https://note.com/monukenokokusho/n/nd30f11263b7a 【わかりやすい東洋「天人合一思想」の考え方】 より
こんにちは、🐔鍼灸師の卵を応援するもむけです。このノートは【天人合一思想】についてをまとめてます。
なるべく教科書の正しい説明と個人的に噛み砕いた説明の2つをお伝えしていきたいと思います。
鍼灸の教科書(医道の日本社)をベースにお伝えしています。
東洋医学における人体の見方【整体観念】
人と自然・環境が相応しているとする考え方である。また組織・器官が個別に機能するのではなく、全体が一つのつながりを持った有機体であると捉える整体観念というのは、人の中身もまた全体が1つのものとしてつながりをもっているという考え方です。
もっと簡単に言うと、西洋医学では肝臓が悪くなったら肝臓を治療していきますが、東洋医学では「肝」の機能が低下したからと言って「肝」の治療だけはせず、患者の個別性を重視して対応していきます。
今は詳しくは説明しませんが、いっけん西洋医学でいう「肝臓」が悪いとしても、東洋医学ではそれは「腎」の働きに関係するものかもしれないと考えたりもするわけです。
結局のところ、1つが悪くなったら身体全部悪くなるというようなところに行き着くんですが、あなたも心当たりありませんか?
なんか今日は調子が悪い。頭も痛いし、お腹も痛い。寝付けない。
一箇所不調になると、不調箇所がどんどん増えていくあの感じに少し似ています。
人と自然の統一性【天人合一思想】
東洋医学において人と自然との関係を表す考え方を天人合一思想もしくは天人相応という。これは人体の形と機能が天地自然と相応していること、人と自然は言ったであることを意味している
急にややこしい概念を打ち込んできました。
西洋医学でいきてきた人にとって東洋医学の東洋思想はなかなか受け入れがたいものですが、少しずつ慣れさせてもらえればとおもいます。
これは簡単に言うと、人も自然界の理とよく似ているよねって話です。
具体的な話をすると熱の特性は科学の授業で聞いたことがあるかもしれません。
物理的に熱い空気は上に昇りやすいですよね。
それと同じで人の身体の熱も上に登りやすく、下が冷えやすいというものです。
大宇宙と小宇宙の考え方について
ちなみにこれは宗教の話ではありません。
この世界にあるものを天と地からなる大自然(大宇宙)とすると、人もまた組織や器官があり、それぞれが異なった機能をもちながら1つのつながりをもっているので小自然(小宇宙)であると考えます。
人間は自然界にあるものを食べたり飲んだり、吸ったり吐いたりして生きています。つまり人間の生命活動の源は大宇宙がないと存在できないということです。
なので自然界の影響を必ず人自身もうけることにつながっていきます。
とりあえず宇宙という言葉を使うとなんか怪しい響きになるという話ですね(違う)
http://www.gohki.com/wp/?page_id=6875 【天人合一】 より
古代中国(旧シナ)において、天と人間とは本来的に合一性をもつとし、あるいは、人は天に合一すべきものとする思想である。
中国では、超越的存在としての天の概念がきわめて有力で、人の天に対する独自性は発想されることが少なかったから、人の天への合一が、人間の不完全性の克服として考えられた。
儒家の天命説も、道家の、人は作為を捨て天と一致せよとする説も、広義では天人合一の思想といえる。
とくに漢代の儒教では、自然現象と人間世界の現象との間に、相互の照応や因果関係があるとされ、そこに、自然現象の根源としての天と、人間との相関が考えられた。
これは、陰陽説などを吸収しつつ、天人の合一性を自然観・人間観のなかで理論化したものである。
この漢代の天人合一・天人相関の思想では、君主の行為の適否に応じて自然現象に祥端(しようずい)・災異が生じ、ひいては人間の生活に決定的な影響が及ぶとされたが、これは、天と人間一般とを媒介する中軸の位置に君主を置くことにより、君主に超人間的権威を付与するものであった。
