http://knowinglykunchangtan.hateblo.jp/entry/2016/05/09/060638 【初鰹/今日の俳句 ≪第2131号≫】 より
≪2016年(平成28年)5月9日(月)≫(旧暦4/3)
みどり葉を敷いて楚々たり初鰹 三橋鷹女
初鰹夜の巷に置く身かな 石田波郷
たつぷりと泣き初鰹食ひにゆく 宇多喜代子
初鰹糶の氷片とばしけり 皆川盤水
断つほどの酒にはあらず初鰹 鷹羽狩行
※ 初鰹→初松魚。
黒潮に乗って「尾を三度振ると三度来る」といわれる速度で大海原をかけめぐる鰹は身がしまり、初物好きの江戸っ子の大好物であった。『守貞漫稿』に次のように書かれており、その当時の初鰹をめぐる江戸の事情が目に見えるようである。「江戸の魚売りは、四月、初松魚売りを盛りなりとす。二三年以前は、初めて来る松魚一尾価金二三両に至る。小民も争ひてこれを食ふ」。当時は舟上でさばかれ、舟べりにむすびつけ海水に浸しながら運んだ。この塩味のついた鰹を砂糖と醤油のたれに漬け込み、からしを薬味にして食べた。回遊魚の鰹は三ー四月ごろに薩摩・土佐・紀州を通り、青葉のころに伊豆や湘南付近に上がってくる。東北・三陸を経て秋にたっぷりと脂肪がついて下ってきたのが、「下り鰹」。最近は巻網漁が多くなったが、鮮度を保ち身を傷つけない一本釣漁でとれた鰹が最高である。
【「現代俳句歳時記(夏)/角川春樹編」(角川春樹事務所)より転載】
http://dairo.main.jp/?p=11352 【今日の季語_初鰹】 より
【鑑賞】
目には青葉山ほととぎす初鰹 素堂
季語が三つも入った季重なり。その上「切れ」が二箇所の三段切れ。どちらも俳句ではいけないと教えられるが、素堂の句は名句として伝えられている。初鰹を導き出すための青葉であり、ほととぎすである。三段切れの小気味よさが「初鰹」の生きの良さというところか。
初松魚【関連季語】鰹
【解説】
鰹は、四月から五月にかけて黒潮に乗って北上する。初夏、伊豆沖あたりで獲れるのが初鰹。昔は、その鰹を生きたまま江戸まで運んだ。江戸っ子たちは値の張るそれを競って求めた。初鰹は、江戸で生まれたの季語である。
【分類】
初夏・動物
【例句】
目には青葉山ほととぎす初鰹 素堂
鎌倉を生きて出でけむ初鰹 芭蕉
大江戸や犬もありつく初鰹 一茶
江戸つ児は江戸でうまれてはつ鰹 子規
初鰹男ばかりで囲みたる 宇多喜代子
上の句はなんであらうと初松魚 加藤郁乎
初鰹糶の氷片とばしけり 皆川盤水
初鰹襲名いさぎよかりけり 久保田万太郎
江戸亡ぶ俎に在り初鰹 高浜虚子
みどり葉を敷いて楚々たり初鰹 三橋鷹女
初松魚羽が生えたり江戸の空 正岡子規
めでたかり出刃打ちこんで初鰹 石川桂郎
初鰹夜の巷に置く身かな 石田波郷
断つほどの酒にはあらず初鰹 鷹羽狩行
水はじき鉄のごとしや初鰹 鷹羽狩行
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