吟行のススメ

http://www.tokyostationcity.com/tokyoekimachi/feature/vol26/2805.html 【エキマチ 吟行のススメ】より

俳句の素材を探しながら歩くことを「吟行(ぎんこう)」といいます。

いつも何気なく歩いている道も、「俳句を詠む」という目的があれば、新しい発見があるはず。

そこで今回は俳人の大高翔さんの指導の下、俳句初心者のエキマチ編集部メンバーで、エキマチを吟行してみました。

久保拓英

音楽・映画・日本文学(近現代)などへの興味は深いが、俳句に関しては全く無知な42歳。本誌編集長。

後藤久美

エキマチ編集部員。編集業に役立つかもとはじめた俳句歴は約1年。趣味はアイドル動画鑑賞と植物の育成。

福元 駿

エキマチ編集部の最年少。好きな音楽を聴きながら、近所を散歩するのが日課。俳句を詠むのは小学校の授業以来。

編集協力=小野 和哉、福元 駿(都恋堂) 取材・構成=内藤 孝宏 撮影=荒井 健

ビジネス街「丸の内」は俳句の聖地だった!?

 実は、近代俳句を確立した俳人・高浜虚子が俳句雑誌『ホトトギス』の発行所を最後に置いたのは、丸の内ビルディング、すなわち旧丸ビルの一室(現在は三菱ビルに移転)なんです。虚子は全国各地を吟行しましたが、丸の内の吟行から生まれた句も多く残されています。

「エキマチ吟行」の日は霧のかかったあいにくの天気でしたが、吟行は、基本的に雨天決行です。俳句には雨の句もありますからね。その場で句を詠む必要はなく、俳句の主役となる季語を探しながら見たもの、聞いたもの、感じたことなど、俳句の素材をメモしていきましょう。文庫サイズの歳時記(季語やその解説などが載ったもの) を持っていくと便利です。

 季語というと、動植物の名を思い浮かべる人も多いと思いますが、例えば秋の季語には「体育の日」や「文化の日」などの行事や、「栗飯」「柿」「林檎」などの食べ物も。歩き疲れたらカフェやレストランに立ち寄って、旬のメニューを食べるのも立派な吟行です。

 メモに素材がたまったら、いよいよ俳句を詠んで句会を開きましょう。詠んだ句を無記名で集めてからみんなで閲覧し、感想を話しながら、最後に自分の好きな句に投票します。

 誰がどの句を詠んだかを明かすのは、得票数の多い句を発表した後にすると盛り上がります。「俳句の入門書を読むより、句会に参加するほうが勉強になる」という声も。ぜひ、試してみてください。

