ネアンデルタール人は数万年前、地球上から姿を消した。いや、…

https://www.tokyo-np.co.jp/article/60993 【ネアンデルタール人は数万年前、地球上から姿を消した。いや、…】より

2020年10月10日 07時13分

 ネアンデルタール人は数万年前、地球上から姿を消した。いや、生きている、現代人のDNAの中で。そんな興味深い科学の成果を語る本が五年ほど前、話題になった。生物学者スバンテ・ペーボ氏の『ネアンデルタール人は私たちと交配した』である

▼旧人ネアンデルタール人の骨を調べると、DNAの一部が現生人類に受け継がれていると分かった。つまり、両者は交配し、子どもが生まれていた。論文が発表された際は、専門家にも衝撃が走ったようだ

▼われわれは何者かと想像が広がる話でもある。その旧人の「遺産」がコロナ禍に関係しているかもしれないと先日報じられ、また驚かされた

▼ペーボ氏らのチームの研究によると、ネアンデルタール人から新型コロナウイルス感染症の重症化にかかわる要因も受け継いだ可能性があるという

▼人工呼吸器が必要となるおそれが、最大三倍にもなるという遺伝子の構造があるそうだ。この遺伝的な遺産を持つ人の割合は地域差があり、南アジアで高く、日本など東アジアやアフリカではほとんどみられないらしい

▼東アジアで死亡率がなぜ低いか。コロナ対策のカギも潜んでいそうな問題に、確定的な答えは出ていないようだが、素人目に、関係がありそうにも思える。それにしても、人類の歴史にまで話が及ぶあたりにコロナのやっかいさも表れているようではないだろうか。


https://news.yahoo.co.jp/articles/f5ba1f5dea5f62aeb3d1f1e967a5c70f72fbc1bc?page=1 【人類進化の奇妙な謎…“ホモ・サピエンス”より先に島を渡った“フローレス原人”はなぜ絶滅してしまったのか】より

巨大な口から長く鋭い犬歯が剥き出しに… NHK「ダーウィンが来た!」のディレクターが語る“最恐”の一瞬 から続く

【写真】人類進化の常識を揺さぶったフローレス原人の頭蓋骨

 インドネシアのフローレス島で見つけられた、身長1メートルほどの謎に包まれた人類「フローレス原人」。その存在は人類学者たちを中心に、多くの人々の間で話題を呼んだ。なんとフローレス原人は、原生人類ホモ・サピエンスが初めて到達したと考えられていたフローレス島に、はるか昔にたどり着いていたのである。それでは、なぜ彼らは絶滅し、ホモ・サピエンスが現在に至るまで進化を続けてこれたのだろうか。

 ここでは、世界中でさまざまな生物を追い、人気番組「ダーウィンが来た!」「NHKスペシャル」などを手がけてきた名物ディレクターの岡部聡氏の著書『 誰かに話したくなる摩訶不思議な生きものたち 』(文藝春秋)を引用。フローレス原人が見つかったフローレス島を取材したエピソードをもとに、人類進化の謎について考察する。(全2回の2回目/ 前編 を読む)

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生物学者、ウォレスが気づいた「線」

 彼らの祖先はどのようにして、フローレス島に渡ったのだろうか。インドネシアの大きな島の並び方を地図で見ると、西側からマレー半島の横にあるスマトラ島、ジャワ島、バリ島、ロンボク島、スンバ島、フローレス島が一列に並んでいる。それぞれの島の間隔もそんなに離れていないので、島伝いにフローレス島まで来るのはそう難しくないように見える。しかし、バリ島とロンボク島の間には、生きものが容易に越えられない見えない「線」があるのだ。

 数万年前の氷河期には海水面が120メートルほど下がったため、スマトラ島、ジャワ島、バリ島、ボルネオ島などのインドネシアの島々は大陸と陸続きになり、「スンダランド」と呼ばれる一つの陸塊となったものの、ロンボク島よりも東側は、繫がらなかった。それは、バリ島とロンボク島の間にある海峡が、深さ250メートルもあるからだ。近そうに見えるが距離は20キロ以上あり、泳いで渡ることも難しい。

 19世紀、ダーウィンとほぼ同時期に、生きものが進化することに気がついていた生物学者、アルフレッド・ウォレスがインドネシアを訪れ、島々を巡って棲んでいる生きものを入念に調査した。その結果、この海峡を境に生物相が大きく変わることに気がついた。バリ島まではアジアの生きものがいるのに、ロンボク島よりも東にはほとんど見られなかったのだ。

 彼がこの現象に気がついたのにちなんで、この見えない線は「ウォレス線」と呼ばれている。ウォレス線を越えることができた哺乳類は、コウモリを除くと泳ぎが得意なゾウやネズミなどごくわずか。ほとんどは海峡を越えることができず、スンダランドに留まった。アジア最強の捕食者であるトラが、バリ島まではやってきたが、それより東には進出できなかったことからも、この線を越える難しさがわかる。

どうやってウォレス線を越えたのか?

