https://kigosai.sub.jp/bs/?p=31489 【1月 きごさい+(講座と句会)報告】より
1月30日(土) 第21回「きごさい+」がズームで開催されました。
講師は総合地球環境学研究所所長の安成哲三先生。日本の豊かな四季や風土の多様性は、世界でも類を見ない地理的条件下にあったから。日本列島の気候と風土、文化を地球全体から俯瞰的に見たお話に魅了されました。
俳句とアジアモンスーン気候、そして日本の風土
安成哲三(大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所 所長)
多様で豊かな日本列島の自然
日本列島は、米国カリフォルニア州よりも狭い面積ながら、北は北海道から南は琉球列島まで、気候的には亜寒帯・温帯:亜熱帯をカバーし、生物相(生態系)も海岸から高山帯を含む地形要因もあり、非常に多様である。とくにユーラシア大陸の東岸に位置し、アジアモンスーン気候下にあるため、夏冬の季節変化も大きい。大陸から離れた列島であり、黒潮・対馬暖流と親潮に囲まれた地理的条件は、列島内の気候や生物相の地域的分布を、アジアモンスーンの影響下にあるアジアの他の地域には見られない、豊かさと多様さ、そして複雑さがある。
夏も冬もアジアモンスーン
アジアモンスーンは、ユーラシア大陸の東部から南部にかけての広大な地域で卓越する季節風である。夏はインド洋から大陸に向けて湿った風が吹きつけ、インド亜大陸から東南アジア、そして中国を含む東アジアに雨季をもたらす。亜熱帯の緯度に位置するチベット高原とヒマラヤ山脈は、その地形の効果により、アジアモンスーンを世界でも類を見ない強い季節風と雨季をもたらしている。東アジアでは、チベット高原の北側に吹く乾いた空気とのあいだに梅雨前線を形成して雨をもたらす。
冬は、チベット高原が北極地域からシベリアで形成される寒気団を堰き止める役割を果たすため、シベリアからの寒気は、東アジアの日本列島に吹き付け、さらに南下して、東南アジアからインド亜大陸の広い地域に乾季をもたらす。しかし、日本列島では、日本海を北上する対馬暖流のために、冷たく乾いたシベリアからの北西季節風は、水蒸気をもらって湿潤で不安定な大気へと変質し、雪雲を発達させて日本海側に大量の雪を降らせるいっぽう、太平洋側は、山を越えて空っ風となるという、極めて対照的な気候をもたらしている(安成、2018)。
照葉樹林文化とブナ林文化-日本列島の風土の二つの基層
夏には西南日本を中心に蒸し暑さと雨をもたらし、冬には東北日本を中心に寒さと雪をもたらすアジアモンスーンは、日本列島の植生(森林)分布を決めている。それが常緑広葉樹を中心とする照葉樹林(暖温帯林)であり、ブナ・ナラなどの落葉広葉樹に代表される冷温帯林である。照葉樹林は、ヒマラヤの麓から中国南部に拡がる湿潤亜熱帯のモンスーン気候帯に分布し、ブナ林は、冬の積雪の多いところに分布しており、冷涼な気候だけでなく冬季の積雪が十分な生育には必要とされている。
照葉樹林帯では、山地では焼畑農業がおこなわれ、平地では水田稲作が拡大した地域とも重なり、茶の栽培やウルシの利用なども含めた照葉樹林文化といわれる自然と文化の複合が形成された(上山編、1969)。山地では焼畑農業がおこなわれ、平地では水田稲作が拡大した地域とも重なっている。一方、氷期が終わった(完新世といわれる)1万年以降に、列島に大陸から移動して定住した縄文人はまず東北地方から中部地方のブナ・ナラ林帯に住みつき、狩猟や漁労と共に、クリやクルミ、トチなどの木の実の採集と、後期には、稗やアワを中心とする畑田の開墾をしつつ、縄文文化を拡げていった(市川、1987)。5~6千年前の気候温暖期には、日本列島の人口は、中部から関東および東北地方が西南日本よりはるかに多かったと推定されている(Koyama, 1978)。
