コロナ禍の医療現場リポート①

https://gendainokoe.blogspot.com/2021/05/blog-post【コロナ禍の医療現場リポート①】より

【2021年5月12日配信NO.163】 

  新型コロナウイルスの不都合な真実  -コロナ禍の医療現場の最前線で見た事実-         

          看護師 竹口 昌志(兵庫県出身)    

はじめに

2019 年12月に中国武漢で発祥した新型コロナウイルスの発生から1年以上が過ぎ、世界は現在もコロナ禍のまっただなかにあります。

「TVや新聞などのメディアで叫ばれている医療崩壊という惨状は本当なのか?医療現場の最前線で何が起こっているのか? 国や国民を巻き込むほどの緊急事態が起こっているのか?」 私はそんな疑念を抱き、田舎で約 1年、悶々とした日々を過ごしていました。

 そんな時に直感が走り、多くの反対を押しきって公務員を退職しました。

 そして、今、私はコロナ禍の医療現場の最前線にいます。

コロナ禍の医療現場の最前線で看護師として「自分の目で見たこと・感じたこと」をここに述べたいと思います。

現在、私が勤務している病院は、日本最大規模のPCR検査センターを併設し、「無症/軽症/中等症/重症コロナ患者」を収容できる機能を要しています。

 またTVなどのメディアでも多く取り上げられている施設です。医療従事者として、

無症状者~重症コロナ患者まで対峙しています。

 次に自身が冒頭で抱いていた疑念の答え合わせとして、約 1ヶ月間の勤務を基に医

療現場であった事実をここにまとめます。

メディアで叫ばれている医療崩壊?-実際の医療現場の最前線で起こっていること-

 「医療崩壊とは、日常において本来受けられるはずの医療を提供できなくなる状態

である」と定義されています。 この約 1ヶ月、医療現場で従事してきましたが、結論を言うと、上記の定義にあてはまる医療崩壊という危機を感じたことはありません。

 確かに様々なリスクを想定して危機感を持って勤務に当たっていることは事実です。

 ただ感染症対策に伴う医療体制に問題を感じる場面は多々あります。

例えば、発熱があるからといって他院で断られ救急搬送されてくるケースです。

 本人や家族に詳細を聴くと「熱があるからPCR検査をして陰性とわかってから来

てほしいって言われました」と話されました。

 また他には病院で患者や職員のクラスター(感染者集団)が発生しているから、入

院の受け入れができないなどです。

 かかりつけ医や自分の病院で手術や治療している病院が患者を断るのです。

 平時を知っている医療者からすると異常としか言いようがありません。

 何より、このコロナ禍によって患者不在の医療が行われていることに私は強く問題

を感じています。

 現行の医療体制では新型コロナウイルス感染指定病院のなかでも状況によっては、

一部の病院に偏りが生じて病院崩壊にも似た過度の負担につながっていることは事実です。

 そして、コロナ患者を受け入れるための病床確保に伴う病院経営の圧迫、クラスター発生による医療者の活動停止に伴うマンパワー不足のリスク、そして風評被害などです。

 これではメディアで報道するとおりコロナ対応に四倍の労力がかかってしまいます。

 今の感染症対策では多くの医療従事者が闘いたくても闘えない状態にあります。

 そして、メディアで流れる一部の最前線で闘う医療従事者への礼賛は、言葉は悪い

ですが、現行の感染症対策の弊害だと思います。

 私も現場で勤務していて、「大変ななか、ありがとうございます。がんばってください、応援しています」などの声をよくかけられます。

 心のなかで「本当にがんばっているのは、あなたたち国民ですよ」と頭が下がる思いでつぶやいています。

 メディアの感染者数発表は、私が勤務するPCR検査センターの検査数にも反映しています。どういうことかというと、メディアでコロナの危機を、不安を煽れば煽るほど、真面目で誠実な国民は、無症状なのに「咳や熱のある人と関わったから」などと言い、多くの方が検査に来られます。 時には検査センターの駐車場が埋まり、大渋滞になるほどです。

 この騒動から、もう1年以上が経過していますが、それほど国民は不安なのです。

 私は検査センターがその不安の受け皿なら仕方がないと思い、「陰性が確認できたら、普段通りに生活してくださいね。勉強をがんばってくださいね。経済活動してくださいね」などと必ず声をかけるようにしています。これが今の私にできる精一杯です。

 なかには異様な光景の親子もいました。医療者と同じようなフェイスシールドと手袋、そしてマスクを装着してフードをかぶった状態での来院です。

 これを想像してみてください。普通の心理ではこの親子に近寄れないし、声をかけられないです。そこまでする必要が本当にあるのでしょうか? 