内山俊彦(当方で一部書き替えた)
https://news.line.me/issue/oa-daikigen/93593b183486 【量子力学から見る「天人合一」】より
「天人合一」(てんじんごういつ)とは、伝統科学、伝統文化の基礎的な考え方の一つである。この考え方によると、宇宙と人間は一体関係にあり、宇宙のすべての要素が人間に影響を与えていて、人間の変化はすべて宇宙の各要素の作用を反映しているという。
天人合一の考え方は古代の政治、軍事、天文、農耕、水利、医学などの各方面に応用されてきた。一方、漢方医学では、古来より人体は小宇宙であると認識されてきた。大宇宙の変化が小宇宙に影響を与えており、生理と病理を認識するには人体が月、太陽、星などの運行規律と繋がっていることを常に念頭において考える。
現代の実証科学は物事を分割し、局部や固体を中心に研究する手法のため、天人合一の考え方は現代人の意識から徐々に消えてしまったといえるだろう。「天を敬う」「自然を大事にする」という言葉はまだ残っているが、実際の行動において天意や天理を気に留めることは、ほとんどない。
しかし、近年来の量子物理学の研究で、古代の天人合一の考え方は非常に理にかなっていることが明らかになった。量子力学の研究において、肉眼で見える物質の運動と違い、ミクロの粒子である量子の運動には非局所性という特徴が存在していることが分かったのだ。非局所性(ひきょくしょせい)とは、この宇宙における現象が、離れた場所にあっても相互に絡み合い、影響し合っているという性質のことである。
簡単に言えば、同じ体系の中の二つの粒子が数千、数万光年離れていても、刺激を受けてその中の一つに変化が生じると、もう一つの粒子も瞬時にその変化を察知することができ、その間に信号の伝送により生じた時間差は存在しない、ということである。量子の非局所性は現代科学の常識に全く合致せず、物理学者達も「量子力学の方程式をいくら知っていても、本当の意味で量子力学の世界を分かっている人は一人もいない」と認めている。
量子の非局所性は、「天人合一」の合理的であることを証明した。現代科学がまだ気付いていない物体間の内在の関連性が、確かに存在していることを証明したのだ。地球、人類はすべて宇宙の中に存在しており、その内部粒子は、宇宙が誕生した時からすべて同一の体系に属している。宇宙を構成する万事万物の粒子の間には量子の関連性が存在し、これは量子力学の角度から理解した天人合一の考え方と合致する。つまり、「天人合一」は科学的であり、宇宙、自然、及び生命の間に存在している、内在のつながりを正確に現しているのだ。
現在の人間社会には、頻発する自然災害、甚だしい環境破壊、気象天候の乱れ、倫理道徳の低下、悪質な犯罪の多発、人間不信の増強、思いやりの欠如など、重大で深刻な問題が山積している。これらの問題に関して地球規模、或いは人間社会の次元で解決する方法はなかなか見つからない。そもそも問題の原因さえ分かっていない。
「天人合一」、量子の非局所性の原理からこれらの問題を考えてみると、地球上に発生した問題は宇宙の変化によってもたらされた結果とも理解できる。言い換えれば、古来の人々が天象から人間社会を予測することと同じ原理である。
(翻訳編集・恵明)
http://www.peopleschina.com/shehui/2008-12/09/content_169060.htm 【古代から息づく「天人合一」の思想】より
2008年上半期、中国は2010年の風力発電の目標値を当初の500万キロワットから1000万キロワットに引き上げた。写真は、内蒙古自治区のホイトンシロ(輝騰錫勒)風力発電所
