https://tomoko-dziuba.com/blog/mindfulness/2801【マインドフルネス・よくある誤解】より
今回のブログでは、マインドフルネスによくある誤解について書いていきます。これらは私自身がマインドフルネスを知った時、自分で持っていた誤解でもあります。ご参考になれば幸いです。
マインドフルネス瞑想は、心を静め、リラックスするために行う
マインドフルネス瞑想をしている人の写真などを見ると、心を静めている、あるいは心が静まっている状態を楽しんでいるように見えますよね。私も、マインドフルネス瞑想は心を静めるエクササイズなのだと思っていました。もしかしたらこれが一番一般的で、一番大きな誤解かも知れません。
マインドフルネスは「今ここ」に意識を向けることです。今ここで、自分の目の前で、自分の心の中、身体に何が起こっているのかをしっかりと意識しているのがマインドフルな状態。例えば、目の前で自分の深く悲しませることが起こっているとしたら、自分の悲しみを認知し、良い悪いの判断を加えずに受け止めます。もし、心があちこちとさまよい、乱れていたら、それを事実として穏やかに観察します。マインドフルな状態を、よく「目覚めている状態」と言われることもありまが、フィルターが外れた、明晰で優しい心の状態ということもできると思います。
マインドフルネス瞑想は、「今ここ」の状態に気づき、それがどんなことであっても、どんな状態であっても、穏やかに眺める力を培うエクササイズです。瞑想では、
1)「今ここ」から離れ、過去や未来・空想の世界にさまよいだす意識を「今ここ」に連れ戻す
2)心の状態がどんなものであっても、それをあるがままに見る
この2つの力を鍛えます。決して、乱れた心を静めているのではないのです。
日によって、あるいは自分の今置かれた状況によって、心は穏やかだったり激しく波立ったりします。瞑想中は気が散って、集中している対象(例えば呼吸)から意識が何十回と離れ、頭の中で過去に戻ったり未来に飛んだりする時もあります。瞑想中では、そんな心に気づき、その都度意識をやさしく集中対象に戻してあげます。
感情や思考が湧き上がってきたら、「湧き上がってきたこと」「感情や思考があること」を意識します。怒りや喜び、嫉妬や不安、幸福感、どんなものでも、同じ穏やかさと好奇心をもって、しがみつくことも避けることもせず、心の中の出来事として受け止めるのです。
このように心と向き合っていると、落ち着きのない心や荒れ狂う感情がだんだんとゆったりとしてきて、結果的に静まるということもあります。また、呼吸が整い、深くなり、リラックス効果を感じることもあります。しかしそれはあくまでも「その時の結果」であって、目的ではありません。
「瞑想を始めてみたけれど、心が落ち着かないから私にはできない、向いていない」とおっしゃる方は、この誤解をされているケースが多いように見受けられます。瞑想は、今ここの心の状態に気づき、それをあたたかく眺めることです。どんなに心が落ち着かなくても、瞑想はできるのです。
瞑想を続ければ、ネガティブ感情は生まれなくなる
瞑想をすると、「怒りを感じなくなる」「イライラしなくなる」「悲しくなくなる」…等、感情が無くなると思っている方もいらっしゃるかも知れませんが、瞑想を続けても、感情は無くなりません。イライラもするし、落ち込むし、不安にもなります。私は初めてマインドフルネス・ストレス低減法8週間コースに参加した時、受講すれば「不安がなくなる・不安を感じなくなる」と勘違いしていたので、とてもがっかりしたのを覚えています。
何らかの理想・期待がある限り、それにそぐわないことが起こると、不満、怒り、悲しみを感じるのが私たち人間です。マインドフルネス瞑想を続けても、ネガティブ感情の発生を防ぐことはできませんが、それに振り回されることは無くなります。感情が出てきても、怖がらず、逃げることなく、それと向き合って和らげたり、うまく共存できるようになります。
私の例でご説明します。
