Naturwissenschaften』誌の論文「土食――土の摂取により、チンパンジーが食べた植物の生体への効果が向上」および出版社によるプレスリリース「大地に根ざした、チンパンジーの治療法」を参照した。
[日本語版:ガリレオ-江藤千夏/小林理子]
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