人間の潜在的可能性

Facebook・清水 友邦さん投稿記事 「人間の潜在的可能性」

1960年代は人類の意識に大きな変化が訪れた時代です。

1961年4月12日にガガーリンがボストーク 1号で大気圏外に出て地球を眺め1969年にアポロ11号のアームストロングとオルドリンは月面から地球を眺めました。

初めて人類は自分の本当の姿を認識したのです。

60年代は地位や名誉や経済的な成功にあったアメリカ人の価値観とライフスタイルに大きな転換が起きて自己実現、自己成就とする主観的なものに移っていった時代です。

アメリカ西海岸のエサレンではシャーマニズム、チベット密教、禅、ヨガなどの東洋の修行法と西洋のサイコセラピーが融合したワークショップが盛んに行われるようになりました。

70年代はエサレンのセラピストがインドのデカン高原のラジニーシ・アシュラムに大挙して訪れ瞑想とセラピーとボディワークの融合が起きました。

東洋の修行法と西洋の心理療法の融合が世界中で起きたのです。

そのようなヒューマンポテンシャル ムーブメント(人間性回復運動)の流れの中から生まれたセラピー・グループを受けた人々が大勢いました。

2012年のロンドンオリンピックの開会式で演奏したマイク・オールドフィールドもその一人です。

マイク・オールドフィールドの初期の3部作はスタジオにこもってオーバーダビングを何百回も繰り返して録音した繊細な作品でした。

マイク・オールドフィールドは小さいころから自分が存在していることが不安で怖くなることがありパニック障害の症状を何度も起こしていました。

発作が起こることも怖かったので自分に唯一できることは不安を忘れるほど音楽にのめりこむことだったと語っています。

彼の音楽は映画に使われ大ヒットしますがその成功が負担となり彼のやわな神経はダメージを受けてしまいました。

マイク・オールドフィールドは極端に厭世的になり、数年間、精神的に参って療養していました。

そんな時にマイク・オールドフィールドはエスト(est)の流れを汲むエクセジーセス(Exegesis)というワークを受けました。

その結果マイク・オールドフィールドは神経質で内向的な傾向から快活で、外向的な性質に変貌しました。

それまで、マイク・オールドフィールドは部屋に一人でこもって様々な楽器を演奏して長い曲を作っていましたがセラピーの後は大きくロック、ポップス調の短い曲に曲調が変わりバンドを組んで人前でライブでやるようになったのです。

ワーク後に出したアルバム名が露出を意味するExposedです。

その頃、実際にヌード写真も発表しています。

マイク・オールドフィールドは4回結婚して4度離婚して子供が9人いますが最初の結婚相手はエクセジーセス(Exegesis)の代表ロバート·ドービニーの妹ダイアナ・ドービニーでした。

エクセジーセス(Exegesis)がどのようなワークだったのか詳細はわかりませんが、その元と思われるエスト(est)は「コンテンツ」(内容)から「コンテクスト」(背景)へとトランスフォームさせる、つまり意識の方向性を思考や感情から存在へと転換させるセミナーでした。(神谷光信著「ワーナー・エアハードとest」)

エスト(est)とはエアハード・セミナー・トレーニングの略で自己啓発セミナーの源流のひとつです。

エスト(est)を始める前のワーナー・エアハードはブックビジネスや中古自動車で成功した優秀なセールスマンでした。

彼は成功哲学のナポレオン・ヒルや自己イメージを変えることで目標を達成するマックスウエル・マルツの「サイコ・サイバネティクス」を研究していました。

ワーナー・エアハードは売り上げが悪い営業社員は他者に対して罪悪感や不満を抱いていて、その事が成功を妨げていると考えていました。

ある日ワーナー・エアハードはゴールデン・ゲイト・ブリッジで至高体験(peak experience)が起きましたが、彼が悟り( enlightnment )と思ったものは長続きせず喪失してしまいました。