弥生文化は、完新世の温暖な気候の下で、南西日本での水田稲作の発展とともに列島を北上するが、縄文時代から弥生時代の気候の寒冷化などで、これらふたつの自然・文化複合の地域分布は行きつ戻りつしつつ、あるいは中部日本で混ざり合い、古代日本人の風土を形成していくことになる。
水田稲作が西南日本から広がっていくと、収量のはるかに多い稲作が、収量の小さい畑ビエなどを圧迫していくことになり、弥生時代以降、西日本の人口が急激に増加していくことになる。やがて山城盆地を中心に、奈良・平安の都が築かれる頃には、ブナ・ナラ林文化は、東北・中部地方に限られた文化となっていった。
季語の起源と歴史
『古今集』などでみられる和歌に始まったとされる「季語」は、山城盆地に住む王朝貴族が平安以来約400年間の詩歌の歴史の中で培ってきた自然への感性のあり方から「本意」として示されてきた(宮坂、2009)。俳諧連歌から発句の季語は、その後、江戸時代の京・大坂・江戸などでの武家・町人文化の中でさらに広大な裾野をもつ「季語のピラミッド」を形成してきた。その頂点には、「花」「ほととぎす」「月」「紅葉」「雪」 などである。ただ、いずれも、(「月」を除いては)、山城盆地周辺の照葉樹林を中心といた景観にもとづいており、「雪」にしても、盆地周辺での少ない雪の美であり、決して日本海側の大雪ではなかった。シラネ・ハルオ氏によると、その結果、近代になると、季節をめぐる連想、調和、優雅さに重きを置く、和歌を基盤とする世界観だけが「日本人」の唯一の自然観とみなされ、自然環境を再創造しようとしたその他の多彩な視点は見逃されてしまった、と指摘する(シラネ、2001)。
近世の俳句を確立した松尾芭蕉は、このような都あるいは町を中心にした自然観に飽き足らず、「日々旅にして、旅を栖とす。」として旅を愛した。芭蕉にとって旅が意味したのは、まさに、新たな領域と言語を探求すべく不断に努力すること、そして詩的・文化的記憶の媒介者である自然や季節、風景に対するあらたな視点を常に探し求めることであった。
芭蕉は「おくのほそ道」で何を感じたのか
では芭蕉は「おくのほそ道」の旅では何を求めていたのか。さまざまな論考があるが、ここは、たとえば長谷川櫂氏の「芭蕉の風雅」(2015)を参照されたい。ただ、長谷川氏も指摘しているように、松島から平泉の旅で、芭蕉には、西行的な中世の「歌枕」を追う姿勢は消え、東北の荒々しい自然と文化そのものを感じ取る姿勢へのかなり大きな変化が見られた。 平泉で訪れた中尊寺は奥州藤原氏三代の栄華の史跡のなごりのあるところで、三代の遺体がミイラとして残されている。実は、これらの棺の中から、数多くの穀物が見つかっており、特にヒエが最も多かった。支配階級であったかれら自らがヒエを主食とした「ブナ帯文化」での生き方をしていることがわかっている。
「五月雨の降りのこしてや光堂」と、ここで詠んだが、芭蕉がそのことを感じたかどうかは、もちろんわからない。 ただ、「夏草や兵どもが夢の跡」は、松島まで追い求めてきた「風雅」の気風を転換させた句ともいえる。(宮坂静生、2009)。
これ以降、日本海側に続く「おくのほそ道」の旅には、西日本の照葉樹林文化にはない、もうひとつの日本の風土の基層である「ブナ帯文化」の世界を、芭蕉は感じとっていたのではないだろうか。
参考文献:
安成哲三「地球気候学」(2018)東京大学出版会 208頁
上山春平編「照葉樹林文化-日本文化の深層」(1969) 中公新書 208頁
市川健夫「ブナ帯と日本人」(1987) 講談社現代新書 204頁
宮坂静生「季語の誕生」(2009) 岩波新書 208頁
萩原恭男校注「芭蕉 おくのほそ道」(1979) 岩波文庫 290頁
ハルオ・シラネ「芭蕉の風景 文化の記憶」(2001) 角川書店 214頁
長谷川 櫂「芭蕉の風雅」(2015) 筑摩書房 237頁
(略)
