第2回鴎座通信句会 選句発表!新型コロナウイルスに負けない

https://plaza.rakuten.co.jp/kamomeza/diary/202006010000/   【第2回鴎座通信句会 選句発表!新型コロナウイルスに負けない】より

第2回鴎座通信句会 選句結果発表

第2回鴎座通信句会は、第1回の好評を踏まえ、みなさんに呼び掛けたところ第1回を越える47名の参加となりました。計235句。みなさんのご協力に感謝します。選句と講評は作者名を伏せて鴎座代表、編集長,副編集長・顧問などに依頼しました。

また投句された方の互選(5句選)も行いました。

句番号はランダムに変換されたものです。結果は全投句者にメールまたはFAXでお返しします。また次号「鴎座」に発表するとともにFACEBOOKなどにも発表します。次回(第3回)も開催しますので、よろしくお願いします。

2020年6月2日                   鴎座俳句会 代表 松田ひろむ

〈第2回鴎座通信句会結果〉作者名は特選のみ追加記入しました。他は一覧をご覧ください。

石口  榮(編集長)選

特選 30 カナ文字に疲れ疲れて冷奴    (宮 沢子)

85 クラスター発生空豆が泣いている

100 コロナ水無月てるてる坊主ありがたく

143 スーパーの入口出口風五月

193 緩む日のやっぱり苺つぶそうか

211 四葩咲く有事であってもなくっても

223 白亜紀の匂い微かに木下闇

(選評)仮名とは漢字(真名)をもとに日本で作られた文字。平仮名と片仮名を指す。特選にいただいた「カナ文字」の句は連日テレビ、新聞等で目にするコロナ関連の文字でコロナウイルス、クラスター、ロックダウン、オーバーシュート等々。「疲れ」の繰返しに疲労感と、季語「冷奴」の付かず離れずで絶妙だった。ただ「カナ文字に」でなく「カタカナに」が単純でより良かったと思える。85の「クラスター」の句、空豆が泣いていると言われると納得させられる不思議さに共感。100の「コロナ水無月」の句はストレートな表現ながら、てるてる坊主の御利益に感謝、実感であろう。

小高 沙羅(副編集長)選

30 カナ文字に疲れ疲れて冷奴

47 コロナウイルス万緑の夜の匂い

85 クラスター発生蚕豆が泣いている

106 休校の蛍袋を空けておく

116 パニックの脳によく効くけしの花

148 ハーモニカのように食べよう夜の鮎

特選193 緩む日のやっぱり苺つぶそうか   (小平 湖)

(選評)この句はコロナウイルス(感染症)とは書いてはないが、もちろんコロナウイルスのこと。5月のゴールデンウイーク明けまで緊急事態宣言が発令され国民は皆まじめに自粛を続けた。一日の感染者数に一喜一憂し、いよいよ解除のニュース。誰もが待ち望んでいて、あちこちに人が出始めたが、政治家も緩みがあると発言。こんな日、こんな時クラスターをつぶすかのように苺をつぶそうかとの発想。とり合わせのうまさに脱帽した。

古川 塔子(副編集長)選

41 竹婦人不要不急と言われても

特選 47 コロナウイルス万緑の夜の匂い(呉羽 陽子)

99 トマト茄子育て男の秘密基地

108 三密を避け青梅のふくらむよ

111 野川仙川八十八夜の水奔る

188 物忘れを度忘れにしてすべりひゆ

222 桐の花背中はだまって見せるもの

(選評)特選の句。この時期コロナウイルスから離れられない現実感。緊急事態宣言(自粛)からやっと解放されたが、これから「ウイズコロナ」の暮しが始まる。コロナ時代の耳慣れない言葉の多多、まだまだ先の不安定。句は「コロナウイルス」でしっかりと切れ「万緑の夜の匂い」という安らぎの発見で救われた。感覚も形も良い句であった。

宮  沢子(顧問)選

7  窓を打つ卯の花腐し避病院

41  竹婦人不要不急と言われても

85  クラスター発生蚕豆が泣いている

111 野川仙川八十八夜の水奔る

特選137 にっぽんの真空地帯余り苗   (川崎果連)