体験者がいる体験は必ず過ぎ去ってしまいます。

彼は自分の至高体験について何が一体自分に起きたのか。それを再び蘇らせるにはどうすれば良いか人間性心理学やヒューマン・ポテンシャル・ムーヴメントに求めました。

エサレン研究所を通じてカール・ロジャース、アブラハム・マスローを知り、アラン・ワッツを通して「禅」を知りました。

『もしあなたが、「お金を稼ぐことが最も大事なことだ」と言っているとしたらあなたは完全に人生の時間を無駄に過ごしていることになる。

生きるためにしたくない仕事をしてお金を稼ぐということをしていれば、それをやり続ける人生になる。

それは実に馬鹿げている。

そんな惨めな状態で長生きするより短い人生でも好きなことをやって過ごした方がまだマシだ。結局のところ、どんなことでもいい。

本当に好きなことを一生懸命やっていればあなたは必ずその達人になるだろう。』

アラン・ワッツ

アラン・ワッツは、ワーナー・エアハードに「セルフ」と「マインド」の区別を教えました。

それからデール・カーネギーのコースやハリウッドのセレブ達が信奉しているサイエントロジーを受けました。エスト(est)を始めるとエアハードはサイエントロジーの概念を盗んだと非難されました。

ワーナー・エアハードはアレクサンダー・エベレットが開始したマインド・ダイナミックス社のインストラクターを経て1971年からセミナー形式のエストトレーニング(est)を開始しました。

ヒューマンポテンシャル ムーブメント(人間性回復運動)は無限の可能性を秘めていることを説きましたが、これが商業主義になると「望んだ結果は、必ず手に入る」のスローガンとなってセールスマンの教育プログラムに使われました。

東洋の修行とセラピーとアメリカの商業主義と結びついたのがエスト(est)です。

エスト(est)は都市の中心地で、いっきょに二百名以上集める商業主義的なセミナーで成功し、熱狂的な信奉者を生んでいきました。エスト(est)は高額で経済的利潤を追求するビジネスでした

ワーナー・エアハードはエスト(est)を金のためにやっているのではないといいましたが自身はオートレースにのめり込んでお金をつぎ込んだり、クルーザーを所有したりしていました。

けれども、それはアメリカ人の金持ちが普通にやっていることでした。

彼は「ニューエイジのグル」と呼ばれましたがそのスーツ姿はビジネスマンでした。彼の自我(エゴ)と自己(セルフ)は同じことでした。

日本では1985年のバブルの間最中のころから始まりましたが、なるべくマスコミに目をつけられないように宣伝をせずに、個人から個人への姿勢に徹したために目立たなかったようです。セミナーの参加費は15万円でした。

あるセミナーでエスト(est)のトレーナーは開始早々こんなことをいっています。

「あんたたちは、全員くそったれだ。(You asshole!)あんたたちは機械だ。あんたたちの人生は働いていない。あんたたちはくそったれだ。なぜなら、あんたたちはそうふるまっているからだ。」

「お前たちはみんな機械にしかすぎないんだ。人生で一度だって、自ら決断を下したことはないんだ」

250ドルも支払った参加者は罵倒され驚きました。

反発する人もでました。

そうしてトレーナーは感情のプロセスが起きればプロセスワークを始めたのです。

トレーナーは過去の似た状況の再現を今この瞬間に彼が行っている事実に直面させます。

感覚を観察する「ボディ・プロセス」やサークルを作り1人ずつ相手の目を見るアイコンタクトや、鏡の中の自分の目を見て挨拶をさせたり、会場に仰向けに横たわり、大声を出すような事も行なっていました。