「天人合一」。これは中国古代からの哲学概念であり、「天と人とは理を媒介にして一つながりだと考える」(『広辞苑』)ことである。「天」は天道であり、自然であり、自然の法則を指す。「人」は人道であり、人為である。
この思想は、現代の中国社会にも脈々として生き続けている。しかし、急速な経済発展で、中国の生態環境は憂うべき状態に陥った。それを改善するためには、生産方式の変換とともに、人々の意識の変革が求められている。
見直される伝統的哲学
いまから約2800年前に始まった春秋戦国時代から、歴代の儒家、道家、法家の思想家たちは、「天」と「人」の関係について、絶えず論争してきた。北宋の思想家の張載(1020~1077年)は「天人合一」について、人間と万物はともに「天地の気」を受けて生まれ、人と万物自然は調和と均衡、統一の中にあり、「天」と「人」の調和こそが最高の理想である、と考えた。
世界自然遺産に登録されている四川省の九寨溝はかつては伐採場であったが、1978年に政府が伐採を禁止したおかげで、貴重な自然が残された
これより後、人類のさまざまな行為や活動は自然に順応し、自然の法則に合致しなければならないとする「天人合一」の考え方が、中国の思想文化と各種の生産活動にずっと影響を与えてきた。
中国の伝統的な農耕文明の中には、いたるところに自然に順応する考えが体現されている。例えば耕作は、季節の変化に応じ、春は種を蒔き、夏は耕し、秋は収穫し、冬は貯蔵するというように、農時に背かないようにしなければならないし、耕作し、種を植えるのも土地によって適したものにし、その地の自然条件に適合しなければならない、等々である。
中国各地の農民は、多くの良性循環の耕作方法をつくり出した。例えば広東省の珠江デルタの「桑畑と養魚池」は、実にうまくできている。順徳県竜江鎮は耕作面積が6万9000ムー(1ムーは6.667アール)しかないが、そのうち養魚池が3万7000ムー、桑畑やサトウキビ畑、バナナ園は2万1000ムーあり、それらが交互に配置されている。
福建省武夷山は空気がすがすがしく、水も澄んでいる。山はいつも雲霧で覆われている。ここに住む人々はこの自然条件をいかして質の高い茶葉を栽培してきた。この地は烏龍茶や紅茶の発祥地である
池と畑、動物と植物は、相互に利用し合い、循環している。桑の葉は光と水、肥料を吸収して大いに生い茂り、桑の葉を蚕に食わせて繭をとるだけでなく、蚕の糞や桑の葉の残りを池に入れて魚に食わせる。そして池を干して魚を売った後、魚の糞と有機物からつくられた池の泥を桑畑やバナナ園に運び入れれば、絶好の有機肥料となる。こうして「桑→蚕→魚」から「魚→泥→桑」へという生態系の良性循環が形成されるのだ。さらに農民は、魚類の習性の違いに基づいて、深さ2メートルの養魚池を三層に分け、「立体的養魚」で循環させている。それはまず、蚕の糞と桑の葉の残り、青草を上層にいる草魚に食べさせ、草魚の糞と余った飼料が水中の微生物で分解されると池の中には浮遊生物が繁殖し、これが中層に住む鰱魚(ハクレン)や鱅魚(コクレン)の格好の餌となる。さらに鰱魚や鱅魚の糞や食べ残しが底の層に住む鯉や鮒の餌となる。このように循環し、相互に利用しあって、養魚池は大きな収穫を得るのだ。
貴州のミャオ(苗)族やトン(侗)族の「水田養魚」も巧妙である。田植え前、農家の婦人たちは篭で水田の小魚をとり、さらにアヒルの群れを放して田の中の害虫を食べさせる。続いて犁で田をおこし、まぐわでならし、苗を植える。まもなく魚の卵が孵化すると、稚魚を水田に放つ。そして魚は水田の虫や浮遊生物を食べて大きくなる。魚の糞は稲の肥料となり、化学肥料や農薬を買わなくても済むし、無公害の米が収穫できる。客が来れば、主人は水田の排水口を開く。すると、鯉は流れに乗って、排水口に仕掛けられた篭の中に入る。その新鮮な魚で客をもてなすのだ。
自然と調和した住居
福建省の山間部で暮らす客家の人々が築いた土楼は堅牢で安全。自然にも近い(新華社)