211 四葩咲く有事であってもなくっても

221 更衣たとえば自粛の一ページ 

(選評)特選にいただいた137は「にっぽんの真空地帯」に、小さな小さなコロナウイルスでも、侵入できなかったというのだ。その「真空地帯」とはどこだろうか。かつて「真空地帯」という野間宏の小説があった。映画は山本薩夫監督、木村功主演。その真空地帯とは旧軍隊のことだった。この句の「真空地帯」とは、いろいろな解があるだろうが、過疎と呼ばれている岩手県のことかもしれない。岩手県にはまだ感染者が出ていない。「余り苗」とは田植えをした時に残った苗のこと。田の隅に捨てられてあるように見えるが、いざというときには植え替えることもできる大切なもの。それも農作業の知恵で日本の底力と思える。真空地帯と余り苗の取り合わせ。素晴らしい作品であった。

鈴木 砂紅(招待)選

16 コーヒーの封切る香り業平忌

61 「オーケーグーグル」六月ならば日野てる子

72 花占いマーガレットは嘘をつく

99 トマト茄子育て男の秘密基地

106 休校の蛍袋を開けておく

特選148 ハーモニカのように食べよう夜の鮎(斎藤 藍)

203 生意気な尻を競いし実梅かな

(選評)特選句。鮎をハーモニカのように食べることの爽快さ、遠慮のなさが愉しい。日本的な美的感覚を取っ払い、無心に食欲を満たす姿を活写して印象深い。「コーヒー」は業平忌とのおしゃれな取り合わせの妙。「オーケーグーグル」と「トマト」の句は音声検索と畑作りという現代の高齢者の日常の多様性に惹かれた。「花占い」は花であるマーガレットが嘘つき女だと思わせる確信犯的俳句。「休校」「生意気」の二句は、いずれも季語の現実感と象徴性をうまく捉えていた。

松田ひろむ(代表)選

特選205 青時雨けふのあとには今日のなき    (飯島 智)

(選評)「けふのあとには今日のなき」とは、今日という日は今日だけという意味だけではなく、果たして明日はあるのかのという現代の不安の表出であろう。青時雨とは雨後など樹から落ちてくる水滴を時雨に見立てたもの。青葉時雨とも樹雨(きさめ)ともいう。これも不安感に通じるが青が明るい。なお類想類句をチェックしてみたが問題はないと判断して特選にいただいた。〈綿虫やきのふいづこに今日こゝに〉水原秋櫻子(『緑雲』)、〈今日ありて明日はなきもの蟻の道〉田川飛旅子(『邯鄲』)、〈今日の知恵けふ使ひきり椎の花〉能村登四郎(『寒九』)

準特選 61「オーケーグーグル」六月ならば日野てる子(田辺 花)

 オーケーグーグルとはスマホの音声検索のこと。それと六月と日野てる子(一九四五‐二〇〇八)との関係は理ではなく感覚の問題だろう。日野てる子はハワイアン出身で一九六五年に「夏の日の想い出」で一世を風靡した歌手。

準特選 72 花占いマーガレットは嘘をつく    (夢見昼顔)

 マーガレットはキク科の園芸植物。花言葉は「恋占い」であるので、付き過ぎといえば付き過ぎである。しかし英語圏の女性名で、日本では少女漫画の雑誌名ともなっている。期待が大きければ大きいほど嘘はショック。その女性に当てはまるのは人それぞれであろう。ちょっと甘くちょっと毒のある一句である。

準特選125 花水木パンデミックのうつし世に (白石みずき)

 特段なにを語っているわけではないが、ハナミズキとパンデミックの対比。空に向かって咲くようなハナミズキは街路樹に多くアメリカヤマボウシともいう。パンデミックなどという言葉はわずか数か月前までは無縁の言葉であった。その感慨の一句。

その他の入選句(なるべく講評を多くとの要望がありましたので短評を付しました。)

1 でで虫が宇治十帖で乾涸びる     古川 塔子

 源氏物語も宇治十帖までたどり着くと疲れはてる。ここは「でで虫が」でなく単に「かたつむり」でいいだろう。「が」の助詞は避けたい。

7 窓をうつ卯の花腐し避病院     荒井  類

 私の「卯の花腐し」は窓を打つイメージではないが、それはそれ。避病院とは隔離病棟のころだろうか。古語復活もコロナ現象。卯の花腐しも虚子の句のように激しいときもある。