トレーナー「今、何がありますか」

参加者「悲しみがあります」

トレーナー「受け取りました。それから何がありますか」

参加者「両親への怒りがあります」

トレーナー「受け取りました。ほかに何かありますか」

参加者「何もありません」

トレーナー「サンキュー、その悲しみと怒りと一緒にいてください。プレゼンスするものにプレゼンスするとき、それは消えてしまいます」

参加者「いわれていることがわかりません」

トレーナー「OK、わからなくていいです。ところで、あなたは病気だから成功できないのですか」

参加者「そう思って生きてきました」

トレーナー「それはあなたが作ったストーリーですか。それとも現実ですか」

参加者「私が作ったストーリーです」

トレーナー「では、そのことに責任がとれますか」

参加者「責任をとるとはどういうことですか」

トレーナー「責任をとりますと、ただ言うことです」

参加者「責任がとれます」

トレーナー「受け取りました。自分には持病がある。そして自分は健康である、と宣言することはできるでしょう。この会話は、自分には持病がある。だから自分は成功できない、という会話と比べて、あなたを力づけますか」

参加者「力づけます」

トレーナー「あなたは成功してもいいですか」

参加者「成功してもいいです」

トレーナー「何かほかにいいたいことはありますか。聞きたいことはありますか」

参加者「ありません」

トレーナーはよく「get it」や「it is it is. it isn't it isn't. 」といいました。

「わかっても何にもならない。説明は常に必ず事後である。説明が何かを起こすことはできない。」

トレーナーはホワイトボードに2つのサークルを描き、左に「プレゼンス(存在)」、右に「リプレゼンス(解釈)」と書いたりしました。

ユングは心理療法を、「告白」「解明」「教育」「変容」の4つに分類して、自我から自己への移行、心の全体性の成就を「変容(トランスフォーメーション)」といっています。

エスト(est)で「トランスフォーメーション」は毛虫から蝶になる重要な言葉になっています。

エスト(est)の基本はトレーナーと参加者との1対1の相互作用にあり、参加者が体験の知的解釈をやめゲシュタルトが転換した時、世界認識が根本的に転換しました。

マインドは過去の記憶によって外部からの刺激に自動的に反応してしまう機械であり、あなたのマインドは空虚で意味のない存在であるという認識はマインドを自分と思っていた参加者に大きな衝撃をもたらしました。

そして「あなたはすべてを創造する完全な存在だからこそ、意味の無い空っぽの世界で人生を自由に創作できる可能性に満ちているのだ」とトレーナーはむすびました。

けれども「あなたはパーフェクトよ」「そのままで大丈夫」「それでいいのだ」は気づきが起きないと単なる自我の自己納得になってしまい現状維持に終わってしまいます。

セミナーで強烈な高揚感が起きても長続きせず数週間、数ヶ月後には落ち込みに変わる事があります。

たしかに「わたしはあるがままで完全だ」と繰り返し思い込むことで苦しみが和らぐことはあります。

しかし、それは痛み止めのようなもので薬が切れれば、再び心が痛みだします。自我の次元にとどまる限り、苦悩は繰り返されるのです。

世界は空虚で意味がない。人生は空っぽで意味がないとと繰り返し説かれると参加者は自我の枠組みが揺さぶられます。自分を縛っていた過去を手放すために物語を話すようトレーナーに勧められると参加者は心の奥にしまっておいた過去の恐ろしい人生の秘密を泣きながら暴露しはじめます。

高揚した参加者は大勢のアシスタントに囲まれて次の高額なコースに勧誘されるのでした。

商業的セラピーの特徴は、高額なセミナー料、何人かの参加者を連れてこなくてはいけないエンロールメントと呼ばれる方式、マニアルに基づいた行動主義的な刺激―反応パターンの構造をもっていることなどがあげられます。

大集団の意識トレーニング・プログラムには、特別に傷つきやすい傾向のある人々が参加する危険性が指摘されています。

自己変容が起きるには自発の力が要求されます。

自覚がないままにセミナーに参加して自我の枠組みがゆさぶられると大抵の人は何が起きているのか自覚できないので混乱し怯えて退行してしまいます。

セミナーの参加者には心理的防衛機が強く働いたまま帰宅して虚無感と不安に襲われてしまう人もいます。

そのために苦しんだ参加者からたくさんの深刻な訴訟を起こされてマスコミに騒がれ社会問題に発展したセミナー会社もありました。

エスト(est)は分厚いマニュアルに則って意識や感覚の訓練を強引に引き出すライフスプリングやライフダイナミックスのような体験実習的な商業セミナーとエスト(est)は異なるといっていました。

