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『祝婚歌』 吉野 弘

二人が睦まじくいるためには 愚かでいるほうがいい 立派すぎないほうがいい

立派すぎることは 長持ちしないことだと気付いているほうがいい

完璧をめざさないほうがいい 完璧なんて不自然なことだとうそぶいているほうがいい

二人のうちどちらかが ふざけているほうがいい ずっこけているほうがいい

互いに非難することがあっても 非難できる資格が自分にあったかどうか あとで疑わしくなるほうがいい

正しいことを言うときは 少しひかえめにするほうがいい

正しいことを言うときは 相手を傷つけやすいものだと 気付いているほうがいい

立派でありたいとか 正しくありたいとかいう 無理な緊張には 色目を使わず

ゆったり ゆたかに 光を浴びているほうがいい

健康で 風に吹かれながら 生きていることのなつかしさに ふと胸が熱くなる そんな日があってもいい

そして なぜ胸が熱くなるのか 黙っていても 二人にはわかるのであってほしい

http://poemculturetalk.poemculture.main.jp/?eid=276 【吉野弘 2 祝婚歌】より 

     祝婚歌        吉野  弘

     二人が睦まじくいるためには

     愚かでいるほうがいい

     立派すぎないほうがいい

     立派すぎることは

     長持ちしないことだと気付いているほうがいい

     完璧をめざさないほうがいい

     完璧なんて不自然なことだと

     うそぶいているほうがいい

     二人のうちどちらかが

     ふざけているほうがいい

     ずっこけているほうがいい

     互いに非難することがあっても

     非難できる資格が自分にあったかどうか

     あとで

     疑わしくなるほうがいい

     正しいことを言うときは

     少しひかえめにするほうがいい

     正しいことを言うときは

     相手を傷つけやすいものだと

     気付いているほうがいい

     立派でありたいとか

     正しくありたいとかいう

     無理な緊張には

     色目を使わず

     ゆったり ゆたかに

     光を浴びているほうがいい

     健康で 風に吹かれながら

     生きていることのなつかしさに

     ふと 胸が熱くなる

     そんな日があってもいい

     そして

     なぜ胸が熱くなるのか

     黙っていても

     二人にはわかるのであってほしい

                      詩集『風が吹くと』1977年

作者の姪の結婚式に出席できなかったので、代わりに書かれた詩だそうです。

タイトルが、結婚を祝する歌となっているのは、そのためです。クチコミでかなり広まり、結婚式でこの詩の一節を耳にされた方もおられるのではないでしょうか。

解説は不要でしょう。ゆったりと朗読すれば、詩のエッセンスが無理なく心に沁み込んで来ます。

〈正しいことを言うときは/少しひかえめにするほうがいい/正しいことを言うときは/相手を傷つけやすいものだと/気付いているほうがいい〉とは、年を取ると説教好きになりやすい私自身の自戒の言葉として受け止めています。

結婚式の時だけでなく、夫婦喧嘩の薬にもなるかも知れません。特に、〈互いに非難することがあっても/非難できる資格が自分にあったかどうか/あとで/疑わしくなるほうがいい〉とは、肝に銘じる言葉かも知れません。

詩の終わりで、〈生きていることへのなつかしさに/ふと 胸が熱くなる〉とありますが、この詩を読む読者の胸も、きっと熱く潤っているに違いありません。

なお、この詩にまつわるエピソードがあります。この詩のファンに女性弁護士がおられて、離婚調停の際に、夫婦がどうしても別れたいのかどうかを見極めるため、この詩を読ませるそうです。

そして、少しでも思い直す兆しがあれば、離婚を思いとどまらせるということでした。

この話を聞いて、詩の力はかくも威力があるものかと感心した覚えがあります。

「祝婚歌」は作者の名は知らないが、結婚式で朗読されるのを聞いたことがあると言われるくらい、ポピュラーな作品です。その著作権について、吉野先生の懐ふところの深さを知る対談がありました。

早坂 吉野さんは「祝婚歌」を「民謡みたいなものだ」とおっしゃっているように聞いたんですけど、それはどういう意味ですか。

吉野 民謡というのは、作詞者とか、作曲者がわからなくとも、歌が面白ければ歌ってくれるわけです。だから、私の作者の名前がなくとも、作品を喜んでくれるという意味で、私は知らない間に民謡を一つ書いちゃったなと、そういう感覚なんです。

早坂 いいお話ですね。「祝婚歌」は結婚式場とか、いろんなところからパンフレットに使いたいとか、随分、言って来るでしょう。 ただ、版権や著作権がどうなっているのか、そういうときは何とお答えになるんですか。

吉野 そのときに民謡の説を持ち出すわけです。 民謡というのは、著作権料がいりませんよ。 作者が不明ですからね。こうやって聞いてくださる方は、非常に良心的に聞いてくださるわけですね。だから,そういう著作権料というのは心配はまったく要りませんから....