谷川に卯の花腐しほとばしる      高浜 虚子

一つ家によよと卯の花腐しかな     深川正一郎

卯の花腐し君出棺の時と思ふ      石田 波郷

めんどりをひねる卯の花腐しかな    後藤 貴子

卯の花腐しきぬぎぬを知りつくしけり 加藤かけい

卯の花腐しハンガーに兄を掛けておく 池田 澄子

16 コーヒーの封切る香り業平忌     杉浦 一枝

業平はいい男の代名詞。もしかしてコーヒーの香りは男の香りだろうか。

35 自粛二か月アンネのバラは自由     木野 俊子

 自粛といっても恐怖のなかのこと。それはアンネの隠れ家に通じることかも知れない。

47 コロナウイルス万緑の夜の匂い  呉羽 陽子

 万緑は生命力の代名詞。前述の一枝さんの句もそうだが、コロナ禍では臭覚に敏感になった。

56 億劫になることもあり田水沸く     行成 知子

 農作業の過酷さは炎天下のでのそれ。田水沸くはもっとも暑いころ。「億劫になることも」ととぼけている一句だがそれはイロニー。

57 ハグ出来ず話も出来ず夏の蝶     吉村 きら

93 テレワーク手縫いマスクのほめ言葉 増田 萌子

99 トマト茄子育て男の秘密基地 安原南海子

少年なら秘密基地は分かるが、ここは男。いくつになっても男の秘密基地がある。それが家庭菜園。

106 休校の蛍袋を開けておく 小平  湖

111 野川仙川八十八夜の水奔る 中條 千枝

 野川仙川と重ねてリズムが生まれた。夏も近づく八十八夜の心弾む気分である。水奔るが景。

115 聖五月手帳に未来地図はさむ 須田 正子

121 走り梅雨コロナ籠りに止め刺す  金丸 善信

134 福の無い令和なれども清和くる   石黒 宏志

 令和になっていいことがあったのだろうか。多事多難の現実だが今年も清和節(旧暦四月朔日)がやってきた。

135 鰻食べよう見えない敵に疲れぎみ 石口りんご

139 五月晴れ机上登山をウイルス禍     安藤 利亮

144 コロナ鬱お花畑に身を隠し 磯部 薫子

 お花畑は高山植物の開花のころ登山に関連した夏の季語。鬱々としたコロナウイルス禍。高山のお花畑なら気持ちがいいだろう。

157 きらきら欺瞞あじさいの修飾語     栗原かつ代

 アジサイは移り気。それを欺瞞と言っているのだろう。

179 コロナウイルス蚊帳吊草に隠れよう 小髙 沙羅

191 三密と無縁の田植え腰かがめ 辻田ちか子

220 つばくらめ一人で来てと言ったのに 宮  沢子

(コロナのこと)

コロナとは「鴎座」2020年4月号「ひとくち用語辞典」でも書いたように、もともとクラウン(crown)の代名詞。王冠、光冠、光環といってもいい。

したがってコロナといって無条件で新型コロナウイルスのことや、その感染症のこととするのは誤りである。ただ原義を知った上で「コロナ対策」「コロナ禍」「コロナ鬱」「コロナ不況」などとするのは新聞などでも使われているので許容してもいいだろう。その他に「コロナ籠」など。

コロナ燃え大向日葵に女(ひと)佇てり    先手院白風                           

向日葵に赫(かがやく)くコロナ夕日没る   千代田葛彦

先手院白風は「京大俳句」で、これがもっとも先駆的な用例。葛彦は「馬酔木」。どちらも向日葵を太陽に見立て、花弁をコロナとしているところは同工異曲である。

コロナは太陽と同じく明るさ生命力の象徴で、社名や商品名(暖房器具など)にもコロナが使われた。トヨタ自動車のセダンのコロナは1957年より2001年まで生産されていた。メキシコの代表的なビールはコロナビール。山口誓子主宰の「天狼」にもコロナ賞があった。(「鴎座」2020年4月号)

