https://blog.goo.ne.jp/peaceorange/e/5d8f0120037ab5e9ebfef68df1090cb8/?img=25bc33dedb5771b9c49b099baeb6c2e8 【長崎県五島市 「 富江溶岩トンネル 井坑 ( いあな ) 」】より
https://www.youtube.com/watch?v=xCCpUsHbu_M&t=69s
現在、井坑の入り口は施錠されて入って行けない状態になっているので、入り口のみの撮影となった。富江半島は、天保海岸や番所山の基盤岩の丘陵を除いて、標高40m以下の起伏に乏しい溶岩台地となっている。
台地の上の只狩山(84m)は小さな噴石丘で、火山弾を含む岩滓層で構成され、火口は南に向けて開口する。
この富江溶岩台地にはいくつかの溶岩トンネルがあり、最大級の規模を誇る井坑(いあな)が指定を受けている。井坑の入口は大きく開き、幅6.5m、高さは3.5mある。
井坑の入口附近の地表は約40m間が陥没して、トンネルの天井が崩落しているが、その先は再び全長85mの通り抜けの可能なトンネルに連続する。
トンネルはゆるやかに屈曲しながらほぼ南に向けて徐々に下がるが、延長およそ400m地点で天井まで満水状態となり、先が不明となる。先端にたまる水には海水が混じる。
富江溶岩台地に発達した溶岩トンネルのうち最大級の規模を誇るもので、五島列島の地質を示すものとして価値がある。
http://vzp04542.la.coocan.jp/earth/volcano/fukue/fukue05/fukue05.htm 【鬼岳火山群 ~福江島のシンボル。スコリア丘群と溶岩台地~】より
多郎島公園から見た鬼岳。山焼きでよく目立つ。
富江の多郎島公園から見た鬼岳火山群。鬼岳のすぐ右に火ノ岳、右端には箕岳と臼岳。
1.鬼岳火山群の地形
鬼岳周辺の地形。鬼岳が南北に長いスコリア丘であることが分かります。
鬼岳(おにだけ)火山群
富江火山を後にして、いよいよ鬼岳に戻ってきました。
福江島のシンボル、鬼岳(おにだけ)および火ノ岳(ひのたけ)を中心に厚い溶岩台地の上に刑された複数のスコリア丘からなる、福江市街地に最も近い半島。
さらに南東方向には箕岳(みだけ)および臼岳(うすだけ)小スコリア丘からなる小さな舌状の半島が付け加わります。
沿岸には黒島、黄島、赤島等からなる火山島が点在する、福江島の中でも最も火山密度の高い地域となっています。
鬼岳は東伊豆の大室山のような単純なスコリア丘ではなく、南北に複数並んだ複合スコリア丘で引き伸ばされた印象。近づいて見ましょう。
2.鬼岳遠望
福江島のシンボル鬼岳。山麓からの眺め
訪問三日目の夕方、富江を過ぎていよいよ福江火山群の中心火山ともいえる鬼岳に近づいてきました。まずは鬼岳の南西山麓から眺めてみます。
鬼岳スコリア丘は山焼きにより、伊豆の大室山のようにススキ原で覆われているために、とても目立つ存在。
一見、単純なスコリア丘に見る鬼岳ですが、実際には奥に向かって長く伸びた地形となっています。この辺りは鬼岳からの溶岩が広がっています。
鐙瀬海岸からの眺めが最も左右対称
鬼岳の南側、鐙瀬(あぶんせ)海岸から眺めると、左右対称形のスコリア丘の姿を見ることができます。
この辺りはやや古い鬼岳の溶岩流で覆われており、一体は自然公園となっています。
写真の右端は火ノ岳火山。 鐙瀬ビジターセンター近くの展望台から撮影。
富江の溶岩に較べるとやや荒っぽい印象。
南部二つの小スコリア丘
海岸に降りてみると、溶岩海岸が延々と続きます。
直前に見た富江の溶岩海岸に較べると、やや溶岩の質が異なっており、ブロックも大きく若干粘性が大きい印象。
写真の遠景にある二つの三角形の山は、左が箕岳、右が臼岳の小スコリア丘。右の臼岳は半分海食で失われていますが、左の箕岳は後で登って分かったのですが、とても均整のとれたかわいいスコリア丘なのでした。
日も暮れてきたので、今晩の宿に向うことにします。
ビハーラ五島さんで見せていただいた火山弾。右の火山涙コレクションにも注意。
驚きの民宿
この日は福江の市街地近くの高台(実は鬼岳溶岩流の末端近く)にある民宿「ビハーラ五島」さんにお世話になりました。
素晴らしかったこと
その1)料理が非常においしかった(奥様ありがとうございました)
その2)ご主人が福江島の自然や歴史にとても詳しい方で、火山にも明るく、この地域で採取された火山弾や火山涙、鉱物を数多く見せていただきました。たまたま予約した民宿でこんなことになるとは・・・。お世話になりました。地学目的で福江島に訪れる方にはお薦めの宿です。
3.鬼岳に登る
訪問4日目、今日一日が福江島を廻れる最後の日。とりあえず朝から鬼岳に登ってみることにします。福江火山群のシンボル、思い描いていた鬼岳にいよいよ登山してみましょう。
ペレーの涙ならぬ、鬼の涙?
