https://seiza.imagestyle.biz/sinwa/hakuchou.shtml 【はくちょう座の神話・伝説】より
はくちょう座は、大神・ゼウスが姿を変えた白鳥がモデルだと言われています。
この絵では、白鳥の後には光が輝いていて、白鳥がゼウスということを暗示しています
白鳥に姿を変えた大神・ゼウス
白鳥座は、夏から秋にかけて天頂辺りに見ることができる星座で、大きな十字が目に付く、端正な星座です。
この十字は「北十字星」と呼ばれていて、白鳥の尾のところには、一等星・デネブが輝いています。
デネブはこと座のベガ、わし座のアルタイルと共に、「夏の大三角形」と呼ばれる大きな二等辺三角形を形作っています。
はくちょう座は、大きく羽根を広げて飛んでいる白鳥の姿を表していますが、この星座は、ギリシャ時代には「はくちょう座」とも「とり座」とも呼ばれていたと言われています。
紀元前1200年頃には既に知られていた古い星座で、ギリシャ神話では、大神・ゼウスが変身した姿だと伝えられています。
さて、大神・ゼウスはいつも美しいものに惹かれてしまうのですが、この時はスパルタの王・テュンダレオスの妃・レダに惹かれてしまいます。
レダは、その美しさには並ぶものがないと言われているほどの大変美しい女性で、大神・ゼウスもその虜になってしまいます。
ある日、レダは侍女たちと一緒に宮殿近くの泉に出かけていきます。
そして、侍女たちを見張りにあたらせ、裸身となって水浴びをはじめます。
天上からこれを認めたゼウスは、その美しさに魅せられ、一羽の美しい白鳥に姿を変えて、レダのいる泉へと舞い降りていきます。
泉に舞い降りた白鳥を見つけたレダは、それがゼウスの化身とも知らず、美しい白鳥だとばかり、やさしく抱き寄せてしまいます。
この白鳥の姿が、夜空に輝くはくちょう座として描かれていると伝えられていますが、夏の星座であるわし座もゼウスが変身した姿だと伝えられています。
しかし、この時は、女性も羨む美しい少年、ガニメドをさらって行ったときの鷲の姿が描かれています。
これとは対照的に、レダに思いを寄せたゼウスが白鳥の姿に変身するのは、実に神話的ではないかと思います。
ところで、神話によると、レダはその後、大きな卵をふたつ産むことになります。
そして、ひとつの卵からは双子の兄弟、カストルとポルックスが生まれますが、この二人がふたご座になっていることは、皆さんもよくご存知だと思います。
もうひとつの卵からは双子の姉妹が誕生し、ひとりはトロイのヘレン、もうひとりはクリュテムメストラという、いずれも美しい女性が誕生します。
クリュテムメストラは、後にトロイ戦争の時のギリシャ軍の総大将・アガメムノンの妻となりますが、アガメムノンが出陣している時に、夫を謀殺する悪女として伝えられています。
また、この白鳥は、琴の名手・オルフェウス(オルペウス)とも、ゼウスの怒りにふれてエリダヌス川(エリダヌス座)に落ちたパエトンを探し回る友人・キュクノスとも言われています。
パエトンは太陽神・アポロン(ヘリオス)の息子で、ある日、アポロンが乗る太陽の馬車を借りて天空を駆けますが、うまく馬車を操ることができず、最後にはゼウスの稲妻に打たれ、馬車と共にエリダヌス川に落ちていったと言われています。
この時、川に落ちたパエトンを探し回る友人のキュクノスを、アポロンが天に上げて、はくちょう座にしたとも言われています。
一方、琴の名手・オルフェウスは、美しい妻・エウリディケが亡くなった後、悲嘆のうちに生涯を終えますが、その才能を惜しんで、音楽の神でもあるアポロンが星座にしたとも伝えられています。
なるほど、はくちょう座の隣には、こと座がありますが、この琴はオルフェウスが使っていた琴だと言われています。
https://mclife.xtools.info/stars/1848/ 【はくちょう座〜夏の大三角、北十字、アルビレオそしてパエトーン】より
今日は、夏の夜空に翼を広げる、はくちょう座についてのお話です。
はくちょう座は、とても形が整っていて美しい星座です。
比較的明るい星も多いですから、夜空の明るい市街地ちかくであっても、きっと見つけることができますよ。
探し方もかなり簡単です。夏の星座探しの目印になるのは、夏の大三角。
この大きな三角形が見つかれば、もうはくちょう座は見つかったも同然なんです。
【動画版】夏の夜空に翼を広げる「はくちょう座」〜探し方と神話〜