(互選高点句) 丸数字は点数

106 ⑥ 休校の蛍袋を開けておく     小平 湖

99 ⑤ トマト茄子育て男の秘密基地     安原南海子

85 ④ クラスター発生空豆が泣いている 鈴木砂紅

111 ④ 野川仙川八十八夜の水奔る     中條千枝

193 ④ 緩む日のやっぱり苺つぶそうか 小平 湖

220 ④ つばくらめ一人で来てと言ったのに 宮 沢子

1 ③ でで虫が宇治十帖で乾涸びる     古川塔子

47 ③ コロナウイルス万緑の夜の匂い 呉羽陽子

61 ③ 「オーケーグーグル」六月ならば日野てる子 田辺 花

72 ③ 花占いマーガレットは嘘をつく 夢見昼顔

177 ③ 卑弥呼になろうかな夏の月きれい 木野俊子

7 ② 窓をうつ卯の花腐し避病院     荒井 類

16 ② コーヒーの封切る香り業平忌     杉浦一枝

30 ② カナ文字に疲れ疲れて冷奴     宮 沢子

31 ② 雲の峰オキシドールの沁みて泡 夢見昼顔

41 ② 竹婦人不要不急と言われても     金丸善信

70 ② 正面は向かないアマビエ五月尽 田辺 花

96 ② 検察庁法狂言回しの雨蛙     信岡さすけ

108 ② 三密を避け青梅のふくらむよ     増田萌子

115 ② 聖五月手帳に未来地図はさむ     須田正子

125 ② 花水木パンデミックのうつし世に 白石みずき

148 ② ハーモニカのように食べよう夜の鮎 斎藤 藍

188 ② 物忘れを度忘れにしてすべりひゆ 石口りんご

211 ② 四葩咲く有事であってもなくっても 古川塔子

217 ② 外出の是非を問われて牛蛙     宮川 夏

222 ② 桐の花背中はだまって見せるもの 白石みずき

223 ② 白亜紀の匂ひ微かに木下闇     須田正子

(鴎座通信句会の継続について)

今回の新型コロナウイルス感染症から「テレワーク」(通信情報技術を利用した遠隔労働)という言葉も一般化したが、私たちの通信句会も図らずもそれに沿ったものとなった。テレ句会、ネット句会といってもいいが、やはり日本語で〈通信句会〉が分かりやすいだろう。せっかく生まれた新しい出会いもあるので、コロナ禍以降も継続する方向としたい。みなさんのご意見をお寄せください。

(第2回全句)

