https://www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/covid_ngs_gsd_ts_7/ 【腸内細菌叢とCOVID-19の重症度の関連】より
作成者 LatB Staff
02.12.2021
SARS-CoV-2による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はわが国でも大きな脅威となっており、各地で医療体制に甚大な影響を及ぼしています。このような状況の中、年齢や基礎疾患など個人が持つ体内の特徴により、COVID-19の重症度が異なることが分かってきました。
そこで今回は、腸内細菌叢とCOVID-19の重症度の関連について、ご紹介します。
▼こんな方におすすめです!
・感染症研究者
・腸内細菌叢研究者
・免疫研究者
昨今のSARS-CoV-2による危機は、世界中の何十億もの人々に多大な影響を与えており、世界中で効果的なワクチンの開発が求められています。このような状況において、COVID-19の重症度は人によって格差があることが分かってきており、安全な治療法の評価や確立のために、この違いが何に起因しているのか広く調べる必要があります。
この重症度の違いに関して、中国の研究者からCOVID-19の患者の免疫状態に、腸内細菌が重大な影響を与えている可能性が示唆されました。この報告では、COVID-19の患者において、ラクトバチルスや乳酸菌などのプロバイオティクスの減少が発生し、腸機能の低下を示すことが分かりました。このことから、SARS-CoV-2の感染と栄養、胃腸機能の評価が必要であると述べています1。
また他の研究グループでは、ヒトの腸内細菌叢の組成を解析することにより、COVID-19の重症度を予測できる可能性があることを示唆しています2。この研究では、SARS-CoV-2ウイルス感染者の60%以上が下痢、悪心、嘔吐などの胃腸症状を示し、このグループの患者が重症度の高い傾向にあることが分かりました。さらにSARS-CoV-2ウイルス感染者31人の血液を調べたところ、全身性炎症時に上昇することが知られている免疫因子を含む、疾患の重症度に関連する20のタンパク質の上昇を確認しました。 これらの結果に基づいて、研究者らは、疾患の重症度を予測できる「プロテオミクスリスクスコア」(PRS)を作成しました。機械学習アルゴリズムを使用してPRSを腸内細菌叢の組成と相関させ、腸内細菌叢とCOVID-19疾患の重症度との関連を示しました。この結果、Ruminococcus gnavusやClostridiaなど、炎症と正または負の相関関係にある特定の細菌種が検出されました。
これらの研究から、COVID-19の重症度と腸内細菌叢の潜在的な関連が示唆されていますが、別のグループは、COVID-19の患者に対して、プロバイオティクスをサプリメントとして使用するにはSARS-CoV-2についてのより多くのデータが必要であり、腸内細菌叢の調節により的を絞った治療アプローチが必要になる可能性が高いことを示唆しています3。したがって、これらの関連をより詳細に研究していく必要があります。
Ion Torrent™ Ion AmpliSeq™ Microbiome Health Research Kitは、ターゲットNGSベースのアッセイで腸内細菌叢の研究に最適なパネルにより、腸内細菌叢の包括的でコストメリットの高い解析を提供します。細菌叢解析によく用いられる16S rRNA遺伝子の9つの超可変領域のうち8つをカバーするパネルと抗ウイルス特性を持つことが知られている多数の細菌種をはじめ、免疫調節に関連することが知られている主要な腸内微生物を種レベルで同定できるパネルで構成されており、シーケンサ付属の解析サーバーでデータ解析も簡単に実施可能です。
Ion Torrent™ Ion AmpliSeq™ SARS-CoV-2 Researchパネルは、SARS-CoV-2ウイルスゲノムを99%以上カバーする特異的なプライマーとシーケンサ付属の解析サーバーでウイルスゲノムに潜む遺伝子変異を迅速に解析可能です。最新機種のIon Torrent™ Genexus™ Integrated Sequencerを使用すれば、抽出した核酸からデータ解析までのハンズオンタイムはたった10分、2日間でデータが得られます。
まとめ
・COVID-19の重症度には腸内細菌叢が関係している可能性がある
・SARS-CoV-2ウイルスの機能と腸内細菌叢の関連はさらに研究が必要である
ヒトの腸内細菌叢と免疫系・消化器疾患やがんとの関連にご興味のある方は、Ion AmpliSeq Microbiome Health Research Kitをご検討ください。
SARS-CoV-2ウイルスの遺伝子変異や株同定にご興味のある方は、Ion AmpliSeq SARS-CoV-2 Researchパネルをご検討ください。
参考文献
1. Xu K, Cai H, Shen Y, Ni Q, Chen Y, Hu S, Li J, Wang H, Yu L, Huang H, Qiu Y, Wei G, Fang Q, Zhou J, Sheng J, Liang T, Li L. (2020) Management of corona virus disease-19 (COVID-19): the Zhejiang experience. Zhejiang Da Xue Xue Bao Yi Xue Ban. 49(1):147-157.
