http://nihon.syoukoukai.com/modules/stories/index.php?lid=1420 【三つの山】より
演出:こはなわためお 文芸:沖島勲 美術:古宮陽子 作画:こはなわためお( 新潟県 )
あらすじ
昔、ある村にこんな言い伝えがあった。林を抜けた一本道の先に深い谷があり、その向こうに三つの山がある。そして、その三つの山を越えれば宝の山があるのだと。しかし、今まで宝の山を目指して帰って来た者は、誰一人としていなかった。
この話を古老から聞いた清六(せいろく)という若者が、贅沢(ぜいたく)な暮らしを夢見て宝の山へと向かった。すると、一つ目の山の入り口で見慣れぬ老人に出会う。老人は清六に、宝の山に行きたくば、決して後ろを振り返ってはいけないと忠告する。
清六は険しい山道を登り、一番目の山の頂上に立つ。すると突然目の前に火の手が上がり、辺りは山火事になった。清六は、逃げようと思わず後ろを振り返ってしまった。すると清六の体は石になってしまい、谷底に落ちていった。
次は良助という若者が宝の山に挑んだ。良助は山火事の中、火を笠で防ぎ、なんとか二番目の山の上までやって来た。ところがこの先は針の原が広がっている。良助がどうしたものかと思案している所に、大蛇が襲いかかって来る。ここで良助も恐ろしさのあまり後ろを振り向いて、石になってしまう。
さて、ここに一郎太(いちろうた)という若者がいた。一郎太は、わずかばかりの畑を耕し、食べる物にも事欠く暮らしだった。そこで一郎太は、村を捨てる覚悟で宝の山に挑む決心をした。
一郎太も一番目の山を越え、二番目の山の上にやって来た。ここで一郎太は、襲いかかる大蛇を鍬(くわ)で倒した。すると大蛇は針の原の上に倒れ、大蛇の死体は三番目の山へと続く道となった。
三番目の山の上では巨大な虎が現れ、一郎太の行く手をふさいだ。しかし、さすがにこの虎には全く歯がたたない。そこで一郎太は、一か八か虎の口の中に飛び込んでみた。すると不思議なことに、虎の体の中には、なんとも美しい山里が広がっていた。
山里には山の入り口で出会った老人がおり、見事三つの山を越えた一郎太の望みを叶えると言う。そこで一郎太は、ずっとここで暮すことを望み、その後この豊かな山里で一生幸せに暮らしたということだ。
http://tobe-snufkin.hatenablog.jp/entry/2018/01/16/231207 【神話「絶対に後ろを振り返っちゃだめだよ」】 より
「絶対に後ろを振り返っちゃだめだよ」
昔話でもよく耳にするフレーズですが、神話にもちょいちょい登場します。
集めてみました。
旧約聖書、創世記の第19章。
振り返ってしまったロトの妻は、「塩の柱」になってしまいます。
夜が明けて、み使たちはロトを促して言った。「立って、ここにいるあなたの妻とふたりの娘とを連れ出しなさい。そうしなければ、あなたもこの町の不義のために滅ぼされるでしょう」。彼はためらっていたが、主は彼にあわれみを施されたので、かのふたりは彼の手と、その妻の手と、ふたりの娘の手を取って連れ出し、町の外に置いた。彼らを外に連れ出した時そのひとりは言った、「のがれて、自分の命を救いなさい。うしろをふりかえって見てはならない。低地にはどこにも立ち止まってはならない。山にのがれなさい。そうしなければ、あなたは滅びます」。ロトは彼らに言った、「わが主よ、どうか、そうさせないでください。しもべはすでにあなたの前に恵みを得ました。あなたはわたしの命を救って、大いなるいつくしみを施されました。しかしわたしは山まではのがれる事ができません。災が身に追い迫ってわたしは死ぬでしょう。あの町をごらんなさい。逃げていくのに近く、また小さい町です。どうかわたしをそこにのがれさせてください。それは小さいではありませんか。そうすればわたしの命は助かるでしょう」。み使は彼に言った、「わたしはこの事でもあなたの願いをいれて、あなたの言うその町は滅ぼしません。急いでそこへのがれなさい。あなたがそこに着くまでは、わたしは何事もすることができません」。これによって、その町の名はゾアルと呼ばれた。ロトがゾアルに着いた時、日は地の上にのぼった。
主は硫黄と火とを主の所すなわち天からソドムとゴモラの上に降らせて、これらの町と、すべての低地と、その町々のすべての住民と、その地にはえている物を、ことごとく滅ぼされた。しかしロトの妻はうしろを顧みたので塩の柱になった。
(続く)