中国の伝統的な民家は、内蒙古草原のパオや北京の四合院から南方の客家の「土楼」、ミャオ族やトン族など少数民族の住居である「吊脚楼」まで、どれも自然と人間が調和して共存するという豊かな内容を含んでいる。
広東、江西、福建、台湾などに住む客家の人々は、1600年前に中原の戦乱を逃れて河南などから南に移ってきた人々である。南方に来た彼らは、土着の人々との衝突を避けるため、山間部に入り、山紫水明の地に村をつくった。客家のつくった、四角か円い形の「土楼」や長方形の2、3階建ての「囲屋」はいずれも住宅で、山を背にして水の辺に建てられ、みなが集まって住む。それは堅固で安全であり、また人々は山水に心を寄せ、自然に親しむ。
中国の南方に住む多くの少数民族の住居は「吊脚楼」の建築様式を採用している(新華社)
しかし、川から遠く離れた「囲屋」は、常に門前に半月形の池が掘られ、「囲屋」に降った雨水を受けて養魚や菜園の灌漑に使い、万一火が出たときには、消火にも使われる。ただ南方は雨が多く、山の近くに建てられた「囲屋」は洪水で流されたり、山崩れに遭う危険がある。そこで客家の人々は、家の後ろに木や竹をたくさん植える。木や竹はしっかりと根をはり、一年中青々と茂り、家を洪水や山崩れから守る。このため客家の人々は、これを一族の繁栄にかかわる「風水林」と見なし、心を込めて保護するのだ。子どもたちはここでキノコを採ったり、ハシバミの実を拾ったり、野生の植物の実を摘んだりし、楽しみは尽きない。
客家の「土楼」や「囲屋」はみな、泥を突き固めてつくられている。土の壁は厚くて堅牢であり、冬は暖かく、夏は涼しく、きわめて快適である。壁に使った泥は、門前の池を掘った時の土であったり、裏山を切り崩した時の土であったりだ。レンガ造りの家を建てるのに比べると、レンガを焼く必要はないのでエネルギーは節約され、また煙や煤塵や廃棄物による汚染もない。もし将来、家を壊す時には、レンガの家ならレンガを処理するのに人手が要るし、お金もかかり、環境にも悪影響を及ぼす。だが泥を突き固めた壁なら、突き砕いた後、水田に運んで肥料にすることもできる。
「吊脚楼」で伝統的な織機を使い布を織るプイ族の女性
「吊脚楼」は貴州、広西、湖南などに住むトン族、ミャオ族、トゥチャ(土家)族の伝統的な民家である。彼らは杉の木を切ってきて、まず木柱を一本一本、しっかりと立て、さらに柱と柱の間に板を張り、部屋の間仕切りをつくる。最後に、屋根に瓦を葺いて完成する。木造の家に柱の脚が吊り下がっているようなので、「吊脚楼」と呼ばれる。風通しがよく、湿気を防ぐので、雨が多く湿度が高く、虫や蛇の多い中国の南西部の山間部に適している。
貴州のトン族の集落は、家はみな山を背にして水の辺に建てられている。そして天まで届くほど聳える木造の鼓楼や集廊橋、楼閣が一体となった「風雨橋」が架かり、どれもが優れたトン族の建築技巧を示している。
しかし、トン族は決して知恵を乱用して、命の綱の山水を「改造」するようなことはしない。「吊脚楼」はみな自然に従い、おのおのその所を得ている。例えば、平地に住む場合はまず基礎を突き固め、さらに礎石を埋め、礎石の上に柱を立て、家をつくる。池や川の辺に建てる場合は、まず水面から一メートルの高さの石の台をつくり、その上に柱を立て、家をつくる。山の斜面に建てる場合は、山を切り開くことはせず、前に2、3列の木柱を立て、後ろは山に沿って木をわたす。山の土は削らず、山地の自然の形をそのまま保護するのだ。
家を建てるのに用いる杉は、トン族の素晴らしい風習によって保護されている。トン族の子どもが生まれると、祖父と父はすぐに山に入り、子どものために杉の木を植える。子どもが18歳になるころには、杉も大きくなっており、これを伐って、男の子なら嫁とりに備えて新しい「吊脚楼」を建てる。女の子なら、この杉を売って嫁ぐのに備える。この風習のおかげで、トン族の村の杉林は一面、青々と茂っているのだ。