ではさっそく、夏の大三角から見つけていきましょう。
今の時期、夏の大三角はほぼ天頂、つまり空の真上ちかくにきています。
夜の8〜9時前後、真上を見上げると、とっても明るい星が三つ、大きな三角形をつくっているのがすぐわかります。
まず、ひときわ目立つのが「こと座のベガ」、七夕の織姫の星です。
いま仮に、南を向いてから真上を見上げているとすると、ベガから見て左下のほうにあるのが「わし座のアルタイル」これが彦星です。
夏の大三角の、どの角がどの星なのかは、「長いほうの三角定規」に見立てるのが個人的におすすめの方法です。
厳密には直角三角形ではありませんが、ぱっと見、結構似ているんですよ。
そういう見たてをすると、三つの角のうち、直角の角にあたるのが、織り姫のベガ、長い角にあたるのが彦星のアルタイルです。
そして、今日お話するはくちょう座は残る一つの星が起点になります。
三角定規で言えば、直角でも、長い方でもない角、ここにあるのがデネブという星。
ここが、はくちょう座の基点です。
デネブとは、アラビア語で「尾」という意味、つまりここが白鳥の尾羽にあたります。
デネブから、夏の大三角の内側にむかって、白鳥の胴体が伸びています。
先端にある星が「アルビレオ」といって、ここが白鳥の「くちばし」にあたります。
そして、デネブの左右に、大きな翼がひろがっています。
はくちょう座の探し方
←はくちょう座の探し方
(gifアニメーション)クリックで拡大します。
夜空の暗いところであれば、夏の大三角の中を天の川がながれているのが見えるはず。
そして、天の川をバックに、長い首をまっすぐ伸ばして翼を広げて羽ばたく白鳥の姿。
ごく自然に想像できることと思います。
かたちも美しくて、たいへん印象的な星座です。
SENRYU – stock.adobe.com
https://stock.adobe.com/jp/contributor/207565904/senryu?load_type=author&prev_url=detail
また、夜空の明るい場所であっても、この星座のメインの部分…ここは十文字がたをしているんですが、夏の大三角の内側にのびる十文字、見分けることができると思います。ぜひ探してみてください。
この十文字の部分は古くから「翼を広げた大きな鳥の姿」に見立てられてきましたが、ちょうど十字架のような形になっていることから、南十字(みなみじゅうじ(サザンクロス))に対して北十字(ノーザンクロス)とも呼ばれています。
はくちょう座は夏の夜空を代表する星座ではあるんですけれども、じつは見えている期間がとても長いんです。同じく夏を代表するさそり座などは、南の空をさっと通り過ぎて、やがてみえなくなってしまいますが、はくちょう座はクリスマスの頃まで見えています。
その頃には、夕方から宵の口にかけての西の空にいて、沈んでいこうとしているところですが、このころのはくちょう座は地平線に立つ大きな十字架のように見えるんです。
これもぜひ覚えておいてくださいね。
ところで、はくちょう座には、望遠鏡か双眼鏡をのぞく機会があったらぜひご覧いただきたい星があるんです。それは、はくちょうのくちばしにあたる星、アルビレオ。
この星、肉眼では一つの星にしか見えませんが、望遠鏡か双眼鏡で見ると、二つの星が寄り添った、二重星であることがわかります。
片方が黄色い星、もう片方が青い星、この二つの星の色のコントラストがとってもきれいなんです。
その美しさは、「北天の宝石」とも呼ばれていて、夜空で最も美しい2重星といわれることがあるくらいです。
Albireo through an 8″ telescope, camera Canon EOS 550D, ISO speed ratings 1600,
exposure time 8 sec. Topoignaz, CC BY-SA 4., via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Albireo_through_Celestron_C8.jpg
海や山にお出かけの機会があったら、ぜひ、双眼鏡をおもちいただくことをおすすめします。
オペラグラスでもいいんですよ。
日中、遠くの景色を見るのにももちろんいいですし、夜、双眼鏡ごしに星空を見ると、肉眼ではみえない細かい星がいっぱい見えてくるんです。
また、このアルビレオのようにきれいな色をした星を見つけることもできます。
おすすめですよ!