俳句・吟行を楽しむための三カ条

一、季語のほか、その場所にあるもの、好きなものから素材を集めよう

一、集めた素材から必ず入れたい言葉を選び、それを中心に詠んでみよう

一、一緒に吟行した人と、俳句の感想を伝え合う句会を開いてみよう


https://ameblo.jp/seijihys/entry-12683184673.html 【吟行句会について】より

吟行句会は通常句会と同様、重要であることは間違いない。

が…、私は、俳句を四半世紀以上やって来て、ふと、気づいた。

自分にも「代表句」という句がいくつかあるが、「吟行」で、そういう句を得た記憶がない…。

ほぼ、いや、全て通常の句会で出したものだ。

正直、他の人たちの吟行句も拝見するが、吟行句会で句に感嘆したことはない。

あったとしても、よくこんなところを見つけたな~。とか、うまくまとめたな~。程度の感嘆である。

そう思うと「吟行句会」って必要あるのかな~、なんて考える。

…しかし、吟行自体はとても楽しい。特に今の僕は吟行がとても楽しい。

草花や鳥のことなど全く知らなかった僕が、今、吟行を通して、さまざまな草花や鳥と出会い、名や姿を知ることが出来る。

なんだか人生が豊かになってゆくような気がする。では…、どうしたらいいのだろう、と考えてみる。

これは「句の作り方」が悪いのだ。今までの作り方ではダメなのだ。なら、「創造」してみようと思った。

「無からの創造」ではなく、「風景から心象の世界へ入って創造」しようと思った。

そう思った時、これは芭蕉の「作句方法」ではないか、と思った。

夏草や兵どもが夢の跡「夏草」という「風景」から「創造」へと入っている。

荒海や佐渡に横たふ天の川「荒海」という「風景」から「創造」へと入っている。

芭蕉がこの句を詠んだ、その日は『曽良随行日記』によれば、荒天で天の川は見えなかった可能性が高い。

写生一辺倒の人はそれでいいかもしれないが、私はこれからそうしてみよう。

しかし…四半世紀以上経って、今頃、気がついたというのも自分ながら嫌になる。

一生懸命やっているつもりでもやはり「怠惰」に俳句人生を送っていたのだ、と反省する。

私はいつも気づくのが遅いのである(苦笑)。


https://nokurashi.com/share/1594 【俳人・堀本裕樹と初春の京都吟行。季節を知り、自分を見つめる|前編】より

プロフィール

堀本裕樹 俳人

ほりもとゆうき。1974年、和歌山県生まれ。國學院大学卒業。俳句結社「蒼海」主宰。二松学舎大学、東京経済大学非常勤講師。俳人協会幹事。2016年度「NHK俳句」選者。2019年度4月より「NHK俳句」第4週「俳句さく咲く!」選者。第2回北斗賞、第36回俳人協会新人賞受賞。著書に句集『熊野曼陀羅』(文學の森)、『俳句の図書室』(角川文庫)、又吉直樹との共著『芸人と俳人』(集英社文庫)、穂村弘との共著『短歌と俳句の五十番勝負』(新潮社)など著書多数。

「俳句」と聞くと、どんなイメージが浮かびますか?

松尾芭蕉、ご年配の趣味、ルールが細かい、難しそう、など、世代によってその印象は異なるかもしれませんが、“17音の世界一短い詩”とも言われる俳句は、今あらためて注目され、若い世代にもファンが広がりつつある文化でもあります。

みなとみらいの“大人の部活がうまれる街のシェアスペース”「BUKATSUDO」では、俳人・堀本裕樹さんを講師にお招きして連続講座「俳句のいろは教室」を2015年2月に開講。2016年4月からは「BUKATSUDOかもめ句会」として、兼題に沿った句を持ち寄る形式で毎月1回の句会を開催し、アットホームな雰囲気で俳句を楽しむ時間を共有しています。

まだまだ寒さが続く2月中旬、堀本さんとBUKATSUDOかもめ句会の面々が集合したのはなんと “京都”! 「RAKURO 京都-THE SHARE HOTELS-」を拠点に行われた、初春の京都吟行の様子をご紹介します。

「吟行」とは、俳句や和歌を詠むために景色のよい所や名所旧跡に出かけることを言います。今回集まったのは講師の堀本さんと、いつもBUKATSUDOかもめ句会に参加する関東からのメンバー、そして京都・三重・滋賀・和歌山など関西各地にお住まいの方々も加わり、計15名。堀本さん主宰の句会に参加経験がある方や、堀本さんの著書を通じてこの世界に興味を持ち、俳句に親しんでいるという共通点で、出発前から早速打ち解けはじめていました。

行程の参考にしたのは、RAKURO京都で宿泊者に提供しているオリジナルマップ。京都の魅力を発信する企画会社「らくたび」とのコラボレーションでつくられており、定番のスポットから2度目、3度目の京都旅行をされる人にも嬉しいディープなスポットも多数掲載されています。今回はRAKURO京都のある丸太町エリアに近い3枚を持って出発しました。

平安時代からの奥深い歴史と広大で豊かな自然を感じられる京都御苑では、咲きはじめたばかりの梅や蝋梅に迎えられました。

「今回は、立春(2月4日)を過ぎているので初春の季語を選びます。自然や人など、風景を細かく見て、俳句の題材になりそうなものを探しましょう」と堀本さんからアドバイスをいただき、いよいよ吟行のはじまりです。

美しい庭園と宮家建築の「閑院宮邸跡」。無料で見学できる展示室には、京都御苑の四季折々の動植物が紹介されていて、なかでも存在感があったのはアオバズクの食痕(親鳥がヒナに餌として昆虫を与えるため、足や羽などを取り除いてを巣下へ落としたもの)の標本。その展示を誰よりも長く見つめていたのは堀本さんでした。