「中和」を重んじる飲食文化
黄河上流のズオゲ(若爾蓋)湿地。貯水量は8億4000万立方メートルに達し、黄河に絶え間なく「体液」を注いでいるため、「中国の腎臓」と呼ばれている
飲食の面でも、「天人合一」の考えによって中国人は、飲食を重んじて、季節に応じて調和のとれた養生をし、身体を強くする。
伝統的な飲食文化は「医食同源」で、各種の食物は漢方薬と同じように、それぞれ「寒」「熱」「涼」「温」「平」の異なる効能があると考えられている。例えば、スイカの性質は「涼」、ニガウリは「寒」、羊の肉は「熱」、アヒルの肉は「涼」、アズキは「温」、緑豆は「涼」……。
そこで、季節の変化につれて効能が適した食物を摂取する。例えば、夏の真っ盛りで暑さが厳しく、口が渇き、イライラするようなときには、「涼」のスイカを食べると、甘くて口に合い、熱を下げ、毒を消す。さらに夏に消化機能が減退した時には、トウガンあるいはハトムギといっしょに弱火で煮た「涼」のアヒルを食べれば、蛋白質を補うことができ、熱を下げ、湿気を払う。逆に、もしも夏に「熱」の羊肉を食べ過ぎれば、のぼせてしまい、内臓に熱を生じ、病気になる。
夏の苦しさを乗り切れば、空が高く、空気のすがすがしい秋になる。しかし、秋は空気が乾燥していて喉の痛みが生じやすく、また体液が乾燥で悪くなり、それによって便秘になりやすい。こうしたときにジューシーで「涼」の梨を少し食べれば、乾燥を潤し、呼吸器を治すことができる。そして「涼」のレンコンで煮たスペア・リブを食べれば、栄養豊かで、食欲は増進し、便通が良くなる。
三峡ダムの奥地に位置する重慶市巫山県はエコ農業を行い、荒地を良質な耕地に変えた(新華社)
冬は寒さが厳しいので、人体はエネルギーの高い「熱」の食物を補う必要がある。こうした時には、羊肉や牛肉、豚のもも肉をショウガやナツメ、醸造酒とともに軟らかくなるまで煮る。これを食べれば身体に良く、「冬補」と呼ばれる。
伝統的な飲食文化はまた、「中和」を重んじる。
まず食物の「中和」である。食物は多様性が必要で、五穀を主とし、「五畜」(牛、羊、鶏、犬、豚)、「五菜」(ワラビ、マメの葉、ラッキョウ、ネギ、ニラ)、「五果」(クリ、スモモ、アンズ、モモ、ナツメ)で補い、肉や魚のなまぐさ料理と精進料理を組み合わせ、さまざまな食物の中から各種の栄養を吸収する。
次に料理の「中和」である。なまぐさと精進の原料を巧みに組み合わせ、さらに「甘い」「すっぱい」「苦い」「辛い」「塩辛い」の「五味」と各種の複合した味をうまく調合し、適度の火加減で調理すれば、味も香りも素晴らしく、身体に栄養をつける料理をつくることができる。
工業文明がもたらした危機
北京市内の汚水処理場
この2、300年、人類社会は工業文明の時代に入り、それは社会の繁栄や進歩をもたらした。しかし、科学技術と生産力の高度の発達や過度に利益を追求する社会発展のパターン、消費を奨励し、ひいては贅沢な消費によって生産の規模を維持する制度、人口の急増などが、自然の生態系と人類社会の発展を対立させた。そして、鉱物資源や石油、天然ガス、水資源を乱開発したり、ほしいままに草地を開拓したり、森林を伐採したり、大気や水を汚染するなど、深刻な生態系の危機が人類にさまざまな生存と発展の問題をもたらした。 中国の人口は新中国が成立した1949年には5億4000万人だったが、急速に増加し、現在約13億人になり、これも生態系にとって大きな圧力となっている。
中国の工業文明の発展はやや遅れている。しかし政府は、生態系や環境の保護を重視してきた。1973年、中国は全国環境保護会議を開き、1979年には『環境保護法』を公布し、経済建設や都市と農村の建設、環境建設を「同時に企画し、同時に実施し、同時に発展させる」ことなどを要求した。
近年、政府はさらに生態環境を保護するために、さまざまな措置を講じた。しかし、いろいろな理由で、現在の中国の生態環境は憂うべき状態である。