ギリシャ神話、オルフェウス
美しく哀しい話ですね。私たち日本人よりも圧倒的にロマンチストな人種の土壌を感じます。
「エウリュデケがいなくては僕は生きていけない。そうだ!死者の国に行ってそこの王に頼みあの人を返してもらおう」
そう決心するとオルフェウスは竪琴をとって太陽が沈む方角にあるという『死者の国』に向かって歩き始めた。
どこまでもどこまでも歩いて行くとやがて黒い大きな門の前に着いた。門には太い閂が掛かっていて開けられないようになっている。そこには太陽の光もとどかず、霧が立ち込めていて薄気味悪いところだった。
門の前には頭が三つある化け物のように大きい一匹の犬が番をしていた。一面の闇の中でその犬の六つの目だけがメラメラと炎のように光っていた。
オルフェウスが近づくと犬は三つの頭をもたげ、三つの口を大きく開き歯を剥き出しにしてすさまじい声でオルフェウスに吠え、今にも飛びかかろうとする。
そこでオルフェウスは竪琴を肩から下ろすと静かに引き始めた。すると犬はだんだんおとなしくなってしまいには彼の足元でうっとりと眠ってしまった。その上、彼が歌を歌い始めるとその歌声に門の閂までも外れ、ひとりでに大きく開いた。
オルフェウスは喜びいさんでその道をどこまでも進んでいった。
進んでいくととうとう『死の国』ハデス王の城に着いた。
御殿の前には番兵が立っていてオルフェウスを追いかえそうとしたが、再びかれが竪琴をひくと番兵もうっとりして役目を忘れてしまい、彼を通してしまった。
そのまま大広間へ入っていくとハデス王がすさまじい声で叫んだ。
「貴様は何者だ!また何の用があってここへ来た!ここへは死んでからでなくてはこられないということを知らないのか!二度と外へ出られないようにくさりにつないで牢に入れるぞ!」
オルフェウスは黙ったまま竪琴をとると、美しい音色をかきたて、美しい声をふるわせて静かに歌いだした。その歌を聞いているうちにハデス王の怒りもだんだんおさまっていきました。やがて、おだやかな顔になるとハデス王は言った。
「お前は美しい音楽ですっかり私を喜ばせてくれた。こんないい気持ちになったのは生まれてはじめてだ。どういう願いがあってここにきたのか言ってみろ。いい気分にしてくれた礼にどんな願いでも一つだけ叶えてやろう。なにか願いがなくては死なないさきにこんなところへくるものはいないからな。」
「ありがとうございます。では申し上げますが、王よ、どうか私のエウリュデケを返してください。もう一度私と地上で暮らさせてください。」
そうオルフェウスは頼んだ。
この願いを聞いてハデス王は暫く苦い顔をして悩んでいたが最後にはうなずいて言った。
「お前はあんなに素晴らしい歌をうたってくれたのだからその無理な願いも叶えてやろう。安心して地上に戻るがいい。エウリュデケはお前の後からついてゆく。」
そこからさらに念をおすかのように付け加えた。
「但し、ことわっておくが、あの女が地上に着くまで、お前は決して後ろを振り返ってはならぬ。もし、振りかえったなら、あの女はたちまちまたこの死の国に引き戻されてしまうだろう。そうなったら私にもどうすることもできなくなってしまうのだからな。」
オルフェウスは喜びで満ち溢れていた。地上に向かうその前に一目だけエウリュデケを見たいと思ったが王にそう言われたので地上に出るまで決して振り返らないと約束するしかなかった。
こうしてオルフェウスはハデス王の城を後にした。あの暗い門をぬける時も犬はもはや吠えなかった。王が許したからではなく、この門を入った者が出てくるはずはなかったからだ。
オルフェウスは何度も振り返って後をついてきているであろうエウリュデケを見たいと思ったが王との約束を思い、必死で我慢して、どんどん道を進んでいった。ようやく生きた人間の国に近づいてきたのか一筋の光がさしてきた。ちょうど太陽が海から昇る時間だったようで空はみるみるうちに明るくなってきた。
ここまで来ればもう大丈夫と、オルフェウスはもう辛抱しきれなくなって後ろを振り向いた・・・振り向いてしまった。
悲しい事にその時まだ、エウリュデケはまだ人間の国まで来ていなかった。
(・・・・・・あの女が地上に着くまでは決して後ろを振り向いてはならぬ・・・・・・)
彼の目にはなんだか青白い人の顔のようなものが見え、優しい妻の声のようなものが聞こえただけですべては霧のように消え去ってしまった。