庭園の池には静かに佇む鷺(サギ)が数羽。

「鷺は季語になる?」

「青鷺だと夏の季語。冬鷺だと冬の季語だけど……鷺そのものは季語にはなっていないね」

歳時記をめくり、視界に入るさまざまな情景とこの時期に使える季語を照らし合わせながら歩きます(歳時記はスマートフォンのアプリにもあります)。

少年野球の試合が行われているグラウンドのそばを通りながら、地元の人々にとって京都御苑が身近なくらしの場でもあることを実感しました。

ランチタイムはRAKUROの1F「ツナグ」にて。落ち着いたカフェスペースで、キーマカレーや卵かけ定食などさまざまなメニューをゆっくり味わえる

歩きながら季語を見つける、そのライブ感が吟行の醍醐味

晴れてはいるものの、2月の京都はやはり冷え込んでいます。ときおり雪がちらつく空を見上げて「風花(かざはな)だね」と言う堀本さん。

「風花」は冬の季語なので本来は「季違い」ですが、吟行では実際に見たもの・体験したことを表現するため、こういうときは使ってよいと教わりました。

RAKUROから徒歩20分ほどで到着したのは、江戸幕府初代将軍 徳川家康が築城した世界文化遺産・元離宮 二条城。

連休の中日ということもあり、国内外から詰めかけた観光客で大変な賑わいでした。国宝・二の丸御殿では数々の壮麗たる壁画や襖絵、空間装飾を見学。徳川家の栄枯盛衰と約400年もの歴史を感じながら、踏むたびにきゅっきゅっと鳴る鴬張りの廊下を進みました。

吟行の途中に堀本さんがとある看板を発見。細くて長いアプローチを通った先には隠れ家のようなちいさな喫茶店があり、出迎えてくれた素敵なマスターと、僅かな時間でしたがティータイムも楽しめたのでした

「吟行で見たもの・感じたものをふりかえり、仲間と共有する「句会」」

後編につづく


https://nokurashi.com/share/1548 【俳人・堀本裕樹と初春の京都吟行。季節を知り、自分を見つめる|後編】より

吟行で見たもの・感じたものをふりかえり、仲間と共有する「句会」

再びRAKURO ライブラリーラウンジへ集合し、この日の集大成である句会がスタート。かもめ句会では、このような流れで句会が進みます。

◆出句……短冊に俳句を書き、無記名で提出

◆清記……短冊をランダムに混ぜ、清記用紙に書き写す

◆選句……じっくりと鑑賞し、自分以外の句で気に入ったものを選ぶ

◆披講……自分の名前と、選んだ句を読み上げる。佳作を 1 点、特選を 2 点として点数を足していき、もっとも点数が高かった作品を決定する(点盛り)

◆句評……点数の多かった作品から順に、それぞれが作品を選んだ理由を評する。最後に誰がつくった句かを名乗る

さきほどまでの吟行の風景を思い出しながら一句ずつ鑑賞し、ひとり4句(佳作3句、特選1句)を選びます。

今回出句された45句から、最も多い10点を獲得した句は……

  春雪や藻のさみどりの揺れやまず  なんと、堀本さんの句でした!

「京都御苑の中の庭で、きれいな水が流れる中に藻が茂っていました。その藻の緑の美しさに刺激されて作った句です。春雪の“白”と、藻の“さみどり”を対比させたシンプルな写生の一句ですね」と堀本さん。

次に得票の多かった句は 食痕の翅(はね)曼荼羅や冴返る こちらも堀本さんの句でした。「まるで昆虫採集の標本箱のように展示されていたアオバズクの食痕に触発され、どうしてもこれを詠みたいと思って。曼荼羅のように見えたので“翅曼荼羅”と表現したのと、久々に京都を訪れて体感したこの寒さを、寒が戻るという意味の季語『冴返る』を用いて一句にしました。食べ残しの羽にも『冴返る』を感じたのです」