 フローレス原人が発見されるまでは、ウォレス線を初めて越えた人類はホモ・サピエンスだと考えられていた。5万年前に島伝いにオーストラリアにたどり着いていたことが、発掘などの調査からわかっているのだ。ホモ・サピエンスは船を作り、島から島へと渡る航海術を発達させることにより、地理的隔離を乗り越える能力を初めて備えた人類だった。

 フローレス原人が80万年前から5万年前まで75万年もの間生きていたということは、近親交配を繰り返したわけではないだろう。ある程度の遺伝的な多様性がある集団だったと考えるのが普通で、まとまった数が一緒に渡ったことになる。筏や舟を作る技術を持たなかったフローレス原人の祖先が、ウォレス線をどうやって集団で越えたのかは今も謎のままだ。

自然現象で偶然辿り着いた可能性

 もっとも、フローレス原人が自分たちの意思で渡ったと考えるから謎になるのであって、自然現象によって偶然たどり着いたのなら、大いに可能性はある。世界には、自然現象で海を越えたと考えられているサルの集団があるからだ。アフリカからマダガスカルに渡ったキツネザルと南米に渡った新世界ザルだ。

 アフリカからマダガスカルの距離は400キロ、南米までは1000キロ以上と桁外れに遠い。これは数千万年前のことで、当時は体の大きさがネズミ程度しかない、サルの原始的な祖先だった。住処としていた大きな木などと共に流し出され、数ヶ月の漂流生活に耐えてたどり着いたと考えられている。

 それに比べてバリ島から隣のロンボク島は、20キロとずいぶん近い。しかし、原人は原始的なサルほど小さくはないので、住処ごと流し出されることはなかっただろう。

 では、どうやって海に流されたのか? 僕は、津波だったのではないかと想像するのだ。

 インドネシアは、ユーラシアプレートの下にオーストラリアプレートが沈み込む境界線上にあり、スマトラ島からフローレス島は、ユーラシアプレートの縁に乗っている。そのため巨大地震や津波が多く、21世紀に入ってからだけでも、2004年のスマトラ島沖地震、2006年のジャワ島南西沖地震、2019年のスラウェシ沖地震などが起きている。

 中でも、2004年のスマトラ島沖地震は、マグニチュード9・1~9・3の超巨大地震で、発生した津波などにより20万人以上が犠牲になる、甚大な被害をもたらしたことは記憶に新しい。

 80万年前にも、ジャワ島で大規模な津波が起き、ジャワ原人の集団が偶然、大木などにつかまって生き残り、海を漂流してウォレス線を越えたのではないだろうか。これは、何の根拠もない僕の個人的な想像だが、これ以外に、ジャワ原人がフローレス島にたどり着くストーリーは思い浮かばない。

5万年前に忽然と姿を消す

 いずれにしても、およそ80万年前に島にたどり着いたフローレス原人は、75万年もの間、生き延びていた。これは、非常に安定した集団だったことを示している。何しろ、28万年前に誕生したと考えられるホモ・サピエンスの3倍もの年月を生きていたのだから。

 フローレス原人は、他の人類がなし得なかったウォレス線越えをはたし、フローレス島を隠れ里として、非常に安定した状態で、他の原人が絶滅した後も生きていた。しかし、そんな彼らが5万年前を境に、忽然と姿を消してしまった。ちょうどそれは、ホモ・サピエンスがフローレス島に渡ってきた時期と重なっているのだ。

 アフリカで誕生したホモ・サピエンスが最初にアフリカを出たのは20万年前~10万年前、次が6万年前と考えられている。どちらの時期も、ユーラシア大陸にはすでに先住人類がいた。およそ180万年前にアフリカを出た原人、ホモ・エレクトスは、北京原人としてアジア大陸の端まで達していたし、ユーラシア各地には、40万年前からネアンデルタール人が住んでいた。しかし、原人も旧人もホモ・サピエンスの進出から程なく、地球上から姿を消しているのだ。

ネアンデルタール人とホモ・サピエンスには能力差がない

©iStock.com

 かつては、能力に優れるホモ・サピエンスが、原人やネアンデルタール人を駆逐してきたと考えられていた。しかし近年の研究では、少なくともネアンデルタール人とホモ・サピエンスの間には、能力差はほとんどないことがわかってきた。

 ネアンデルタール人は、狩猟用の石の槍や握り部のある石のナイフを使い、大型のシカやイノシシなどの哺乳類や、カメやトカゲなどの小動物を捕って食べていた。貝や鳥の羽根などを装身具として用い、花などを添えて死者を悼む埋葬を行っていた。

 2018年には、スペイン北部の洞窟から、6万5000年前のネアンデルタール人が描いたと見られる壁画が見つかり、両者の間には共通点が多かったことが、改めて証明されている。

 しかも、現代人のDNAの中には、ネアンデルタール人由来の遺伝情報が1~4%ほど、混合していることもわかった。これにより、ホモ・サピエンスは、住処や獲物を巡ってネアンデルタール人と競合しながら、1万年以上にわたって交配したと考えられているのだ。