ライフダイナミックスはマニアルに沿っていたのでトレナーはマニュアル持って独立したので自己啓発セミナーは雨後の筍のごとく世界中に発生したのです。

エスト(est)はトレーナーになるには7年かかり、問題がある人のためのグループセラピーではなく、健康で成功している人のものであると弁明していました。

エスト(est)は商業的セラピーでしたが禅の公案や瞑想法、センサリー・アウエアネス、ゲシュタルト療法と同様の手法が使われていたので、自我が脱落してセルフをかいま見る体験が起きた人はいたのです。

エスト(est)に優れたトレーナーがいたので相当強い衝撃を受けた人は大勢いたようです。

エスト(est)を終了した人物にジェリー・ルービンやオノ・ヨーコやジョン・デンバーなどがいます。

トランスパーソナル心理学を日本に紹介した吉福さんによると、あるがままの自分をみとめることを悟りだとするエスト(est)はトランスパーソナル心理学会でひどく批判された事があるといっていました。

吉福さんは、『もちろん、「あるがままの自分を受け入れる」というのはすばらしいことです。大半の人は、あるがままの自分を受け入れられないがために苦しんでいるわけですから、それを受け入れられるだけでもすばらしい体験だと思う。それは第一歩であって、終着点ではなく。そこから本格的な道がはじまるわけです。』とも結んでいます。

1991年にワーナー・エアハードは脱税容疑と近親者からのセクシャル・ハラスメントで訴えられ会社を辞めざるを得なくなってエスト(est)は解散しました。

エスト(est)はその後、著作権を譲り受けた「ランドマーク・フォーラム」に代わりました。

ランドマークはエアハードの姉妹ジョウン・ローゼンバーグが取締役でワーナー・エアハードの弟ハリー・ローゼンバーグが最高責任者でした。

日本に進出したランドマークは最初「ブレークスルー・テクノロジー・コース」と名乗り次にランコード株式会社そしてランドマーク・エデュケーションと次々と名称を変更しました。

マインド・ダイナミックスから派生したライフ・スプリングはライフ・ダイナミックスと名前を変え日本に進出しました。80年代にアークインターナショナルと名称を変更しました。ライフ・ダイナミックスのトレーナーだった高橋浩二が独立したライフスペースは1999年に成田ミイラ化遺体事件を起こしました。

業界最大手だったアークインターナショナルは2000年に解散しました。

アークインターナショナルのトレーナーは次々と独立してBeYou、iBD、サミット、シナジー、オリジン、日本創造教育研究所 、メディオス、ウィキャン などが派生しました。

エスト(est)で働いていたトーマス・レナードとローラ・ウィットワースはエスト(est)のトレーニングモデルを元にコーチングを開発しています。

エスト(est)の影響は驚くほど広範囲に渡り、数多くの商業主義的な自己啓発セミナーが次々と名前を変えては現れ消えていきました。

お金は現代の風俗となっています。

お金の時代の宗教はビジネスの姿をしています。

儲けるという文字は信者と書きます。

生活の全てが経済のシステムに組み込まれています。

お金は環境を破壊することも守ることのどちらにも使うことができます。

お金は良くも悪くもなく、どのような使われ方をするかにかかっています。

お金の時代に仏陀やイエスや老子が現れたならネクタイを締めてスーツを着ていたかもしれません。

中世で一番大きな建物は教会や仏殿などの宗教施設でした。

17世紀になると政治の建物が大きくなり、産業革命が起きると経済活動の建物が一番大きくなりました。

そして21世紀に入ると経済の象徴だったツインタワーが911で崩壊しました。

経済の時代はすでに終わっています。

次の時代に向かって世界は動いています。

コズミックホリステック医療・現代靈氣

吾であり宇宙である☆和して同せず  競争でなく共生を☆

0コメント

  • 1000 / 1000