https://minamiyoko3734.amebaownd.com/posts/54082343 【イーハトーブとは十八東部】
http://akinokusa.jugem.jp/?eid=72 【切れ字十八字】
俳句で用いる切れ字と云うものがあります。が、私自身よく分かっておりません。俳句で切れ字と言えば「や」「かな」「けり」そんな所しか浮かびません。切れ字十八字というのがあります。が、俳句創作時にすら考えたことすらないといった「ありさま」です。そこで切れ字十八字を取り上げてみることにします。
きれ‐じ【切れ字】《名》
俳句や連歌で、句の切れ目や末尾に置いて詠嘆の意を表し、言い切った形にする語。
「や」「かな」「けり」など。
明鏡国語辞典より (C) Taishukan, 2002-2007
切れ字十八字というのをご存じでしょうか?
きれじ‐じゅうはちじ【切字十八字】 ‥ジフ‥
発句に用いる主要な切字とされた「かな」「もがな」「し」「じ」「や」「らん」「か」「けり」「よ」「ぞ」「つ」「せ」「ず」「れ」「ぬ」「へ」「け」「いかに」の18。このうち「せ」「れ」「へ」「け」は動詞の命令形語尾に当たり、「し」は形容詞語尾を指す。
広辞苑 第六版より (C)2008 株式会社岩波書店
さて、上の下り文句をよく見ると「主要な切れ字」とありますので、まだあるのでしょう。
意外なのは「なり」が切れ字十八字の中に入ってないことです。が、言い切りの「也(なり)」は立派な切れ字でありましょう。
さて、切れ字については、芭蕉が次のような名言をしております。
「切れ字に用ふるときは、(いろは)四十八字皆切れ字なり」
と言って、区切れは切れ字の有無ではなく、内容的なものとしたそうです。
さて、【切れ字十八字】、俳句実作者にとっては下記のほうが、より有益でありましょう。
《切れ字十八字》
◆かな・もがな・ぞ・か・や・よ〈助詞〉
◆けり・ず・じ・ぬ・つ・らむ〈助動詞終止形〉
◆け・せ・へ・れ〈動詞命令形語尾〉
◆し〈形容詞終止形語尾〉
◆いかに〈感動詞・副詞〉
理解しやすい古文 秋山 虔編 文英堂より
さて、俳句では、よく「三段切れ」は良くない。だの「季重なり」は良くない。だのやれ、「決まり・しきたり」の多いものです。めんどうなので、ここでは「三段切れ」「季重なり」論には触れませんが、原則があれば例外もあり。「三段切れ」「季重なり」ゆゑに、味わいが優る句というものもあるものです。これについては、機会を改めて触れてみようかなあとも思います。
さて、切れ字十八字に話を戻します。
「こそ」~「けれ」などの「こそ」も切れ字かと思いますがよく分かりません。「息継ぎ」をするところは、これすなはち切れ字かな?とも思いますが、これもよく分かりません。「三段切れ」などという「慣習・しきたり」があるがゆゑ、(それを回避すべく)ついつい考えてしまうのであります。
切れ字十八字の使用例
【かな】
むめがゝにのつと日の出る山路かな 芭蕉
【もがな】 → 詠嘆願望
子(ね)の日しに都へ行かん友もがな 芭蕉
ひとり行徳利もがもな冬籠 蕪村 「もがも」+な
世の中にさらぬ別れのなくもがな千代もといのる人の子のため 〈伊勢・八四〉
「名詞」+もがな・・・〈~があればなあ〉〈~がいればなあ〉
「名詞以外」+もがな・・・〈~であればなあ〉
「例文」静かにもがな・・・・静かであればなあ。
「がな」 → 詠嘆願望のオトモダチ
┌─→ もがな → もが → もがも → がも
│
がな───┼─→ てしがな → てしが → てしか
│
└─→ にしがな → にしが → にしか
【ぞ】
鈴虫の鳴き明かしたる声ぞよき 片山由美子
【か】
【や】
上五に付くかたち
すゞしさや鐘を離るゝ鐘の声 蕪村
中七に付くかたち
金剛の露ひとつぶや石の上 川端茅舎
句の終わりに付くかたち
夏の月ごゆより出て赤坂や 芭蕉
咳の子のなぞなぞあそびきりもなや 中村汀女 形容詞の「な・し」の語幹用法+「や」
品書きの鱈といふ字のうつくしや 片山由美子
その他に付くかたち
万緑の中や吾子の歯生え初むる 中村草田男
【よ】
月の出よ枯菊のこの賑はひは 岸本尚毅
己が影を踏みもどる児よ夕蜻蛉 富田木歩
泉への道後れゆく安けさよ 石田波郷
【けり】
葉鶏頭母に晩年なかりけり 満田春日
【ず】
曙や蘂を離さず梅ひらく 島谷征良 (連用形) ∴切れ字ではない。二段切れ。
木の葉降りやまずいそぐないそぐなよ 加藤楸邨 (終止形)∴ 切れ字。
【じ】打消推量(意志)
馬方はしらじしぐれの大井川 芭蕉(打消推量・終止形) (・・・ないだろう・・・まい)
冬に負けじ割りてはくらふ獄の飯 秋元不死男(打消意志・終止形)(・・・まい・・・ないつもりだ)
主語が話し手の場合は打消意志(・・・まい・・・ないつもりだ)の意味となります。
【ぬ】
柴漬にまこと消ぬべき小魚かな 高濱虚子 (終止形)
魚籠の中しづかになりぬ月見草 今井聖 (終止形)
【つ】
火の奧に牡丹崩るるさまを見つ 加藤楸邨 (終止形)
此梅に牛も初音と鳴きつべし 芭蕉 (終止形)
【らむ】
鰯雲故郷の竈火いま燃ゆらん 金子兜太(終止形)
【け】
「け」〈動詞命令形語尾〉を検証すると、四段活用のカ行のみ(口語五段活用も同じ)
【せ】
「せ」〈動詞命令形語尾〉を検証すると、四段活用のサ行のみ(口語五段活用も同じ)
【へ】
「へ」〈動詞命令形語尾〉を検証すると、四段活用のハ行のみ
【れ】
「れ」〈動詞命令形語尾〉を検証すると、四段活用のラ行のみ(口語五段活用も同じ)
【し】
物いへば唇寒し穐の風 芭蕉
【いかに】
猿を泣く旅人捨子に秋の風いかに 松尾芭蕉
埋火に問ひぬ八雲の裔いかに 平畑静塔
吹きたまる落葉の墓や吾子いかに 角川源義 『西行の日』
親なしの天国(ハライソ)いかに露の夜 角川源義 『冬の虹』
座席なきねんねこおんぶの客をいかに 富安風生
《参考図書》
理解しやすい古文 秋山 虔編 文英堂
俳句で楽しく文語文法 山西雅子 角川選書
広辞苑 第六版 (C)2008 株式会社岩波書店
明鏡国語辞典 (C) Taishukan, 2002-2007
富井の古典文法をはじめからていねいに 富井健二著 東進ブックス
ベネッセ古語辞典 Benesse
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