燃え上がる 地球の悲鳴 柿落ちる  鈴木比佐雄

facebook鈴木 比佐雄さん投稿記事

2024年11月29日 ·メールマガジンを配信しました✉ぜひご覧ください。

燃え上がる 地球の悲鳴 柿落ちる   鈴木比佐雄 

今年の秋は夏が果てしなく続いていた。例年10月に終わりになる台風も11月にも発生した。

自宅の狭庭の柿の実は、大半が腐って落ちてしまった。気候変動や地球の自然破壊に人類が関わっているので地質学上は「完新世」から「人新世(ひとしんせい)」に入っているという仮説は紛れもない事実なのかも知れない。そんな9月下旬~11月には下記8冊を刊行した

①岩上和道小説『銀鼠髪のオデュッセウス』②趙南哲エッセイ集『韓ドラの素晴らしき世界』

③坂本梧朗小説『見果てぬ夢―堺利彦伝』 ④風守詩集『希望の詩魂』

⑤藤田博『藤田博著作集 第二巻 全詩集Ⅱ』 ⑥古道正夫詩集『S村点描』

⑦川村湊編著書『原発よ、安らかに眠り給え』 ⑧櫻井利子遺句集『手は翼』

上記の本のテーマ紹介はこの文章の最後にあるので、ご覧下されば幸いだ。

また来週の12月7日に下記のような合同出版記念会が開催される。

2024年刊行書籍&『広島・長崎・沖縄からの永遠平和詩歌集』合同出版記念会

日時:2024年12月7日(土)午後2時~5時半

場所:東京文具共和会館(東京都台東区柳橋1-2-10、JR総武線「浅草橋駅 東口」徒歩3分)

14:00 開会の辞 (コールサック社代表 鈴木比佐雄)

第1部 講演

14:10 『広島・長崎・沖縄からの永遠平和詩歌集』を世界に発信するために 講演者:堀田季何

第2部 自著解説と朗読

15:00 2024年刊行書籍の著者による解説と朗読

①アスリー悠 アート作品集『あなたは一人じゃない』※ビデオレター出演

②水谷嘉弘 『板倉鼎をご存じですか』  ③金利惠 『句集 くりうむ』

④酒井力 『詩集 黒曜の瞳』  ⑤岩上和道 『銀鼠髪のオデュッセウス』

⑥小島まち子 『白い闇』  ⑦村上喜代子 『大野林火論』

⑧董振華 『語りたい龍太 伝えたい龍太』  ⑨鈴木美紀子 『歌集 金魚を逃がす』

16:40 『広島・長崎・沖縄からの永遠平和詩歌集』参加者の朗読とスピーチ

日野百草、福田淑子、赤野四羽、大関博美、水崎野里子 他

17:20 閉会の辞 (コールサック社 鈴木光影)〈司会進行:コールサック社 座馬寛彦〉

*閉会後、二次会を開催いたします。お気軽にご参加ください。

会場:やきとん三吉 浅草橋店 (東京都台東区浅草橋1丁目20ー3 TEL 050-5592-9879)

時間:18:00~20:00/会費:3,500円(食事・ドリンク代)

https://www.coal-sack.com/news/view/3036/まだ定員に達しておりませんので、ぜひご参加下さい。担当者:座馬寛彦、連絡先:コールサック社(03-5944-3258)

「コールサック」120号が来週初めの12月2日に刊行される。私の後記では2025年夏に刊行する『人新世の生活世界詩歌集―気候変動・戦災・核災をもたらす科学技術偏重から始原の存在へ』の評論を要約した公募趣意書のよびかけ文を紹介している。下記に引用したい。

