線虫

http://medical.radionikkei.jp/suzuken/final/030109html/index.html 【腸管糞線虫駆虫薬

イベルメクチン】より  琉球大学 第一内科 平田 哲生

糞線虫症の病態と治療

 本日は平成14年12月に発売されました糞線虫駆虫薬イベルメクチンについて御説明申し上げるわけですが、その前にまず糞線虫症に関して簡単にお話致します。

(資料3:「糞線虫」)

 糞線虫症は、土壌から経皮的にヒトに感染し、主として十二指腸や小腸上部の粘膜に寄生する糞線虫によっておこる寄生虫感染症です。症状としては、腹痛・腹鳴・軟便などの軽度の消化器症状を認めます。しかし、免疫能の低下した患者においては、本寄生虫が過剰感染し、吸収不良症候群、麻痺性イレウスを呈することもあります。さらに、腸管から自家感染したフィラリア型幼虫が全身に散布され、大量の腸内細菌が糞線虫とともに体内に入り、敗血症、肺炎、化膿性髄膜炎などを合併し致命的になることがあります。このような病態を播種性糞線虫症と呼びます。

(資料5:「糞線虫の生活史」)

 糞線虫は熱帯・亜熱帯地域に広く分布し、わが国では沖縄・奄美地方が浸淫地となっております。沖縄県と鹿児島県の南西諸島は成人T細胞性白血病ウイルス(HTLV-1)の浸淫地でもあり、糞線虫との重複感染が高率に認められます。糞線虫腸性者の約40%は抗HTLV-1抗体陽性者で、一般住民の21%より有意に高い結果となっています。また、抗HTLV-1抗体陽性者の17.5%に糞線虫を認めたのに対し、陰性者では6.7%に認めたのに過ぎませんでした。また、播種性糞線虫症など重症の糞線虫症のうち約半数は抗HTLV-1抗体を認めました。このようにHTLV-1と糞線虫は密接に関係しております。

(資料4:「抗HLV-I抗体の有無による糞線虫保有率」)

 糞線虫の確定診断は糞便から虫体を証明することによります。検査法としては普通寒天平板培地法が最も優れており、従来行われていた直接塗抹法、ホルマリンエーテル法などと比べると4~10倍の検出感度があります。また、重症例では胃、十二指腸液、喀痰、腹水などから検出されることもあります。

(資料1:「普通寒天平板培地法と従来法の比較」)

 本症の自然治癒はほとんど望めないので臨床症状が軽微であっても治療する必要があります。特にステロイドホルモン、免疫抑制剤などを使用する場合、早期に診断しイベルメクチンによる治療を行う必要があります。さらに、播種性糞線虫症の場合には腸内細菌による敗血症、髄膜炎を併発しますので、強力な抗菌活性を有する抗菌薬の併用と、必要に応じ全身管理を行います。

イベルメクチンの概要

 次にイベルメクチンに関して述べたいと思います。

 イベルメクチンは1987年に開発されました広域抗寄生虫薬アベルメクチンの誘導体で、従来、海外では回旋糸状虫の駆虫薬として広く使用されていました。その後糞線虫症に対しても優れた効果を示すことが判明しアメリカ、フランスなど数カ国で承認され使用されてきました。これまで、わが国ではヒューマンサイエンス総合事業「熱帯病に対するオーファンドラッグ開発研究」班により供給されていましたが、国内での臨床試験終了し平成14年12月6日に市販となりました。本薬が認可される前には糞線虫治療薬としてはチアベンダゾールが使用されてきましたが、有効性は高いものの副作用が多く安全性に問題がありました。また、その製造過程で排出される物質による環境汚染が問題となっており数年後には製造中止となる予定です。

 イベルメクチンの線虫に対する作用はシナプス前神経終末からの抑制性神経伝達物質(GABA)の放出を促進することにより、線虫の腹側神経索中の介在ニューロンからの興奮性運動ニューロンへの信号の伝達を抑制することによると考えられています。しかも、哺乳類の中枢神経系には浸透しないため、ヒトのGABA依存性神経伝達を阻害せず安全に使用できます。本薬の体内動態ですが、吸収された薬剤は尿中に排泄されず、一部は肝で代謝されます。その後代謝産物もしくは代謝されない未変化体も糞便中より排泄されます。しかし、本薬はきわめて水に溶けにくく経口投与された場合、消化管からの吸収は少ないと思われます。

イベルメクチンの臨床成績

 承認時の用法・用量は体重1kgあたり約200μgを2週間間隔で2回投与となっています。海外では1回のみの投与ですが、私たちは2週間後に再度治療を行っています。その根拠として、本薬は体内組織中の幼虫や虫卵には効果が少ないと推定されること、糞線虫は経皮感染から糞便までへの出現までに2週間を要し、3~4週間でひとつのサイクルを完了することを考慮してこの方法を決定いたしました。