鬼岳登山
よく整備された登山コース入り口にはビジターセンターの他、鬼岳天文台(写真の奥にみえる)などの施設があります。
ここからのんびりと草地の道を登っていくことにしましょう。
広々とした景色
鬼岳のふもとから登り始めのスコリア丘の麓はこんな感じで、実に広々としています。これから中央に見える道に沿って登っていくことにしましょう。よく整備された草地なので、多少コースを外れてもどうにかなります。枯れ草の山を登るのは楽しいものです。正月に来た甲斐がありました。
中腹からのパノラマ
上の写真の上部に見える尾根筋に達すると・・・・鬼岳スコリア丘の全貌がよく分かります。
鬼岳は南北に長い、北側に口を開けたスコリア丘なので見る角度でその印象は随分変わります。登山道は北側斜面からスコリア丘の縁に沿って一周しています。
こんな感じで火山弾が顔を出す 火山弾が顔を出す
一帯はスコリアはもちろん火山弾や火山涙(溶岩のしずく)が積もってできた火山です。登山道のあちこちにきれいな火山弾が草の中から顔を出しています。
鬼岳山頂標識は、文字がはがれていてよく見えない
鬼岳山頂 あっというまに山頂です。 山頂といってもスコリア丘の縁の一部で、標識(文字が剥がれていて良く見ないと気付かない)でそれと分かる程度のものです。
火ノ岳 鬼岳山頂から見た火ノ岳。
こちらはゴルフ場と樹木に覆われておりあまり近づけません。
山焼きが行われていないため、一見鬼岳の方が新しい火山のようにも感じられますが、実際はどうなのでしょうか。
左:箕岳 右:臼岳
箕岳と臼岳
半島の南に、さらに小さな二つのスコリア丘のつくる溶岩半島があります。左が箕岳。右が臼岳。あとで行ってみることにします。鬼岳もスコリア丘部分は急傾斜ですが、すぐ外側は比較的傾斜が小さく、耕作に適した溶岩台地が広がっています。スコリア丘の急斜面の先は、緩やかな溶岩台地がひろがります。
南海岸線
写真の左端付近の海岸線が、昨日見上げていた鐙瀬海岸。その沖に見えるのが黒島。
海岸付近は傾斜が緩い溶岩台地が広がっています。
写真右側の沖には目立ちませんが、富江火山のたいらな半島が横たわっています。平らなので本当に目立ちません。
空港にうってつけの溶岩台地。五島福江空港
鬼岳西山麓は空港を作るにはうってつけの溶岩台地。地形の険しい他の島に較べれば、空港の建設コストはずいぶんと安く上がったと思われます(?)