120号でその基になった評論文と公募趣意書が収録されている。当社のHPにもすでに閲覧することもできる。

https://www.coal-sack.com/news/view/3047/ぜひご参加下さい。

《【よびかけ文】

宮沢賢治『春と修羅』は、全七〇篇と補遺九篇の計七九篇が収録され一九二四年四月二〇日に刊行された。中心的なテーマは妹トシを悼む詩「永訣の朝」などの鎮魂だ。詩「火薬と紙幣」は最後のパート八の「風景とオルゴール」の中に収録され、二連目に「森はどれも群青に泣いてゐるし/松林なら地被もところどころ剝げて/酸性土壌ももう十月になつたのだ」と記している。賢治が後に岩手の酸性土壌を改良するために肥料設計などを実践していくことの原点がこの詩行から読み取れる。私が最も感銘を受けるのが最後の五行だ。岩手の天空と野原を瞬間にその風景と賢治の内面が一体化されているからだ。そして本当に価値のあるものとは何か、また「ほんとうの幸福」とは何かを問い掛けてくる。賢治なりの答えは「野原をおほびらにあるけたら/おれはそのほかにもうなんにもいらない/火薬も燐も大きな紙幣もほしくない」だったのだ。「火薬」とは「兵器」、「燐」は「鬼火」、「紙幣」は「富」などを比喩として

表したのだろう。賢治は詩人・童話作家であり、現代から見ると地球環境を考えて実践するエコロジストの先駆者であった。賢治は『春と修羅』の序で、地質学の「新生代沖積世」の中での生き物たちは(あるいは修羅の十億年)とも示唆している。「新生代沖積世」は現代の地質学では「完新世」と呼ばれている。「人新世」(Anthropocene)とは、ノーベル化学賞受賞者のパウル・クルッツェンが提唱した考えで、氷期が終わる一万一七〇〇年から現在まで続いてきた「完新世」の後に、「人間たちの活動の痕跡が、地球の表面を覆いつくした年代という意味」で名付けられた。賢治が亡くなった一九三三年から数年たった一九三六年頃に、ナチスに追われたユダヤ人で「現象学」を提唱したドイツの哲学者フッサールが『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』を執筆した。

その中で「客観的科学」の「論理学」は「仮象」でありながらも絶対的なものとして我々に迫ってくる。実はそれを生みだした背景には「生活世界」があると言い、「生活世界」の「主観的―相対的な真理の領域」が源泉であることを「生活世界」の「論理学」として記した。

「生活世界」(Lebenswelt)はフッサールの用語であり「あらゆる科学的探究に先立って、われわれの生活が営まれている、現実として直接的に経験されている、日常的世界のこと」と語っている。その試みはまたハイデガーが古代ギリシャ哲学から存在が「本質存在」と「事実存在」に分離し「本質存在」を優先させてきた存在忘却の歴史に対して、その二つの存在の原点である本来的な「始原の存在」(ピュシス)へと立ち還らせ、私たちに将来の「始原の存在」を創造的に問い掛けてくる。

そのような観点から二〇二五年の詩歌集タイトルを『人新世の生活世界詩歌集―』―気候変動・戦災・核災をもたらす科学技術偏重から始原の存在へ』とした。

賢治の詩以外の作品例として、俳句では永瀬十悟氏の〈鴨引くや十万年は三日月湖〉では、鴨が北方に渡っていく様を見て、十万年後には、放射性物質が半減し、今も存在する帰還困難地域で取り残された三日月湖のような原発の周辺が動植物の楽園になっていて欲しいと語っている。短歌では本田一弘氏の〈福島の土うたふべし生きてわれは死んでもわれは土をとぶらふ〉では、たとえ放射性物質で産土が汚染されようとも、われは詠い、死んでも産土を案じて訪ねてくると語り、故郷の産土が汚染された言い知れぬ悲しみを伝えている。このような地域に根ざした発想で、「人新世」の特徴である、①地球温暖化などの気候変動、②森林地帯を開発し生態系を破壊する生物多様性の喪失、③プラスチック等の人口物質の増大、④化石燃料の燃焼による二酸化炭素の増大、⑤核実験・核兵器による放射性物質の残存など、人類の科学技術偏重の活動が地球に破滅的な影響を与える事実を踏まえ、身近な地域環境の変容の発見を伝え、本来的で創造的な「始原の存在」に問い掛ける詩歌を寄稿して頂きたい。

