虐待・親にもケアを

FacebookYuri Moritaさん投稿記事 ·②

現代ビジネスは、昨年出版した「虐待・親にもケアを」も紹介してくれた。

虐待至った親の回復が子どもを救う

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57703

18年間で1046人救済!虐待問題「親の回復ケア」の絶大なる効果

「殺してしまうかも…」を食い止める

先日も、母親が10歳から8カ月までの子ども3人と無理心中をはかったと思われる痛ましい事件が起きた。

虐待問題は、親を処罰すれば終わりというものではない。もちろん傷害や殺人に至った場合処罰されるのは当然だし、親をただ可哀想と言っていいものでもない。一番大切なのは、虐待を少しでも減少させたり、未然に防ぐことに他ならない。

そのために「親の回復ケア」を18年間続けているのが、森田ゆりさんだ。森田さんは自ら開発した「MY TREEプログラム」という回復プログラムで、現在1000人以上の親子を救ってきた。なぜ効果があるのか、そして私たちがこれからできることはどんなことだろうか。

虐待に至った親たちが語った本音

去る8月18日に大阪府高槻市で「虐待・親にもケアを」というテーマで、虐待に至ってしまった親の回復に取り組むMY TREEプログラムの 全国フォーラムが開かれました。

厚労省や児童相談所の管理職の人々、児童福祉司や心理士、虐待された子どもを預かる児童養護施設の所長や里親たち、このプログラムを修了した親たちなど250人近くが全国から集まり、熱のこもった5時間を共にしました。

全国フォーラムで親子の関係性を氷山で示し説明する森田さん 

この日、参加者の心を最も深く揺さぶったのは、MY TREE プログラムを修了した親二人が一人ずつ壇上に立ち、自分はなぜ虐待に至ってしまったのか、そしてどのようにしてそこから抜け出し、どうやって今の幸せな家族の日々を紡ぐに至ったかを語る言葉の深さでした。

「この次は殺してしまうかも」

その一人、Tさんは8年前にMY TREE プログラムを修了しました。当時2歳半の息子を本気で足蹴りし怪我させてしまった時、この次は「殺してしまうかも……」との不安から、泣きながら相談窓口に電話しました。児童相談所から連絡が入り、虐待する親の回復プログラムMY TREE の受講を勧められました。

「MY TREE プログラムは虐待の原因探しをして、私の悪いところを見つけて治すというそれまで私が受けて来たものではありませんでした。そこには、スタッフの優しい笑顔と仲間の涙、熱心に話を聴く安心できる場がありました。

仲間の本当の名前は知りませんが、彼女達が語る表情、話、空の色、飲み物さえも私の一部のように感じ、心から安心できるこの空間から私は、今まで誰にも語らなかったことも、ここでは出してみようという勇気をいただきました」(『虐待・親にもケアを』森田ゆり編著 築地書館2018年より)

かつて受けた性暴力やDVやそのほかさまざまな傷つき体験のトラウマを抱え、かつ腰痛や肺炎などの身体的不調を持ち、当時は外科病棟の看護師としての激務もこなしながら、TさんはMY TREE プログラムで得た自己肯定感を支えに、人と率直に心を交わすコミュニケーションを使いながら、子どもたちとの関係を変えました。

それから8年がたち、長男は23歳、2児のパパとなり、Tさんはフランス人と結婚し、今は看護大学院で勉強しながら仕事と家事を続けています。その日、会場には夫、当時2歳で今10歳の息子、長男は2児を連れて、Tさんの話を聞いていました。

自分の痛みや悲しみが虐待として爆発する

Tさんの例は、これまでMY TREE プログラムを修了し、虐待言動をストップすることのできた1046人(2018年3月31日現在)の多くと共通します。

「子ども虐待とはこれまで人として尊重されなかった痛みや悲しみを怒りの形で子どもに爆発させている行動です。MY TREEはその感情、身体、理性、魂のすべてに働きかけるプログラムです。木や太陽や風や雲からも生命力の源をもらうという人間本来のごく自然な感覚を取り戻します。さらに自分の苦しみに涙してくれる仲間がいるという、人とつながれることの喜びは、本来誰でもが内に持つ健康に生きる力を輝かせるのです。

これは、18年前MY TREEプログラムを始めた時に作成したリーフレットのイントロの文章です。今も少しも変わらない信念のもとで同じリーフレットを使って実践を続けています。

森田さんが全国フォーラムの講演で使用した「怒りの仮面」のイラスト。MY TREEプログラムのために森田さんが考案した図だ。怒りの裏側に恐れや不安、自信のなさ、悲しさなどを呼ぶ傷ついた体験があることを伝えている。まずはこの傷ついた体験や感情に向き合うことが大切だと森田さんは言う。

2000年5月に成立した児童虐待防止法の立法過程で、私は国会参考人として虐待した親の回復支援を法制度の中に組み込む重要性を訴えましたが、法制化には至りませんでした。当時の日本には親の回復支援の取り組みはゼロでした。たとえ親の回復支援を義務付ける法制化がされても、その受け皿が日本には無きに等しいという現実でした。

親への心理教育回復プログラムを開発実践し、日本におけるその方法論と経験のノウハウの蓄積を始めないことには法制化すらできないと痛感したことが、MY TREE プログラムの開発と実践の始まりでした。

