わかりやすいオートポイエーシス(自己生産)

http://www2.kokugakuin.ac.jp/~ogiso/ap/index.html  【わかりやすいオートポイエーシス(自己生産)】より

1 「難解な」オートポイエーシス!?

 Maturana and Varela(訳1991)は生命システムの固有性を記述するためにオートポイエーシス(autopoiesis)という概念を提唱した。Maturanaが、Maturana and Varela(訳1991:45-159)の第一部に収録されている"autopoiesis"という論文を書き、この概念を提唱したのが1972年、Luhmannがオートポイエーシス理論を社会科学に導入してSozial Systemeを刊行したのが1984年のことになる。 Ashbyが1962年に提唱した自己組織化という概念が比較的普及しているのと比べると、オートポイエーシス理論は「難解である」と誤解されているためか、まったくと言っていいほど普及していない。オートポイエーシスが「難解である」であるもっとも重要な理由は、この用語がギリシア語であるためである。そして、これらの"autopoiesis"とSozial Systemeとの2つの文献が難解であることも、オートポイエーシスが「難解である」であると誤解されてきた理由である。この「わかりやすいオートポイエーシス(自己生産)」というウェブ・コンテンツを作成する目的は、オートポイエーシス理論がわかりやすいことを示すためである。

2 オートポイエーシスの訳語(小木曽(2007:25-6参照)

 このautopoiesis という用語には定訳がないが、ここでは、今田(1986:59)に準拠して、このギリシア語に日本語で自己生産という訳語を当てることにする。さて、オートポイエーシスというカナ表記を使用した場合、この用語に「神秘的な」崇高さを演出することができよう。しかし、この用語を科学用語として使用するならば、明確で理解しやすい日本語に訳出した方が良い。まず、ギリシア語のautoは英語ではself、日本語では自己と訳すことができよう。つぎにpoesisは英語ではproduction、日本語では生産と訳すことができよう。そこで、今田(1986:59)に準拠して、このギリシア語に日本語で自己生産という訳語(英語ではself production)を当てることにした(小木曽(2007:25-6参照)。

3 自己生産の定義

 自己生産とは、大雑把に言えば、自分が自分をつくることであり、例えば、生物であれば細胞や器官を生み出すように、自己が自己の構成素を生産することである。生物ではないもの、例えば、機械は部品などの構成素を生産しない。一方、生きものは、その構成素【へ】である細胞を生産し続けることによって生き続け、細胞を生産できなくなれば死に至る。つまり、自己生産システムが存続するためにはその自己生産過程、つまり自らの構成素を生産することが要件となる。

 自己生産は生命現象だけでなく、社会現象や経済現象にも該当する過程である。まず、社会現象であり、経済現象であり、心理現象であり、生命現象でもあるコンビニエンスストアでの買い物の事例【へ】を検討しよう。また、アンデルセン著の童話『裸の王さま』の例【へ】は、コミュニケーションの自己生産過程において情報エントロピー【へ】が高められる例である。

§このファイルの参考文献§

Anderson,H.C. The Emperor's New Clothes,、アンデルセン著 乾侑美子訳(2004)『はだかの王さま』岩波書店

今田高俊(1986)『自己組織性』創文社

Luhmann,N.,(1984) Sozial Systeme: Grundriß einer allgemeinen Thorie, Frankfurt am Main:Suhrkamp Verlag、ルーマン著 佐藤勉監訳(1993)『社会システム理論(上・下)』厚星社厚生閣

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小木曽道夫(2007)『自己生産する組織~組織の環境、公式構造、課業特性、能率、および有効性の関係【を開く】』夢窓庵

§このディレクトリィの参考文献§

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今田高俊(1987)『モダンの脱構築』中央公論社

今井賢一・金子郁容(1988)『ネットワーク組織論』岩波書店

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小木曽道夫(1987)「組織の構造の三次元と自己組織化過程」『組織科学』第21巻第3号、63-74頁

小木曽道夫(1997)『組織の自己革新~知識集約的部門の現場から【を開く】』夢窓庵

小木曽道夫(2007)『自己生産する組織~組織の環境、公式構造、課業特性、能率、および有効性の関係【を開く】』夢窓庵

小木曽道夫(2012)「情報エントロピーの濃縮過程~原子力村の事例」『國學院大學 経済学研究』第43輯、1-31頁

小木曽道夫(2013)「コミュニケーション理論と自己生産」『國學院大學 経済学研究』第44輯、?-?頁

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Parsons,T. and Shils,E.A.(eds.)(1954) Toward a General Theory of Action, Mass.:Harvard University Press、パーソンズ・シルズ編著 永井道雄・作田啓一・橋本真訳(1960)『行為の総合理論をめざして』日本評論社

Pugh,D.S. and Hickson,D.J.(eds.)(1976) Organizational Structure in Its Context: The Aston Programme 1, Midlands: Saxon House

Pugh,D.S. and Hinings,C.R.(eds.)(1976) Organizational Structure Extensions and Replications: The Aston Programme 2, Midlands: Saxon House

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Roethlisberger,F.J. and Dickson,W.J.(1939) Management and the Worker, Boston, Mass.: Harvard University Press

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Shannon,C.E. and Weaver,W.(1963) The Mathematical Theory of Communication, Illinois: The Board of Trustees of University of Illinois, クロード・E.シャノン ワレン・ウィーバー著 植松友彦訳(2009)『通信の数学的理論』ちくま学術文庫

Simon,H.A.(1997) Administrative Behavior: A Study of Decision-Making Process in Administrative Organizations 4th ed., The Free Press, 二村敏子 桑田耕太郎 高尾義明 西脇暢子 高柳美香訳(2009)『経営行動~経営組織における意思決定過程の研究』ダイヤモンド社

Wanous,J.P.(1974) "A Causal-Correlational Analysis of the Job Satisfaction and Performance Relationship", Journal of Applied Psychology,59:139-144

Weaver,W.(1963) "Recent Contributions to the Mathematical Theory of Communication", in Shannon,C.E. and Weaver,W.(1963) The Mathematical Theory of Communication, Illinois: The Board of Trustees of University of Illinois, pp.1-28, ワレン・ウィーバー著 植松友彦訳(2009)「通信の数学的理論への最近の貢献」、クロード・E.シャノン ワレン・ウィーバー著 植松友彦訳『通信の数学的理論』ちくま学術文庫、13-57頁

Weiss,D.J., Davis,R.V., England,G.W. and Lofquist,L.H.(1967) Manual for Minnesota Satisfaction Questionnaire, Minnesota: University of Minnesota

Weber,M.(1972) Wirtachaft und Gesellschaft, 5te., Tubingen: J.C.B. Mohr

吉田民人(1990a)『情報と自己組織性の理論』東京大学出版会

吉田民人(1990b)「情報・情報処理・自己組織性~基礎カテゴリーのシステム」、『組織科学』第23巻第4号、7-15頁

コズミックホリステック医療・現代靈氣

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