(鈴木比佐雄 記)


https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000070751.html 【『広島・長崎・沖縄からの永遠平和詩歌集 ―報復の連鎖からカントの「永遠平和」、賢治の「ほんとうの幸福」へ』を、今年の広島原爆投下の日、8月6日に合わせて新刊発売します。】より

「永遠平和」の公募趣旨に賛同した269名の詩人・歌人・俳人が世界に贈る希望の書。同書を翻訳した「英語版」も来年の春頃刊行予定です。

株式会社コールサック社2024年8月2日 12時10分

『広島・長崎・沖縄からの永遠平和詩歌集 ―報復の連鎖からカントの「永遠平和」、賢治の「ほんとうの幸福」へ』書影

株式会社コールサック社(本社:東京都板橋区、代表取締役:鈴木比佐雄)は、『広島・長崎・沖縄からの永遠平和詩歌集 ―報復の連鎖からカントの「永遠平和」、賢治の「ほんとうの幸福」へ』を2024年8月6日(火)奥付で発売いたします。

◆『広島・長崎・沖縄からの永遠平和詩歌集』の5つの特徴

1.時代に求められるアンソロジー詩歌集

コールサック社は2007年刊行の『原爆詩一八一人集』(日本語版8月刊行、英語版12月刊行)から、毎年1冊、社会的なテーマを掲げてアンソロジー詩歌集を刊行してきました。

『原爆詩一八一人集』英語版は、広島平和記念資料館のミュージアムショップでロングセラーとなっており、新型コロナ禍後の近年、特に外国人来館者を中心に買い求められ、今夏、第二版増刷となりました。

今も戦火の止まぬ世界の、平和を考える人びとから、詩歌のアンソロジーが求め続けられています。

『原爆詩一八一人集』英語版第二版

2.「永遠平和」の理念を伝える詩歌の力

上記の『原爆詩一八一人集』の考え方をさらに推し進め、イマヌエル・カントの「永遠平和」・宮沢賢治の「ほんとうの幸福」という理念で、詩に加えて短歌・俳句を交えた詩歌を公募しました。

公募趣旨に賛同した全国各地の作家から作品が寄せられ、物故者を含めて、最終的に269名の作品を収録しました。

3.原爆・戦争被害の歴史をリアルに伝えるカバー装画

本書のカバー装画には、戦中・敗戦直後の日本の3地点を現代の読者と共有するために、

・「原爆投下後の広島(1945年)」〈上〉提供:MeijiShowaアフロ

・「焼き場に立つ少年(1945年)」〈左下〉撮影:ジョー・オダネル、提供:坂井貴美子

・「白旗の少女(1945年)」〈右下〉沖縄県公文書館所蔵

の三点の写真を使用しました。

4.目次

一章 被爆者の声  二章 広島を語り継ぐ  三章 長崎を語り継ぐ  四章 沖縄を語り継ぐ  五章 空爆・破壊の記憶  六章 アフガニスタン・ウクライナ・ガザ・世界は今

七章 戦争に駆り立てるもの  八章 喪失・鎮魂・反戦  九章 永遠平和

5.英語版を来年の春に刊行

本書の英語版を、来年春頃に刊行します。なお翻訳者は次の方々です。与那覇恵子、郡山直、結城文、水崎野里子、植松晃一、堀田季何、その他にネイティブチェッカーが数名。

◆企画編集者が本書に込めた想い

広島・長崎・沖縄・世界の戦場の経験から汲み上げられた言葉には、後世の人びとに伝える極限的な知恵が宿っていると考えています。

今回の「永遠平和」をテーマとした当詩歌集は、被爆者や戦禍に遭遇した人びとの声にならない無言の思いや叫び声の代弁、そして核兵器や大量破壊兵器の廃棄を現実的に進める試みを詩人・俳人・歌人たちが言葉を通して表現しようとしました。

本書の英語版は2025年の春頃刊行予定で、併せてお読み下されば幸いです。

世界の人びとに日本人が広島・長崎・沖縄で経験したことや、現在進行中のアフガニスタン・ウクライナ・ガザなど世界の戦争地域に関する詩歌も併せて収録させて頂いたので、その思いをお読み下さればと願っています。(企画編集者・鈴木比佐雄)

