コンパクトシティを創る 都市計画学の視点から

https://www.iatss.or.jp/common/pdf/publication/iatss-review/39-2-55.pdf 【コンパクトシティを創る 都市計画学の視点から】より       森本章倫 AkinoriMORIMOTO

 人口減少と都市

 10万人の都市と⚕万人の都市を比較して、どちらが幸せな暮らしができるか? 確かに10万

人の都市は、⚕万人の都市と比べて⚒倍の人口を有しているので、都市的な施設の蓄積は大き

いかもしれない。しかし、小さい都市のほうが、楽しく暮らしている人が多いことだってあるし、その逆もある。つまり、この問の答えとして適切なのは、「人々の裕福度は、人口の大小では測ることができない」となる。

 次に問を少し変えてみる。10万人の都市が、人口減少社会で⚕万人の都市になったら不幸だ

といえるか? 多くの専門家は人口が半減することに警笛を鳴らしているが、⚕万人の都市が

必ずしも不幸な都市とは言い切れない。それは、前問の答えと同様である。

 人口減少社会の問題は、人口自体ではなくその人口を支える社会基盤施設との関係にある。都市人口の増加とともに、拡大した市街地が、都市人口が減少する中で過大となっている。核家族化が進み、単身世帯が増え、人口減少とともに空き家や空き地も増えている。しかもその発生パターンはランダムで、街中に歯抜け状に空き家が発生し、景観や治安の悪化が懸念されている。つまり、都市サイズに合わせて、市街地自体を賢く縮退させる必要があるといえる。日本におけるコンパクトシティの議論は、このような背景から注目を集めている。

 コンパクトな街を創る

 広く広がった市街地をどうすれば、人口規模に合ったサイズまで賢く縮退できるのか。実はこれが難問である。集団移転や土地利用規制も制度としてはあり得るが、現実的な施策実効は乏しい。市場原理の中で広がった市街地は、市場原理の中で縮退させるのが基本となる。そのためには、居住地の選択行動を変化させることが重要である。人々を集めたい場所を、魅力的な場所に作り変えることである。

 大規模な都市開発も土地市場を変化させるが、新たな交通社会のデザインも居住地の選択行動を変化させる。特に、自動車社会が過度に進んでいる都市では、歩いても暮らせる場所は、魅力的である。なぜなら、時と場合に応じて交通手段を選択できるからである。普段はクルマで、飲み会があれば公共交通を使う。あるいは子育て期はクルマで、高齢期は徒歩や公共交通でと、ライフスタイルの変化にも対応できる。キーワードは「多様性」である。

 理想的な交通社会の都市像とは、「都市の中の多様な魅力を複数の拠点として集約(コンパクト化)し、それを利便性の高い公共交通を中心とする多様な交通手段で連携(ネットワーク化)した都市」である。このような都市を「ネットワーク型コンパクトシティ」と呼んでいる。各地域がさまざまな魅力を持って街づくりを行い、その街が多様な交通でつながっている。平常時は互いにないものを相互補完しながら生活し、もし災害が起きて一部の拠点が被災したら、他の拠点から助けに行くことで、エリア全体で回復力を高める。

 人口減少下で身の丈に合った都市を目指して、より豊かな社会の創造が始まっている。

⚑⚙⚘⚙年早稲田大学大学院卒業。早稲田大学助手、宇都宮大学助手、助教授、教授、マサチューセッツ工科大学(MIT)研究員などを経て現職。日本都市計画学会常務理事、日本交通政策研究会常務理事など。博士(工学)、技術士(建設部門)。


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