Facebook・今野 哲男さん投稿記事·
ある必要があって、石川啄木の「時代閉塞の現状」を再読した。驚いた。
「一読三嘆」という古い言い方があるけれど、まさにそういう感じだった。100年以上前の1910年(大逆事件の年である)に書かれたこの小論の、まるで現代を語るかのような憤りの鋭さと、優等生ではなかったがゆえに表出し得た、この国と青年たちの「未来」に関する青年・啄木の熱く叫ぶような真情に、ガツンとすっかりやられてしまった。
人々の苦難をいいことに、真摯な人たちに紛れて、したり顔で自説を披露する自己中まがいの薄っぺらい輩が少なくない中で、彼の視点が持つずばり本質を突くわかりやすさが、とても新鮮で若々しく感じられたのだ。
「時代閉塞の現況」は、以下で読むことができます。
https://aozora.binb.jp/reader/main.html?cid=814
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2011/05/post-293.php 【「時代閉塞の現状」を考える】より
震災よりはるか以前から「閉塞感」という言葉がよく聞かれますが、震災後2カ月を経た現在も、エネルギー政策や復興計画がまとまらない現状を表現するならば、やはりそこには「閉塞」という言葉が当てはまってしまうように思われます。そもそもこの「閉塞感」という言葉のルーツですが、今から一世紀前の1910年に石川啄木が書いた「時代閉塞の現状」という短いエッセイに遡ることができると思います。幸徳事件から日韓併合に進む明治末年の「強権政治」に対して啄木が危機感を綴った書という評価が一般的ですが、肝心の「閉塞感」についていえば、100年後の現在とはかなりトーンが違います。
例えば啄木は「我々日本の青年はいまだかつてかの強権に対して何らの確執をも醸したことがないのである。したがって国家が我々にとって怨敵となるべき機会もいまだかつてなかったのである。」と述べて、明治維新以来、強権的な国権論に対して若者が異議申し立てをしたことはなかったと断罪しています。
啄木の結論は明快です。「いっさいの空想を峻拒して、そこに残るただ一つの真実ーーー『必要』! これじつに我々が未来に向って求むべきいっさいである。(中略)必要は最も確実なる理想である。」この「必要」に根ざした要求に未来をかけるというのは、精神論から物質中心へ、自然主義から社会主義への移行が必要だということをハッキリ述べているわけです。
24歳の啄木は何に憤っていたのでしょう? 強権に対抗して若者に希望を抱かせるためには、物質的な要求を掲げていわば「権力闘争をすればいい」のに、多くの若者は人生や社会の苦悩そのものを描くリアリズムに逃避して「自然主義文学」などに走っている、啄木の嘆きはそこにありました。
啄木の結論は正しかったのでしょうか? 歴史の語るところはむしろ否定的です。例えば、日本で戦前に社会主義革命が発生すれば、やがてロシアや中国からの支配を受ける関係になり、新たな強権政治を生んだでしょうし、仮に20世紀の後半に民主化革命が起きたとしても、現在の東欧がそうであるように試行錯誤が続いた可能性があると思います。
では、強権に流されながら「遅れてきた帝国主義」の道を突っ走った20世紀初頭の日本の進路は、破綻という結果も含めて不可避だったのでしょうか? そうとも言えないと思います。歴史に "if" は禁物かもしれませんが、国際的な通商システムの黎明期に当たって、軽工業の生産性に注力しながら開発独裁から開かれた社会へのソフトランディングは全く不可能であったとは思えないのです。
厳しいことをいえば、30年後の大破綻に至った責任は啄木の側にもあるのです。「閉塞感」と言いながら、啄木の思想というのは社会主義革命という政治的な立場を打ち立てて「強権」と対抗することで、社会を対立と分裂の方向性に煽っただけだと思うからです。一方の立場に立つことで仮に弾圧を受けるにしても自分なりに思想の一貫性を疑わずに済んだ、その中で敗北しつつあることを「閉塞感」と言っているだけです。これは現在の「閉塞感」とは全く次元が違うように思われます。
例えば原発の問題が典型的です。
今回の浜岡をめぐる経緯を見ても分かるように、原発の反対論と推進論は互いに「丁々発止」議論を戦わせる状況にはありません。反対論の根拠は、政府の権力や大企業への不信であり、核の軍事利用の歴史への強い拒否感が平和利用にまで押し出している感覚であり、その結果としての「目に見えない放射線」への全面的な拒絶の感覚です。一方で推進論や現状維持論の根拠は、核にあるのは経済合理性であり、確率論とコスト計算でリスクに対処しようというアプローチが中心というわけで、そもそも議論にならないのです。