(資料8:「イベルメクチンの用法・用量」)

 また、我国では糞線虫感染者にHTLV-1との重複感染が多くみられ、このような症例では宿主の細胞性免疫の異常により本虫の排除能に低下が認められることから、単回投与では十分な駆虫効果が得られないのではないかと考えています。投与時の注意として本薬は脂溶性のため高脂肪食により血中濃度が上昇する可能性があるため、空腹時に水で服用することが推奨されています。実際には朝食前1~2時間前に飲むように指導しております。

 臨床治験時には50症例に対し前述のプロトコールで治療を行い、治療4ヶ月後の駆虫率は98%でした。副作用としては2%に悪心・嘔吐が認められました。臨床検査値異常は8%に認められ主に軽度の肝障害で臨床的に問題となるようなものはありませんでした。このようにイベルメクチンは有効性、安全性ともに優れており安心して糞線虫症に使用できる薬剤です。

 琉球大学第一内科では臨床試験以外に417例の糞線虫症の患者に対しイベルメクチンによる治療を行ってきました。352症例に関しては今回承認された量の半分の体重あたり100μgを2回、65症例に関しては200μgを2回投与しました。100μg投与群では、治療1ヶ月後の駆虫率は94.3%でHTLV-1抗体陰性者:97.7%、HTLV-1抗体陽性者:88.8%でした。治療1年以上の駆虫率は88.1%でHTLV-1抗体陰性者:96.1%、HTLV-1抗体陽性者:72.5%であり、HTLV-1抗体陽性者において再発する症例がみられました。副作用としては下痢、めまい、腹鳴、悪心、痒感などを1%から2%に認めましたが、いずれも軽度で一過性のものであり、臨床上問題となるようなものはありませんでした。肝機能障害は1回目投与後に8.9%、2回投与後には3.4%の症例において認められました。そのうち肝機能障害のため2回目投与を中止したのは2例で、その他の症例では臨床上特に問題はありませんでした。

 200μg投与群では治療1ヶ月後の駆虫率は98.5%でHTLV-1抗体陰性者:100.0%、HTLV-1抗体陽性者:96.4%であり、HTLV-1抗体陽性者で100μg群に比較し駆虫率が良好でした。副作用、肝機能障害の出現、ならびにその程度について、100μg投与群と比較してみても有意差は認められず、安全性についても問題はありませんでした。なお、200μg投与群の1年後以上の駆虫成績は現在追跡調査中ですが、追跡しえた症例において再発は認めていません。以上の両群の治療結果を考慮しますと、糞線虫の健康保虫者はイベルメクチン100μg投与でも十分で、有症状者やHTLV-1との重複感染者に対しては200μgの投与が有用ではないかと思われます。

糞線虫症治療法の確立をめざして

 今後は、イベルメクチンが市販され、糞線虫症の治療はより安全に確実に行えるようになります。しかし、HTLV-1抗体陽性者では通常の治療では3%程度が駆虫に失敗するため、今後は難治例の治療法の確立に関する研究が必要であると思われます。現在当教室では再発例に対しイベルメクチン200μgを4回投与し、その有用性を検討中ですが、一定の効果をあげています。また、播種性糞線虫症に対しては、これまでは血中移行率のよいチアベンダゾールが体内移行中の糞線虫幼虫にも効果があるとされており、主に使用されてきました。一方、イベルメクチンは血中移行は不良ですが、オンコセルカ症、疥癬症などの皮膚寄生虫症に有効なことにより、糞線虫症でも流血中の幼虫にもある程度効果があると思われます。これに関しても現在検討中ですが良好な成績を得ております。

 このようにイベルメクチンは優れた薬剤ですが、当然、糞線虫症と診断しないと使用できません。衛生環境が整備されているわが国では、下痢症をみた場合でも原虫を含む寄生虫検査は軽視されており、重篤な状態に致って初めて診断される場合が多くなっています。免疫不全患者における頑固な下痢や沖縄県南西諸島在住者の下痢症をみた場合には糞線虫症を含む寄生虫疾患も念頭におき診療を行うように心がけることが大切です。