https://www.yamanohi.net/report.php?id=2831 【書 評 「モンスーンの世界 ー 日本、アジア、地球の風土の未来可能性」 】より
安成 哲三 著 『「モンスーンの世界」日本、アジア、地球の風土の未来可能性』 (中公新書 2023年5月)を読む
鹿野 勝彦(文化人類学、南アジア・ヒマラヤ地域研究)
近年、集中豪雨や酷暑などによる災害が発生すると、しばしば太平洋の海面水温の変動との関係で説明されたりするが、著者はいわゆるビッグデータを用いて、そういった異常気象の発生や気候変動の予測などの研究を、長年にわたって第一線で牽引してきた。
私もそういった研究成果については、関心を持って注目してきたのだが、数式や数値に弱いため、その背景となる大気や水の循環にもとづく理論について理解することは、最初からあきらめていたところがある。
本書はこういった地球、とりわけ私たちに身近な日本、アジアの気候を決定する要因としてのモンスーン(季節風、とその影響下にある気候)が持つ意味と、近年におけるその変化について、私のような文科系の人間を含む一般市民を対象に、正確に、かつわかりやすく語りかける解説書である。
わかりやすく、親しみやすく説くためのなみなみならぬ意欲は、日本の気候の特徴を多くの俳句をひいて明らかにする導入部からも感じ取れる。引用されるのは芭蕉、蕪村といった古典ばかりでなく、現代俳句におよぶ。
中公新書「モンスーン」の帯
本論では、まず大気と水の循環によって、地球の各地域の気候がどのように形成され、変化するかの大枠が示されたのち、アジア大陸の気候を決定する要因としてのモンスーンと、その影響が大きな意味を持つ南・東南・東アジアの亜熱帯から温帯にかけての地域の気候の特徴が示される。それらの地域では、地形,とりわけヒマラヤ山脈とチベット高原という高地の存在が、大気と水の循環に影響し、気候のありかたを規定してゆくことも明らかにされる。
気候はたしかに当該地域の生物相(特に植生)のありかたを決定するのだが、実はその生物相のありかたもまた気候に一定の影響を与えると、著者は述べる。気候と生物相は「相互作用系」だというのだ。ここまで読むと、著者の視点は、単に大気と水の循環にかかわる数値だけでなく、地形や生物相など、多様な分野に及んでいることがわかってくる。
そして本書の後半では、著者の視野はそれらの地域に住む人々の生活世界へと拡がってゆく。モンスーンが影響を持つ空間は、世界の総人口の半数以上が住む地域でもある。そこではモンスーンに規定された自然のもとで、多様な文化が形成されてきたが、19世紀以降の近代化の過程で人々の生活は急速に変化し、人の営みが自然を改変してゆく、いわゆる「人新世」に入ってゆく。今、モンスーンの及ぶアジアは、地球温暖化や広域大気汚染が深刻な、地球環境問題のホットスポットとなっているのだ。
こういった本書の視野の広さは、実は著者がもともとはヒマラヤの氷河観測などに携わった経験豊富なフィールドワーカーでもあることと関係するのかもしれない。
そういった状況を私たちはどう捉え、どう行動してゆくべきなのか。著者の問いかけは重い。本書には、私などには未知の術語も用いられているが、それらは丁寧に解説されているし、随所に特定のトピックに焦点を当てて解説するコラムも挿入されていて、誰もが関心を持って読め、理解できるように、という著者の意図は一貫している。また図版も多く用いられており、理解を助けてくれる。
一人でも多くの方に手に取ってほしい1冊として推奨したい。
【プロフィール】 安成哲三(やすなり・てつぞう) 気象学者
1947年、山口県生まれ。京都大学理学部卒業、同大学大学院理学研究科博士課程修了。理学博士。
京都大学東南アジア研究センター助手、筑波大学地球科学系教授、名古屋大学地球水循環研究センター教授、地球フロンティア研究システム(海洋研究開発機構)領域長(兼任)、総合地球環境学研究所所長等を経て、現在、京都機構変動適応センター長、総合地球環境学研究所顧問、筑波大学・名古屋大学・総合地球環境学研究所各名誉教授、専攻、気象学・気候学・地球環境学、全国山の日協議会 科学委員会委員長。