1でで虫が宇治十帖で乾涸びる 古川塔子

2翡翠を追ってカメラの群れが立つ 近田吉幸

3卯の花腐し皿に一個のメロンパン 古川塔子

4テレワーク短パンの子の見え隠れ 石口りんご

5疲れ止め(だれやめ)に溶かす香りやすいかずら 金丸善信

6クレアと云うカーネーションは長野より 斎藤 藍

7窓をうつ卯の花腐し避病院 荒井 類

8天網恢恢森友の嘘に田水沸く 白土正江

9田植え機のあと苗の列遠浅間 安藤利亮

10蓮の花彼女はいつも左側 中内火星

11スマホにてこずっている汗の乳房 木野俊子

12すれ違う鎖骨に黒子薄暑かな 江原玲子

13言い得て妙髪切虫と言うバーバー 橋本寿江子

14風評はおそろしきもの蛇苺 金丸善信

15さくらんぼお取り寄せしてまだコロナ 斎藤 藍

16コーヒーの封切る香り業平忌 杉浦一枝

17桑の実の色づく頃の俳句道 小髙沙羅

18竹の子煮フランス料理に変心 橋本寿江

19蟷螂生まれる三密解除はあと少し 磯部薫子

20スニーカーは娘のお古夏草踏む 鈴木砂紅

21オロナミンC飲む少女の半ズボン 中内火星

22健やかな今朝の五歳や緑さす 江原玲子

23家計簿に行動記録夏帽子 行成佳代子

24存へて昭和令和や夏の蝶 飯島 智

25夏の夕中高生の草野球 行成知子

26菖蒲湯や荒びし今を忘れたい 安原南海子

27まだ開かぬ扉のありて朴散華 辻田ちか子

28充電完了スマホちょろりと目借時 安原南海子

29僕のマスクはママの手作りさくらんぼ 石口りんご

30カナ文字に疲れ疲れて冷奴 宮 沢子

31雲の峰オキシドールの沁みて泡 夢見昼顔

32幾百の影あつめたる七変化 近田吉幸

33放埓な漢の匂い栗の花 石口 榮

34思い切り薔薇をたたいて通り雨 杉浦一枝

35自粛二か月アンネのバラは自由 木野俊子

36黄菖蒲や背筋伸ばしてはじめおり 行成知子

37釣銭の切れた自販機旱梅雨 夢見昼顔

38二の腕の昭和の押印種痘痕 夢見昼顔

39藤房をゆらし目白の遊ぶらし 岩渕純子

40祖母として定位置決まり柿若葉 安原南海子

41竹婦人不要不急と言われても 金丸善信

42まつすぐにのびてねじれてねぢれ花 齋藤美知子

43しばらくは故郷の香をちまき剥く 安藤利亮

44母の日や暮らしの色を塗りなおし 杉浦一枝

45油照り脱水症の活断層 夢見昼顔

46武骨なるかぼちゃの芯のがらんどう 川崎果連

47コロナウイルス万緑の夜の匂い 呉羽陽子

48毛虫焼くアンネ・フランクの青い空 磯部薫子

49実豌豆莢から飛び出す咳ひとつ 石黒宏志

50白雲に揺らぐポピーや火炎土器 近田吉幸

51コロナ熱中症六畳一間の大西日 翠 雲母

52手折るとき黙礼しばし夏蕨 辻田ちか子

53外出自粛種苗売り場の賑わえり 安原南海子

54卯の花腐しステイホームの全開に 小平 湖

55鍋の底まるく磨きぬ麦こがし 荒井 類

56億劫になることもあり田水沸く 行成知子

57ハグ出来ず話も出来ず夏の蝶 吉村きら

58はしり梅雨平熱三たび確かめて 松田ひろむ

59柿若葉落とす影まで深緑 岩渕純子

60雨蛙十歳だった手から手へ 田辺 花

61「オーケーグーグル」六月ならば日野てる子 田辺 花

62新樹光嘘と知りつつ相槌を 小林則子

63巣ごもりや日に三回の熱測り 高橋透水

64ラジオ日本聴きながらパセリを残す 中内火星

65ステイホームべそかかないで汗かいて 杉浦一枝

66三月の空スカイツリーは墓標  荒井 類

67静かに混むハッピーロード夏きざす 白石みずき

68こんこんと池青くして橡若葉 齋藤美知子

69自粛して蕗の苦みのほどの良き 中村ふみ

70正面は向かないアマビエ五月尽 田辺 花

71ほろ酔の父なつかしき野蒜和 村田和子

72花占いマーガレットは嘘をつく 夢見昼顔

73竹の子の輪切り馬蹄のごときかな 村田和子

74さくらんぼ愚問発する大切さ 荒井 類

75猫の子の自粛疲れのふりをして 小平 湖

76病みてより人間となる柿若葉 岡崎久子

77まだともう背中合わせの日日草 吉村きら

78燕子花少し悲しきことのあり 齋藤美知子

79PCRと一筆書きに春の雲 白土正江

80都市封鎖牡丹たよりに帰りなさい 古川塔子

81初鰹言い訳にして妻を見る 石黒宏志

