鴎座俳句会& 松田ひろむの広場

https://plaza.rakuten.co.jp/kamomeza/ 【千日千句抄鴎座俳句会 代表 松田ひろむ】 より

千日千句抄―泥付 松田ひろむ

初昔秩父音頭の手振りにて                初日の出板橋ただの三丁目

初茜土偶はローム層の底                 胎動を確かめながら初赤城

二十代初湯の妻のやせっぽち               ボーナスも定年もなく宝船

姫はじめ八十過ぎのサユリスト          弾初の伽耶琴(カヤグム)やがて耳鳴りに

お降りのひとひらながら板橋区            七種やすとすととんと百歳へ

七種のながらスマホを叱りたい            百代の過客自ら芹なずな

すずしろという泥付の言葉かな            口臭のなき雪女まだ二十歳

どこからか日のさしている嫁が君           不易流行新年号の駄句駄作

大寒のいろいろあって鉄火丼             波除稲荷鮟鱇塚が寒すぎる

雪掻きのほめられている二年生            蜜柑剥く両手両足あるからは

巫女様の眼鏡がきらり寒明ける

(2020年1月)

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174-0046東京都板橋区蓮根3-12-27-110 松田ひろむ


ザ・俳句十万人歳時記 

松田ひろむ (編集), 有馬朗人 (監修), 宇多喜代子 (監修), 金子兜太 (監修), 廣瀬直人 (監修) 

老鶯朝から気前よく鳴く生きめやも の評者


https://plaza.rakuten.co.jp/kamomeza/diary/201207010000/ 【かなしみは蛇の頭の八つほど 松田ひろむ/蛇来るかなりのスピードであった 金子兜太】 より

曇。今日は、松田ひろむ俳句研究会。巣鴨の巣一会館。 ここは超結社の立場ですすめている。俳句だけでなく、エッセイの勉強もしているところが特徴。今日のエッセイは鈴木砂紅さんの「茄子の花」で母の言葉を喩えたもの。吉川英治の随筆の朗読は高橋透水さん。英治の文中の「宥って」が、だれも読めなかったがなんと読むのだろうか。ご教示いただければありがたい。

今日の1句   蛇来るかなりのスピードであった 金子兜太 『両神』

蛇は意外に早く走る(「走る」というわけはないが)。この句の「来る」は「きたる」と読むのだろう。そうすると兜太流の文語・口語ごちゃませで、兜太以外にこのような用法で成功した作品は見ない。さすがの兜太流。


https://plaza.rakuten.co.jp/kamomeza/diary/201308270000/ 【谷に鯉もみ合う夜の歓喜かな 金子兜太/ 胸に谷その他蛇のいるところ 松田ひろむ】より

31℃(曇)。 「鴎座」9月号の校正。

今日の1句   谷に鯉もみ合う夜の歓喜かな 金子兜太 『暗緑地誌』

昨日につづいて兜太の句。無季の句だが、鯉の産卵期は初春から夏である。「もみあう」が性の歓喜である。ただし事実に即して考えると、もみあっていれば産卵、受精は難しいように思う。これは哺乳類と違うところ。句は明らかに哺乳類の交尾のイメージ。

松田ひろむ千日千句

3799 胸に谷その他蛇のいるところ

3799 胸に谷その他蛇のいるところ 季語 (蛇)

拙句、掲出の兜太の句をなぜか思い出した。


https://plaza.rakuten.co.jp/kamomeza/diary/201103240000/ 【人体冷えて東北白い花盛り 金子兜太/人体に花も涙もヤポネシア 松田ひろむ】 より

都知事選の告示。今日は金町浄水場から乳児が摂取できる基準値を越える210ベクレルの放射性ヨウ素が検出された。いよいよ水パニック。これまで原子力発電を推進してきた原子力安全委員会の班目春樹委員長が22日福島社民党委員長の追求に「割り切り方が正しくなかった。十分反省している」(「日刊ゲンダイ」3月24日付)とこれまでの安全神話を反省してみせた。23日には、福島第一原発で一番危ないのは1号機。「核燃料がかなり溶融して可能性がある」(「日刊ゲンダイ」3月25日付)と指摘している。毎日注水を続けても炉内温度が400度を越えているという。(設計温度は302度)。まったく予測できない事態が日替わりで起きているのだ。