私は自分の子供に対してとても不安を感じる母親でした。瞑想をしていると、心は過去に戻り、娘が学業で失敗した場面(ブラックアウトや過呼吸)を思い出し、不安が湧き上がります。そうかと思ったら、意識は未来に飛び、「このままだったら、この子はどうなってしまうんだろう」と、そこでも不安な気持ちになります。瞑想中、それが何度も何度も、数えきれないほど起こりました。
上にも書きました通り、瞑想とはこのような心の出来事を観察するエクササイズですので、数えきれないほど自分の不安を見ていくのですが、実践を続けていくうちにだんだんと「自分の不安パターン」が見えてきました。
何が不安を掻き立てるのか
どういう時に不安が出てきやすいのか
不安が出てくると身体はどう反応するのか
等、私の不安の背景や表れ方、不安を呼び起こしやすい状況・条件などがわかってきたのです。同時に、不安を感じる時は意識が過去あるいは未来にあり、現在にないことにも気がつきました。私の場合は「学業成績が良くないと、良い人生は送れない」という固定観念が背景にあり、この固定観念にそぐわないことが起こると強烈な不安を感じていたことがわかりました。そして、不安が強烈であればあるほど、娘への当たりが厳しくなる傾向があることも知りました。また、不安を感じていても、不安を煽るような思い出を引っ張り出したり、ネガティブな空想をしなければ、不安はだんだんとしぼみ、消えていくことも体験しました。これらは、瞑想をしていなかれば、全く気づくことができなかったことばかりです。
今でも時々、不安になることはあります。でも、その不安に気づいたら、「あ、完璧主義がまた出てきた」と認知し、「だから不安に思っているんだね」と受け止め、「でも、未来はまだ真っ白だよね、今までがそうだったから、今度も同じとは限らないよね」と、不安をあおる思考を切ってしまいます。瞑想を通して、感情は餌を与えなければ弱まり、消えていくことを体感しているので、不安に振り回されることなく、心のリセットをしています。
瞑想を続けても、ネガティブ感情は生まれます。でも、ネガティブ感情は怖くないこと、自分を知るための大切な素材だということが理解できるので、優しい心で感情を扱い、共存することができるのです。
マインドフルネス・ストレス低減法8週間コースの開発者であるジョン・カバットジン博士の言葉を借りると、
私たちは波を止めることはできないが、波に乗る方法を学ぶことができる
ということです。乱れる心、ネガティブ感情、どちらも恐れる必要はありませんし、止める必要もありません。マインドフルネス瞑想を使って、サーフィンを楽しむように、心の波とつきあっていきましょう。
https://dhbr.diamond.jp/articles/-/3251 【マインドフルネスは、無意識下の偏見を減らす
by ニコール・トーレス】より
他者への偏見はしばしば、明示的な態度に表れなくても無意識下に潜在するものだ。この意図せぬ偏見が、マインドフルネス(目の前の瞬間に意識を集中させること)によって軽減されることが実験で示された。
マインドフルネスについて、研究者たちの関心は尽きないようだ。マインドフルネスは創造性や集中力の高まり、ストレスの軽減、作業記憶(ワーキングメモリー:複雑な認知作業を遂行するために、短期的に情報を記憶するプロセス)の向上、他者への思いやりの深まりなどと関連することが、さまざまな研究で明らかになっている。そして新しい研究では、無意識下の偏見を克服するうえでもマインドフルネスが有効なことがわかってきた。
『ソーシャルサイコロジー・アンド・パーソナリティサイエンス』に掲載された論文によれば、人が潜在的に持っている偏見と、それに起因するネガティブな振る舞いは、マインドフルネス瞑想によって抑制できるという(英語論文)。
マインドフルネスの定義はさまざまだが、煎じ詰めれば「その瞬間に起きていることに意識を集中させる」ことであり、自動操縦(無意識的な行動)とは対照的な状態を指す。「今、この時」に集中することで思慮深く行動でき、過去に形成されてきた連想に基づく無意識的な判断に流されにくくなる。