勿論、この両者はお互いを相当に嫌っているし、お互いを敵だと思っています。それだけなら、啄木の時代の「強権か社会主義か」という対立と構図は変わりません。ですが、問題はそう単純ではないように思います。例えば、反対論の側でも、エネルギーの需給が社会にとって死活問題だということは理解しています。一方で、原発の維持論者の側も反対派の持つ「原発依存から少しでも抜けたい」という覚悟の強さを全く無視もできないでいるわけです。
つまり、原発については反対派も維持派もお互いのことは分かっているし、お互いの立場を全否定しているのでもないのです。かと言って思い切った妥協の用意や、相手の立場を誠心誠意聞くというわけでもありません。そんな中、何かを決めようとしてもなかなか合意形成ができない(飯館の問題、夏場の電力需給の問題など)一方で、浜岡のように先に結論を持ってきても他の問題との整合性が取れずに苦しんでいるわけです。
もっと言うなら、原発はイヤだが極端に貧しくなるのも怖いというジレンマを世論は抱えており、そのために金縛りになっているという指摘もできるように思います。震災の前から引きずっている「脱産業社会ヘ進むしか成長の可能性はないが、格差の拡大はイヤ」というジレンマもこれに重なっています。現在の日本の「閉塞感」というのは、そうした複雑さの中にあるのでしょう。
この閉塞感からどうやって脱してゆくのか? そのためには選択可能な複数のオプションを社会が一体となって考えて、実務的な対立軸に基づいた論争を経て決定へと持ってゆく、そうした手間のかかるプロセスをやってゆくしかないのだと思います。その大変さは正にコストなのですが、同時に社会が成熟していることの証明でもあります。
手間のかかるプロセスをキチンと踏むためには、論理性とパッションが必要ですが、もしかしたら、リーダーシップの中に、その論理性とパッションが感じられない、それが閉塞感を深刻にしているのかもしれません。今回浮上しつつある東電救済案が改めて注目されます。
https://www.counselor.or.jp/covid19/covid19column2/tabid/507/Default.aspx
【ストレス予防の観点からのコロナウイルス予防と対処法】より
様々な情報が溢れかえって、どう対応していいか分からず、不安になっている日々だと思います。恐怖や不安を感じるのはとても自然な感情です。感染がどんどん広がって先が見えないこと、対処する薬がまだ見つからず死に至る可能性があること、生活がどんどん委縮していくことを考えれば不安に駆られるのは自然なことです。ここでは、ストレス予防が専門のカウンセラーの立場から、いくつかのポイントを考えてみました。
1.予防のために冷静にできることをしっかりする
具体的には、手洗い、うがい、マスク。感染の可能性が高い場所や人ごみは避ける。生活リズムを整える。
しっかり睡眠をとり程よい運動をする。ストレスをためない。
2.反応するのではなく対応する。
不安や恐怖は自然な感情ですが、必要以上に過剰に心配すると、その感情自体が心身にダメージを与える可能性が あります。コロナウイルスというストレッサーに自動的に反応するのではなく、冷静に対応する必要があります。
3.万が一感染しても、すぐに回復する人と重症化する人との違いは免疫力にあるといわれています。
免疫力アップのためにできることを日常的にする必要があります。
以上のことからストレス予防の考えと対処法がここでも役に立ちそうです。
コロナウイルスのストレスを予防し、不安や恐怖をコントロールする方法
自分で自分のストレスや不安をコントロールし、ストレスと付き合う力(過剰ストレスを予防、過剰ストレスを適正ストレスに)を身につける必要があります。とやかく悩んで心配ばかりすると脳が慢性疲労になり、うつや不安障害につながるので、できることはした上で、とやかく心配しない方法とも言えます。
<方法>
1. 1分間の呼吸数(往復で1回)を計測
平均13~15回。18回以上は多い(現在も緊張、不安状態)。普通に呼吸している状態で10回以下になるのが目標。
2. 簡易版筋弛緩法
1)肩をおもいきり耳まで上げ力を入れたまま10秒保持。意識的に緊張を感じる。ストンと一気に力を抜く。
ぼんやりと意識を首・肩に向け、緩む感じを味わう。
2)手を組み頭の後ろ、両肘を前に出す。手の平と頭の後ろでおもいきり力を入れる。
背骨にも力を入れる。10秒保持。意識的に緊張を感じる。ストンと一気に力を抜く。
ぼんやりと意識を首・肩・背骨に向け、緩む感じを味わう。
3)両手は前にならえの姿勢で前に伸ばし、両足も床から離し真っすぐ水平に伸ばす。
手首、足首を顔の方に思いきり力を入れて曲げる。
何も考えられないぐらい思いきり全身に力を入れたまま10秒力を入れ続ける。
一気にストンと力を抜き、しばらく全身が緩むのを感じる
3.首回し
目をつぶったまま、口をポカンとあけ、首を前後左右自由にぐるぐる回す(2分程度)。
