https://geopark.jp/geopark/chokaitobishima/ 【鳥海山・飛島ジオパーク】 より
概要
鳥海山と飛島
山形県・秋田県にまたがる活火山「鳥海山」と、鳥海山の西方約30kmにある「不思議の島 飛島」を含む「鳥海山・飛島ジオパーク」は2016年に日本ジオパークに認定されました。「日本海と大地がつくる水と命の循環」をテーマに、鳥海山の溶岩と岩なだれによって作り出された景観や日本海と鳥海山が生み出す水の恵みを感じられるほか、飛島の大地の歴史と文化を楽しめる「海」と「山」、「島」のジオパークです。
秀峰 鳥海山
鳥海山と九十九島
鳥海山は標高2,236m、東北で2番目の高さを誇り、また山頂から日本海の海抜0mまでの距離が約16kmと近い事が特徴です。約60万年前に活動を始め、たくさんの溶岩の層が積み重なってできています。大陸からの季節風は、日本海対馬海流の水蒸気をたくさん吸い上げ、鳥海山に吹き付け、大量の雪を降らせます。雨水や雪は溶岩の層に染み込み、山麓や海岸等に湧き水となって人々の暮らしに恵みを与えています。
不思議の島 飛島
飛島は日本海の中を南北に伸びる海底山脈のてっぺんにあたります。今から1,000万年以上の大昔に海底の火山から吹き出した噴出物が積み重なり、後にそれが盛り上がりながら波や風雨に削られてできた島です。飛島のいたるところで、大地と海の営みによってできた地形や風景をみることができます。
南と北の動植物が同居する特徴的な生態系、海を生業とする人々によって培われた漁村の生活や文化も見どころです。
飛島
主な見どころ・おすすめジオサイト
■法体(ほったい)の滝
法体の滝は、子吉川の支流「上玉田川」にある高さ約57mの滝で、上流から一の滝、二の滝、三の滝と呼ばれ、鳥海山を源流にもつ滝の中で唯一、鳥海山に対面している珍しい滝となっています。
法体の滝は鳥海山から出た、厚さが50m以上もある1枚の溶岩でできており、約10万年前の噴火で流れでた「法体溶岩」が上玉田川をせき止めて、その上から水が一気に流れ落ちています。
三の滝の周りには溶岩が冷やされてできる「柱状節理」が見られ、一の滝、二の滝の下には溶岩が削られてできた「甌穴(ポットホール)」があり、直径30cmから2m以上のものまで存在します。
■桑ノ木台(くわのきだい)湿原
鳥海山北部の標高690mに位置し、岩なだれ堆積地の平坦面に発達した自然度が高い低層湿原です。
6月中旬には、白い小さな綿帽子を茎の先につけたワタスゲや、オレンジ色の花をつけたレンゲツツジが群生し、草花が生えている下の地面はコケにおおわれます。ほかにも様々な植物が生息し、山野草の豊かな色あいが楽しめます。
インターネットなどで資源風景が広く紹介されたこともあり、入り込み者が急増し踏圧によって荒廃する現状でしたが、行政や地元の自然保護団体が湿原の保護対策に関する検討を行い、現在では木道整備や通行規制など行っています。
■九十九島(くじゅうくしま)
九十九島は、にかほ市象潟町の水田地帯を中心に百あまりの島々が点在する独特の風景です。かつては一帯が潟湖であり、島々が湖に浮かぶ趣き深い景勝地でした。俳人・松尾芭蕉の「おくのほそ道」紀行の最北の地でもありました。
九十九島の島々は紀元前466年に鳥海山が大きく崩れた時の土砂です。その土砂は現在の象潟地域に数分で流れてきて日本海まで達し、点々と島があるような風景となりました。やがて砂洲ができ、海水と淡水の混じり合った湖ができました。
1804年の象潟地震で2mほど地面が隆起し、湖の水はすべて海に流れ、現在の風景が出来上がりました。
■中島台・獅子ヶ鼻湿原(なかじまだい・ししがはなしつげん)
鳥海山麓北側に位置する「中島台レクリエーションの森」は、厳しい自然の中を生き抜いたブナの巨木が群生する森で、その中に、大量の湧水によってできた「獅子ヶ鼻湿原」が存在します(面積約26ha)。溶岩から湧き出す水の温度は年中7~8度と低く、酸性が強いため、世界的にも珍しいコケ類が生息しています。