あれも危ない、これも危ないというのなら、われわれ自身で放射能を測定する必要だろう。その計器を大量に配布して自分で安全を確認しなければ、水も飲めない、野菜も食べられないということになる。

今日の一句

人体冷えて東北白い花盛り 金子兜太

人体の句といえばまっさきに思い浮かぶ句。昨日の拙句もそれに学んだもの。この句の「花盛り」は桜などをひっくるめてのものと考えられ、季語というよりも無季の句としてもいい。東北のイメージなのだ。その東北がよもや巨大地震に見舞われるとは、兜太も予想していなかったこと。

人体に花も涙もヤポネシア 松田ひろむ(2011年)

まさに細身の日本列島つまりはヤポネシア(Japonesia)それは島尾敏雄の造語。日本を指すラテン語「Japonia」に群島を指すラテン語の語尾「nesia」を追加したもの。琉球とヤマトを一体化した概念。

立子編『虚子一日一句』(朝日文庫)は

谷の寺元黒谷の霞けり 虚子(1954年)

比叡山横川。そこに出来た虚子の塔のあるところ。虚子の塔は「逆修爪髪塔」というらしい。つまり生前に爪髪を納めたもの。傍の句碑は「清浄な月を見にけり峯の寺 虚子」。横川は虚子の小説「風流懺法」の舞台。それにしても「谷の寺」という上五はそっけない。


https://plaza.rakuten.co.jp/kamomeza/diary/201611050001/ 【いのち気軽に尿瓶と暮らす河豚食べて 金子兜太/男根もやさしくなりぬ葉鶏頭 松田ひろむ】 より

男根もやさしくなりぬ葉鶏頭 松田ひろむ

<秀句逍遥>とうとう尿瓶派になってしまわれた金子兜太だが、このたび97歳を寿ぐ会もあってますます盛ん。小生は、まだまだ尿瓶のお世話にはならないが、兜太のエネルギーに負けたくない。目標は兜太先生としておこう。 2011年1月11日のブログに「荒川で尿瓶洗えば白鳥来」(金子兜太)をアップしたが、これが小生のブログのアクセス数中トップで累計1595。

男根も陰(ほと)も兜太の句に多い。

男根の意識 たちまち驢馬啼き狂ひ 富澤赤黄男

初日粛然今も男根りうりうか 加藤楸邨

遠き日の男根なぶる葉月潮 宇多喜代子

捻費貫暢力蕩腎断男根 加藤郁乎

それにしても宇多喜代子先生の「男根なぶる」には参った参った。私はどうしても兜太や宇多喜代子にはなれない「やさしい男根」である。

<秀句逍遥>

いのち気軽に尿瓶と暮らす河豚食べて 金子兜太

田中空音は「英語で言えば“Take it easy! Don't think twice.”といったところだろうか。気楽に行こうぜ、くよくよするなよ、と言う意味である。深刻に考え込むことによって、何か良い結果が生れることがあるだろうか。ない。考えてもいいが、深刻に考えるのは良くない。深刻さそのものが良くないのである。深刻に考えるということと、深く物事を考察するというのは違う。深刻さには心理的に何か恐れがある状態である。恐れのある思考からは何も良きことは生れない。深刻さからは更に深刻さを増すような行動が生れるか、あるいは深刻な考えに沈み込んでいって、神経症になるのが関の山である。「いのち気軽に」生きようではないか。“在る”ということを信頼して生きようではないか。すべては仏の掌の上のことである。俳諧流に言えば「河豚食べて尿瓶と暮らす」ということである。」(生命の詩人 金子兜太)という。

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