著書「地球気候学」(東京大学出版会、2018)、「水の環境学――人との関わりから考える」(共著、名古屋大学出版会、2011)、「現代地球科学」(共著、放送大学教育振興会、2011)、「新しい地球学――太陽―地球―生命圏相互作用系の変動学」(共著、名古屋大学出版会、2008)、「気候変動論」(共著、岩波書店、1996)、「ヒマラヤの気候と氷河」(共著、東京堂出版、1983)など。
http://macroscope.world.coocan.jp/yukukawa/?p=11265 【安成 哲三 (2023) モンスーンの世界 (暫定メモ)】より
2023年5月に出た縦書きの新書本。著者のご意向により、出版社からお贈りいただいた。ひととおり読んだら紹介しようと思ったのだが、まだ読みとおせていない。目次を書きぬいたところまでで、暫定読書メモとして出しておく。
著者の業績についてわたしが知っていることは、日本地理学会 吉野賞 への推薦文として書いたものを [別ブログ記事]として再録した。
【[2024-03-22 補足] 本書は、章ごとに、対象の空間的ひろがりがちがう。いわゆるモンスーンアジア (東アジア、東南アジア、南アジア) をあつかう章、さらにひろく北東アジア・シベリアまでふくめている章、日本について論じている章がある。そして、視野は順にひろがっていくわけでもせばまっていくわけでもなく、いりまじっている。別々の章で、それぞれモンスーン地域の特性として論じられていることが、かならずしも同じ場所のことではないことに注意が必要だ。本書の内容はおそらく複数の本になるべきものなので、つぎの機会には、日本に関するもの、アジアあるいはユーラシア全体に関するもの、アジアの水田稲作がおこなわれている地域に関するものを、別々の本にするとよいと思う。】
ひとつ補足情報。ネット上で 田家 (たんげ) 康さんから、図9-4 (257ページ) の図の出典が「(遠藤, 2021)」となっているが、巻末の第9章の注12 (293ページ) の「Endo et al. 2021」に対応する参考文献リスト (298ページ) にある文献 Endo, Kitoh, Mizuta & Ose (2021) Journal of the Meterological Society of Japan の論文にはその図がない、という指摘があった。その論文の著者である気象研究所の遠藤洋和さんの研究所サイトにある著作リストを見ると、論文ではなく「学会等における発表」のなかにつぎのものがみつかった。
遠藤 洋和, 2021: 梅雨と秋雨の過去120年間の長期変動。研究会「長期予報と大気大循環」(2021年1月18日開催)
そして、日本気象学会のサイトの https://www.metsoc.jp/about/research-groups/longforc/workshop2020 のページに、その発表の「拡張要旨」のPDF があり、そのなかの図が本書の図と対応している。安成さんが「(筆頭)著者名, 年」が同じ文献どうしでとりちがえてしまったにちがいない。
【[2023-11-23 補足] その後、遠藤さんの論文が出た。それ以後は参考文献には Endo (2023) としてこの論文をあげるべきだろう。
Hirokazu Endo, 2023: Long-term precipitation changes in the Baiu and Akisame seasons in Japan over the past 120 years (1901–2020). Journal of the Meteorological Society of Japan, 101: 309-322. doi: 10.2151/jmsj.2023-019】