2. https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.04.22.20076091v1
3. Mak JWY, Chan FKL, Ng SC. (2020) Probiotics and COVID-19: one size does not fit all. Lancet Gastroenterol Hepatol. 5(7):644-645.
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。
https://forbesjapan.com/articles/detail/39679 【コロナ感染で重症化、腸内フローラのバランスに関連性?】より
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した場合の重症化のリスクについて、腸内細菌のバランスの崩れが影響している可能性があることを示す研究結果が発表されている。
また、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)にかかった後、長期にわたって後遺症が続くこと(「Long Covid」と呼ばれる)にも、腸内細菌の不均衡が関連している可能性があるという。
ヒトの腸内に存在する細菌の種類や量(腸内フローラを形成)が、がんや感染症、自己免疫疾患など、さまざまな病気と戦う力において重要な役割を果たしていること、さらには精神疾患のリスクにも影響を及ぼしていることが、過去の研究結果で示されている。
Covid-19症状は人によって異なる
Covid-19のパンデミックが発生して以来、SARS-CoV-2ウイルスに感染した場合の反応には、人によって非常に大きな違いがあることが伝えられてきた。大半の人が軽症から中等症にとどまる一方、なかには重症化し、入院を必要とする人もいる。
Covid-19が重症化するリスクについては、年齢や性別、人種・民族、持病の有無など、影響を及ぼしているとみられるいくつかの要因が特定されているものの、説明が難しい理由で重症化している人たちもいる。
重症化するかどうかを分ける要因の一つが、SARS-CoV-2への感染に対して、免疫系が過剰反応、「サイトカインストーム」を起こすかどうかだ。この反応が、呼吸困難や過度の炎症による複数の臓器の損傷などを起こし、重症化につながる要因となっている。
善玉菌と症状に関連性?
細菌叢の研究が専門の香港中文大学の黃秀娟教授と研究チームは、腸内フローラのバランスが崩れていることが、重症化を招く可能性について調査を行っている。
軽症から重症までの感染者100人と、感染していない78人から採取した糞便サンプルを調査。それぞれの腸内の微生物の種類と数を分析した結果、感染者とそれ以外の人の腸内にある微生物と量には、明確な違いがあることを確認したという。
また、重症者は軽症者と比べ、腸内フローラのバランスがより大きく崩れていたことも分かった。黃教授は、「免疫の防御機能を調節していることが確認されている善玉菌が不足していた」と説明している。
抗生物質の使用の有無や年齢など、腸内フローラの構成に影響を与える可能性がある要因を考慮すると、重症化と(善玉菌の)フィーカリバクテリウム プラウスニッツイ(フィーカリ菌)、ビフィドバクテリウム ビフィダム(ビフィズス菌)が少ないことに、有意な関連性があることが示されたという。
研究チームはそのほか、血液サンプルを調査。善玉菌が少ないほど、炎症が起きているときに血中に現れるタンパク質のレベルが上昇していることを確認した。
チームはその他、こうしたバランスの崩れた状態はCovid-19からの回復後も続くのかどうかを調べるため、感染者の一部について、回復したと判断されてから30日の追跡調査を行った。その結果、フィーカリ菌もビフィズス菌も少ないままであることを確認したという。
これらの結果は観察研究によって得られたものであるほか、腸内フローラは多くのものに影響を受けることから、別の研究による裏付けが必要であることは確かだ。だが、黄教授と研究チームは、マイクロバイオームの不均衡が継続していることが、いわゆる「Long Covid」の一因となっている可能性があるとみている。
教授と研究チームは、感染者の善玉菌の状態を変えることによってSARS-CoV-2感染への反応を改善し、回復時期を早めることが可能かどうかについても、研究を行っている。
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