82男衆総出の村の溝浚え 白土正江

83死者十人明日はどうなる閑古鳥 宮 沢子

84人間は自粛ウイルス夏仕様 中村ふみ

85クラスター発生空豆が泣いている 鈴木砂紅

86髪なぶる風の湿りや走り梅雨 須田正子

87コロナ禍の不精の髪よ夕薄暑 高橋透水

88テレワーク時々キャンプごっこして 小髙沙羅

89玄関に猫の迎えや花うつぎ 近田吉幸

90薬降るにはたずみには映る影 飯島 智

91たんぽぽを大切にする国でありたし 呉羽陽子

92青田風体内時計巻き戻す 鈴木砂紅

93テレワーク手縫いマスクのほめ言葉 増田萌子

94結局は人はひとりで著莪の花 小髙沙羅

95アマリリス少女の中に女いて 吉村きら

96検察庁法狂言回しの雨蛙 信岡さすけ

97煽情の血の色秘めし花石榴 村田和子

98背番号なきユニフォーム雲の峰 川崎果連

99トマト茄子育て男の秘密基地 安原南海子

100コロナ水無月てるてる坊主ありがたく 松田ひろむ

101蟻の誤算明暗分けて別れゆく 翠 雲母

102ほどの初夏足つぼマットああ痛い 信岡さすけ

103毀ち家に見れば男と冷蔵庫 中内火星

104密接も密着もありキャベツ抱く 松田ひろむ

105薫風やいなせな車夫の耳飾り 須田正子

106休校の蛍袋を開けておく 小平 湖

107野球ゴルフもかもう放っておいてよ鶯鳴く 大山賢太

108三密を避け青梅のふくらむよ 増田萌子

109なんだろなよくよく見れば蝌蚪の紐 大山賢太

110鍵盤を跳ねる指先五月晴れ 岩渕純子

111野川仙川八十八夜の水奔る 中條千枝

112駅弁の小箱にあふる夏の海 岡崎久子

113母と子に自由不自由カーネーション 吉村きら

114鳥海山田水に雪形映し夏 岩渕純子

115聖五月手帳に未来地図はさむ 須田正子

116パニックの脳によく効く罌粟の花 翠 雲母

117曼陀羅華天使何人居るのかな 大山賢太

118麦秋の記憶の中の原節子 石口 榮

119粽結ふ母のてつきを見てをりぬ 齋藤美知子

120薫風やカレーの献立月曜日 小林則子

121走り梅雨コロナ籠りに止め刺す 金丸善信

122繭に書く令和の口のよく喋る 信岡さすけ

123みどり児と猫の足裏夏座敷 橋本寿江子

124葉桜やコロナ禍減りて心霊写真 翠 雲母

125花水木パンデミックのうつし世に 白石みずき

126身を守るために今年は武具飾る 中村ふみ

127初夏の心も水を欲しがりて 中村ふみ

128夏山や半島の型俯瞰する 行成知子

129風薫る転ばぬ先に杖あれば 小髙沙羅

130一家族「おひとつ限り」夏立てり 白石みずき

131軽鳬の子の第二波三波やりすごす 小平 湖

132中国は近くて遠し夏の雷 宮川 夏

133母の日の母に似合いの赤い靴 増田萌子

134福の無い令和なれども清和くる 石黒宏志

135鰻食べよう見えない敵に疲れぎみ 石口りんご

136レタス食む巴里の朝など考えて 増田萌子

137にっぽんの真空地帯余り苗 川崎果連

138朝日さす橡の花見はこの位置で 辻田ちか子

139五月晴れ机上登山をウイルス禍 安藤利亮

140ゆすらうめ友達以上と言われても 岡崎久子

141自粛てふ修行の日々や木葉木菟 宮川 夏

142薫風や手縫いのマスク子が親に 中條千枝

143スーパーの入り口出口風五月 小林則子

144コロナ鬱お花畑に身を隠し 磯部薫子

145柳絮飛ぶいやはやパンデミックかな   呉羽陽子

146燕来るパンデミックの屍越え 白土正江

147掘りおこす苗の身の丈日日草 田辺 花

148ハーモニカのように食べよう夜の鮎 斎藤 藍

149たんぽぽの絮芸術は爆発だ 石口 榮

150麻雀もカラオケもなく五月尽 高橋透水

151鶯谷の鶯張りの寺鶯谷渡り 大山賢太

152変えてみるテーブルクロス今朝の夏 斎藤 藍

153玉虫と出合いのものや厨子千年 信岡さすけ

154たっぷりの暇ある暮し夏に入る 白石みずき

155青田風ウーバーイーツの漕ぐペダル 江原玲子

156万緑を歩く跣の犬を連れ 鈴木砂紅

157きらきら欺瞞あじさいの修飾語 栗原かつ代

158奪衣婆の目玉光りて木下闇 行成知子

159かたつむり不要不急の歩みかな 石口 榮

160自分流の四文字熟語薔薇の昼 杉浦一枝

161夏籠や非日常が日常に 行成佳代子

