http://haiku-new-space-haikucho.blogspot.com/search/label/%E4%BB%A4%E5%92%8C%E5%9B%9B%E5%B9%B4%E6%98%A5%E8%88%88%E5%B8%96 【俳句新空間俳句帖】
スクロールしてみる俳句巻子本。 年二回、媒体誌『俳句新空間』に転載。 SINCE 2012(平成24).12.28.
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2022年7月1日金曜日
令和四年 春興帖 第十(佐藤りえ・筑紫磐井)
佐藤りえ
遠蛙誰か帰つてくる夜道 雛形にうつかり名字書いてある 跳び箱の頭に座りうららけし
筑紫磐井
天地創造の翌日蝌蚪ぐもり 能村登四郎が作りし季語や櫻しべ
暗黒のカーネーションを母に賜ふ
2022年6月24日金曜日
令和四年 春興帖 第九(下坂速穂・岬光世・依光正樹・依光陽子)
下坂速穂
木の痕に空の広がる余寒かな 猫柳きのふゆきすぎたる路の
朝見て夜見つめたる雛かな 目刺焼く夜の青空を帰り来て
岬光世
花の種蒔きし故国の土の色 首ちぢめ漕ぎ続けたり半仙戯
春塵や風切羽を授かつて
依光正樹
黄梅や運河にひとつ灯あり 料峭や訪ねあてたる寺ひとつ
髪切つて自由になりし春の雷 春昼の喉にやさしきレモネード
依光陽子
犇犇と紅梅の咲き古びつつ 春の死を鳥の遺した羽根で弾く
新月のあるべき空や鳶の巣 ぱつと開くと同じ頁の春深し
令和四年 春興帖 第八(堀本吟・高橋修宏・小沢麻結・浅沼 璞)
堀本吟
みどりの日シルバーワークへ通うらん 万能のおむすびの味春ならん
侵攻や海市も的になるならん
高橋修宏
一列の戦車の終わり見えず春 春昼の微塵となりしかみがみよ
花よ鳥よ消えてしまった子どもたちよ 来るはずのなき姉を待つチューリップ
恋猫を追うや性別など捨てて 春の風邪やがては蝶となる話
蝶に問う道の終わりのその先を
小沢麻結
車捨て歩み行くなり春の雪 世を探る二股の舌蜥蜴出づ
おばさんは転居土筆は伸び放題
浅沼 璞
まだそこに救急車ある蝶の昼 弁当も雲もあまりて春の丘
中腰の人ばかりくる沈丁花 裏門を平たくぬけて卒業す
濡れながら人見おろせる柳かな 片栗の皆すなほなり反り返る
手放しの手話で咲かせる花みづき
令和四年 春興帖 第七(ふけとしこ・前北かおる・松下カロ・渡邉美保)
ふけとしこ
印影も記憶も薄れ春の鴨 菫濃し手に載るだけの石拾ひ
須磨浦や菫に風の吹きつけて
前北かおる(夏潮)
着陸の窓を引つ搔く春の雨 うららかやへうたん島の滑走路
モッツァレラチーズのピッツァフリージア
松下カロ
青き踏むビロードの中国靴で たんぽぽの絮ことごとく川へ落ち
建てるため何か壊して春の丘
渡邉美保
透きとほる幻魚の干物春北風 くろもじでつつけば鶯餅の鳴く
下萌えや置きつぱなしの絵具箱
令和四年 春興帖 第六(眞矢ひろみ・竹岡一郎・ふけとしこ)
眞矢ひろみ
親ガチャに子ガチャと応ふ夜鷹かな 山雀の籤映る眼の恐ろしき
うららかに無用のありぬ橅林 春暁の夢の小径を瑠璃の象
竹岡一郎
涅槃会の鏡の夢が淵の渦 半生をよくぞ薄氷歩み来し
花篝散らす女系の血の鱗 反橋の頂きに照る花衣
空海忌印やはらかく結ぶべし 刃を入れて貝の震へを聴く暮春
惜春の蹄を支へ崖の意志
ふけとしこ
印影も記憶も薄れ春の鴨 菫濃し手に載るだけの石拾ひ
須磨浦や菫に風の吹きつけて
令和四年 春興帖 第五(早瀬恵子・岸本尚毅・小林かんな)
早瀬恵子
侵攻や春の色が見つかりませぬ 明くる朝に祈りのバレーアンダンテ
