http://knt73.blog.enjoy.jp/blog/fuyuhi.html 【俳句の鑑賞 《冬の日・冬日・冬日向》】より
冬日差す遠山望む駐車場 (薫風士)
2月26日まん歩中に、遠くの山に冴返る冬日の日差しが当たっているのが駐車場の傍の歩道並木の彼方に見えたので、高浜虚子の俳句「遠山に日の当たりたる枯野かな」を連想してスマホカメラで撮った写真です。
(タップ拡大すると、山に日当たりと雲の影があるのをご覧になれます。)
カラー図解日本大歳時記(講談社)
気象庁のHPによると、「冬日」は「最低気温が0℃未満の日」のことです。
俳誌のサロンの歳時記「冬日1」の冒頭には高浜虚子の下記の俳句が掲載されています。
旗のごとなびく冬日をふと見たり
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https://manyuraku.exblog.jp/10743844/ 【万葉集その八十一(豊旗雲:とよはたくも)】より
万葉の雲には白雲、青雲、横雲、波雲、八雲など多くの雲の名前が見られますが、分けてもただ一つみえる「豊旗雲」は屈指の美しい言葉です。
「豊」はその立派さ、壮麗さを讃えた言葉、「旗雲」は幡(ばん)のような横に靡いている吹流しのような雲をいいます。
「 海神(わたつみ)の 豊旗雲に 入日さし 今夜(こよひ)の 月夜(つくよ) さやけくありこそ 」 巻1の15 中大兄皇子(のちの天智天皇)
( 空を見上げると海神が棚引かせたまう豊旗雲、何と素晴らしい光景だろう。
おぉ、夕陽が射しこんできて空はすっかり茜色に染まってきたぞ。 今宵の月夜はきっと清々しいことであろうなぁ。 )
この歌は661年、斉明天皇が征新羅のために九州行幸された途中、播磨灘海岸辺りで詠まれたもので、額田王が天皇になり替って作ったとも推定されています。
万葉集の最高傑作とされていますが、結句「さやけくありこそ」の訓み方に十数説あり、いまだに定まっておりません。天には茜色の巨大な豊旗雲、海上には軍船の、陸上には軍団の
無数の旌旗が靡き、実に雄大、荘厳な光景が想像されます。
作者は豊旗雲を神の旗と感じ、この船旅が海神に祝福されているとも受取ったことでありましょう。さらに美しい夕焼け雲をみて「今夜は月夜も素晴らしそうだ。
我々の未来もこのようなバラ色であって欲しい」という祈りと期待をこめて詠ったものと思われます。
齊藤茂吉は「壮麗ともいうべき大きな自然とそれに参入した作者の気迫と相融合して読者に迫ってくるのであるが、是の如き壮大雄厳の歌詞というものは遂に後代には跡を絶った。
後代の歌人等は渾身をもって自然に参入して、その写生をするだけの意力に乏しかった」と絶賛されています。 ( 万葉秀歌より : 岩波新書 )
「 満天の 夕焼雲が 移動せり 」 加藤楸邨(しゅうそん)
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この俳句を詠んだ時、高浜虚子は万葉集の和歌「わだつみの豊旗雲に入り日さし今宵の月夜さやけかりこそ」を意識していたかもしれませんが、その思いは何だったでしょうか?
虚子の「旗のごと」の句について、「六四三の俳諧覚書」には次の記載があります。
「多くの鑑賞者が弱々しい純色の冬日を連想します。ところが虚子は、大きな旗、大きな光の豊旗雲、光の溶鉱炉、と自解で述べています。冬の嵐の向こうに、赤く力強い太陽を見い出したのでしょう。昭和十三年、六十四歳。」
高浜虚子は、上記の自解によると下記「冬日9」の「雲突と」の句のように、夕日ではなく真昼の空の雲が切れて見えた太陽から日章旗を連想し句にしたのかもしれません。
昭和12年には日中戦争が始まり、昭和13年には国家総動員法が施行されています。
平成最後の冬の夕日を眺めていると、平和を祈らずにはおれません。
日章旗が新元号の下に平和国家のシンボルとして人々に愛でられる日が来ることを祈っています。
(青色文字をクリックして、リンク記事をご覧下さい。)
歳時記から「冬日」の俳句を気の向くままに抜粋・掲載させて頂きます。
(例句の詳細は青色文字の季語をクリックしてご覧下さい。)
「冬日2」 やはらかき餅の如くに冬日かな (高浜虚子)
「冬日3」 高層の冬日をはじく猫の皿 (狩野朝子)
「冬日4」 冬日射す母病床の誕生日 (徳田正樹)
「冬日5」 句碑の文字冬日なぞつてゆきにけり (稲畑廣太郎)
「冬日6」 山門を染め上げてゆく冬日かな (稲畑廣太郎)
「冬日7」 交番の一輪挿や冬日さす (山荘慶子)
「冬日8」 愛犬の癒しのポーズ冬日向 (森下康子)
「冬日9」 雲突と切れて射しくる冬日かな (服部珠子)
「冬日10」 花時計冬日を廻しゐたりけり (箕輪カオル)
最後に薫風士の俳句と写真を掲載します。
一の字の冬雲透かし今朝の日矢
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