部活の練習場所としては最高ですね。野球部の練習場所
鬼岳山頂を一周して降りてくると(下山ルートは迷ってヤブコギ)、地元高校の野球部の生徒達が鬼岳の草原で体を鍛えていました。こんな自然の中で練習できるのがうらやましい。
さて、そろそろ鬼岳を下り、さらに南の箕岳に向かうことにします。
4.小学校の火山弾
崎山小学校正門。門松が見事です。崎山小学校
鬼岳から箕岳に向かう途中、崎山小学校に非常に大きな火山弾が置かれているとの民宿のご主人からの情報を得て、訪ねてみました。
正月休みで誰もいませんが、立派な門松が正門を飾っていました。。 火ノ岳火山の南東山麓に位置しています。 正門が開いていたので失礼してみます。
卒業生の顔、顔。正門すぐ脇の庭に無造作に置かれた火山弾
小学校の正門を入ってすぐ左側の庭に、かつての卒業記念のさまざまな記念碑?と共に大きな火山弾が置かれていました。
マウスオンで視差画像。崎山小学校の火山弾
民宿のご主人が仰るとおり、非常に大きな紡錘状の火山弾でした。
おそらくこの小学校の近くに落ちていた火山弾なのでしょうが、供給源は不明です。火ノ岳? 鬼岳? それとも箕岳・・・?
6.箕岳火山
東側から見た鬼岳火山群の鳥瞰図(カシミール3Dで作成)
鬼岳、火ノ岳火山の南側に新たに噴出した小スコリア丘、箕岳と臼岳(半分侵食されている)の位置関係です。
一方で鬼岳と火ノ岳周辺(特に北側、図の右側)には小スコリア丘がいくつも並んでいるのが確認できます。
火ノ岳と箕岳にはさまれた谷筋に崎山町の町並みがあり、上で紹介した崎山小学校もここにあります。
東側からの鳥瞰図。きれいな公園です。2枚パノラマ。コンパクトで新鮮なスコリア丘
箕岳はこれぞ単成火山のスコリア丘ともいえる若々しい地形と保っています。鬼岳同様、北側に開いた形です。
火口底の部分は写真のようにきれいなグランドで、周囲は桜が植えられています。周囲をスコリア丘で囲われているので風の少ない良い花見スポットとなるのでしょう。
写真正面のスコリア丘の縁に沿って歩道が整備されていて、山頂まで続いています。登ってみましょう。
箕岳スコリア丘の縁につくられた歩道。小さなスコリア丘の登山歩道
歩道の一部はスコリア丘を一部削ってつくられており、その断面を見ることができます。写真上部は崎山町の町並み。
小さなスコリア丘は公園としてはうってつけですね。スコリアの降り積もった崖。スコリア丘の断面
大部分は赤茶けたスコリアが降り積もっています。左上にはやや大きな火山弾。鬼岳も含め、スコリア丘はこのような火山噴出物が降り積もって形成されたものです。
箕岳スコリア丘中腹からのパノラマ
歩道の途中から見た箕岳スコリア丘。基底部のグランドと、その周囲に植えられた桜並木。
右側遠景は鬼岳および火ノ岳。火ノ岳の手前に広がる崎山町。左側アンテナが見えるところが箕岳山頂。
箕岳山頂からのパノラマ
写真左側に見えるのが臼岳スコリア丘。海側半分が海食で失われています。
臼岳の左に見えるのが黒島。
4.市街地近くの鬼岳溶岩流の末端崖
箕岳を後にして福江港近く、鬼岳の厚い溶岩流が市街地にせまる崖を観察してみました。(矢印部分)南側から見た鳥瞰図。市街地に迫る溶岩の崖。標高40m以上あります。
溶岩流の末端の崖
福江港から見ると、低地に広がる市街地のすぐ西側に高さ40m程度の崖が迫っていることが分かります。鬼岳火山から流れ出た、空港を含む溶岩台地の末端。
崖の傾斜は非常にきつく、道は斜めにつくられています。
写真左奥が市街地方向。ジグザグ道で登ります。つづら折れの道 上の写真の少し奥から撮影。溶岩台地に上がる道はジグザグにつくられています。台地上はおもに畑が広がっています。
6.鬼岳周辺の火山島
今回は訪問できませんでしたが、鬼岳周辺の小さな火山島の写真だけ掲載しておきます。
鐙瀬海岸から撮影。
黒島 標高約100mの火山島。富江から連絡船で結ばれている。
黒島
黄島(おうしま)
写真右半分が黄島(標高92m)。福江港から連絡船が出ています。南側の海岸に大規模な溶岩トンネルがあるとのことで、是非行ってみたかった島です。
