動的平衡ダイアローグ

Facebokok向後 善之さん投稿記事

「動的平衡ダイアローグ」 福岡伸一 著 小学館新書

生物学者の福岡伸一さんの対談集。対談相手は、小泉今日子、カズオ・イシグロ、平野啓一郎、佐藤勝彦、玄侑宗久、ジャレット・ダイアモンド、隈研吾、鶴岡真弓、千住博。

本屋で見つけて、これは、読まなきゃ!と思って、すぐ書いました。

面白かった。

小泉今日子さんは、すごい!

「過去や未来がぱあーっとと綺麗に並んで横にあって、私が一歩歩くと、過去や未来もみんな一緒にぴょーんと歩くみたいな、そんなふうに捉えたらすごく楽しくなるんじゃないか、なんて考えていました。(p.38)」

ということを若い頃から考えていたのだそうです。

僕には、この発想はなかったですねぇ。

小泉理論を多世界理論に当てはめてみると、新しい宇宙が誕生するたびに未来だけではなく過去も変わってしまうということになります。それは、あり得るのか?なんて考えていたら、物理学者の佐藤勝彦さんが、「一つの宇宙から多くの宇宙が次々に誕生するという論文を書きましたが、最近はその部分の理論が大きく進歩し、それらの宇宙では、物理法則までがそれぞれに異なると考えられています。(p.107)」なんてことをおっしゃっています。

そうか!物理法則が変わるっていうことは、過去も異なっていいんだってことで、小泉理論は、多世界理論で説明できるかもしれません。

福岡さんは、「人間の体はかちっとした個体みたいに思われているけど、じつはたえまなく入れ替わっているんです。蚊柱のようなものです。(p.25)」と言います。人間は、いや生物は全て、蚊柱みたいなもの・・・だとすると、アイデンティティって?本当の自分って?自己実現って?ということになります。

平野啓一郎さんは

「別に意識してキャラを演じているんじゃない。自分の意識とは関係なく、その場の対人関係に合わせて、ごく自然に、異なる自分になっているわけです。そのどれかを「本当の自分」だと決めつけることに、強い違和感がありました。(p.84)」

「アイデンティティは固定したものではなく、さまざまな人や物との出会いによって分化するものです。こうした変化を、「分人化」と表現できると思うのですが。(p.87)」

と言います。

それを受けて福岡さんも

「もし人の本質がそのように動的なものであるなら、確固たるアイデンティティがあると信じ、それをひたすら求め続ける「自己実現」の物語も、非現実的な虚構でしかないことがわかります。(p.87)」

と言っています。

心理学、ピンチ!!!

自己実現とは、「何かを付け加えるのではなく、余計なものを取り去った状態」ですから、無の状態ってことでしょうかね?

そして、マズローさんは言っています。

「自己実現は静的状態ではない。個人の能力を創造的に楽しみながら十分に生かしていく絶え間ないプロセスである。(自己成長の基礎知識2より)」

ということは、世間の「自己実現」に対する捉え方が、ちょっとずれているのでしょうね。そして、福岡さんは、本来の意味ではなく、少々ずれた一般的な自己実現の概念について語っているのでしょう。もっとも、心理の専門家にも「ずれた自己実現の概念」をお持ちの方は少なからずいるのかもしれませんが・・・。

さて、じゃあ、自分とは何か?

福岡さんによれば、

「何を根拠に、自分が一貫した存在だといえるのか。それを支えるのが「記憶」なのではないでしょうか。(p.63)」

カズオ・イシグロさんも「私にとって小説を書くと言うことは、薄れゆく記憶を永遠に固定する手段でした。(p.63)」と言われています。

人は、記憶を根拠に自分という存在を理解しているのでしょう。でも、その記憶も動的に変化し得るのかも。

カズオ・イシグロさんは、さすが小説家、「私にとって大人になるとは、いまいったように、世界が教えられてきたような優しく素晴らしい場所ではないと気づくことです。(p.67)」など心に残る言葉をさらっと、おっしゃいます。

ジャレット・ダイアモンド(生物学・人類生態学者)さんは、「多くの伝統社会では「体罰」が行われていない (p.153)」と言います。そして、「価値の高いものを所有している集団ほど、体罰をする傾向があるのではないか (p.155)」と考えています。

大人が価値があると考えるものを子どもが無くしたり壊したりすると体罰を加えるということで、要は、体罰は子どものためじゃなくて、大人のエゴによるものなんですねと思いました。

ダイアモンドさんは、「例えば、6550万年前にメキシコ湾に落ち、恐竜を絶滅させたといわれる隕石の落下点がわずかにずれていただけで、私とあなたのような人間同士が今こうして語り合っている状況はなかったかもしれない。(p.168)」とも言っています。

因果律で全てを説明しようとするのは、無理があるのでしょう。先のことはわからない。複雑系のみらいは予測不能です。

さて、福岡さんが主張している「動的平衡 dynamic equilibrium」の、「秩序は守られるためにたえまなく壊されなければならない」という考え方ですが、とても興味深いです。

生命体は、「率先して自らの一部を壊すことで、「エントロピー増大の法則」に抗っている。(p.28)」ということになるのですが、だとすると、なんで、最後に「エントロピー増大の法則」に負けて、死を迎えるのかという疑問を持ちました。

・・・と、いうわけで、ChatGPT先生に聞いてみました。以下がその答えです。

Q:福岡伸一さんは、「生命体は、率先して自らの一部を壊すことで、「エントロピー増大の法則」に抗っている。」というのですが、だとすると、生命体はどんな時に死ぬのですか?あるいはエントロピーの増大の法則に屈するのですか?

A:福岡伸一さんの生命観に基づくと、生命体は常に自らの一部を壊し、再構築することでエントロピー増大の法則に抗っています。これは、細胞の新陳代謝や損傷を修復する過程などを通じて行われます。しかし、生命体が死ぬ時やエントロピーの増大の法則に屈する時にはいくつかの要因があります。

1. 老化: 年齢とともに、細胞や組織の修復能力が低下します。新陳代謝が減少し、損傷を修復する能力が劣化するため、エントロピーが増大します。この結果、身体機能が徐々に失われ、最終的には生命体が死に至ります。

2. 病気: 病気や疾患は、生命体の正常な機能を阻害し、エントロピーを増大させます。例えば、癌や感染症は細胞の正常な働きを妨げ、新陳代謝や修復メカニズムに異常を引き起こします。

3. 環境要因: 外部からのストレスや極端な環境変化(例えば極度の寒さや暑さ、毒物への暴露)は、生命体のエントロピーを急速に増大させ、修復能力を超える損傷を引き起こします。

4. 遺伝的要因: 遺伝子の異常や欠陥は、細胞の修復や再生の能力に影響を与えることがあります。これによりエントロピーが増大しやすくなり、早期の老化や死を引き起こすことがあります。

総じて、生命体が死ぬ時やエントロピーの増大の法則に屈する時は、新陳代謝や修復能力が低下し、エントロピーの増大を抑えることができなくなる時と言えます。

コズミックホリステック医療・現代靈氣

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