折りかえしのあとにくわしい目次をつける。
== 目次 ==
はじめに
目次
第1章 変化に富む日本の気候 — 季節変化と地域性
– 1. 春 — 花と新緑の季節
– – 「山笑う」季節
– – 菜種梅雨と五月晴れ
– 2. 夏 — 長雨と暑さの季節
– – 梅雨
– – 蒸し暑い夏
– 3. 秋 — 実りと紅葉の季節
– – 秋雨前線と台風の季節
– – 紅葉と時雨の秋
– 4. 冬 — 寒さと大雪の季節
– – 大雪と空っ風
– – 三寒四温
– – 春一番 — 冬から春へ
第2章 地球の気候とその変動のしくみ
– 1. 地球気候を決める 4つの条件
– 2. 地球気候の南北分布と季節変化
– – 日射量の南北分布と季節変化
– – 太陽放射と地球放射 (赤外放射) のちがい
– – 気候の南北分布はどう決まっているか
– 3. 大気の南北循環
– – 低緯度での大気循環 — ハドレー循環と貿易風
– – [コラム 2-1] 地球自転の効果 — コリオリ力 (転向力)
– – 中緯度での大気循環 — 蛇行する偏西風
– – 高低気圧と前線
– – 極域での大気循環と極前線
– – [コラム 2-2] 地衡風とジェット気流
– 4. 水惑星地球は気候をどう決めているか
– – 水・水蒸気・雪氷の相変化の複雑な役割
– – 雲ができると雲はさらに発達する — 潜熱の働き
– – 水の潜熱が駆動するハドレー循環 — 水循環の重要な役割
– – 地球気候を和らげる海洋
– 5. 大気と海洋の相互作用が創り出す地球気候とその変動
– – 大気と海洋の循環はひとつのつながったシステム
– – 熱帯太平洋上の大気・海洋系 — 東西の大きなコントラスト
– – エルニーニョ・南方振動 (ENSO) — 数年周期の気候変動
– – 太平洋十年規模変動 (PDO) — 10~数十年周期の気候変動
– 6. テレコネクションと気候変動
– – テレコネクションとは何か
– – ラニーニャが引き起こす日本の暑い夏
– – エルニーニョが引き起こすカナダの暖冬やフロリダの寒波
第3章 アジアモンスーン — 地球気候における重要な役割
– 1. 夏のアジアモンスーン — 大気と水の巨大な循環
– – 海陸分布が大きく変える北半球の大気大循環
– – アジアモンスーン — ユーラシア大陸とインド洋が作り出した巨大な大気循環
– 2. ヒマラヤ・チベット高原の大きな役割
– – 大気を強く暖めるチベット高原
– – 海洋からの水蒸気がモンスーンを強化する
– – [コラム 3-1] 海洋と大陸の形成・ヒマラヤの上昇
– 3. 東アジアにおける梅雨前線の形成
– – 季節進行における気団のせめぎあい
– – チベット高原の風下側で乾・湿が合流
– – [コラム 3-2] 水田が梅雨前線を強めている?
– 4. アジアモンスーンと砂漠気候はワンセット
– – モンスーン気候から砂漠気候への劇的な変化
– – チベット高原の東西における非対称な気候
– – 東西の非対称な気候形成のしくみ
– – 熱帯偏東風ジェット
– – [コラム 3-3] 高低気圧に伴う空気の収束・発散と上昇流・下降流
– 5. 冬のアジアモンスーン
– – シベリア高気圧とアリューシャン低気圧
– – 東アジア特有の「西高東低」の気圧配置
– – 熱帯アジアの北東モンスーン
– – ヒマラヤ・チベット山塊とロッキー山脈のちがい
– 6. 寒い日本列島をもたらすチベット高原
– – チベット高原が作る偏西風の波動と日本の寒い冬
– – 日本上空のジェット気流は世界一速い
– 7. アジアモンスーンが地球気候の変動に果たす役割
– – インドモンスーンとENSO
– – アジアモンスーンがENSOに影響している!