◆収録した「詩」より引用

ちちをかえせ ははをかえせ  としよりをかえせ  こどもをかえせ/

わたしをかえせ わたしにつながる  にんげんをかえせ(峠三吉『原爆詩集』の序より)

少年たちは  鍾乳石のつきでた自然壕から這いでて  もえるような夏の色をさがして

剝き出しの丘をさまよい  灼ける渇きに うたれて死んでいった。(新川明「慟哭」より)

平和 それは花ではなく 花を育てる土

平和 それは歌ではなく 生きた唇(谷川俊太郎「平和」より)

◆収録した「短歌」より引用

くろぐろと水満ち水にうち合へる死者満ちてわがとこしへの川(竹山広)

太き骨は先生ならむそのそばに小さきあたまの骨あつまれり(正田篠枝)

白き虚空とどまり白き原子雲そのまぼろしにつづく死の町(近藤芳美)

原爆の子なほ読めと言ふ子らに向き我また泪しつつ読みつぐ(馬場あき子)

人の世の深き悲しみくり返すあけもどろの花咲いわたる島(平山良明)

◆収録した「俳句」より引用

水をのみ死にゆく少女蝉の声(原民喜)

なにもかもなくした手に四まいの爆死証明(松尾あつゆき)

蝶よ川の向こうの蝶は邪魔ですか(池田澄子)

原爆ドームただ一本の霜柱(長谷川櫂)

草の花ジェノサイドとは子らが死ぬ(神野紗希)

◆『広島・長崎・沖縄からの永遠平和詩歌集』の読み方・利用シーン

子ども達に原爆や戦争の実態を伝える教育現場で。

平和の大切さを広く伝える詩の朗読会で。

文学館・資料館・美術館等のミュージアムショップで。

世界中の平和と非核化を願い、詩歌を愛する方々に。


https://www.elec.hi-tech.ac.jp/article/e-letter-matsuura5/ 【〈人新世〉という新たな地質年代誕生の行方】より

執筆:教授 松浦勉

 21世紀のいま、新たな地質年代が国際社会で認知されようとしている。1万2000年ほど前にはじまった〈完新世The Holocene〉にかわって、〈人新世The Anthropocene〉の時代が始まるというのである。ヨコ文字を和製英語風にいえば、前者はホロシーンと読む。後者はアントロポセンと読み、「ひとしんせい」または、「じんしんせい」などと訳されている。新たな地質年代への「転換」がはじまるというのは、喜ばしいことであろうか。答えは否である。なぜか。〈人新世〉という言葉の誕生の経緯と、この用語の基礎となっている地球環境の現状認識(「診断」)を簡単に確認してみれば、了解できよう。

 2000年に突如広まることになったこの〈人新世〉という用語は、この年にメキシコで開催された地球環境をめぐる国際会議の場で、ノーベル化学賞受賞歴をもつドイツの大気科学者のパウル・クルッツェン(1933~2021)が発案したものである。すでに前例のない規模で進行していた気候変動は、安定した気候条件をもたらし、人間の可能性を開花させた従来の〈完新世〉の条件には、もはや当てはまらないことに気づいていたクルッツェンがこの会議の場で「即興で持ち出した」のが、この造語である。この言葉は、クルッツェンの予想をはるかに超えて、瞬く間に大きな反響を与えることになった。この用語はその後、科学界で承認されたばかりでなく、ほぼ10年かけて人文科学と社会科学の分野にも火をつけ、この20年代には、科学はもとより、芸術や社会、政治などの広範な領域に波及することが予測されている。

