Facebook・長堀 優さん投稿記事
先ごろご逝去された村上和雄先生の絶筆となる「コロナの暗号」が出版されました。
この国を愛してやまない村上先生からの最後となる渾身のメッセージは、自らの姿を見失い、さまざまな情報に翻弄される現代日本人の目覚めを促すかのようです。
先生のありがたいお言葉の数々に胸が震える思いがします。間違いなく現代日本人必読の書であるといえます。
長くなりますが、最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。よろしくお願い致します。
ヒトの遺伝子暗号は約三二億の文字からなっています。
1ページ1000字として、1000ページの大百科辞典が3200冊にもなる膨大な情報量です。
この遺伝子は世代を超えて情報を伝えることはもちろん、この瞬間もすべての細胞の中で一刻の休みもなく、みごとに働きつづけているのです。
たとえ細胞一個でも「生きている」ことはすごいことなのです。そのすごい細胞が何十兆も集まった人間が生きているということは、もはやただごとではありません。
さらに驚くことは、本来自己保存という「利己的」に働くはずの遺伝子の中に、生命維持のため自ら細胞死を選ぶ「利他的」な遺伝子が存在するという事実です。
この遺伝子の振る舞いが教えるように、滅亡の危機に瀕した人類を救うカギになるのも「共感」や「利他主義」と村上先生は指摘します。
ダライ・ラマ法王も、「他の人を思いやるということが自分の幸せをもたらすと理解して自らをケアしていくというのが賢い者の利己主義」と言っています。
利他的であることは、ひいては自分の利益となります。利他主義は合理的利己主義に他ならないのです。
二十一世紀は、「感謝」と「助け合い」と「つつしみ」が求められる時代になると先生は語ります。科学にもそのような態度が本来求められるはずなのですが、実際はどうでしょう。人類は、細胞一つ作り上げることはできません。いのちの謎も解明できていないのに、倫理感の醸成もされないままに「ゲノム編集」が急速な勢いで進展しています。 科学技術を誤った方向に用いることは大変に危険です。村上先生は、現在の遺伝子型ワ◯チンにも強い警鐘を鳴らしています。本来、人間と自然はわけられないものです。私たちは自然の一部であり、そのおかげで生かされているのです。
そして、人間は本来助け合う生きものとして進化してきました。
この考え方は、コンピューターのシミュレーションゲームでも実証されています。
他者を裏切ってでも自分の利益だけを追求するものは、最初は繁栄しますが、そのうちそうした考え方をするもの同士がだまし合って自滅してしまいます。
しかし、もらって、お返しをして、という集団は、繰り返しゲームを行うことで双方の利益がプラスになり、結果的に繁栄するのです。
かつて、ネアンデルタール人と、我々ホモ・サピエンスが共存していた時代がありました。
ネアンデルタール人の方が強靭で、脳もホモ・サピエンスより大きかったのに、生き残ったのはホモ・サピエンスの方でした。
両者の違いの一つは、ホモ・サピエンスが百五十人ほどの集団で暮らしていた一方、ネアンデルタール人は二十人くらいの家族単位で暮らしていたことです。
集団の大きさが両者の脳の発達に影響を与え、ネアンデルタール人は視野や視覚が発達したのに対し、ホモ・サピエンスは、前頭葉、つまり社会性を司る部位が発達しました。
ホモ・サピエンスは、集団の力、協力することで進化を遂げたといえるのです。
最終的に生き残るものは、単に得ようとするだけでなく与える種が生き残る、つまり「協力しあえる」「足ることを知る」種が歴史的に長生きしているのです。
村上先生は、この利他的行動こそが日本のお家芸であると指摘されます。
脅しにも屈することなくアフガニスタンの砂漠緑化運動に人生を捧げ抜いた中村哲医師、
同盟国ドイツとの関係を損なう恐れがあったのにもかかわらずビザを発給し、多くのユダヤ人の命を救った杉原千畝氏、
