Facebook岡部明美さん投稿記事 ·
【万有引力とは/ひき合う孤独の力である/宇宙はひずんでいる/それ故みんなはもとめ合う】谷川俊太郎さんが21歳の時に出版した処女作の詩集『20億光年の孤独』を20代のはじめ頃に読んだ時、このフレーズに目が釘付けになった。
何よりタイトルにわけもなく惹かれて手に取った詩集だった。「言葉は生命体みたいなもの」
と語る谷川俊太郎さんの紡ぎ出す言葉は、宇宙語も混じり合った万華鏡のような世界だった。
谷川俊太郎さんの詩集を読んでいた20代のはじめ頃の私は、テレビドラマの脚本家のマネジメント会社で経理と脚本家の原稿取りの仕事をしていた時期だった。
向田邦子さんの原稿取りのために青山にある向田さんのマンションに何度も足を運んだ。
当時の向田さんは、脚本の世界ではスーパースターだった。そして後に素晴らしい作家になられた。
ある時、向田さんから「青山のヨックモックの中庭のカフェで待ってて、原稿持っていくから」と言われて待っていた。
カフェに行くと、そこにはなんと谷川俊太郎さんと当時結婚していた3番目の妻の佐野洋子さんが二人でお茶していた。佐野洋子さんといえば、名作『100万回生きたねこ』の著者。
佐野洋子さんとの恋愛が絶頂期の頃、谷川俊太郎さんは『女に』という詩集を出しているがこれは全て佐野洋子さんへのラブレターだ。
あなたがまだこの世にいなかったころ わたしもまだこの世にいなかったけれど
私たちはいっしょに嗅いだ 曇り空を稲妻が走ったときの空気の匂いを
そして知ったのだ いつか突然私たちの出合う日がくると
この世の何の変哲もない街角で一 どっかに行こうと私が言う
どこ行こうかとあなたが言う ここもいいなと私が言う ここでもいいねとあなたが言う
言ってるうちに日が暮れて ここがどこかになっていくー
今思えば、会社や仕事のなんたるかもわからず、ただ与えられた仕事を黙々とやっていた20代はじめ頃のある日のカフェテテラスで谷川俊太郎と佐野洋子と向田邦子という3人の天才語り部を同時に見ていたなんて奇跡のような出来事だったのだなと思う。
「生まれたということ」「生きているということ」「出逢うということ」はそもそもそれ自体が奇跡なのだと語り続けた谷川俊太郎さんが 2024年11月13日に92歳でその生涯を終え旅立たれた。いのちの言葉が凝縮された80冊の詩集をこの世界に残されて。
人生の晩年、谷川俊太郎さんはこんなことを語られていた。
「年を取るということは、若い頃にはマイナスとしてしか捉えられなかったことー一弱さや脆さ、不安や恐れ、肉体の衰えや死などを受容し、人としての心の器が大きくなり成熟していく時期なんです。僕は死ぬことは怖くはありません。次の人生はどんなかなあと楽しみなんです」
今や萩原朔太郎と並び国語の教科書に作品が載る谷川俊太郎さんだが、「私はこれからどう生きていこう」と模索していた40代の頃に「生きる」という詩を改めて読んだ時、若い時に読んだ時とは全く違う感慨を覚えた。
私はこの詩を竹内敏晴さんの竹内レッスンに通っていたメンバーと共に舞台で何度も朗読したのだった。
「生きる」
生きているということ いま生きているということ それはのどがかわくということ
木もれ陽がまぶしいということ ふっと或るメロディを思い出すというということ
くしゃみすること あなたと手をつなぐこと
生きているということ いま生きているということ それはミニスカート
それはプラネタリウム それはヨハン・シュトラウス それはピカソ それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ そして かくされた悪を注意深くこばむこと
生きているということ いま生きているということ 泣けるということ 笑えるということ
怒れるということ 自由ということ
生きているということ いま生きているということ いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ いまぶらんこがゆれているということ
いまいまが過ぎてゆくこと 生きているということ いま生きているということ
鳥ははばたくということ 海はとどろくということ かたつむりははうということ
人は愛するということ あなたの手のぬくみ いのちということ
、、、、、、、、、、、、、、、、、
※佐野洋子さんはオートバイに乗ってヨックモックに来ていました。めちゃカッコ良かったです。
※向田邦子さんはお料理がとても上手でよくご馳走になりました。モテ女でしたが生涯独身でした。飛行機事故で急死された時は会社のみんながパニックになりました。
