http://www.digital-museum.hiroshima-u.ac.jp/~museum/pages/kokelifecycle.html 【コケの一生 - コケの生活環 -】より
蒴(さく)とよばれるカプセル形の器官の中でできた胞子はふつう直径が10 um(まれにはX umに達する)くらいの微小なもので,蒴が規則正しく裂けて外に飛び散る.飛び散った微小な胞子は軽いので,風(まれに水や昆虫)によって遠くに運ばれる.
地面や樹皮,生葉上に落下した胞子は,水分など発芽に適した環境に出会うと発芽する.
セン類のスギゴケのなかまを例にとると,胞子の殻から細胞が伸びだして,細胞分裂をくりかえし,分枝した糸状の原糸体(げんしたい)を形成する.この原糸体はたくさんの葉緑体を含んでいるため,緑色を呈し,外見上はまるで糸状のアオミドロのような緑藻類(りょくそうるい)に似た形態をとる.
原糸体がさかんに成長して,その広がりが一定の状態になると,それまでの細胞分裂とはちがう様式の分裂(それまでは細胞は分裂が1回づつであったが,あらたに3回連続する分裂がはじまる.言い換えるとここで3つの分裂面をもつ頂端細胞が生じたということである.頂端細胞を茎の先端からながめた場合,そのかたちは三角形となる.)がおこり,これによって初めて茎と葉の区別のある植物体(これを茎葉体(けいようたい)とよぶ)となる芽が生じる.それまで原糸体は平面状に広がっていたが,コケ植物はここで直立する体制をとって,生活圏を空間にも拡大する.コケ植物の配偶体はこの原糸体と茎葉体からなりたっている.
この茎葉体が十分に成長すると,茎の上に精子をつくる棍棒形の造精器(ぞうせいき)と卵をつくるフラスコ形の造卵器(ぞうらんき)を生じる.造精器と造卵器が同じ茎葉体につく場合(雌雄同株)と,別々の茎葉体につく場合(雌雄異株)とがあり,種によって一定である.
コケ植物ではこの造卵器と造精器のつきかたには種種の様式が知られている.成熟した造精器から精子が放出されると,精子は薄い水の膜を利用して造卵器にたどりつき,造卵器の底の卵に達し,受精する.受精卵(あるいは接合子)は造卵器の中で細胞分裂を繰り返して胞子体となる.胞子体の成長とともに造卵器の腹部や柄の部分の細胞も分裂し,成長して,胞子体を取り囲む袋状となる.しかし,さらに胞子体が成長するとその成長に追いつかず,袋状のものは水平に寸断される.切り取られた上部にものは帽(ぼう)となって胞子体の先端部を保護するように,覆いかぶさったまま成長をつづける.このときの胞子体の細胞には葉緑体があり,緑色である.やがて胞子体の先端が膨らんでマッチのような姿になる.先端が膨らんで,コケの種に特徴的な形をとる.この時期に帽の成長は停止していて,帽の形もコケの種に特徴な形をとる.緑色の蒴の先端部に赤褐色に着色した輪がみられるころ,多くの場合,蒴の中では減数分裂がおこっていて,胞子が形成される瞬間をとらえることができる.胞子が成熟するとともに蒴は緑色を失い,褐色となる.胞子体の一生はここで終えることになるが,その発生からそれまでの間,茎葉体に寄生した状態で一生を終える.
ドイツの植物学者ホフマイスターは,コケ植物などの生活のくわしい観察から,植物には配偶体と胞子体が交互に交代して生活して,それが細胞の染色体の数も半分になったり,倍になる現象と連関していることを発見した(世代交代).
コケ植物と種子植物の生活環と対比するとおもしろい.
コケの胞子が発芽するとそれだけでコケの体ができる.アブラナの胞子(花粉)が発芽するとそれだけでアブラナができない.
スギゴケなどのマッチ棒のような胞子体は,アブラナの植物に相当するものである.
スギゴケの雌の植物体は,アブラナのめしべの中にある胚珠のその中にある胚のうに相当し,雄の植物体は,花粉が花粉管を伸長させた状態のものに相当する.