また、独特な樹形をしたブナの群生も見どころです。その象徴的存在が、ブナの巨木「あがりこ大王」。樹齢300年、幹周り7.62mの巨木です。
■釜磯の湧水(かまいそのゆうすい)
鳥海山・飛島ジオパークの魅力のひとつに、溶岩がもたらす豊富な湧き水があります。鳥海山西麓では約10万年前に噴出した吹浦溶岩とそれを覆う約3000年前に噴出した猿穴溶岩が日本海に向かって流れ下っています。そして溶岩の「ガサガサ」の部分にためこまれた水は湧水となり、地表に「ぽこぽこ」と湧き出しています。
釜磯海岸では砂浜や岩場のすき間からふき出す大量の湧水を見ることができます。湧水は沖合の海底でも大量に湧きだしていることが調査により明らかにされていて、天然岩ガキなどの豊かな海産資源を育む環境をつくっているともいわれています。
■牛渡川(うしわたりがわ)
牛渡川は、鳥海山から流れ出た溶岩の側面に沿って流れる清流で、川を流れる水のほぼすべてが湧き水です。その量は毎分24トン(1日約3万トン!)ともいわれています。
湧き水を利用した鮭の孵化事業が行われていて、牛渡川で誕生した鮭は海で4年間成長したのち、ふたたびこの川に戻ってきます。毎年秋から冬にかけての時期になると、大量の鮭が遡上する姿をみることができます。
また、バイカモ(梅花藻)やカジカ類をはじめ特徴的な動植物が生息し、湧き水がつくりだした水環境のもと、多様な生態系が広がっています。
■玉簾(たますだれ)の滝
「玉簾の滝」で見られる岩石は、約1500万年前にできたといわれています。
滝つぼまで一気に流れ落ちる滝の落差は約63mで、山形県内一の高さです。
およそ1500万前、東北地方のほとんどはまだ深い海の底でした。そこでは活発な海底火山の活動によって、信じられないくらいの量のマグマが溶岩となって噴出していました。日本海に浮かぶ飛島を含め、東北地方の日本海側にはこの時代の噴火活動によってできた岩石や地層が多く残っています。鳥海山の土台となっている出羽丘陵や、飛島の地層の多くは、ともに海の底でできたことがわかっています。
■庄内砂丘(しょうないさきゅう)
約8,000 年前、鳥海山麓と加茂台地の間に砂州が発達し、それに堰き止められる形で砂丘が形成されました。その後、潟湖が陸地化し砂州が発達して庄内砂丘となったとされています。
1,000 年前ころまでは広葉樹を主とした天然林が広がっていたといわれています。開墾で木が切られ、飛砂・洪水が発生するようになったため、江戸時代から植林が始められました。戦争や雪害で失われたこともあり、現在も植林が行われています。また、スイカやメロン、大根を栽培する砂丘畑としても利用されています。
■御積島(おしゃくじま)
飛島の西方約1kmに位置する小島で、鳥海国定公園の特別保護地区の一部となっています。粘り気の強い流紋岩でできていて、標高が77mと飛島本島(標高67m)より高い島です。北側に口をあけた海蝕洞窟の内部は黄金の龍鱗の岩肌が見られ、ふるくより龍神の住む聖地として島民や船乗りの篤い信仰を集めてきました。
内部の龍鱗状の岩壁は島の崖上で繁殖するウミネコのリン成分の沈殿よってできたものと考えられていいます。御積島は、ジオ・自然・文化が交錯するジオサイトとなっています
■勝浦港(かつうらこう)と北前船文化
飛島南部の館岩、百合島、柏木山、海岸遊歩道沿いには1,000万年以上前に噴出した火山岩が見られます。館岩は約40メートルの高さがあり、粘り気の強いマグマが固まった巨大な流紋岩の塊で、鉄の成分を多く含むためやや赤みがかっています。
館岩のてっぺんは平坦で、周囲には石垣がめぐらされ、人の手で溝が彫られた謎の石板もあります。自然の地形を利用した中世以前の砦跡とも考えられています。
島の南東にせり出した館岩は波風から船を守る天然の良港となる地形をつくり、明治の中頃まで日本海を往来する多くの北前船が飛島に寄港しました。
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