https://www.nhk.or.jp/matsuyama/mamoru/haiku-04.html 【命を見つめた俳句 - その命、守る。見つめる。】より
全国各地から寄せられた「命を見つめた俳句」。俳句に込められた思いも合わせて一部ご紹介します。
入選の知らせトマトに一番花
初めて種から育てたミニトマト。植え替えのタイミングは、一番花が咲いたとき。
それを待ち続けて三ヶ月!ようやく一番花が咲いた日、入選の知らせがあり、嬉しい一日となりました。 小池令香/60代/埼玉県川越市
草むらに動かぬ蜥蜴愛しく思ふ
久しぶりに、庭の片隅で蜥蜴を見つけました。爬虫類の嫌いな私でも、その静かな佇まいに魅入ってしまいました。 ゆうゆう/70代/松山市
砂浴びの雀は嬉嬉と梅雨の晴
雀は体に着いた寄生虫を落とすために砂浴びをします。梅雨の晴れ間が続いて地面が乾くと体全体で穴を掘り羽根をバタバタさせて砂浴びをしたり、穴にすっぽり入って日光浴しています。 藻羅/60代/松山市
理科室に心音ひびく夏の空
小6です。今、理科で人体について学習していて、とてもおもしろいです。その時に、みんなで自分の心臓の音を聴きました。「ドック、ドック」と力強い音で、「生きてる!」と感じました。 桑原美咲/~10代以下/松山市
饗庭野に迫撃砲や沖縄忌
沖縄忌の6/23、滋賀県の饗庭野(あいばの)で迫撃砲の事故がありました。沖縄忌、原爆忌、終戦記念日、コロナ禍…。平和なしに命は語れないと痛感してます。 近江菫花/50代/滋賀県大津市
孫の仕草祖父の面影写し出す
孫を見ているとどことなく祖父の面影が見えてきてやっぱり繋がっているなあと思います。
りらこ/50代/今治市
ウミガメの流るる涙夏の月
前園真聖さんの徳島県美波町にて、孵化したばかりの子亀がただひたすら波に向かう一途な姿とそれを見守る人達に感動。亀の生態環境も厳しくなっています。 ココちゃん/60代/八幡浜市
防護服何回分の汗光る 菊池洋勝/栃木県宇都宮市
草引けば生きる覚悟の音ばかり あいだだなえ/60代/四国中央市
君死にたまふことなかれ今さら君へ夏あざみ
白桜忌でふとふと歌を思い出した。戦死した父、この一月死んだ夫へ出た言葉です。
松本 だりあ/70代/今治市
点滴や氷柱重なり雫おる
入院している人を看病しながら窓の外に視線を向けると、軒先に伸びた氷柱の滴と点滴が重なり、氷柱は熱で溶けての一滴で、かたや点滴は命をつなぐ一滴。どちらも一滴に力を感じながら詠みました。 渡部幸雄/60代/松山市
つい父にもとめかけたる桜餅
88歳で父を亡くしてから6年がたちました。亡くなってからしばらくは、おいしそうな菓子など見かけると「父に買って帰ってやろうか」などと考えている自分に気がつくことがしばしばありました。 松田夜市/60代/松前町
舗装路を蚯蚓ひたすら伸び縮み 和田 恒夫/新居浜市
寒卵割れば心臓めくかけら
滋養満点という寒卵。割ってみると、小さな肉の塊のようなものを見つけた。これは卵が命になりかけていた証拠。その命に感謝しつつ、塊を除いてからいただく。 久我恒子/60代/栃木県宇都宮市
陽光の強さ夏野菜の強さ かつたろー。/40代/広島県福山市
虹見つけ詠むことそれは生きること
私にとって、俳句を始めるきっかけとなったのが、10年ほど前に参加させていただいた番組「それいけ!俳句キッズ」でした。大学生になった今もずっと詠み続けています。
坂本梨帆/20代/松山市
夏至前日急な幕引き母逝きぬ 修治/60代/八幡浜市
子へ孫へ命つなげ夏の果
祖母が先日急逝致しました。満93の大往生だと思いたいです。そして、6月頭には亡き祖母からしてひ孫が産まれました。嬉しげにひ孫を抱く祖母の顔が忘れられません。 猫雪すあま/20代/八幡浜市
娘(こ)は母に命のバトン星月夜
孫が生まれてババとなった歓びの一句です。 みかりん/伊方町
逝きてなほ兎の鼓動吾に遺る
ペットの兎は11年も元気で私たちを励ましてくれました。亡くなって随分になりますが、今も見守ってくれます。
https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/review/20190202-OYT8T50153/ 【語り継ぐいのちの俳句 高野ムツオ著】より
大災害を「写実」する
評・宮部みゆき(作家)
昨年、著者の高野ムツオさんとお話しする機会に恵まれた際、俳句のスタートは「写実」であり、目指すゴールもまた「写実」だという言葉を聞かせていただいた。見たまま、聴いたまま、感じたままを十七文字で表す俳句の世界はシンプルでいて奥深く、思い立ったら誰でもすぐに創作を始めることができる身近な文芸である。しかし、その「見て聴いて感じる」日常が、未曽有の大災害によって破壊されてしまったときにはどうすればいい? 俳人は何を見て何を聴き、何を心の拠より所どころにして詠句し得るのだろうか。
本書には、「二百メートル手前まで津波が来た」宮城県在住の高野さんが東日本大震災後の日常を詠んだ「震災詠一〇〇句」の自解を中心に、あの震災に直面した多くの詠み人たちの作品が紹介されている。胸を突かれ、心に残る句を挙げていけばきりがない。
春の海髪一本も見つからぬ
瓦礫がれきがれきあまりに白し夏の雲
開くたび墓標が見える揚花火
津波より残りし島の芽吹かな
俳句はもともと、「時や場を共有している限られた人々の、限られた時空で成立してきた」。そして「肩書も財もない庶民の詩であった」。それゆえに、この大災害のなかからも多くの言葉を抽出し得たのである。
震災当日は仙台駅にいた高野さんは、自宅まで約十三キロの道程を歩いて帰る間にこんな句を詠んだ。
地震の闇百足むかでとなりて歩むべし
「俳句を作ることで不安を振り払っていた」けれど、津波に押し流されひっくり返った何台もの車を見たら、「頭から俳句はすっかり吹っ飛んでいました」。それでも、この句はその夜の暗さと恐ろしさを封じ込めたまま毅然きぜんとしてここにある。
豊かな四季と自然の美に恵まれ、だからこそと言うにはあまりにも辛つらいほど自然災害の多い我が国に、世界でもっとも短い詩形が広く愛好されていることの意味を噛かみしめながらページを繰った。
◇たかの・むつお=1947年宮城県生まれ。俳人。2014年、句集『萬の翅』で読売文学賞、蛇笏賞などを受賞。
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