https://tennenseikatsu.jp/_ct/17372810 【こけの見どころ、奇妙だけどちょっとかわいい胞子体|毎日こけ日和】より
こけの見どころのひとつが、繁殖のためにすくすくと伸びる胞子体です。より進化した被子植物がさまざまな花をつけるように、こけも多様な胞子体をつけます。その姿をルーペで覗いてみると、かなり個性的。奇妙だけれどもかわいい、見知らぬ世界へご案内します。
いまでこそ、やたらこけが目に留まってしまう日々を送っている私ですが、こうなる前は小さなこけが見えていなかったし、ましてや、どうやって増えているのかなど考えもしませんでした。そんな私がこけ好きになり、生態を学んでその繁殖方法を知ってからというもの、いまやこけだけでなく、生きものすべての生命の奥深さにすっかり魅了されています。
胞子体はこけの種類を見分ける手がかり
こけは蘚類、苔類、ツノゴケ類の3グループに分かれるのですが、種類によって胞子体のつくりが異なり、分類する際のポイントになります。胞子体の違いをよく見ていくと、どのグループに属するかがわかります。
※タイトル写真はタマゴケの胞子体です。タマゴケについては次回紹介します。
画像1: 胞子体はこけの種類を見分ける手がかり
胞子が入っているカプセルのような部分を蒴(さく)といいます。蘚類の蒴は、球状だったり角柱形だったり、ひょうたんのような形のものもあります。
胞子は一度に全部まかれるのではなく、蒴から少しづつ出ては風に乗って飛んでいくので、胞子体自体がしっかりしたつくりになっており、胞子が出終わって空っぽになった後でも、形が残ります。蘚類の群落を見ていると、青々としている今年の胞子体に紛れて、昨年の茶色い胞子体が残っていることがあります。
画像2: 胞子体はこけの種類を見分ける手がかり
蒴のてっぺんに蒴帽(さくぼう)という帽子のようなものがのっている種類では、まず蒴帽が取れてから、蒴のフタが開いて、中から胞子が出てきます。
画像3: 胞子体はこけの種類を見分ける手がかり
はじめて見たとき、「おぉ、エイリアンの口みたいだ!」と思いました。開口部のふちをぐるりと囲っているのは蒴歯(さくし)。空気の乾湿を感知しては開閉し、胞子が出るタイミングや放出量をコントロールしているスグレモノです。
苔類の胞子体の特徴
画像1: 苔類の胞子体の特徴
苔類の蒴は、マッチ棒の先端のような丸っぽい形が多いです。蒴が裂けると、中身の胞子を一度に全部出しきってしまうので、蘚類のように丈夫なつくりにはなっていません。蒴の中には弾糸(だんし)という糸状のものが一緒に入っています。
この弾糸は乾湿によって胞子に絡みついたり、バネのように伸びて胞子をはじき出したりする性質があり、胞子が塊のままポトリと落ちず、ばらけて飛び出す手助けとなっています。
画像2: 苔類の胞子体の特徴
画像: 種類によって蒴の裂けかたもいろいろ。これは4つに裂けるタイプです
種類によって蒴の裂けかたもいろいろ。これは4つに裂けるタイプです
画像: ジャゴケの精子がつくられる場所、雄器床です
ジャゴケの精子がつくられる場所、雄器床です
画像: ジャゴケの雌株から伸びた雌器床。受精すると、傘の下にぶら下がって見える玉のような部分が膨らんで目立つようになります。この玉がはじけて、中から胞子が出ます
ジャゴケの雌株から伸びた雌器床。受精すると、傘の下にぶら下がって見える玉のような部分が膨らんで目立つようになります。この玉がはじけて、中から胞子が出ます
画像: 玉がはじけた後。粉のように見えるのが胞子です
玉がはじけた後。粉のように見えるのが胞子です
画像: 陣笠に見えるのは、ジンガサゴケの雌器床
陣笠に見えるのは、ジンガサゴケの雌器床
画像: 陣笠の下の玉がはじけて、胞子が出た後です
陣笠の下の玉がはじけて、胞子が出た後です
ツノゴケ類の胞子体の特徴
画像: ツノゴケ類の胞子体の特徴
蘚類と苔類の蒴が、葉の上に伸びた蒴柄(さくへい)の上についているのに対し、ツノゴケは蒴柄がなく、蒴自体が細長く上に伸びていきます。その様子は、ツノゴケという名が表す通りツノのようです。
蘚類も苔類も、蒴の中の胞子は同時に成熟するのですが、ツノゴケの場合はツノの先端から順に熟していき、熟したところから縦に裂けながら、胞子が飛び出していきます。苔類と同様に、弾糸を持っています。
画像: ツノゴケの蒴。先端から黒っぽくなっているのがわかるでしょうか
ツノゴケの蒴。先端から黒っぽくなっているのがわかるでしょうか
胞子体という見どころポイントに着目してルーペなどで見ると、私たちが知っているこけとはまた違った、さらに個性的な姿がそこにはあります。こけの生態を知っていると、さまざまな角度から楽しむことができます。
次回は”こけの増え方”について、更にディープにご紹介しますのでお楽しみに!
https://koke8jp.hatenablog.com/entry/1612/1803k 【苔の蒴が膨らむ三月下旬】より
苔(コケ)の蒴(さく)が膨らんでいます。苔の中から細長く伸びたのが茎のような蒴柄(さくへい)。蒴柄の先についているのが蕾のような蒴です。
コケ植物は胞子を飛ばして増えますがその胞子が入っている袋をコケ植物では蒴といいます。
今日の写真は先月、2018年2月16日投稿の苔の蒴柄が伸びる二月中旬にある上の写真と同じ鉢植えです。鉢土の表面にひろがった苔はだいぶ青々としてきました。
モミジの新葉も広がりはじめてこれからが愉しみな季節です。
ちなみにですが鉢の縁近くにある苔がない部分は固形肥料を置いてあった場所です。
肥料があると苔は育ちません。今年は寒い春分でした。今日は暖かですが不安定な天気です。東京では週末に桜の見頃になるとのこと。
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