昼顔のくちびる尖るウクライナ 春愁の地に描きたる赤い三角
つづれかなどこにも春は行き暮れて
岸本尚毅
空青し我をめがけて杉花粉 庭広く淋し子供はたんぽぽに
つややかに柱の映る甘茶かな のみものにクリーム載つて夕桜
すべて過去スイートピーも何もかも 春落葉掃くや団栗現れて
菓子となるパンダの顏や春は逝く
小林かんな
シマフクロウまぶしさに耐え春に耐え 逃水いいえシマウマの縞
つちふってタンタンどうしても帰る きりん発つさくら前線追いかけて
象の来たあの日もさくら咲いていた
令和四年 春興帖 第四(瀬戸優理子・鷲津誠次・木村オサム)
瀬戸優理子
塩壺の底に塩粒春吹雪 夕月のやさしき呼吸木の根開く
春眠の足りてまもなく降りる駅 引き返しふたつ買い足す桜餅
花の冷かたりことりと万華鏡 紙やすりめく北国の春鴉
春の闇首の釦が弾け飛ぶ
鷲津誠次
うはずりて鶏啼きなほし山笑ふ 無骨なる石室照りし枝垂れ梅
草青む測量士らは肥満気味 花冷えや家宅捜査の段ボール
空爆に高き産声木の芽雨
木村オサム
春だぞと言われあわてて埴輪顔 入学子からまず猿をつまみ出す
うすらひを越えていつもの精神科 やる気ない社員の背のヒヤシンス
四月馬鹿曲げたスプーンでカレー食う
令和四年 春興帖 第三(花尻万博・望月士郎・網野月を・曾根毅)
花尻万博
長々と褶曲に生き蝶々らは 蜂の尻花の深さを出入りす
唇に人だけ透けて暖かし おたまじゃくしに包まれる飴の色
鬼の子の位置ずれてゐる朧かな 背を追へば蝶々にも生の速さ
望月士郎
白鳥帰る青うつくしくくちうつし 消印は 三月十一日海市
朧夜を歩く魚を踏まぬよう 月おぼろ幻獣図鑑に「ヒト」の項
フラスコの中のふらここ少年期 赤い風船青い風船口結ぶ
永き日の砂丘の砂時計工房
網野月を
黄水仙自由身勝手独善者 パドドゥの老いの夫婦や春の泥
上あごに海苔張り付くや握り飯 桃東風や迷つて頼む興信所
啓龕や花屋の釣りの濡れてゐし 佐保姫の乱と言うには咲き降り
横流るのぞみの窓の穀雨の雨
曾根毅
虚空蔵曼荼羅蝶の舞いはじむ 緋牡丹や閻魔の筆の柔らかく
戸袋の見え隠れする春の雷
令和四年 春興帖 第二(なつはづき・山本敏倖・杉山久子)
なつはづき
ぼたん雪碁石を打つように余命 建国日癖毛をまっすぐに伸ばす
安吾忌や言葉くしゃりと捨てる夜 羽衣の影を映して春の水
毎日が誕生日めく雪解川 モビールの影揺れている蝶の昼
蛇穴を出る親知らず抜きに行く
山本敏倖
花の冷埴輪の馬の濡れている 曇り空をだまし絵にする杉花粉
感情に目あり耳ありおぼろあり 陽炎の影法師なりカンツォーネ
花筏古今集より流れ出る
杉山久子
鳥雲に帽子ケースの中真青 うららかや最後はぱふとマヨネーズ
てふてふやコトノハいつも追ひつかず
令和四年 春興帖 第一(仙田洋子・仲寒蟬・坂間恒子)
仙田洋子
ありたけの椿と唇をふれあはす 見つめられすぎて椿の落ちにけり
うなだれて帰る子供や春夕焼 戦争の好きな人類鳥雲に
桜時雲の行方は知らぬまま 花鳥の声の眩しきほどに降る
好きなだけ大きな声を春の山
仲寒蟬
まだ風呂を出て来ぬといふ受験生 だんまりの二三羽混じり百千鳥
望潮ハワイ年々近づき来 湖からの風まつすぐに雛の市
春昼を行く半分はすでに死者 春愁にベートーヴェンは重すぎる
碩学の朝の日課や目刺焼く
坂間恒子
きさらぎのキリンとキリンすれちがう モラトリアム同士擦れ合う春の小島
教科書にアンネの隠れ家鳥ぐもり
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