左側、黄島の手前にある低い火山島は「大板部島(おおいたべじま)」。無人島です。
http://vzp04542.la.coocan.jp/earth/volcano/fukue/fukue04/fukue04.htm 【富江火山 ~高流動性溶岩と溶岩トンネルの半島~ 】 より
突然、平らな地形が現れます
玉之浦からの山岳道路が終わる頃、突然まっ平らな溶岩平原が現れる。
1.富江火山の地形
富江(とみえ)火山
福江島の南端に伸びた「舌」状の平らな溶岩平原。火山というにはあまりにも平らな地形です。中心火山は北部にある只狩山スコリア丘。人は山を見て、その姿をいろいろ形容するのでしょうが、富江火山はそのあまりの平坦さで、「山」としての印象は低いかもしれません。
富江火山の特異さはこの平坦さにあります。
玄武岩質の中でも特に流動性に富んだ溶岩の大量噴出によってできた半島。
いつ頃噴火したのかについては、研究がそれほど進んでいないようですが、最も新しいとされる鬼岳火山群とそれほど変わらないのではないかという説もあります。
三者三様の断面位置
断面図で比較
福江島の主要3火山の断面図を作成してみました。 (カシミールを使用)
地図上ではどれも同じような「舌」状の半島ですが、その断面は三者三様。
福江のシンボル鬼岳火山群は度重なる活動で、楯状火山の上に成長したいくつものスコリア丘からできています(a-a´)。
北の三井楽は典型的な楯状火山。京ノ岳を中心火山としてほぼ対称性のある緩やかな断面が特徴的(b-b´)。
そして富江火山のまったいらな断面(c-c´)。
スコリア丘の只狩山(標高84m)を通る断面でも下の図のとおりです。溶岩平原の占める面積に比較して、異常な低い標高はただものではありません。
おもな要因であろう溶岩の流動性の高さは、福江島はもちろん、世界の中でもおそらくトップクラスではないかと思います。富江火山の平坦さはただものではありません
2.大瀬崎
大瀬崎の堆積岩の地層は非常に強固です
大瀬崎
訪問三日目。荒川温泉を後にして西海岸を南下。福江島の西海岸は典型的なリアス式海岸の深い入り江で天然の良港に恵まれています。
一方、南海岸は直線的な断崖が続いています。その西の端の大瀬崎に立ち寄ってみました。
写真は展望台から見た大瀬崎と灯台。
今回、旅の興味が特異な火山群に向いていてあまり注目していなかったのですが、島の基盤となっている堆積岩がつくる地層は重厚・長大で南側に傾斜して海に沈んでいます。その突端の高まりに灯台が作られたのは明治12年、異国に面するこの地の重要性が理解できます。
由緒正しい大瀬崎灯台です
大瀬崎灯台
険しい地形のため、道路は山側に作るしかありません。駐車場の標高は220mくらい。ここから150m程の標高差をハイキングコースに沿って下っていくのでちょっとした運動になります。
最後の草地に達すると目の前に岩山の基盤に建設された灯台が現れます。
眼下の鞍部にはかつて(昭和末期まで)灯台守が暮らしていた宿舎があった跡地。現在は無人灯台となっています。
福江島南海岸の地形
南岸は山岳道路
大瀬崎を後にしていよいよ富江火山に向かうことにします。険しい断崖が延々と続くため、道路は内陸に沿って、地形そのままのアップダウンを繰り返す山岳道路となっています。(自転車の旅にはキツイだろうな・・)
この山岳道路が終わる頃、突然のように富江の平らな溶岩半島(タイトル写真)が現れます。
3.東海岸
鬼岳を望む
多郎島公園
富江の市街を通過して東海岸に進むと、間もなく開放的で明るい玄武岩の海岸が見えてきます。キャンプ場やバンガロー施設がある「さんさん富江キャンプ村」が併設されている多郎島公園。
正月三日になって、今回の旅で初めて晴天に恵まれました。
目の前には雄大は鬼岳火山群が横たわっています。
先ほどまでの壮絶な断崖とは対照的な風景。
多郎島公園に見られる玄武岩
新鮮な溶岩
すぐ沖の緑の平坦な島が多郎島。半島と共に流動性の高い玄武岩が広がっています。
溶岩表面の状態は見た目は極めて新鮮で黒光りしています。