「オルフェウス!あなたはどうして振りかえったの。どんなに私はあなたを愛し、あなたとまた一緒に暮らせる事を喜んでいたことか。でもわたしはもうひきかえさなくては・・・・・あなたは王との約束を破ったのですから。」
霧が消える時にエウリュデケの声がそう言ったように聞こえて消えた。
(続く)
日本神話
前述したオルフェウスと同じシチュエーションのはずなのですが、おちがww
イザナミが亡くなってからしばらくの間、イザナギは一人で悲しんでいましたが、どうしてもがまんすることができなくなりました。そこで、死者の国まで妻をむかえに行こうと思いたちました。死者の国は、黄泉(よみ)の国といって、深い地の底にあるのです。
イザナギは、地の底へと続く長い暗い道を下りて行きました。ようやく黄泉の国に着くと、イザナギはとびらの前に立ち、イザナミに、自分といっしょに地上へ帰ってくれるよう、優しく呼びかけました。
「ああ、愛する妻よ、私とおまえの国造りは、まだ終わっていないのだよ。どうかいっしょに帰っておくれ」
ところが中からは、イザナミの悲しそうな声が帰ってきました。
「どうしてもっと早く来てくれなかったの。私は、もう黄泉の国の食べ物を食べてしまいました。ですから、地上へはもどれないのです。けれども愛するあなたのためですから、地上へ帰ってもよいかどうか、黄泉の国の神様にたずねてみましょう。それまで、私の姿を決してのぞかないでくださいね」
そう言われて、イナザギはじっと待っていましたが、いつまでたっても妻からは返事がありません。とうとう待ちくたびれたイザナギは、小さな火をともして、妻を探すために黄泉の国へと入っていったのです。
黄泉の国は、どこまでも真っ暗なやみが続いています。うす暗い灯りをもって、目をこらしていたイザナギは、思わず「あっ」とさけんで立ちつくしました。何とそこには、くさりかけてうじ虫がいっぱいたかっている、イザナミの体が横たわっていたのです。おまけにその体には、おそろしい雷神(らいじん)たちがとりついています。
「あれほどのぞかないでと言ったのに、あなたは私にはじをかかせましたね」
自分のみにくい姿をのぞかれてしまったイザナミは、かみの毛を逆立ててすさまじくおこりました。
「イザナギをつかまえて、殺しておしまい」
イザナミがそう命令するや、黄泉醜女(よもつしこめ)という悪霊(あくりょう)たちが、イザナギをつかまえようと、あちらからもこちらからもわき出るように現れました。
イザナギは地上へ続く黄泉平坂(よもつひらさか)に向かって、必死ににげました。イザナミと黄泉醜女たちは、すさまじい勢いでせまってきます。イザナギはけんめいに走りながら、かみに結んでいたかざりを放り投げました。するとかみかざりからはたちまち野ブドウの木が育って、たくさんの実がなりました。それを見た黄泉醜女たちは立ち止まって、実を食べ始めましたので、そのすきに、イザナギはどんどん走りました。けれどもしばらくすると、また悪霊たちが追いついてきます。イザナギは、こんどはかみにさしていたくしを放り投げました。すると、そこからはたけのこが次々に生え、黄泉醜女たちはまた立ち止まって、食べ始めました。
こうしてけんめいににげるイザナギの行く手に、ようやく地上の世界が見えてきました。しかし黄泉醜女たちは群れをなして追いついてきます。イザナギは片手に持った剣を後手にふり回して防ぎながら、ようやく坂のふもとまでたどり着くと、そこに生えていた桃(もも)の木になっていた実を三つもぎとって、黄泉醜女たちに投げつけました。すると、桃の実がもっている不思議な霊力(れいりょく)におそれをなした黄泉醜女たちは、みんなにげ散ってしまいました。
けれどもイザナミは、まだ恐ろしい顔でせまってきます。ついにイザナギは、黄泉平坂に、千人がかりでないと動かせないような大岩を引っ張ってきて、それで黄泉の国と地上の世界の間をふさいでしまったのです。
追いかけてきたイザナミは、岩の向こうから大声でさけびました。
「これからは、あなたの国の人を、一日に千人ずつ殺しますからね」
「それならば、地上では一日に千五百人ずつ子供が生まれるようにするよ」
イザナギは答えました。
こうして二人は別れ別れになり、地上の世界と黄泉の国とは、永久に行き来できない石のとびらでふさがれてしまったのです。けれどそれからというもの、亡くなる人よりも生まれる人の方が多くなり、地上の人は次第に増えるようになったのだそうです。
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