facebook相田 公弘【人生の食卓】
ひろさちや氏の心に響く言葉より…わたしは豆と芋が嫌いである。
子どものころ、親類の家で豆と魚を出され、嫌いな豆を片付けたあと、ゆっくり魚を食べようと思った。ところが叔母が、「そんなに好きなんだったら…」と、もう一杯おかわりの豆を入れてくれたのには往生した。それ以来、好きな物から食べることにしている。
それはともかく、曹洞宗の現代の名僧であった沢木興道の言葉に、「全部いただく。選(え)り食いはせぬ」がある。なかなかいい言葉だ。わたしにはちょっと耳が痛いが…。
しかし、沢木老師はたんに偏食について言われたのではない。
お分かりであろうが、これは人生の生き方についての言葉なのである。
人生の食卓には、いろんなご馳走が出てくる。好物もあれば、嫌いな物も出てくる。
ご馳走ばかりとはかぎらない。粗末な食事が供されることだってある。
わたしたちはこの人生において客である。客だと考えたほうがいい。
なかなか、自分の思い通りには生きられないからである。
客だとすれば、わたしたちは出された食事を、あれこれ選り好みしないで全部いただかねばならない。
注文をつけることは、客の分際をわきまえていないことになる。
そう、逆境になれば、逆境の人生をしっかり生きればいいのである。
まあ、ほとけさまがそのような食事を出してくださったと思えばいい。
安楽に生きられるなら、安楽に生きるとよい。死ぬときも同じで、のたうちまわって死ぬ運命であれば、それもほとけさまの食事としていただけばよいのだ。
それが沢木老師の言いたかったことであろう。
『のんびり生きて気楽に死のう』PHP研究所
良寛和尚が71才の時、三条市を中心に大地震が起こった。そのとき知人にこんな見舞の手紙を送っている。
『「災難に逢う時節には災難に逢うがよく候 死ぬる時節には死ぬがよく候 是はこれ災難をのがるゝ妙法にて候」災難にあったらジタバタせず、腹をくくって災難を受け入れなさい。
死ぬ時が来たら、あわてず騒がず、淡々と死を受け入れなさい、これが災難を逃れる唯一の方法だ、という。災難は、腹をくくると、気持ちが落ち着く。
「災難は、敵対しないで淡々と受け入れる」 それが、災難をのがれる最良の方法。
まさに…「全部いただく。選(え)り食いはせぬ」
選り好みをしないで、人生を淡々と生きてゆける人でありたい
https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-70975-8 【のんびり生きて気楽に死のう】より
著者 ひろさちや著 《宗教評論家》
主な著作 『「いいかげん」のすすめ』(PHP研究所)
税込価格 1,100円(本体価格1,000円)
内容 誰もが経験する「老」「病」「死」。そのつきあい方を仏教の教えをもとにやさしく説く。「苦」を知り、「気楽」に生きるためのヒント。
解説
誰でも経験する「老・病・死」。そのつきあい方を仏教の教えをもとにやさしく説く。「苦」を知り「気楽」に生きるためのヒント。
【主な内容】第一章 こだわりなく生きよう/第二章 「老い」こそ人間本来の姿/第三章 「そのまんま・そのまんま」/第四章 死に方の心配をしない/*人生はなるようにしかなりません。じっくりそのまんま楽しみましょう。*「世間の標準」など気にせず、ありのままの自分でいいんです。*金持ちになるために不幸な人生を送るのはやめましょう。*世の中のほとんどは「苦」――思うがままにならないことです。*人生の苦楽を選り好みせず、全部しっかりいただきましょう。*病気も貧乏も縁。そのまんま幸せに生きればいいんです。*「疲れてから」休むより、「疲れないように」休みましょう。*若い時も、中年、老年も、それぞれの「人生のこく」を味わいましょう。*死ぬときのことを心配するより、現在をしっかり生きればいいんです。
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