– – ユーラシア大陸の積雪がアジアモンスーンに影響
– – アジアモンスーンがつなぐ熱帯と中・高緯度の気候の年々変動
第4章 アジアモンスーンと日本の気候
– 1. 日本列島の季節変化と気候の年々変動を決めている要因
– – (1) 大陸東岸 (チベット高原の東側) に位置し、中緯度偏西風帯にあること
– – (2) アジアモンスーンの強い影響下にあること
– – (3) 西部熱帯太平洋の暖水域 (高水温域) の影響を受けていること
– – (4) 日本海によって大陸と隔てられた山岳地形の列島として存在していること
– 2. 春から夏への季節変化 — 日射に対する大陸と海洋の感度差
– – シベリア高気圧の弱まりと太平洋高気圧の強まり
– – 五月晴れのしくみ — 東南アジアモンスーンの開始
– 3. 梅雨入りと梅雨明けの機構
– – 梅雨入りとインドモンスーンの開始
– – 東日本に寒い夏をもたらす「やませ」のしくみ
– – 梅雨明けの機構 — 熱帯太平洋での対流活動の北へのジャンプ
– 4. 季節内の天候のゆらぎ — 季節内変動
– – 準2週間周期変動
– – 数十日周期変動 (マッデン・ジュリアン振動)
– 5. 暑い夏・涼しい夏のしくみ
– – 熱帯太平洋での雲活動の影響 — PJパターン
– – インド洋での雲活動の影響 — インド洋ダイポール (IOD) 現象
– – 偏西風の蛇行 — もうひとつの天候のゆらぎ
– 6. 秋雨と台風の季節 — 夏から秋へ
– 7. 時雨の季節 — 秋から冬への序奏
– 8. 冬の季節風と雪国
– – 世界一の豪雪のしくみ
– – 寒冬暖冬を左右する熱帯太平洋の雲活動
第5章 気候と生物圏により創られてきたモンスーンアジア
– 1. 気候と生物圏は相互作用系
– 2. アジアのグリーンベルト (Asian Green Belt)
– 3. 気候・植生・水循環の密接な関係
– – 気候と植生の関係
– – 光合成は炭素循環と水循環を調節
– – シベリアの森林・凍土・気候の共生系
– – 東南アジアのボルネオ島 — 熱帯雨林と気候の共生系
– – 雷と熱帯雨林
– 4. 森林はモンスーン気候を強化している
– – チベット高原と森林被覆の効果
– – 植生による水の再循環
– 5. アジアのグリーンベルトは生物多様性の宝庫
– – 際立った種の多様性
– – 氷床に覆われなかったグリーンベルト
– – 氷期・間氷期サイクルにより消長するスンダランド
第6章 モンスーンアジアの風土
– 1. 風土とは何か
– 2. 風土論の系譜
– – 和辻哲郎の「風土」論
– – オギュスタン・ベルクの「風土」学
– 3. モンスーンアジアの自然 — 気候・地形・水循環・生態系
– – 豊かなモンスーンアジア
– – 活発な造山運動と沖積平野の形成
– – モンスーンに伴う活発な水循環と季節サイクル
– – 「草木深し」の生態系
– 4. 水田稲作圏の形成
– – 稲作の起源
– – 水田稲作の持続可能性
– – 水田稲作圏 — ひとつの風土の形成
– 5. モンスーンアジアの伝統的社会の形成と変容
– – 多様性と多元性
– – 中国 — ひとつの水利社会
– – 日本 — 小農社会と勤勉革命
– – インド — モンスーンと職分離 (カースト) 制
– – 海域東南アジア — モンスーン (季節風) を利用した交易の世界
– – 大陸域東南アジア — 小規模な自立的生業によるルースな稲作社会
第7章 日本の風土と日本人の自然観の変遷
– 1. 多様で変化に富む日本列島の自然
– – 夏・冬のモンスーンがもたらす多様な地域気候
– – 日本列島の森林分布 — 照葉樹林・ブナ (ナラ) 林・針葉樹林
– 2. 先史時代の自然と文化
– – 照葉樹林文化とブナ林文化 — 日本列島の風土のふたつの基層
– – 気候温暖期と縄文海進
– – 火山大噴火による縄文文化の盛衰
– – 水田稲作の開始 — 弥生時代へ
– – スギ・ヒノキ林の拡大
– – 森林破壊の進行と二次的自然の拡大
– 3. 古代から近世における風土の変遷
– – 荘園の発展と二次的自然としての里山の形成
– – 平安時代の社会・文化への気候変動の影響
– – 「四季のイデオロギー」の形成 — 文学に表れた中世的自然観
– 4. 近世における風土と文化の形成
– – 文明としての江戸システム
– – 「鎖国」 — ひとつの循環型社会
– 5. 近世における自然観の変化 — 俳諧・俳句の歴史から
– – 「俳諧発句 (俳句)」の成立
– – 変革者としての芭蕉
– – 『おくのほそ道』 — 現代日本人の自然観の原点
– – 芭蕉とニュートン — 東と西の自然観・宇宙観
– – [コラム 7-1] 季語について
– 6. 寒冷気候に苦しんだ江戸の経済・社会システム
– – 小氷期
– – 大地震と火山噴火
第8章 モンスーンアジアの近代化とグローバル化
– 1. モンスーンアジアの経済発展 — 独自の風土にもとづく発展径路
– – モンスーンアジアはもともと「持続可能」な社会だった
– – 「足るを知る」価値観の形成
– 2. 「近代化」した西欧との遭遇
– – イギリスの産業革命とモンスーンアジア
– – イギリス・中国・インドの三角貿易
– – 植民地化によるインドの環境破壊
– – [コラム 8-1] 森林破壊がインドモンスーンを弱めた?