一人の人間として尊重される体験の大切さ

私は1980年代にカリフォルニア州政府社会福祉局子ども虐待防止室の研修業務の中で、さらに90年代にはカリフォルニア大学のダイバーシティ主任研究員としていくつもの心理教育プログラム開発に携わりました。その理論と方法の経験蓄積が、MY TREE プログラムを構造的カリキュラムにすることに大きく貢献しています。

深刻な虐待に至ってしまった親たちの回復支援は、子育てスキルを教える養育支援ではありません。母親支援でも、父親支援でもなく、その人の全体性回復への支援です。

虐待行動に悩む親たちは、今までの人生において他者から尊重されなかった痛みと深い悲しみを、怒りの形で子どもに爆発させています。加害の更生は被害によって傷ついた心身の回復からしか始まらないのです。

その被害は必ずしも被虐待体験ではありません。虐待以外でも人はいろんなところで傷つけられているのです。虐待の世代間連鎖は3割であることが、統計数値の示している実態です。

MY TREEの参加者たちは、13回のグループセッションの中で、一人の人間として尊重される体験を得ることによって、自分を回復する礎としていきました。

参加者を母親として、父親として、妻として、嫁としてといった分断されたアイデンティティとして見るのではなく、人間の全体性に訴えるホーリスティックなプログラムであることがMY TREE プログラムの特徴です。身体と感情と認知の相互作用を重視する気功や瞑想など東洋の伝統的健康法を活用し、自然や季節の移り変わりを心身で感じ言語化する日本の風土にあった親の回復プログラムです。

元児童相談所長が「親の回復プログラムは必要」

3歳の娘に手を挙げることがエスカレートして、深刻な虐待行動を犯してしまった30代の母親は、MY TREE参加の初めは、自身の性暴力トラウマの症状からパニックを起こすこともあり、回復への希望を失っていました。

しかし、毎回、丹田腹式呼吸をし、瞑想で自分の身体に耳をすまし、自分の感情の裏にある悲しみや苦しさを言葉にして受け入れることをグループメンバーと共に学ぶ中で、大きく回復していきました。

心身の苦しみが下降する螺旋だったのが上昇する螺旋に転換したきっかけは、「プログラムの中で、自分をまるごと受け入れられるようになったこと」と語りました。まさに全体性の回復です。                                     

MY TREE プログラムは、2018年現在は、大阪府、大阪市、堺市、富田林市、京都府、京都市、加東市、奈良県、埼玉県の児童相談所や市の家庭児童課など。東京都、横浜市、日光市、宮崎市、千葉県の民間団体の主催で実施しています。

各地でMY TREE プログラムを実践する人々は現在約40人。保健師、臨床心理士、看護師、助産師、保育士、元児童相談所所長、グループホーム長、ソーシャルワーカー、大学教員など多様な立場で、子どもの虐待対応に長年取り組んできた人々です。

実践者は毎回の準備と終了後のスタッフ間の振り返りで多大の時間がとられるこのプログラム実施の大変さにもまして、人生の苦悩を語る参加者の言葉の深さに心打たれ、人が変わることの感動に身をふるわせる貴重な経験を共有させてもらってきました。

しかし私たちの取り組みへの制度的、予算的支援はごくわずかです。虐待に至ってしまった親の回復の重要性と緊急性が広く認識されていないこと、児童相談所は虐待通告対応で忙しすぎることなどが理由です。児童相談所が虐待に介入し、子どもを施設に措置しても、親への回復ケアが提供されているケースはわずかです。しかし、親が回復することで、どれだけの社会的経済的コストを軽減することができるか計り知れません。

実際、児童相談所長をつとめてきたスタッフは、親の回復ケアの必要性を感じながら、「まずは子どもの安全確保をしなければならない」ことに忙殺されていました。そして定年退職の後に、MY TREEを実施し始めたのです。

虐待された親は、変わることができる

一人の被虐待児を県立乳児院に措置する一年間の経費は約837万円と試算されています。たとえ子どもを親から分離して施設に措置してもその間、親の回復がなければ、子どもは家に帰れません。帰したために再虐待となってしまったケースも少なくありません。MY TREE プログラムを10人の親に提供するためにかかる経費は約150万~200万円です。親の回復ケアに公的資金を使うことは極めて費用対効果の高いことなのです。

そして何よりも、虐待された子どもたちの大半は、親から虐待されても、その親を求め、慕い、その親が変わってくれることこそを願っているのです。

子育てが苦しくてならない、子どもへの暴言・暴力がやまない親たちは、暴力をストップし、子どもとの時間を楽しめるようになりたいと強く欲してください。自分を変えたいと心から願う人は、子どもとの良い関係をつくっていく道すじを、もうすでに歩き始めた人です。

虐待に至ってしまった親が変わることができることを私たちは18年間の経験から知っています。それを望みさえすれば、人間は変わることができるのです。嵐の日はあっても、折れてしまわずにしなることができる木のように、大地に根をはる生き方は誰にでも可能なのです。

コズミックホリステック医療・現代靈氣

吾であり宇宙である☆和して同せず  競争でなく共生を☆

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