 世界的に著名な地球システム科学者として知られているストックホルム大学のヨハン・ロックストロームは、クルッツェンが大要以下のように認識していたと指摘する。現代世界における消費と生産の巨大な規模と速度、自然資源の過剰な搾取、大気と水、土壌などの環境システムの質と機能の劣化、生態系の破壊、そして地球規模の大量絶滅に匹敵する速度での生物種の絶滅などによって、人類は惑星地球の変化を引き起こす主役になった、というのである。そして、ロックストロームによれば、「人類の将来に地球的規模のリスクが迫っている」というこの結論は、その後に地球システム科学から地球のティッピングポイント(転換点・臨界点)に関するレジリエンス(回復力)研究、地球の遠い過去の歴史に関する古気候学研究まで、多くの学問分野での研究の進歩によってもたらされることになったのである。ここでいわれるレジリエンス(回復力)研究は、産業革命以来、人間が高度のテクノロジーを駆使して化石燃料由来のエネルギーを際限なく使用して「経済発展」を実現させた地球的な規模の経済活動が、資本主義と社会主義の体制の違いを超えて、現実には、その繫栄の基礎となっていた安定的でレジリエント(自己回復力のある)な地球システムを壊しつつあることを、例証している。

 こうした事情をふまえて、〈人新世〉という用語の固有の意味について、イギリスとアメリカの研究者集団は、以下のように説明している。

 この語は、「公害」や「気候変動」「地球温暖化」のような、環境破壊を示す用語とは異なる。ディープタイム〔超長期的な時間スパン〕と現在進行形の危機とを、そして科学的視点と人文学視座とを統合し、20世紀半ばから人類が地球上で圧倒的かつ決定的な影響力を持つに至ったことを説明する概念なのだ。

 最初の〈人新世〉という新たな地質年代の認知の問題に話をもどそう。厳格な手続きで守られている地質年代尺度(GTS)を研究する地質学のコミュニティーに設置された人新世ワーキング・グループは、協議を重ねて、2022年春には、十分なエビデンスを揃えて正式提案するといわれている。

 〈人新世〉の幕開けを正当に危惧する科学者たちは、「グローバル・コモンズの責任ある管理」(石井菜穂子)の必要を強く提唱している。つまり、人類の「文明」を支えてきた「安定的でレジリエントな地球システム」を、人類の共有財産(国際公共財)ととらえ、国境に閉じ込められた人類全体が、協調して責任をもって管理し、次世代に引き継がなければならないというのである。したがって、約30年前の地球サミット(「リオ会議」)段階まで考えられ、推奨されていた「地球的な規模で考え、それぞれの地域で行動する」という原則ではもはや不十分だというのが、かれ/かの女らの鋭利なメッセージである。これにかわって、どのような原則が新たにもとめられるのか。昨年はじめ以来の「コロナ禍」に対する根本的な対処方針ともいえる、もう一つの精神が提起されている。「誰も安全でない限り、誰も安全でない。」というのが、それである。

 こうしたグローバル・コモンズの精神を体現した新たな経済モデルやガバナンスを構築するためのとりくみや運動も、国際社会ではすでに胎動している。18世紀の第3四半期に発表されたカール・マルクスの未完の『資本論』を参照して、「グローバル・サウス」の視座から気候危機にある「人新世」における資本と社会と自然の絡み合いを分析した斎藤幸平の、「2021新書大賞」を受賞した『人新世の「資本論」』(集英社新書)は、その具体的な素材を提供してくれている。本書の表紙をみると、1987年生まれの斎藤は、「人新世」を、「人類が地球を破壊しつくす時代」と把握し、次のように結論的なメッセージを発信している。「気候変動、コロナ禍……。文明崩壊の危機。唯一の解決策は潤沢な脱成長経済だ。」と。〈人新世〉の幕開けが日本の社会科学の世界にどのような規模と広がりで波及しているかは、まだ判然としないが、〈人新世〉をタイトルに掲げた本書は、論争の書である。

 岩波書店が敗戦直後から刊行し、創刊75周年を迎えた総合雑誌『世界』の2021年5月号では「特集1 人新世とグローバル・コモンズ」として、地球環境の現状分析と国際公共財としての地球環境の保全と監視の担い手をめぐる特集が組まれている。筆者の知る限りにおいては、総合雑誌でこうした特集を組むのは、本誌『世界』が初めてかもしれない。本稿は、本誌に掲載された、翻訳論考を含めた諸論考を参照した。

コズミックホリステック医療・現代靈氣

吾であり宇宙である☆和して同せず  競争でなく共生を☆

0コメント

  • 1000 / 1000