黄河は中国の母なる大河である。しかし上流は、黄土高原を流れるので水土流失がひどい。毎年、16億トンの土砂が黄河に流れ込むため、中、下流の河床は土砂の堆積で高くなり、黄河を「天井川」にしてしまった。歴史上、黄河は何回も氾濫して災害を引き起こしてきた。しかし近年の干ばつ、水源不足、水の使いすぎで、ついに何回も「断流」(水の流れが途絶えること)してしまった。
江西省新余県の農民は、有機野菜を栽培する畑で太陽エネルギーを利用した殺虫器を利用している。光の波長によって虫を誘う仕組みになっていて、環境にやさしく、効果も高い(新華社)
中国最長の大河である長江は、上流の水土流失によって、毎年、5億トンの土砂が流れ込む。そのため、長江の洪水調節機能を持つ洞庭湖や鄱陽湖は、土砂の堆積で小さく、また浅くなった。洞庭湖の面積は毎年、88平方キロ小さくなり、鄱陽湖の容積は、かつての370億立方メートルから298億立方メートルにまで減少した。また江漢平原(湖北省中南部)にある湖の数は、1066から309に減少し、その面積は8830平方キロから2980平方キロまで縮小した。このため、1998年に長江の大洪水が起こると、洪水の一部を湖に流すことができず、千人以上の人が亡くなり、経済的被害が1600億元以上の大災害となった。
工業排水や都市部の生活汚水によって、川や湖はひどく汚染された。江蘇省無錫市の市民の飲用水は、中国第三の淡水湖である太湖から取り入れている。しかし近年、ひどく汚染された排水が湖に流れ込み、太湖に藍藻を急速に繁殖させた。水質は悪化し、水道水さえもいやな臭いがするようになった。市民たちはやむを得ず、行列してボトル入りミネラルウォーターを買って飲んでいる。
目前の利益に動かされて、金儲けに夢中になっている一部の人々は、自然の生態系が破壊されるのに目もくれず、資源の略奪に狂奔している。この数年、有名な漢方薬である「冬虫夏草」が高値で売れているため、多くの人々が続々と青海省の高山の草地に入り、「冬虫夏草」を盗掘している。草地が破壊されるのは言うに及ばず、「冬虫夏草」も絶滅の危機に瀕している。そのほか、まぐわを持った多くの人々が、甘粛、寧夏、内蒙古の荒れ果てた砂漠に赴き、「髪菜」や「甘草」を掘り、その地の砂漠化を激化させている。
「任重くして道遠し」
湖北省宜昌市のレストランやホテルの多くは、 施設運営のエネルギー源を従来の石炭から太陽光に変えている(新華社)
地球温暖化、干ばつ、水土の流失、河川湖沼の汚染、大気汚染、エネルギーの欠乏などの厳しい生態系の状況に直面し、ここ数年、中国政府は「科学的発展観」の貫徹を提起し、生態環境を保護し、人と自然の調和のとれた発展戦略を実施している。スタートしたばかりの中国のエコロジー文化の建設は、「任重くして道遠し」といえるだろう。
現在、中国は林業の生態系建設を急いでいる。その中で、東北、華北、西北にまたがる「三北防護林帯」は延々7000キロも続き、すでに北方からの風と砂を防ぐ「緑の障壁」となっている。また、黄土高原に木と草を植え、黄河流域の小規模な水土保全のプロジェクトも、水源を涵養し、水土の流失を減らす効果がすこし見え始めた。
荒れ狂う北方の砂嵐に対して、北京、天津、内蒙古などで実施された「風砂源の整備プロジェクト」によって、一年間の砂嵐の日数が、2000年の19日から2008年の12日にまで減った。
中日共同開発の風力発電機。2007年末に甘粛省絶滅危惧動物研究センターで使用が始まった。弱い風でもで動き、性能が安定していて発電効率が良い(新華社)