※カッコいい自立した女性に若い頃に出会えたことは人生の宝物でした。
https://yamaguchi.clinic/blog/e_29414.html 【谷川俊太郎の「二十億光年の孤独」とその深い意味を探る】より
谷川俊太郎の「二十億光年の孤独」とその深い意味を探る
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックの患者の皆さまへ。
この度、詩人・谷川俊太郎さんが遺した作品「二十億光年の孤独」についてお伝えしたいと思います。
詩を通じて感じる孤独や生きる意味は、私たちが病気や困難に直面したとき、心の支えとなるかもしれません。この詩が皆さまの心に響き、新たな視点をもたらすことを願っています。
谷川俊太郎さんの代表的な作品「二十億光年の孤独」は、人間の存在と孤独を宇宙規模で描写した詩です。この詩は、単なる言葉の美しさを超え、読者に深い内省と哲学的な思索を促します。以下に、詩の全文とその解説を詳しく述べていきます。
詩「二十億光年の孤独」全文
二十億光年の孤独 谷川俊太郎
人類は小さな球の上で 眠り起きそして働き ときどき火星に仲間を欲しがったりする
火星人は小さな球の上で 何をしてるか 僕は知らない
(或いは ネリリし キルルし ハララしているか)
しかしときどき地球に仲間を欲しがったりする それはまったくたしかなことだ
万有引力とは ひき合う孤独の力である 宇宙はひずんでいる それ故みんなはもとめ合う
宇宙はどんどん膨らんでゆく それ故みんなは不安である 二十億光年の孤独に
僕は思わずくしゃみをした
詩の意味するところ
「二十億光年の孤独」という詩は、人類が直面する孤独感を宇宙規模で象徴的に描いています。
詩の冒頭で「人類は小さな球の上で」と語られるとき、地球という有限の空間に生きる人間の存在の儚さが描かれています。
眠り、起き、働く日々の営みの中で、人類は時折、火星に仲間を欲しがる。
これは、未知の存在や他者への憧れや孤独感を示唆しています。
続く部分で、「火星人は小さな球の上で何をしてるか 僕は知らない」という表現は、他者の存在や心の中を知ることができないことを表しています。
「ネリリし キルルし ハララしているか」という独特な言葉は、未知の世界や異文化への憧れと、それに伴う不安や想像力の広がりを暗示しているのかもしれません。
「万有引力とは ひき合う孤独の力である」というフレーズは、この詩の中でも特に印象的です。
万有引力という科学的概念を、孤独が互いに引き合う力として捉えることで、物理的な引力と感情的なつながりを重ね合わせています。
人間は孤独であるがゆえに他者を求め、引き寄せ合いながら生きているという、人間の本質を浮き彫りにしています。
「宇宙はひずんでいる それ故みんなはもとめ合う」「宇宙はどんどん膨らんでゆく それ故みんなは不安である」という言葉は、宇宙が膨張し続けている現実を背景に、変化と拡大がもたらす不安を象徴しています。
人間は未知の広がりに直面するとき、より強く互いを求め合い、孤独を埋めようとします。
詩の最後、「二十億光年の孤独に 僕は思わずくしゃみをした」というフレーズは、宇宙規模の途方もない孤独に対して、人間の生理的な反応というユーモラスな描写で締めくくられています。
この一文は、広大な宇宙と人間のちっぽけな存在を対比し、孤独を深刻に捉える一方で、その中にある日常的でシンプルな行動が生きる証であることを示唆しています。
詩の持つ普遍性とメッセージ
「二十億光年の孤独」は、時代を超えて愛される作品です。
人類の孤独感、宇宙の広がり、そしてそこに生きる私たち一人ひとりの存在を見つめ直すことができます。
谷川俊太郎さんの作品は、日常の中に潜む孤独と、その孤独を超えて他者を求める人間の性質を美しく表現し、読み手に深い共感と考察を促します。
谷川俊太郎さんの詩は、これからも私たちの心に生き続け、孤独を感じるときにそっと寄り添ってくれることでしょう。
彼の詩が、私たちの人生を豊かにし、共にある意味を見出せるものとなることを願っています。
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックは、皆さまが病と向き合う中で少しでも心が軽くなり、希望や力を感じられる瞬間が増えることを願っております。
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック 山口裕礼
0コメント