162クルーズ船袖で汗拭く港街 宮川 夏

163謝ればそれですむこと心太 石口 榮

164てにをはのあの手この手に赤い薔薇 宮 沢子

165不要不急さつき咲いたと長電話 宮 沢子

166つばな流し離れて座るコロナ禍に 中條千枝

167風鈴はゆれて右利き左利き 中村ふみ

168家中に竹の子ご飯香りけり 斎藤 藍

169風光る宅配便の車にも 小林則子

170茉莉花の薫りに停まるポメラニアン 近田吉幸

171さみだるるステイホームやホームレス 川崎果連

172だれもいない夏の海エメラルドグリーンになりにけり 大山賢太

173夏の蝶ひとり笑いが上手くなる 呉羽陽子

174道中合羽の急ぎ旅かや夏燕 荒井 類

175昼顔や立ち位置ライン越えている 栗原かつ代

176体温計さがす日バラの密と蜜 呉羽陽子

177卑弥呼になろうかな夏の月きれい 木野俊子

178樟青葉一歩踏みだす変声期 江原玲子

179コロナウイルス蚊帳吊草に隠れよう 小髙沙羅

180グー・チョキ・パー蒼天つかむ花辛夷 須田正子

181短夜やことば探しの脳挫傷 木野俊子

182薄暑光身に覚えなき疵赤き 飯島 智

183濡れ衣はなんとでも着せ青蜥蜴 栗原かつ代

184雨の日や蕗剥ぐ指を遊ばせて 辻田ちか子

185流蛍や母の軌跡と重ね合う 磯部薫子

186蝦蛄剥いてよそ行きの顔脱ぎ捨てる 栗原かつ代

187青空や無住の旧家棕櫚の花 安藤利亮

188物忘れを度忘れにしてすべりひゆ 石口りんご

189遥かなる卯波開かれざる海辺 岩渕純子

190人肌の白湯若葉風の中 岡崎久子

191三密と無縁の田植え腰かがめ 辻田ちか子

192夏マスク畳んで捨てる今日の鬱 岡崎久子

193緩む日のやっぱり苺つぶそうか 小平 湖

194窓口のビニール越しに薄暑光 行成佳代

195筍ごはん母逝きしことさわさわと 増田萌子

196月光に浮巣ぽっかりコロナ鬱 磯部薫子

197芍薬の細腰にして粘り腰 鈴木砂紅

198半透明のガラス夏蝶の恋 白土正江

199クローバー倍賞千恵子の歌うたう 木野俊子

200伝説はいつも悲しき新樹光 中條千枝

201手の内を見せてしまった守宮かな 江原玲子

202日和見を戒む蟇の面構へ 村田和子

203生意気な尻を競いし実梅かな 高橋透水

204黄菖蒲に重き伝説水の音 中條千枝

205青時雨けふのあとには今日のなき 飯島 智

206悔し涙こらへひと突き心太 村田和子

207女医さんに抱かかえられ夏大根 小林則子

208嫌がられ長実雛罌粟生きている 石黒宏志

209雲割れぬ光と陰のやまつつじ 安藤利亮

210油照レールの上の五円玉 川崎果連

211四葩咲く有事であってもなくっても 古川塔子

212金魚のみ話相手のテレワーク 高橋透水

213自粛中跣といえど戦好き 信岡さすけ

214葉桜や初恋びとの訃の知らせ 飯島 智

215ステイホーム蟻の歩みのある自由 吉村きら

216汗迸るコロナ先生の処世訓 翠 雲母

217外出の是非を問われて牛蛙 宮川 夏

218グーグルの眼が故郷の夏捕え 行成佳代子

219人恋し日常恋し袋掛 石口りんご

220つばくらめ一人で来てと言ったのに 宮 沢子

221更衣たとえば自粛の一ページ 古川塔子

222桐の花背中はだまって見せるもの 白石みずき

223白亜紀の匂ひ微かに木下闇 須田正子

224百年後王は土だが蠅は飛ぶ 中内火星

225この夏は冷で手酌よコロナの夜 金丸善信

226芽銀杏の本郷通りパン匂う 田辺 花

227シャッター街の軒先集う梅雨すずめ 宮川 夏

228山すべて蜜柑の花に囲まれし 石黒宏志

229捩花やわが故郷に拒絶され 行成佳代子

230田の水の張られ一村起ち上り 齋藤美知子

231ウイルスに入口出口五月闇 松田ひろむ

232父の日の蝶ネクタイがよく似合う 橋本寿江子

233短夜の母と彷徨う夜泣きの児 栗原かつ代

234ママが言う無駄の無いこと茄子の花 橋本寿江子

235ハグはだめ頬キスならば青葉騒 松田ひろむ

コズミックホリステック医療・現代靈氣

吾であり宇宙である☆和して同せず  競争でなく共生を☆

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