そのほかにも、この日この時、この面々で京都を巡ったからこそ生まれた句がたくさんありました。

大文字山より御所へ風花来 (幸代)      行列の鴬張りを踏む余寒 (かすみ)

梅の香やつぎつぎうつる京都弁 (千佳)    春浅き回り廊下を譲り合ふ (みこと)

鍾馗さんに送り出されて春の雪 (果歩)

目の前にある季節と自分の思いを、考えに考えて17音にまとめ、残すこと。句会を通じて仲間とそれを共有することで、思い出がより印象深くなる。旅の記録は、写真やお土産だけではないのだと感じることができた、充実した句会の時間でした。

俳句をつくるという行為がもたらすものは?

2万歩を超える徒歩移動の疲れを、京野菜のおいしいお料理で労いながら、みなさんにとって俳句をつくることがどうくらしと結びついているかを尋ねてみました。

「日記の代わりに毎日つくっている。生活に彩りが生まれ、どこへ行っても何を見ても句材にならないかとアンテナを張り、時間を有意義に過ごせるようになった」

「始めてまだ3年位。すでに生活の一部であり、アクセントになっている。いつか句集を作りたい」

「仕事よりも大切な趣味。俳句をやるようになって、仕事に振り回されない生き方に近づけている気がする。俳句つながりの友人もできた」

「日常から離れて、自分の世界に没頭出来る大事な時間。季語を勉強することで、日本語の美しさをあらためて感じられる」

俳句という共通言語のもと、京都に集った堀本さんと東西の仲間たち。また句会で会いましょうと約束し、西のメンバーは帰路へ、東のメンバーは宿泊先のRAKURO京都へと別れたのでした。

俳人・堀本裕樹さんが思う「俳句をつくるくらしの魅力」とは 今回ご一緒した堀本さんに、あらためてお話を伺いました。

―初春の京都吟行はいかがでしたか?

久しぶりに京都に来ましたが、独特なこの空気、雰囲気を感じられて楽しかったですね。雑誌やテレビの企画でも吟行をする機会がありますが、やはり多少は緊張するのですが、今回は、BUKATSUDOの仲間と素で楽しめたからこそできた句もありました。

句会には出さなかった句をお見せしましょうか?

  春雪や金箔の照る桜の間

二条城、二の丸御殿で見た「桜の間」がとても豪奢な空間で。その桜の間と春の雪を取り合わせて表現することで、絢爛豪華な光景が少しでも詠めたらと思いました。

―俳句を生業とする人として、俳句をつくるくらしの魅力をどう感じていますか?

あらゆるものごとに対して丁寧に接するようになることが、俳句を取り入れたくらしのよいところ。俳句を詠もうという気持ちでいると、ほんの些細なことであってもそこにある季節や自然の息吹に気づいたり、自他の思いを感じたりと敏感になります。さらにそれを、十七音の言葉に反映するという行為で、自分の生活をひとつひとつ確かめて、見つめていくことにつながるのだと思います。

―どんな人に俳句をつくるくらしを薦めたいと思いますか?

今のくらしに何か足りない。もうひと味ほしい、そんなふうに感じている人にはうってつけだと思います。俳句をすることはきっと、生活のよいスパイスになります。

季語を知り、季節の事象を知っていくことで生まれてくる豊かなものは、俳句をやってみないとやはりわからない。難しそうとためらっている人や、少しでも興味を持っている人は、すぐ飛び込んだほうがお得ですよと伝えたいですね。早く始めれば、それだけ楽しい時間を過ごせますから。

BUKATSUDOで毎月開催しているかもめ句会は、気軽に参加できるだけでなく、吟行や食事句会などの企画もたまにあり、初心者でもいろいろな俳句の楽しみ方が味わえます。

始めた当初はこれほど長く続くと思っていませんでしたが、より深めていこうという人がこれからもっと増えるはず。僕も昨年に「蒼海」という俳句結社を立ち上げて活動していますが、まず体験してみたいという人にとっては、BUKATSUDOは敷居が低く、迎えてくれるいい仲間も揃っているので最適だと思いますよ。

コズミックホリステック医療・現代靈氣

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吾であり宇宙である☆和して同せず  競争でなく共生を☆

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