早坂 どうぞ自由にお使いください。

吉野 そういうふうに答えることにしています。

     早坂茂三『人生の達人たちに学ぶ~渡る世間の裏話』(東洋経済新報社)

http://live-power.cocolog-nifty.com/people/2014/02/post-455e.html 【「祝婚歌」で有名な詩人、吉野弘さんがご逝去されました。】より

先日の日経新聞に、民主党の羽田雄一郎参院幹事長が安倍首相に、「正しいことを言うときは少しひかえめにするほうがいい」という吉野弘さんの「祝婚歌」の一節を紹介した、という記事がありました。まさか国会の場で、この詩が脚光を浴びるとは思いもしませんでしたが、1月15日にご逝去されたとのこと、誠に残念でなりません。「祝婚歌」と、吉野氏に関する各種記事の一部をご紹介させていただきます。

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東京新聞 1月20日 夕刊

「祝婚歌」などの詩で知られる詩人の吉野弘(よしのひろし)さんが十五日、肺炎のため静岡県富士市の自宅で死去した。八十七歳。山形県出身。葬儀・告別式は密葬で行った。喪主は妻喜美子(きみこ)さん。

石油会社に勤める傍ら、川崎洋さんと茨木のり子さんが創刊した詩誌「櫂(かい)」に参加。谷川俊太郎さん、大岡信さんらと交流した。三十代半ばに退社してからは、コピーライターに転じた。

在職中に携わった労働運動体験に根ざした詩を発表。平易な言葉で人々に呼び掛けるような詩は、他者への柔らかいまなざしに満ち、日常にある不条理をすくい取った。

詩集「感傷旅行」で読売文学賞、「自然渋滞」で詩歌文学館賞。「祝婚歌」は結婚式のスピーチなどで読まれた。母校をはじめ校歌や社歌の作詞を手掛けたほか、新聞や雑誌の詩壇の選者を務めた。(写真は一九八二年撮影)

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「祝婚歌」は、よく結婚式などで紹介されますので、ご存知の方も多いとは思いますが、若い方にも是非一度触れてほしいと思い、本文を紹介させていただきます。

 著作権については、早坂茂三氏の著書の中で、下記の通り吉野氏が、「民謡みたいなものだ」というお話をされていますので、甘えさせていただきました。

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早坂 吉野さんは「祝婚歌」を「民謡みたいなものだ」とおっしゃっているように聞いたんですけど、それはどういう意味ですか。

吉野 民謡というのは、作詞者とか、作曲者がわからなくとも、歌が面白ければ歌ってくれるわけです。だから、私の作者の名前がなくとも、作品を喜んでくれるという意味で、私は知らない間に民謡を一つ書いちゃったなと、そういう感覚なんです。

早坂 いいお話ですね。「祝婚歌」は結婚式場とか、いろんなところからパンフレットに使いたいとか、随分、言って来るでしょう。ただ、版権や著作権がどうなっているのか、そういうときは何とお答えになるんですか。

吉野 そのときに民謡の説を持ち出すわけです。 民謡というのは、著作権料がいりませんよ。 作者が不明ですからね。こうやって聞いてくださる方は、非常に良心的に聞いてくださるわけですね。だから,そういう著作権料というのは心配はまったく要りませんから....

早坂 どうぞ自由にお使いください。

吉野 そういうふうに答えることにしています。

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『人生の達人たちに学ぶ~渡る世間の裏話』

  (早坂茂三著:東洋経済新報社刊)より

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前置きが長くなりましたが、本文をどうぞ。

「祝婚歌」(しゅくこんか)

吉野 弘

二人が睦まじくいるためには 愚かでいるほうがいい

立派過ぎないほうがいい

立派過ぎることは 長持ちしないことだと

気づいているほうがいい

完璧をめざさないほうがいい

完璧なんて不自然なことだと うそぶいているほうがいい

二人のうち どちらかが

ふざけているほうがいい ずっこけているほうがいい

互いに非難することがあっても

非難できる資格が自分にあったかどうか

あとで疑わしくなるほうがいい

正しいことを言うときは

少しひかえめにするほうがいい

正しいことを言うときは

相手を傷つけやすいものだと 気づいているほうがいい

立派でありたいとか 正しくありたいとかいう

無理な緊張には色目を使わず

ゆったりゆたかに 光を浴びているほうがいい

健康で風に吹かれながら

生きていることのなつかしさに ふと胸が熱くなる

そんな日があってもいい

そしてなぜ 胸が熱くなるのか

黙っていてもふたりには わかるのであってほしい

                       (以上)

私も結婚してもうすぐ40年になりますが、この詩は今でも新鮮です。

この詩の意味を噛みしめながら、これからも生きていきたいと思っています。吉野氏の永遠の魂に「合掌」。

                        

コズミックホリステック医療・現代靈氣

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