– 3. 日本の屈折した「近代化」
– – 西欧の「近代科学・技術」に圧倒された明治維新
– – 混乱する精神風土
– – 「国体思想」を引きずった自然観 — 「近代的」登山を例に
– 4. モンスーンアジアにおけるいくつかの「近代化」
– – 西欧とアジア的伝統の相克
– – インド — 理想 (普遍性) と現実 (多様性) が交錯した「近代化」
– – タイ — 国王による「近代化」
– – 中国 — 毛・周体制から「改革開放」経済へ
– – [コラム 8-2] 周恩来の詩 「雨中嵐山」
– 5. モンスーンアジアの奇跡 — 第二次世界大戦後の世界
– – 化石資源資本主義による世界市場の形成
– – 石油エネルギーと「日本の奇跡」
– – 「日本の奇跡」を担っていた古い精神風土
– – オイル・トライアングルによる「東アジアの奇跡」
– – エネルギー消費量からみたモンスーンアジア
第9章 「人新世」を創り出したモンスーンアジア
– 1. モンスーンアジアは地球環境問題のホットスポット
– – 二酸化炭素増加のホットスポット
– – 巨大都市が集中するモンスーンアジア
– – 広域大気汚染と「日傘効果」
– – 「水に流す」思想 — モンスーン自然観の負の側面か?
– 2. 「地球温暖化」と「広域大気汚染」はアジアモンスーン気候にどう影響しているか?
– – グローバルな影響とローカルな影響
– – インド (南アジア) モンスーンへの影響
– – 東アジアモンスーンと梅雨前線への影響
– – 今世紀末のアジアモンスーン降水量はどうなるか?
– – 冬の日本の雪はどう変わるか
– 3. 水災害の増加と甚大化
– – 地球温暖化は豪雨の頻度を高める
– – モンスーンアジアは水災害のホットスポット
– 4. ヒマラヤ氷河群の縮小と氷河湖決壊
– – モンスーンの雪で涵養されるヒマラヤの氷河
– – 氷河湖決壊洪水 (GLOF) 問題
– 5. 森林・凍土共生系の急激な変化は地球温暖化を加速する?
終章 モンスーンアジアの未来可能性
– 1. 自然の恵みと自然災害の共存
– – 大きな自然災害のリスク
– – 3.11 (東日本大震災) から学んだこと
– 2. 脱炭素社会の鍵を握るモンスーンアジア
– – 化石資源資本主義経済からの脱却を
– – 「世界の工場」としての経済システムの転換を
– 3. 気候変動下での水・エネルギー・食料の安全保障を
– – 東アジアの食料自給率の低さ
– – モンスーンアジア全体での電力ネットワークの構築を
– – アジアのグリーンベルトと調和した経済への転換を
– 4. モンスーンアジア共同体の提唱
– – 人新世を超克するために
– – 「アジアはひとつ」 — モンスーンアジア共同体の可能性
– – 新しい「足るを知る」社会へ
おわりに
注
参考文献
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