これまでの研究でも、マインドフルネスによって無意識的な情報処理が減り、偏見に基づく振る舞いが少なくなることがわかっている。しかしセントラル・ミシガン大学のアダム・ルーキーとブライアン・ギブソンはそれに加えて、マインドフルネスが潜在的な偏見も抑制することを発見した。人の潜在的態度(implicit attitudes)は無意識下の連想に基づいており、それが振る舞いに及ぼす影響は意外なほど大きい。たとえ平等主義を標榜し差別に否定的であっても、実際の他者への評価や扱いは往々にして、無意識下の情報処理に影響を受けてしまうのだ。
ルーキーとギブソンによれば、マインドフルネスのエクササイズに10分間耳を傾けたグループは、そうしなかったグループと比べ、人種と年齢に関する潜在的連想テスト(IAT)で偏見の度合いが少なかったという。偏見そのものについては意識していなかったにもかかわらずである。
実験では、研究の意図を知らされていない72人の白人の大学生を被験者とした。実験群には、自分の心拍と呼吸を意識させるような音声を聞いてもらった。それは感覚や思考を「抑制や抵抗、判断をすることなく」受け入れる(マインドフルになる)ように促すものだった。対照群には、歴史に関する音声に10分間耳を傾けてもらった。その後、両グループに人種と年齢に関する潜在的連想テストを実施。黒人と白人の顔の写真を見せ、ポジティブな言葉とネガティブな言葉のいずれかに結びつけてもらい、その反応時間を調べた。続いて高齢者と若者の顔の写真で同様のことを行った。
その結果、マインドフルネスを体験したグループは、対照群よりも人種と年齢への潜在的偏見が少ないことがわかった。理由の1つは、ネガティブな連想(黒人=悪い、高齢=悪い、など)を無意識に発動する傾向が低かったためだ。この結果は、マインドフルネスによって過去に形成されてきた連想への依存度が下がるという従来の研究とも一致している。しかし、研究者らは別の発見に驚かされた。マインドフルなグループは対照群と比べて、顔の違いを明確に認識できなかったのだ。ここから示唆されるのは、黒人や老人の顔を無意識に「悪い」に結びつける頻度が少ない状態では、人種や年齢を明確に識別しなくなるということだ。
マインドフルになるだけで潜在的偏見を抑制でき、ネガティブな連想を弱められるとすれば、それはさまざまな悪影響を防ぐためにも役立つだろう。事実、潜在的な外集団バイアス(自分が属さない他の集団を否定的に見ること)があると、シミュレーションで黒人の容疑者を射殺する頻度が増えたり、テレビゲームで攻撃的になったりするという研究もある。
潜在的態度は顕在的態度よりも、職場におけるネガティブな振る舞いの予兆となる。たとえば採用時の差別的な判断や、外集団のメンバーへの不信や敵対的なしぐさなどは、潜在的態度にすでに色濃く表れている。
ルーキーの説明によれば、「潜在的偏見が強い人の傾向として、偏見の対象と距離を置き、アイコンタクトをあまりせず、そわそわしたり、返事が素っ気なかったりする。そして不快感を言葉ではなく動作で示す」。しかも、偏見のないコミュニケーションを取りたいと意識している場合でも生じてしまう。
それでは、マインドフルネスを高めるにはどうすればよいのだろうか。ルーキーが言うように、仕事中でもそれ以外でも、私たちは無関係のことを考えていることが多々ある。やることリストを思い出してみたり、昨晩のデートをふり返ったり、テレビドラマ『ウォーキング・デッド』のハチャメチャな展開について熟考したり、今日の夕飯のメニューを思案したりする。さまよえる思考を沈め、集中を取り戻すには練習が必要だ。しかし多忙な人でも、いつどこででも目の前の瞬間に集中できる初歩的な方法はある(「会議中でもマインドフルになれる2つの簡単なテクニック」を参照)。
人の判断やとっさの反応は、過去の経験に影響を受けている。そのことを私たちは十分に理解しておらず、気づきさえしないこともある。肝心なのは、この事実を受け入れて過去の連想に依存しない方法を見つけることだ。
HBR.ORG原文:Mindfulness Mitigates Biases You May Not Know You Have December 24, 2014
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