(首の後ろにリラックスに関係する副交感神経が集まっているので)
4.イメージ呼吸
1)口を小さくあけ、ため息をつくように、少しずつゆっくり長く10秒ぐらいかけ息を吐く。
途中からお腹を両手で少し押し身体を前傾させる。
吐く息とともに、今気になっている不安や恐怖などがすべて身体の外に出て行き、頭も身体も空っぽですっきりするようにイメージする。
2)吐き切ったら、手を緩め、鼻から3秒ぐらいかけて息を吸う。
前傾した身体を起こし胸を開きながら行う(肩はリラックス)。
空っぽになった身体に、元気で温かいエネルギーが頭と足から入ってくるようにイメージする。
3)2秒だけ息を止める。元気で温かいエネルギーが全身に満ちるようイメージ。
4)5分から10分、1~3を繰り返す。
5.呼吸法を忘れ、今の自然な状態で呼吸し、再度1分間の呼吸数(往復で1回)を計測。呼吸数の変化をチェック
6.自律訓練法
1)手を膝の上に乗せる。
2)ぼんやりと意識を手の平と足の裏に置き、それらの感触を感じる。
3)それらの感触を感じながら「気持ちがとても落ち着いている。
両腕・両足が重くて温かい、重くて温かい」と2~3分繰り返す。
7.しばらくリラックスしながら、自分の好きなイメージを思い浮かべる
(海や山などの景色や、小さい頃の幸せだったシーン)。
8.自分に今必要な勇気付けの言葉を3~5回つぶやく。
「なにがあっても大丈夫、免疫力アップで大丈夫」など。
不安、恐怖と距離を取る方法
まずは自分の中に起こるありとあらゆる思考・感情に気づき、ジャッジしないで受け入れます。すると、自分と問題との間に距離が取れて、問題に巻き込まれたり圧倒されたりしなくなります。
そして、自分の思いや気持ちは、本当の自分ではなく、浮かんでは消えていく流れのような、あくまでも自分の一部、あるいは小さな自分と考えます。
脳という身体の一部分が過去のネガティブな記憶や条件づけられた自己イメージに自動的に反応している状態ともいえるからです。
自分の脳の中で起こっているあらゆる反応を観察し意識している自分が、<本当の自分>と考えるのです。
そうすれば、「ウイルスが怖い、どうしよう、どうしよう」という思いや気持ち=小さな自分を認めてあげることで距離がとれ、圧倒されなくなるのです。
つまり、私とは「悩んでいる人」ではなく「悩みを観察している人」という考え方です。
このセオリーが身につくのが観察者セラピーとマインドフルネス法です。
<観察者セラピー>
1)座るか横になるかして、何回か深呼吸しリラックスする
2)自分の前を川が流れているとイメージする
3)自分は川のほとりで、川を静かに眺めているとイメージする
4)内部に思いや感情が湧いてきたら、それらが目の前の川の中を流れていくようイメージする(小さな葉っぱに乗せてもいい)
<マインドフルネス法>
1) 背筋をまっすぐにしてリラックスする
2) 自分の身体の内部を感じる。皮膚で包まれている身体の内部全体を感じ続ける
3) 呼吸を意識する。吸う息、吐く息に伴って動くお腹へ気づきを向ける。お腹が膨らんだ時に「ふくらみ」縮んだ時に「チヂミ」とつぶやいてもいい。雑念に気を取られたのに気づいたら「雑念、戻る」とつぶやいてお腹への意識に戻る。雑念や感情をジャッジしないで気づいて戻るだけ。10分~20分
4) ある程度落ち着いてきたら、気づきを拡げていく。呼吸に気づきを向けながら全身の感覚をも含めていく。そうすることでより広い範囲への気づきが持てるようになる。全身の感覚に気づきを向けて、全身で呼吸しているかのように、呼吸をたどる。さまざまな思いや感情が湧いてきたら気づいて、そっとしておいて、身体の内部全体を感じ続ける
<皮膚を厚くする>
統合失調症のクライエントに効果があった対処法です。
彼は街中に行くと周りからの悪意ウイルスが自分の中に入ってくるように感じられて、恐怖を感じると訴えていました。
彼に上記のマインドフルネス法を教えた後で、街中に行くときには自分の皮膚を厚くして鎧のようにイメージして、
自分の内部がしっかり守られている感覚を感じるよう教えたところ、効果がありました。
コロナウイルスへの予防にも使えると思います。イメージや身体感覚が得意な人はぜひ試してみてください。
最後に、もちろん一人で不安や恐怖を抱えないで家族や友人と語り合うことが何より重要です。
不安や恐怖は表現されることで緩和されます。語り合う中で予防法も試してみてください。
一般社団法人日本産業カウンセラー協会
シニア産業カウンセラー・ 協会スーパーバイザー 大澤昇
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ストレス予防の観点からのコロナウイルス予防と対処法
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