これまで福江島で見てきた溶岩の中でもピカイチで新鮮な印象。
これらの大量の溶岩を噴出した場所は一体どこなのでしょうか。
とぐろを巻いています
パホイホイ溶岩
広い溶岩海岸を全て見て回るわけにはいきませんでしたが、写真のように明らかに溶岩が流れ込んだところ、あるいは溶岩通路(トンネル出口)からあふれ出したようにも見える場所が随所に見受けられます。縄状の表面模様が鮮明。
よく似た光景はハワイのキラウエア火山の近くから流れ出した溶岩が、溶岩トンネルを通って数km先の海岸に達し海に流れ込む風景に似ています。
この溶岩が流れていた頃の光景を想像してしまいます。
4.南海岸
笠山鼻灯台
福江島最南端の笠山鼻灯台
次に向ったのは富江半島の南端にある笠山鼻にある灯台。
正確には「笠山鼻灯台」と「笠山鼻南方照射灯」が同じ建物に併設されています。
写真の灯台型の最上部にあるのがおそらく「灯台」。その下に見える四角い窓枠が、南側の沖に置かれている標識あるいは岩場を夜間に照らして、船を座礁から守るための「南方照射灯」というわけです。沖には照射対象と思われる標識が設置されています。
この史跡は一体なんなのでしょう
謎の「勘次ヶ城(かんじがしろ)」
笠山崎灯台から少し東に戻ったところに「勘次ヶ城」という史跡があります。正式名称は山崎石塁(せきるい)という。
現地にある説明看板の内容は設置年代によってやや視点が異なっており、昭和45年設置の教育委員会の説明では、ここは13世紀から16世紀にかけて中国や朝鮮半島で恐れられていた日本の海賊集団「倭寇」の拠点のひとつであり、その後、地元の勘次がここに住みついていた」という解釈。
最近の看板では、もともとこの地の大工であった勘次が河童と共にこの城を毎日築き上げたという伝説を中心とした解説になっています。
実際に見てみると多くの部屋が溶岩の石で区切られ、部屋をつなぐ通路、ないしはカマドのような構造も見られる、かなり大規模な建造物です。使われていた当時は相当数の人がここに何らかの理由で住んでいたとしか思えません。一体、なんなのでしょう。
単なる住居ではなく、やはり敵からの攻撃に備えての「要塞」という印象が強い。
5.井坑(いあな)
Nikon D200 Distagon25/2.8 絞りf4/シャッタースピード2秒
大規模な溶岩トンネル
勘次ヶ城から少し内陸に入った畑の中に、地図にも記載のある井坑(いあな)があります。大規模な溶岩トンネルの天井の一部が陥没したため、そこだけ短い谷地形となっています。
陥没谷の両側はトンネルが口を開けていますが、かつて観光パンフレット写真に掲載されていた内部を通る歩道も、天井崩落の危険で今は閉鎖。中を覗き込んでも肉眼ではほとんど何も見えませんでした。
ところが撮影した写真の暗部を画像処理で持ち上げてみると、予想以上に内部の様子が見えてきました。
(写真のデータ: Nikon D200 25mm/F2.8 絞りf4 露出時間2秒 午後3時半頃撮影。手持ちで少しブレてしまった)。
観光地としてはやや寂れた印象で、手入れもなされていません。これだけの規模の溶岩トンネルです。せめて照明があれば・・もったいない印象。
トンネルの直径は5m以上ありそうです。
ここを大量の溶岩が海に向って流れていった噴火当時、この半島の風景はさぞダイナミックだっただろうなあ・・と想像します。
溶岩が流れた跡
溶岩流の跡
壁面には溶岩が流れたときについたと思われる水平方向の筋が残っています。
もう少し整備されるといいですね
反対側のトンネル入り口
陥没谷の反対側の入り口はこんな感じです。
記憶が定かではないのですが、こちら側が海側だったような気がします。
この井坑の他にも半島内にはいくつもの溶岩トンネルの陥没谷があるらしいのですが、地元の人でないと場所は分かりません。
6.只狩山展望台からのパノラマ
富江火山の只狩山スコリア丘の展望台からパノラマ撮影してみました。
※画像をクリックすると拡大画像になります
①東側・・・鬼岳の南海上に浮かぶ火山島と、眼下のまっ平らな溶岩平原