さて、はくちょう座は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に、とても印象的な姿で登場します。
ジョバンニとカムパネルラの二人がのった列車は「銀河ステーション」を出発すると、天の川に沿って立つ白い十字架を車窓からみます。
つまりこれが北十字(ノーザンクロス)ですね。
そして「白鳥の停車場」に停まります。
その次に登場するのがアルビレオ。
アルビレオは、天の川の中にある、水の早さをはかる観測所であるとされていて、その美しさはトパーズの黄色とサファイアの青に例えられています。
「銀河鉄道の夜」で「アルビレオ観測所」の登場するくだりはこんなかんじです。
『窓の外の、まるで花火でいっぱいのような、あまの川のまん中に、黒い大きな建物が四棟ばかり立って、その一つの平屋根の上に、眼もさめるような、青宝玉(サファイア)と黄玉(トパース)の大きな二つのすきとおった球が、輪になってしずかにくるくるとまわっていました。』
いかがでしょうか。「北天の宝石」アルビレオ、ホントに、機会がありましたらぜひご覧になっていただきたい星なんです。
ではいつものように、はくちょう座にまつわる物語をご紹介していきます。
さて、はくちょう座の物語です。
まず有名なのが、神々の王ゼウスの変身したすがたであるというお話。
昔、ギリシャ南部にスパルタという国があり、この国の王様にはレダというお妃がいました。
彼女はたぐいまれなる美女として知られていました。
気の多いゼウス、例によってその美しさに魅了されて、なんとかレダをものにしたいと考えます。
一計を案じたゼウスは愛の女神アフロディーテに協力を頼みます。
ゼウスは自分の姿を白鳥に変え、アフロディーテには鷲に化けてもらってスパルタに向かいました。
白鳥のゼウスは、レダが宮殿の窓辺にいるのを確かめると、彼女の見ている前で、アフロディーテの化けた鷲に、わざと追い回されはじめます。
その様子を見ていたレダは白鳥をかわいそうに思い、腕を広げて白鳥を呼びよせました。
助けを求めてなついてくる美しい白鳥にレダはつい気を許してしまい、ゼウスはまんまとその想いを遂げることができたのです。
フィリッポ・ファルシアトーレ『レダと白鳥』
フィリッポ・ファルシアトーレ『レダと白鳥』
“‘Leda and swan’ by Filippo Falciatore (information 1718-1768) – Duca di Martina Museum at Villa Floridiana in Naples” by Carlo Raso is marked with CC PDM 1.0
このゼウスが変身した白鳥の姿が星座になったと言われています。
その後、レダは卵を2つ生み落とします。
この卵からは、この後の神話世界を彩る人物たちが生まれることになるのですが、そのお話はあらためてご紹介するとしまして、この、美しいレダと白鳥、またはレダと卵、というモチーフは彫刻や絵画などの題材としても好まれて、たくさんの作品が残っていますから、ご覧になったことあるかも知れませんね。
ギュスターヴ・モローによる『レダ』
ギュスターヴ・モローによる『レダ』
“Leda” by Gustave Moreau, Public domain, via Wikimedia Commons
はくちょう座の物語は、この、ゼウスが変身した白鳥のお話が最も有名ですが、実はもうひとつ、悲しい物語があります。
太陽の神アポロンにパエトーンという息子がいました。
人間界で暮らすパエトーン。
自分の父親は太陽の神アポロンであると教えられて育ち、それをとても誇りに思っていました。
