「朝顔の紺の奥こそ眩しけれ 五島高資」を連想
https://pex.jp/point_news/67cc32bf60a8816062e625272f3b6b95 【群青(ぐんじょう)ってどんな色?紺色や藍色とはどうちがうの?~子どもに伝えたい日本の伝統色~】より
【群青(ぐんじょう)】とは、紫がかった濃い青色のこと。日本の伝統色である【群青】にどのような由来があって、どのように愛されてきたのか、子どもにそのまま教えてあげられるよう、やさしい言葉で解説します。海外の方に英語で説明できるよう、英語での解説も紹介しています。
【群青】とは?
群青とは、紫みを帯びた濃い青色のことです。
※色は環境等により見え方が異なります。各種カラーコードは絶対のものではなく、あくまで参考値です。
【群青】の意味と由来は?
群青とは、紫みを帯びた濃い青色のことです。青が群れ集まるという意味を持っています。中国から日本にこの色が伝わったのは先史時代のこと。名前の由来は、日本画で使われる青い顔料「群青」から来ています。
天然顔料の群青は、藍銅鉱(らんどうこう・アズライト)など青系の天然の鉱石を原料に作られました。その生産地や採掘量が限られることから、群青は古代からとても貴重で高価なもの。そのため、曼荼羅(まんだら)のような仏教画など、特別な用途でしか使えなかったようです。
顔料の「群青」は、今でも、日本画の「青」のための主な顔料です。また、原料となる「アズライト」はペルシャ語の「青色」がその名の起源。空や海、花の「青」を描くために多くの画家が焦がれた色、それが群青色なのです。
【群青】に関連する色
【群青】に近い、青系統の日本の伝統色はたくさんあり、代表的なものに【藍(あい)】や【紺(こん)】があります。
【群青】と同じように、藍銅鉱(アズライト)に由来する日本の伝統色には、ほかに【紺青(こんじょう)】や【白群(びゃくぐん)】があります。
■【藍(あい)】■【紺(こん)】■【紺青(こんじょう)】■【白群(びゃくぐん)】
【群青】に合う色は?
【群青色】に似た色として、【藍色】や【紺色】を思い浮かべる人もいるでしょう。藍色はやや黄みを帯びた青、紺色は紫がかった濃い青ですが、群青色はそれより鮮やかな青色。同じ青系統として、藍色や紺色と組み合わると、やわらかく落ち着いた印象になります。
青系統は、白色とも好相性。伝統色の【卯の花(うのはな)】【月白(げっぱく)】との組み合わせは、日本の秋の色を表す色目「花薄(はなすすき)」と似て、さわやかで心地よい雰囲気。秋の高く青い空に映えるススキの群れを思わせますね。
変わったところでは、【黄金色(おうごんいろ・こがねいろ)】との組み合わせも。とても貴重で高価な群青は、金ぱくとともに絵画に用いられることもありました。国宝に指定されている尾形光琳の「燕子花図屏風」は、深く濃い群青色と金ぱくの輝きが印象的です。
A traditional Japanese color "群青 Gunjo" is...
A traditional Japanese color "群青 Gun-jyo" is a deep blue with a purplish tinge. It has the meaning of a cluster of blues. This color was introduced to Japan from China in prehistoric times. The name comes from the blue pigment "群青 Gun-jyo", which is used in Japanese painting.
The natural pigment "群青 Gun-jyo" was made from natural blue ores such as azurite. Due to its limited production area and the amount of ore mined, "群青 Gun-jyo" has been very precious and expensive since ancient times. Therefore, it was used only for special purposes, such as Buddhist works and mandalas.
The pigment "群青 Gun-jyo" is still the main pigment for "blue" in Japanese paintings. The raw material, "azurite," got its name from the Persian word for "blue". It is the color that many painters have longed for in order to paint the "blue" of the sky, sea, and flowers.
まとめ
日本で古くから愛されてきた【群青】。現在は絵の具やクレヨン・色えんぴつなどでも比較的かんたんに再現しやすい色ではありますが、はるか昔に日本に伝わったときは、とても貴重な色だったんですね。お絵描きしている子どもに、「きれいな青だね、昔はね……」と話してあげるといいかもしれませんね。
https://miho.opera-noel.net/archives/3701 【第七百六十三夜 田中ひろしの「冬銀河」の句】より
風立ちぬ 堀 辰雄
私は数年前、屢々、こういう冬の淋しい山岳地方で、可愛らしい娘と二人きりで、世間から全く隔って、お互いがせつなく思うほどに愛し合いながら暮らすことを好んで夢みていた頃のことを思い出す。私は自分の小さい時から失わずにいる甘美な人生へのかぎりない夢を、そういう人のこわがるような苛酷なくらいの自然の中に、それをそっくりそのまま少しも害わずに生かして見たかったのだ。そしてそのためにはどうしてもこういう本当の冬、淋しい山岳地方のそれでなければいけなかったのだ・・。
――夜の明けかかる頃、私はまだその少し病身な娘の眠っている間にそっと起きて、山小屋から雪の中へ元気よく飛び出して行く。あたりの山々は、曙の光を浴びながら、薔薇色に赫いている。私は隣の農家からしぼり立ての山羊の乳を貰って、すっかり凍えそうになりながら戻ってくる。それから自分で暖炉に焚木をくべる。やがてそれがぱちぱちと活溌な音を立てて萌え出し、その音で漸っとその娘が目を覚ます時分には、もう私はかじかんだ手をして、しかし、さも愉しそうに、いま自分達がそうやって暮している山の生活をそっくりそのまま書き綴っている・・。
(『堀辰雄全集 第1巻』筑摩書房より)
今宵は「冬銀河」の作品を見てみよう。
■冬銀河
1・冬銀河巖より暗く海ありぬ 田中ひろし
(ふゆぎんが いわよりくらく うみありぬ) たなか・ひろし
冬の夜の海は一際暗く感じられる。私たち夫婦が長崎市に住んでいた頃だ。若かった私たちは突然夜の海が見たくなった。少し車を走らせると海辺に出る。夫は石投げをしていたが、ポケットに持っていたテニスボールを投げた。波が岸へボールを打ち寄せてくれることを期待したが、波間にぷかぷか浮かんだままだ。
すると、夫はパンツ姿になるや、海に飛び込んだ。ボールは回収したが、ぶるぶる震え出した。町中に戻るとお風呂屋さんがあったので、一風呂浴びて一心地ついた。
田中ひろしさんの「巖より暗く海ありぬ」を見て、50年近い昔を思い出した。夫が海へ飛び込んだ時、恐怖からだろうが、私には海が黒々と見えたのだった。
田中さんの見た景は逆に、暗い海の中で、海に突き出た巖は、冬銀河の煌めきを受けて白じろとしていたのであろう。
2・冬銀河青春容赦なく流れ 上田五千石
(ふゆぎんが せいしゅんようしゃ なくながれ) うえだ・ごせんごく
冬銀河とは、冬空の天の川のこと。大きな雲かと思うような、白くうっすりとした塊が見えることがある。星の本で調べてみると、雲ではなく星の塊の天の川だという。天の川がはっきり見えるのはどうやら秋が一番のようである。
上田五千石の作品はどこか若々しい。青春時代は誰もが、多くの出合いがあり様々の経験をする、思い返せば、まさに透きとおった素敵な日々に満ちていた。他の季節に見える天の川よりも、鋭い光を放つ冬銀河は青春時代の輝きに似ている。しかもその輝きは容赦なく流れてしまうという。
2句共に、『現代俳句歳時記』角川春樹編から選ばせて頂いた。
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