東側パノラマ
②西側・・・ 只狩山は南側に開いたスコリア丘です。西側の小さい丘群は福江島の基盤岩の延長と思われる
西側パノラマ
7.只狩山展望台
只狩山展望台
展望台
北側の只狩山の山頂には面白い形の展望台があります。
上のパノラマはここから撮影。
合っているようで、合ってない気がします。こういう看板、結構好き(笑)
看板考・・
展望台の脇には面白い看板がありました。
絵心のある看板なのですが、やや実際と違うのはご愛嬌。
温泉センターにはさすがに猿はいません(笑)。
私個人の偏見なのかもしれませんが、福江島の景勝地に設置されている公的な案内には、この島の特異な火山に関する記述をほとんど見ることはできません。
多くの人々の興味関心は遣唐使や教会群にあるのかもしれません。
しかしこれほど興味深い火山島はなかなか他にありません。
この島の「地球のダイナミズム」をもっとアピールしてほしいものだなあと、地元の方々に願うばかりです。
http://vzp04542.la.coocan.jp/earth/volcano/fukue/fukue03/fukue03.htm 【三井楽火山 ~アイスランド型楯状火山の日本代表~ 】より
三井楽楯状火山
嵯峨島から貝津に帰る連絡船から見た三井楽楯状火山。緩やかな裾野が印象的。
1.三井楽火山の地形
山岳景観ソフト「カシミール」で作成。国土地理院5万分の1地形図、50mメッシュデータを使用。
三井楽(みいらく)火山の地形
嵯峨島から戻った午後、三井楽火山を廻ってみました。
福江島の火山の中では溶岩年代が30万年前と比較的古い火山ですが、強固な玄武岩で当初の地形を良好に残しています。
中心の京ノ岳(標高183m)を中心とした楯状火山。
日本には本当の意味での楯状火山はほとんど存在しません。
いわゆる地理の教科書(地学ではない)にいまだに登場する「アスピーテ」は、日本各地に結構存在しますが、正しい意味での楯状火山、すなわち流動性の高い玄武岩質溶岩の噴出による火山を指しているものはほとんどありません。部分的に平坦な溶岩地形を指しているものがほとんどです。
楯状火山は大きくは二つに分類されています。
ひとつはハワイ型楯状火山。ハワイ島のマウナロア火山を代表とする、リフトゾーン(割れ目噴火)からの度重なる噴火を重ねた巨大楯状火山。
もうひとつはアイスランドに見られる、比較的短期間に噴出した単成の小型楯状火山をアイスランド型楯状火山と呼びます。
アイスランド型楯状火山の日本代表
三井楽火山はアイスランド型の小型楯状火山、すなわち比較的短期間に噴出した小型の単成火山の特徴を満たしている、数少ない日本の火山のひとつといえます。 ・・・というより、日本にこれほど均整のとれた楯状火山を他に知りません。
アイスランドの楯状火山
アイスランドの楯状火山の中でも最大級のひとつ、中央高地北部にあるTrolladyngja。基底からの比高は約500mで三井楽火山よりもスケールが大きいですが、山容はよく似ています。
(1997.8 Nikon F2 28mm/2.8 ベルビア)
2.三井楽の風景
カモメ(ウミネコ?)が休んでいます。
高崎鼻
西の貝津港から半島を横断して一度東側に抜け、半島の海岸にそって西に回ってみました。
三井楽火山の溶岩流が厚いところは海岸線も脹らんで「鼻」という地名がつけられています。
三井楽ではめずらしい白砂の海岸にウミネコが集団で休んでいたのは、島の北東部の高崎鼻の近くの海岸。
白砂の供給源は当然、玄武岩質の三井楽ではなく、おそらく半島の付け根に注ぎ込む川から、福江島内部の砂が供給されて回り込んできたのかもしれません。
北端の柏崎。遣唐使の旅立ちの場所。
柏崎
三井楽の北端が柏崎。
遣唐使の時代、空海もこの海岸から中国(当時の唐)の揚子江方面を目指して旅立っていったといわれる場所です(凄いことです)。
二度と戻れない覚悟で旅立つ最後の日本の地。
空海による(日本のさいはての地よ、さようなら)を意味する「辞本涯(じほんがい)」の碑が建てられています。