 これがニューノーマル? ソーシャルディスタンス?

約 1ヶ月勤務してきて、検査センターに来られる方々の約9割以上は陰性であり、陽性でも無症状者で自宅療養の隔離、また、軽症の有症者では、ホテル療養ということがわかりました。しかし、なかには中等症~重症コロナ患者の方がおられます。しかし、そのほとんどが基礎疾患を持った高齢者です。そうはいっても 30~50 歳代の比較的若い方もおられますが、肥満や糖尿病、慢性心不全などの基礎疾患を持っていることが多いです。

TVなどのメディアでは変異株による感染の若年齢化、基礎疾患のない若年者の重症化を言っていますが、当然、若年の重症者がいてもおかしくないと思います。

 今回、初めてと言っていいほど、医療現場にスポットが当たっていますが、本来、軽症~命の危機に瀕している重症者を治療し診る(看る)ところが医療機関という場所です。

 その病院という場所があり、医療人がいるのに患者を支える機能をなくさせている足枷の現行医療体制に問題があることを、メディアはあまり強く報道しません。

 私は決して、命を軽視しているのではありません。

 今回の感染症対策による弊害が他にもあります。例として。80 歳代の男性コロナ患者がいました。この男性は既往に糖尿病があり、コロナ罹患後すぐに治療開始しましたが、重症化を避けられず、残存する肺機能はごくわずかとなり、積極的なリハビリもできず回復の見込みのない状態になっていました。

 そこで主治医が、本人へ残されたわずかな治療について説明しました。

 もちろんキーパーソンの家族にも電話で説明しています。問題は、状態が悪いため一両日中に決断してくれということと、患者の家族とはコロナ禍であるため面会できないことです。80歳を超えた弱っている患者に、一人で決断させるのです。

 もちろん電話やZOOMなどで、家族の顔を見て、話もできます。

 何度も言います。もう1年以上が経過していて、感染症対策のためにそこまで家族を分離分断する必要があるのでしょうか? 

 キーパーソンである家族は医師から状態を聞いていますが、まだ治ると思っていました。

 それを聞いて主治医は、本人や家族に理解がないと言っていましたが、私は違うと

思います。入院してから電話連絡だけで一度も会ってないのに、医療従事者でもない家族が、本人の状態を正しく理解することなどできないと思います。

 患者本人も苦しくて弱っているため客観的になど判断できません。

 結果、この男性は「そこまでして生きたくない」と泣いて、わずかな希望であった治療を拒否しました。

 今、私はこのコロナ禍の孤独のなかで決断したこの男性を支えるお仕事をさせていただいています。

 戦後焼け野原からのハンデのなか、日本を復興させてくれた先輩を、感染するかもしれないからと、大切な家族と隔離し孤独にさせる今の世の中はおかしくないでしょうか?

 コロナはそれほどに恐いウイルスなのでしょうか? これは氷山の一角だと思います。

 もう1年以上も変わらないこの状態をいつまで続けるのでしょうか? 

 ワクチン接種などで解決されるのでしょうか? 

 誤解を恐れずに言います。「医療偏重・医療全体主義」のリセットが必要だと考えます。

国や国民を巻き込むほどの緊急事態?

ベトナム人留学生PCR検査センターには、前述したように様々な方が検査のために来院されます。なかでもこのコロナ禍を象徴しているのが、渡航のための陰性証明書です。

 海外への帰省などで渡航するのに、出国の際の証明が必要になるのです。

 なので、インド人やネパール人、ベトナム人などの外国人が多く来られます。

 今でも記憶に鮮明にあるのがベトナム人留学生です。あるベトナム人三人がグループで来院されました。 片言の日本語ですが話を聞くと、グループ内の一人がPCR検査で陽性が出たため保健所の指示で濃厚接触者の二人も検査を受けにきたと。

 その時点で、PCR陽性者は感染者扱いになるため検査センターの別室で隔離です。

 そして。その陽性者のベトナム人は喉が痛いから薬を欲しいと言います。

 そこで保険証の有無を聞くと、持っていません、在留カードもありません。さらに所持金 1000 円しかありません。現場にいてあまりないケースにびっくりしました。

 詳しく話を聞くと、ビジネスと日本語を学ぶために日本に留学したが、コロナ禍により学ぶことはおろか、働く先が失われ、三人で同じアパートに住み協力しながら暮らしているというのです。 もうそれを聞いて言葉になりませんでした。