ですが、友人たちは誰ひとり、信じてくれません。
パエトーンはそれを確かめるためにアポロンの宮殿を訪ねました。
アポロンはパエトーンを暖かく迎えると、彼が自分の息子であることを認め、その証拠に、願いを1つ何でも叶えてやろうと約束しました。
するとパエトーンは、ともだちに自分がアポロンの息子であることを証明するために、太陽の馬車を操縦しているところを見せてやりたい、と頼みました。
『アポロに太陽の馬車を願うパエトーン』
『アポロに太陽の馬車を願うパエトーン』
Phaeton vraagt Apollo om de zonnewagen, Nicolas Perelle, naar Nicolas Poussin, 1641 – 1695, Public domain, via The Rijksmuseum (the national museum of the Netherlands)
アポロンはたいそう困りました。
とういうのも、太陽の馬車を曳く馬はひどく気性が荒くて、アポロン以外では操ることが難しかったからです。
ですが、約束を破るわけにもいかず、しかたなくアポロンは、十分に気をつけるよう言い含めて、パエトーンに太陽の馬車を操縦させることにしました。
パエトーンの操る馬車は、さっそうと大空へ飛び出して行きます。
はじめは順調に進むかに見えました。そのため、パエトーンはしだいに緊張がゆるんできて、馬車を操っている姿を早く友人達に見せたくなりました。
そこで彼は急に手綱を引くと、本来の通り道をそれて、自分の街へ向かったんです。
この急な進路変更で、馬たちは手綱を取っているのがアポロンでないと気づきます。
その途端、馬たちは暴れだし、空を滅茶苦茶に走りはじめてしまいます。
『太陽神の馬車上のパエトーン』
『太陽神の馬車上のパエトーン』
“Phaeton in the Chariot of the Sun God” Godfried Maes, Public domain, via Wikimedia Commons
太陽の馬車が近づいたものはすべて炎に焼かれてしまいます。
たちまち、多くの森や街が燃え上がりました。
それを天から見ていたゼウスは、やむを得ず、雷の矢で馬車を撃ち落とします。
パエトーンが馬車もろとも落ちたのは、エリダヌス川という大きな川。
パエトーンと馬車は、そのまま川の底へ沈んでいきました。
ルーベンス『パエトーンの墜落』
ルーベンス『パエトーンの墜落』
“The Fall of Phaeton” Peter Paul Rubens, Public domain, via Wikimedia Commons
その様子を地上から見ていたのが、パエトーンの親友、キュクノスです。
キュクノスは、自分がパエトーンを信用しなかったことをひどく後悔して、エリダヌス川に落ちたパエトーンのなきがらを必死で探しました。
ゼウスはいつまでも川の中を探し続ける少年の姿に哀れを感じ、少しでも探しやすいようにと、その姿を白鳥に変えました。
このキュクノスがのちに天に昇って、はくちょう座になったといいます。
そして、パエトーンを探すために、今も天の川の中に首を入れているのだ、と言います。
さあ、あなたはどちらの物語に、想像力をかきたてられますか。
美しい白鳥に姿をかえて絶世の美女レダのもとへ忍んだゼウス、そして彼女がうんだ二つの卵。
あるいは、悲運の死を遂げた親友のなきがらを、白鳥の姿になって今も探しつづける少年キュクノス。
いかがでしょう。そんなお話を思い浮かべながら、晴れた夜には、星をみあげてみませんか。
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