三角の島は北に浮かぶ「姫島」。
玄武岩質溶岩が三井楽を守る。
柏崎の溶岩
上の「辞本涯」の碑のすぐ近くの玄武岩質の溶岩。
この溶岩は強固なので、遣唐使が旅立った頃と今では、このあたりの風景はそれほど変わっていないのかもしれません。
嵯峨島を望む長崎鼻灯台。
長崎鼻
西海岸の長崎鼻からは嵯峨島がすぐ近くに見えます。
珍しい四角柱の建物は「長崎鼻灯台」。
冬型の天気は相変わらず。黒雲の間から後光が差します。
島は道も狭く、スピードも出さず、軽自動車が最適。
長崎鼻からの京ノ岳
ふりかえると、なだらかな三井楽楯状火山が見えます。
京ノ岳にはこの後行ってみましたが、山頂付近は航空自衛隊の基地が占拠していて、山頂からの眺めを一般市民が見ることはできません。また山頂部まで高い木が生い茂っており、展望の利くところが少なく残念でした。
山頂の丸いポッチはレーダーサイト。
写真のクルマは福江港すぐそばの「チャンスレンタカー」さんで借りた軽自動車。地元の素朴なレンタカー屋さんは安くて親切です。
3.白ヶ浜万葉公園からのパノラマ
京ノ岳を越えて、再び東側の付け根に戻ってきました。
楯状火山に接する南側高台の「白ヶ浜万葉公園」から三井楽火山をパノラマ撮影してみました。
(5枚の画像を合成。写真をクリックすると大きな画像になります)
クリックすると大きな画像
楯状火山の山麓は集落も作りやすく、住みやすい場所といえます。中央の京ノ岳から緩やかに裾野が広がる。
左(西)側に嵯峨島、中央やや右に姫島が顔を出す。中央下、やや右の建物が道の駅「遣唐使ふるさと館」。
4.高浜海岸
夕刻の海岸
日本有数の白砂海岸
日も傾き、荒川温泉に戻ります。
貝津過ぎてまもなく、美しい海岸で知られる高浜海岸を見下ろす高台に寄り道して写真撮影。
正月二日の夕刻、ほとんど人の気配はありません。
ふと、通りかかったジョギング中の地元の方が声をかけてくれました。
大変楽しい時間をありがとうございます
海岸からの贈り物
横浜から来ましたなどと話していると、「家に遊びに来なさい」と誘ってくれました。遠慮なく貝津のお宅までおじゃまさせていただきました。
この北川さん、高浜海岸で散歩やジョギング中、海岸に打ち寄せる小さな貝殻を集めて板に貼り付ける絵画、いや貝画を作られています。
手前のケースの中には色毎に分類された気の遠くなるような数の貝殻。左下のピンク色はさくら貝。
手にされているのは嵯峨島に沈む夕日ですね。
見ず知らずの私たちにその中の一枚を下さるとのこと、ただただ感謝の気持ちで頂いてきました。帰ってから部屋に飾って楽しんでいます。自作のバラモン凧なども見せていただき、本当にありがとうございました。
お話の中で気になったのは、以前はよく見た貝殻が最近あまり見られなくなってきたこと、海の異変が心配とのことでした・・・。
4.荒川温泉
荒川温泉地区。右下が郵便局。
日本最西端の温泉
三井楽火山西側南端にある貝津地区を過ぎると、いわゆる普通の、入り江に富んだ日本の海岸線の風景(?)に変わります。
火山を抱えた島ですが、温泉は西海岸の荒川温泉以外は、最近開発されたものが多いようです。
荒川温泉は大正時代に地元の子供が発見し、その後発展したといわれる古い温泉街。道に面したところにある共同浴場と豆谷(まめや)旅館さんが有名ですが、今回は二晩とも少し奥の「竹の屋旅館」さんに宿泊。
小さい頃を思い出す懐かしい家並と、昭和を感じさせる気持ちの休まるところです。
温泉は無色透明ですが、ほのかな硫黄の香りのする、実に気持ちのよいお湯した。竹ノ家さん、元旦からお世話になりました。
昭和40年代を思い出す風景。
入り江の風景
荒川温泉は複雑な入り江に囲まれた玉之浦町にあります。
かつては捕鯨でも賑わった町。古き良き漁村の風景が入り江の中にあります。
福江島の中を移動していて感じるのは、玄武岩地帯の開放的な風景と、入り江に囲まれた風景が突然入れ替わる不思議さです。
上の写真と谷の反対側から撮影。
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