 そして、お金がないのにどうやって診察して薬を渡せばいいのか、コロナ患者ということもあり、スタッフで話し合い頭をひねりましたが、 保険証がなく所持金 1000円ではどうにもなりませんでした。

私は患者の間に入って、他のベトナム人の二人に事情を話し、ベトナム人三人のかき集めたお金の 4000 円でどうにか診察を受けてもらいお薬を渡すことができました。

 ただ、症状に合わせてではなく、所持金に合わせてしか薬を渡すことができませんでした。わずかな錠数の薬をもらうときのそのベトナム人の寂しそうな表情が、今のコロナ

禍の弊害を物語ります。

 やってはいけませんが、何度も自分の財布からお金を出そうと思いました。

 しかし、多くの外国人が来院することが頭に浮かび、自分にその勇気はありませんでした。1 枚のくちゃくちゃの 1000円 札を握りしめて来院した1人の青年の姿が、今も目に焼き付いています。

20歳の新入女性社員

  ある 20 歳の女性が検査のために来院されました。

話を聞くと、近しい友人がPCR検査で陽性となり、自分は濃厚接触者ではないが、接触している可能性があるため心配で検査に来たと話します。さらに詳しく聞くと、来院日の翌日の検査結果を待つ日(4月1日)が入社式だというのです。

 私たちスタッフは困りました。何が困るかというと、当日検査を受けた限りは陰性結果確認まで、自宅待機を本人へ強いるからです。つまり、入社式に出られないのです。

 入社式に出してあげたい心理がはたらき、無症なので検査しない選択肢が何とかあることを説明しますが、こちらが話せば話すほど、彼女は悩みます。

 「もし感染してたら、会社に迷惑をかけるかもしれないから、皆に迷惑をかけるかもしれないから」と辛そうに話すのです。まだ入社もしていない働いてもいない会社のことを心配して悩む彼女の姿を見て、これが本当の思いやり、いわゆるソーシャルディスタンスだと思いました。

 医師を含め医療スタッフで説得しましたが、結果として、20歳の記念すべき彼女の初めての就職日が、検査結果を待つための自宅待機となりました。

こんな優しい若者の歩みをいつまで止め続けるのでしょうか?

大企業

 TVなどのメディアでクラスター発生と報道していますが、例えば会社で一人でもPCR検査で陽性者が出ると、集団で来院しPCR検査を受けられます。

 大げさではなく、会社が借りた大型のバスで50~100人ほどPCR集団検査に来られることもあります。

 他には介護施設で陽性者が出たら当院に要請があり、介護施設へ出張PCR検査へ行きます。

 どういうことかというと、クラスター発生に伴う企業イメージダウンや風評被害などの社会的損失を避けたいのです。

 何より現行の感染症対策の規定では、感染者が出ると保健指導が入り経済社会活動ができなくなるのです。

 大きい著明な会社であればあるほどに影響力が強いため、濃厚接触者の定義に当てはまらなくても集団で検査されに来る傾向にあります。

 なので、時には県を跨いで遠方から団体でPCR検査に来られることもあるのです。

 このような事例が枚挙にいとまがないほどにあります。

 時に電話が鳴りやまない時があり、電話対応をするのですが、電話の向こうから国民の不安が伝わってきます。今のやり方では保健所も業務に追われ、パンク寸前となっています。

 国の政策によって、いかに国民が悩み考え翻弄されているかということを医療現場で痛感します。

 いつまで全国民に強いるほどのこの緊急事態を続けるのでしょうか?

終わりに私が今回、コロナ禍、医療現場の最前線で一番感じているのはコロナウイルス罹患

の恐怖や重症化の懸念などではなく、「医療や社会経済などのそもそもの国や国民の形を変えてしまうほどの新型コロナウイルスの威力」です。

私は医療人としての経験はまだまだ浅いですが、浅いなかでも、正直これほど疲れる医療現場は初めてです。

 医療に疲れるというよりも医療現場にいるのに、今の政治の違和感やおかしさをずしずしと感じるからです。

 悲しいかな、今いる私の医療現場では、その違和感や危機感を共有できない現状に

あります。

 この約 1 ヶ月、医療に従事して一番伝えたいことは、「政治・政策によって多くの

国民や日本に関わる外国人の人生が止められている」ということです。

〈以下参考〉

 日本での新型コロナワクチン接種後の死亡者数39人

 厚生労働省の厚生科学審議会が各事例を発表 (2021.5.12)

 mhlw.go.jp/content/10906000/000778304.pdf00/000778304.pdf00/000778304.pdf

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