各省や自治区で広く展開されている「速生豊産林(成長が速くて生産量が多い植林)基地建設プロジェクト」や「耕地を林に戻す」「牧場を草原に戻す」の活動によって、各地の生態環境が改善されつつある。毎年3月には全国植樹日が制定され、これまでに累計で515億4000万本の木が植えられ、祖国を緑化しようという人々の意識が深まった。とりわけ1998年に起きた長江の洪水の教訓を汲み取り、長江の上流では天然林の保護プロジェクトが実施され、森林の伐採と木材の加工が厳禁された。そして、伐採に従事してきた労働者や木材工場の労働者たちは、山に木を植え、林を保護するようになった……。こうした有効な対策のおかげで、長江上流の山林はまたうっそうと茂るようになった。
現在、中国には2531の各種の国家自然保護区があり、総面積は152万平方キロに達する。政府は法律を制定し、専門の機構と人員を配置し、さまざまな厳しい措置を講じて保護区内の各種の希少動植物を保護している。とくにパンダ、キンシコウ、東北トラ、トキなどの中国特有の希少な絶滅危惧動物とギンサン、メタセコイヤ、キンセンマツなどの希少植物はよく保存され、人類のエコロジー文化の建設に貢献している。
エコロジー文化の建設において重要なのは生産方式の転換である。つまり「高投入、高消耗、高排出」の粗放型生産方式を、省エネで環境保護の、循環利用できるエコ産業に転換することである。そのためここ数年、各地で、エネルギーの消耗がひどく、汚染が深刻で、効果と利益が少ない小規模の、万を数える火力発電所や化学工業、化学肥料、セメント、製紙の工場が生産を停止したり閉鎖されたりした。
政府は風力発電への投資を増大し、沿海地区や西北地区など風力発電に適した地域に発電所を建設している(新華社)
と同時に、「低投入、高産出、低消耗、低排出」のハイテク企業を積極的に支援し、水力、風力、太陽エネルギーなどの、清潔で再生できるエネルギーの開発に大きな力を入れた。2007年末までに158の風力発電所が建てられ、発電機の容量は590万キロワットに達している。太陽エネルギーの開発・利用は、毎年150%のスピードですさまじく発展しつつある。
現在、各地の農村で推し進められているメタンガス池のプロジェクトも、良性循環のエコ産業である。それは、人畜の糞便を密封したメタンガス池に入れ、発酵させてメタンガスを発生させて、それを家庭の調理の燃料にする。これによって薪を節約し、山林を保護する。さらにメタンガス池の滓を肥料とすると、穀物も果物もよく実り、虫もつきにくい。化学肥料や農薬を使う必要はなくなるし、汚染も減少する。さらに、糞便をメタンガス池に入れることで、農村の衛生状態も良くなる。一石二鳥ならぬ一石数鳥のメタンガス池は、農村の生産のあり方やライフスタイルを変えた。現在、中国ではすでに、1807万戸の農家がメタンガスを利用している。
太陽光が豊富な青海・チベット高原では、太陽エネルギーを利用して湯を沸かしたり食事を作ったりしている(新華社)
エコロジー文化を建設するには、社会全体の支持と参加が必要である。そこで、政府と民間の生態環境保護組織は、人々に、今までのライフスタイルを転換し、エコロジー文化の建設ために貢献するよう呼びかけている。例えば、エネルギーの欠乏、原油価格の高騰に直面し、多くの市民は、進んでバスの利用を選択した。これによってエネルギーの消耗や交通渋滞、車の排気ガスによる汚染を減少させようとしている。
現在、北京郊外には4000以上のゴミ埋め立て地がある。山のように積まれたゴミを見て、多くの市民は、分解しにくいポリ袋を使わなくなった。また、できるだけはやく日本のように、ゴミ発電の技術を開発し、汚染を減少させ、エネルギーを増やそうとしている。さらに日本に学んでゴミの分別を習慣づけ、リサイクルを図ろうと主張する市民もいる。
さらに学生たちが先輩の使った教科書を再び使って紙を節約し、木材の消耗を減らす習慣も次第に広まってきた。住宅の屋上に太陽エネルギーを利用する温水器を設け、シャワーに使ったり、雨水を集めて緑化や洗車に使ったりするのも、資源を節約するうえで効果があり、中国社会に広まっている。
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