佐藤文香・句集『菊は雪』左右社
桃の葉の裏へ這ひ入る星あかり 佐藤文香
夕野分こころ拾つてゆきにけり 同
岸までを夜空の満たす朧かな 同
ひとつある夕日を冷やす地平かな 同
かしはばあぢさゐ祈りは喉をのぼりくる 同
冬のみづひき惑星の夜と夜を結ぶ 同
ゆめにゆめかさねうちけし菊は雪 同
http://sayusha.com/catalog/books/pkikuwayuki【俳句作家・佐藤文香の代表作、誕生!】
第一句集『海藻標本』で宗左近俳句大賞を受賞し、第二句集『君に目があり見開かれ』や編著アンソロジー『天の川銀河発電所』で、ジャンル内外に読者を拡大した俳句作家・佐藤文香の集大成となる、充実の第三句集。
「早稲田文学増刊 女性号」掲載作品「学園東町」を含む全550句、句集制作ドキュメンタリー「菊雪日記」を収録。日本語定型詩の新たな核となる一冊。
何のために俳句を書いているかと聞かれたら、俳句ができることの拡張のためだとこたえる。先人が既に耕したことのある土地だとしても、今自分が耕し直すことには意味があると思いたい。(「菊雪日記」より)
〈収録俳句より〉
みづうみの氷るすべてがそのからだ
友達のごとしよ海苔の天麩羅は
雪降ればいいのに帰るまでに今
マルセイバターサンド常緑樹の林
Call it a day クーラーながら窓開けて
ひと夏のゆくへの虹を撫で消しぬ
香水瓶の菊は雪岱菊の頃
https://www.setabun.or.jp/hontowa/hontowa20210528.html 【佐藤文香さん(俳句作家)が選ぶおもしろい俳句の本3冊】より
佐藤文香
(俳句作家)
1985年、兵庫県生まれ。2006年、第2回芝不器男俳句新人賞対馬康子奨励賞受賞。第1句集『海藻標本』にて宗左近俳句大賞受賞。ほかに句集『君に目があり見開かれ』、俳句入門書『俳句を遊べ!』、俳句アンソロジー『天の川銀河発電所 Born after 1968 現代俳句ガイドブック』、掌編小説集『そんなことよりキスだった』など。
1『めくってびっくり俳句絵本』(全5巻)村井康司 編
俳句は音の詩。意味がわからなくても口ずさめれば、もう半分はわかったと言っていい。だから、すべての俳句はこどもにもちょっとわかるんです。〈跳箱の突き手一瞬冬が来る(友岡子郷)〉。この句なんかは、音だけでなく中身についても、こどもの方がよくわかるかもしれませんね。
『めくってびっくり俳句絵本』には蕪村や芭蕉、正岡子規から現代の作家まで、いろんな俳句が収録されています。まずはどんな句か考えてみましょう。ページをめくると少し解説があって、なるほど、と思えるはず。クマの親子や鳥たちと一緒に、親子で驚きながら俳句が楽しめる絵本です。
2『ただならぬぽ』田島健一
ぽこんぽこんと浮かんできた言葉たちが、ぶつかり合いとろけ合い、励まし合ってひとつになった。それが、どうにもなんとも絶妙に、田島健一の俳句なのです。〈ただならぬ海月ぽ光追い抜くぽ〉、この「ぽ」はなんだろう。海月?光?空気?それとも、ただの「ぽ」? 〈グリコ横取り僕の横ふかい霧〉、僕は誰とどこにいるんだろう。グリコの赤に迫る霧。僕らの仲は大丈夫かな。謎を孕むことで、切実な印象をもたらす俳句たちを、自分の想像力で感じに行きましょう。
3『俳句の魅力 阿部青鞋選集』阿部青鞋
〈流れつくこんぶに何が書いてあるか〉、こんな俳句があっていいのか! 〈蓮根は飛んでみたしと思いけり〉、こんなこと考えたこともなかったなぁ。〈梅の花匂ふや匂ふところまで〉、たしかに言われてみればそうだ。阿部青鞋の句を読むと、ものごとの本質や世界の真理のおもしろさを、軽やかに味わうことができます。本書は、そんな青鞋の俳句のみならず、彼が俳句とどう向き合っていたかを随想や解説によって知ることができる、貴重な一冊。俳句上級者にもオススメです。
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