江戸から明治にかけても、メキシコ、ロシア、トルコの外国船難波に際し、乗組員を地元民が命懸けで救助した事例が、千葉御宿、伊豆戸田、和歌山串本などに伝わります。
東日本大震災のときも、世界の人を驚嘆させるエピソードが数多く伝えられました。
歴史を紐解くと、日本人には利他的精神が根付いていると気付かされるのです。
「お互い様」の心が根付いている日本人は、困難な時こそ利他的遺伝子がONになるのです。
そして、人間がこんなに温かったのだ、ということを証明してきたのは日本人なのです。
今大切なことは、日本人の素晴らしい資質を日本人が見つめ直すこと、そうすればもっともっと世界に貢献していけるはず、と村上先生は訴えます。
ダライ・ラマ法王は、ダラムサラで世界から一流の科学者を呼び、一週間対話されました。
最終日、法王は、参加者の一人であった村上先生の手を取り、「日本は二十一世紀には非常に大切な国になります。日本の出番が来ますよ。」と言ったそうです。
なぜか。
日本は西洋の科学・技術を取り入れて経済大国になりながら、西洋のように自然と敵対するのではなく、むしろ自然を敬い、自然とともに暮らし、周りの人と助け合いながら生きてきた、
この日本人の伝統的な調和の精神や文化こそが、混乱と不安に満ちた今の世界に必要だ、と法王は語ったといいます。
村上先生は、法王のこのお気持ちに対し、以下のように語ります。
「東日本大震災以降、世のために生きたいと思う人がこれまで以上に増えてきました。
多くの日本人の心の中で、利他的遺伝子がONになったことでこのような変化が起こったのです。東日本大震災の傷が癒えないまま、コロナ禍に見舞われている日本ですが、あの敗戦からも、毎年のように襲い掛かる自然災害からも立ち上がってきた国民でもあります。その痛みを抱えながらも、世界がより利他的になっていくようにリーダーシップを発揮できるのが日本人だと思うのです。それがダライ・ラマ法王のおっしゃる『二十一世紀は日本の出番』ということなのだと、私は思っています。」
村上先生の日本人への限りない愛情に強く胸を打たれます。今度は残された私たちが村上先生のこのお言葉に応える番だと思います。今回、このご著書は奥様よりご恵贈賜りました。時期ゆえに、「謹呈 著者」の文字に万感の思いが湧いてきます。
村上先生、日本への愛ある提言をいつもありがとうございました。
これからも天からこの国をしっかりと見守ってください(涙)
繰り返しますが、本書は間違いなく日本人必読の書だと思います。お読みいただきありがとうございました。
https://mind-gene.com/blog/ 【『コロナの暗号』 村上和雄先生 最後のメッセージ】より
村上和雄先生の遺稿となる『コロナの暗号』(幻冬舎)が7/7に発売されます。
本書「コロナの暗号」が村上和雄先生の最後の本となりました。
先生は、60年近くの研究人生において知りえたことや感じたことを、科学が専門でない一般の 方々にもやさしい言葉でお伝えして、生き方の参考にしていただきたい、という思いで本を書き、講演を続けてこられました。
そして遺伝子の研究を通じて、心のあり方が遺伝子の働きに影響を及ぼしていることを確信し、 このことを証明するため2002年に「心と遺伝子研究会」を立ち上げました。
やがて遺伝子という世界を見つめる中で「この万巻の書物に匹敵するものすごい情報を極微の世界に書いたのは誰なのか」という思いに至り、その存在を「サムシング・グレート」と呼びました。
『 私たちはすべて等しくサムシング・グレートのこどもです 混迷の今 私たちは「利他の心」を発揮して新しい世界を創っていきましょう 』
村上和雄先生の最後のメッセージをお読みいただければ幸いです。
幻冬舎「コロナの暗号」紹介ページ https://www.gentosha.co.jp/book/b13807.html
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