俳句「古池や蛙飛び込む水の音」―虚実のコードによる俳句の解釈

https://land.toss-online.com/lesson/aahfihofrw4e42cn 【俳句「古池や蛙飛び込む水の音」―虚実のコードによる俳句の解釈】 より

芭蕉の俳句の中で、切れ字「や」を上五音で用いる俳句は「虚と実」を解釈コードとして用いることができる。

「古池や蛙飛び込む水の音」は、「蛙が古池に飛び込んでいる」のではなく、

「蛙が水に飛び込んだ(と思える)音」を聞いて「古池」の清閑さを思い浮かべたのである。

指示 . 1

自分のリズムで読んでごらんなさい。

発問 . 1

(指名音読のあと)

どこで区切って読みましたか。

(そこで区切った理由を説明させる。多くは上5音で切る。

切れ字「や」の授業を経験していない学級の場合は次の発問2と発問3をする。)

発問 . 2

話者は何に感動したのですか。

(「水の音」)と「古池」に分れる。

発問 . 3

次の2つはどのように違いますか。

「古池に蛙飛び込む水の音」 (俳句の初めから終わりまで切れ目なく続く。感動の中心は「水の音」になる)

「古池や蛙飛び込む水の音」 (「古池や」でいったん切れる。感動の中心は「古池や」になる)

発問 . 4

季語は何ですか。(蛙 … 春)

説明 . 1

春になると蛙が目覚めて鳴き始めます。だから「蛙」は春の季語なのですね。

このことからわかるように蛙は鳴き声を詠むのが、それまでの俳句(江戸時代は発句)では当たり前だったのです。

「蛙鳴いたる」ならば江戸時代の常識の通り。

それを芭蕉はまず「蛙飛んだる」にしました。

「鳴く蛙」を「飛ぶ蛙」に変えたのです。

これだけでも当時としては「発句の改革」だったのです。

しかし、芭蕉の改革はこれだけではありませんでした。

発問 . 5

次の2つはどう違いますか。

「蛙飛んだる水の音」  (跳んだ瞬間がまず見えて、着水まで間が空く)

「蛙飛び込む水の音」  (跳んだ瞬間は眼中になく、着水の瞬間の音だけがある。このほうが「水の音」が強調される。)

(次のように聞いてもよい)

飛んだ瞬間が見えているのはどちらですか。

発問 . 6

ところで、

蛙が水に飛び込むのはどんなときですか。

(農村部の子どもならば、田んぼの近くを歩いた時、畦にいた蛙が次々と飛び込むことをおもいだすはずだ。

 ここから、「敵に追われた時」を導き出す。

そのような経験がない子どもには、蛙が水に飛び込む画像を見せる。

動画がよい。インターネット接続ができる環境があるならば‘flog jump‘等で画像検索するとよい。)

発問 . 7

蛙が水の飛び込むのは敵に「追われた」時だけですか。

逆はありませんか。

(狩りをするとき。蛙は肉食動物である。口に入る大きさの餌ならば丸のみにする。これも動画が見せられるとよい。

 ダイナミックさに驚くだろう)

説明 . 2

このように、蛙は「食うか食われるか」の世界でたくましく生きている肉食動物なのです。

「弱肉強食」の世界です。

ところでこの俳句は

下の句「蛙飛び込む水の音」が先にできたと言われています。

そして上の句をどうするかを芭蕉はお弟子さんたちと考えました。

発問 . 8

「蛙飛びこむ水の音」を「弱肉強食」と考えて先生が作った句を紹介します。

「弱肉や蛙飛び込む水の音」

感想を自由にどうぞ。

発問 . 9

弟子の一人が「これでどうか」と考えた句がこれです。

「山吹や蛙飛び込む水の音」 (山吹の黄色い花の画像とカジカガエルの画像を提示する)

当時、「鳴く蛙」と「山吹の花」を「取り合わせる」ことが一般的だったのです。

でも、芭蕉はこの案を採用しませんでした。どうしてだと思いますか。お隣と話し合ってごらんなさい。

説明 . 3

芭蕉は、中国の漢詩から「虚と実」の技法を学んでいたんだと思います。

実際に話者の前に存在する「実像」と

話者の頭の中で思い描いた「虚像」を組み合わせる技法です。

芭蕉は、最初に作った下の句「蛙飛び込む水の音」を「実」とします。

そして、「虚」としての「古池や」を

「取り合わせる」ことを考えついたのだと思います。

指示 . 2

この俳句の情景を想像しながら、読んでごらんなさい。

説明 . 4

芭蕉は優れた自然観察の目をもっていた人です。

「蛙飛び込む水の音」が「必死に生きる蛙」の姿を現していることに気が付いていたはずです。

でも、それを「弱肉や」と「取り合わせる」ことをしたら、

「自然を説明する」だけになる、

それでは、芸術として面白くない。

 芭蕉ならば、そのように考えたと先生は思います。

発問 . 10

話者はどこにいますか。

(「古池の近く」

 ※「虚実」のコードから考えると「古池」は虚像なのだが、ここではそのままにしておき、

   授業の後半で再度発問する)

発問 . 11

話者は古池の近くにいるのですか。

※「古池や」を「虚」とすると、古池は話者のいる場所とは別の場所となる。

 しかし、「古池」が「実」で「蛙飛び込む水の音」の方が「虚」だという解釈もできる。

 ここは、それぞれの子どもに任せてよい。

 また、私のクラスでは、「古池」も「蛙」も「虚」で

 「水の音」のみが「実」という解釈もあった。

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