 当時のホモ・サピエンスの人口は、骨や生活跡の分析から、ほかの人類より一桁多かったことがわかっている。原人や旧人の集団は、ホモ・サピエンスが増えていく過程で生息場所を狭めていったために近親交配が進み、遺伝病などの有害変異が蓄積され、絶滅したと考えられるようになっているのだ。

 なぜホモ・サピエンスだけが生き残ったのかについては不明な点が多いが、どうやら、単純に他の人類よりも優れていたから、というだけではなさそうだ。

新型コロナウイルスでわかった耐性の違い

 2020年になって、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの関係を考える上で、非常に興味深い可能性が示された。新型コロナウイルスに対する耐性が、人種によって違うことがわかったのだ。

 新型コロナウイルスについては、年齢や持病の有無などによって、重篤になる人とならない人がいることが、発生の初期からわかっていた。そして、世界的に流行が広がるにつれて、欧米人に比べ東アジア人のほうが、比較的軽い症状で済むケースが多く、世界的な重篤患者の分布に偏りがあることが明らかになった。

 その原因については様々な憶測が流れたが、2020年10月に「ネイチャー」に発表された論文で、ヨーロッパの人々が重症化しやすいのは、ネアンデルタール人の遺伝子を多く持っているからだ、との研究結果が発表されたのだ。新型コロナウイルスで入院した重症者と、入院しなかった感染者3000人以上の遺伝子を調べた結果、感染者の重症化に影響を与えるのは、3番染色体にある特定の領域であることが判明したという。その後の分析で、その遺伝子領域は、5万年前のネアンデルタール人から発見されたものとほぼ同じで、6万年前にホモ・サピエンスとネアンデルタール人との交配によって、現代人に受け継がれたことも明らかになったという。

 ヒトには22組の通常染色体と1組の性染色体があり、それぞれに番号が振られている。その3番目の染色体にある特定の遺伝子領域を持つ人が、新型コロナウイルスに感染すると、重症化するリスクが持たない人の最大3倍になるというのだ。

 ウイルスに対する耐性が、特定の遺伝子を持つか持たないかによってこんなにも差が出るのにも驚いたが、それがネアンデルタール人由来のものであることは、人類の進化に興味を持っている人なら、さらなる驚きをもって受け取ったに違いない。

ホモ・サピエンスの進出とともに絶滅したほかの人類

 昔から、ホモ・サピエンス以外の人類が絶滅したのは、病気に対する耐性が関係しているのではないか、と論じられてきた。しかし、残された骨などからはわからないために、推測の域を出なかった。しかし、僕たちに受け継がれていたネアンデルタール人の遺伝子が、その可能性を教えてくれたのだ。

 これにより、ホモ・サピエンス以外の人類が、病気によって絶滅したことが確定したわけではなく、一つの可能性が示されただけだ。しかし、ホモ・サピエンスが進出した時期に合わせて、多くの地域でほかの人類が絶滅したことを説明するのに、矛盾はない。

ホモ・サピエンスの移動力の高さ

 ホモ・サピエンスが人類唯一の生き残りとなった理由の一つに、その移動力の高さが挙げられる。ホモ・サピエンスは、地上を移動するのはもちろんのこと、海を越える知恵まで持ったことで世界中に広まり、他の種と混ざり合い、病原菌やウイルスをまき散らし、時には競争に勝ち、人類で唯一の生き残りとなったと考えられるのだ。

 ホモ・サピエンス同士でも、他の人種と接触することによる事件は、歴史上、何度も起きている。有名なのは、コロンブスの新大陸「発見」とスペインによる征服の過程で、ヨーロッパから病原菌が持ち込まれたことによって、南北アメリカ大陸の先住民が壊滅的な打撃を受けたことだろう。

 15世紀末に新大陸にはなかったインフルエンザや天然痘、梅毒などの病気が持ち込まれたために、耐性のなかった先住民族は次々と死に、マヤ、インカ、アステカなどの文明は滅亡した。

ホモ・サピエンスが生き残ったワケ

 現代の世界でも、アマゾンなどに住む、文明社会と接触したことのない非接触民族「イゾラド」は、一般的な病気に耐性がないため、風邪ウイルスでも死んでしまう可能性がある。もし、イゾラドの棲む地域に今回の新型コロナウイルスが入り込めば、多くの人が亡くなってしまうだろう。

 絶滅の形は多種多様だが、意図せずにホモ・サピエンスが持ち込んだ病気によって、ほかの人類が絶滅してしまった可能性は大いにありうることだ。そして、その逆もあり得た。つまり、ホモ・サピエンスが、耐性を持たない病原菌を他の人類によって伝染され、絶滅していた可能性もあるのだ。

 なぜ僕たちだけが生き残ったのか。それは能力が高かったからではなく、ただ単に、運が良かっただけなのかもしれないのだ。

【前編を読む】 巨大な口から長く鋭い犬歯が剥き出しに…世界中の動物を追うNHKディレクターが語る“最恐”の一瞬


コズミックホリステック医療・現代靈氣

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