Facebook・市川 よしおさん投稿記事

線虫って農家にしてみたら頭の痛い害虫の一つなんだよね。

だけど過日の膵臓がんの発見など、すごいことが分かってきたんだよな。

ここには彼らが聴覚機能を持っていることが発見されたとあります。

読んでみると五感の殆どは観察者の人間の勝手な思い込みなどで「考えられないとか無いはずだ」と決めつけられていたものが多いことの示唆ではないのかな?とも思えます。

【ミミズのような線虫も音を聞く、驚きの仕組みが判明、定説覆す ナショジオ】

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/21/100600484/ 抜粋

 固有感覚(自分の手や足がいまどこにあるのかといった身体感覚)と、光の方向を知る感覚があることを突き止めている。

「それ以来、確認されていない感覚は聴覚のひとつだけとなりました」と、感覚生物学者のシュ氏は言う。「われわれは長い間、これを探し続けてきたのです」

 この発見は、生物がどのようにして音を聞き、聴覚がどのように発達してきたのか、その両方についての理解を飛躍的に前進させるものだと、シュ氏は言う。彼らの研究はまた、軟体動物や(ダーウィンのミミズを含む)その他の蠕虫(ぜんちゅう)のように、はっきりした聴覚器官を持たない生物を探索する可能性を大きく広げ、まだ聴覚の能力が解明されていない動物に光を当てることにつながるだろう。

 音を感知する分子の正体は、多くの動物に見られ、すでによく研究されてきた「ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChRs)」だった。ただし、C.エレガンスの皮膚で音を感知するnAChRsは、脊椎動物や節足動物とは違ってニコチン性アセチルコリンとは関係なく働き、皮膚のあらゆる部分に存在して物理的な刺激を神経への信号へと変換する。nAChRsを持たないように遺伝子を組み替えた個体は、音に反応しなかった。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/21/100600484/?fbclid=IwAR0DiB5-6Rg-K3mCN_U9tumAnHFd8LGFIW_RYERY22dfhwoJxn4qT_alM_E 【ミミズのような線虫も音を聞く、驚きの仕組みが判明、定説覆す】より

脊椎動物と節足動物以外で初の発見、生物の聴覚の研究に一石

2021.10.11

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世界中の土の中にいて、生物学や遺伝学においてもっとも研究されている動物のひとつである線虫のC.エレガンス。(PHOTOGRAPHY BY SCIENCE PHOTO LIBRARY / ALAMY STOCK PHOTO)

世界中の土の中にいて、生物学や遺伝学においてもっとも研究されている動物のひとつである線虫のC.エレガンス。(PHOTOGRAPHY BY SCIENCE PHOTO LIBRARY / ALAMY STOCK PHOTO)

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「ミミズは音を聞けるのか」。これは人々が昔から抱いてきた疑問だ。1800年代、ダーウィンは自分の息子にミミズに向かってファゴットを演奏させ、彼らが身動きするかどうかによって、その答えを得ようとした。ダーウィンが出した答えは「聞こえない」だった。

 以来、聴覚は脊椎動物と一部の節足動物でしか確認されていなかった。ところが、9月22日付けで学術誌「Neuron」に発表された研究で、生物学の研究に多用されているC.エレガンスという線虫に聴覚があることが明らかになった。C.エレガンスには、耳のような特別な器官があるようには見えない。だが、皮膚全体が音を聞くいわば鼓膜として機能し、それを伝える神経も確かめられた。これは、節足動物以外の無脊椎動物が音を感知できることを示した初の研究だ。

 今回の発見は、米ミシガン大学のショーン・シュ氏の研究室が10年以上にわたって行ってきた研究の成果だ。体長1ミリのC.エレガンスに、嗅覚、味覚、触覚があることはすでに知られていたが、同チームは固有感覚(自分の手や足がいまどこにあるのかといった身体感覚)と、光の方向を知る感覚があることを突き止めている。

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「それ以来、確認されていない感覚は聴覚のひとつだけとなりました」と、感覚生物学者のシュ氏は言う。「われわれは長い間、これを探し続けてきたのです」

 この発見は、生物がどのようにして音を聞き、聴覚がどのように発達してきたのか、その両方についての理解を飛躍的に前進させるものだと、シュ氏は言う。彼らの研究はまた、軟体動物や(ダーウィンのミミズを含む)その他の蠕虫(ぜんちゅう)のように、はっきりした聴覚器官を持たない生物を探索する可能性を大きく広げ、まだ聴覚の能力が解明されていない動物に光を当てることにつながるだろう。

鼓膜の代わりの意外なモノ

 音は空気の振動と言われている。だが、その振動は空気の圧力の変化であって、物体の振動とは性質が異なる。鼓膜を持たない多くの動物は、この空気圧の変化を感知する別の方法を進化させてきた。

 カエルの仲間には、内耳はあるが鼓膜はないものがいる。彼らはおそらく皮膚と骨を組み合わせて、音波を内耳に伝導させているのではないかと思われる。

 ハエトリグモや小型の昆虫は、脚に生えている非常に敏感な毛で音を検知する。(参考記事:「メダマグモ、耳はないけれど優れた聴覚をもつと判明」)

 しかし、比較的単純な生物と考えられている大半の無脊椎動物が音を感じ取るメカニズムは、長い間解明されてこなかった。その理由のひとつは、そうした実験には高度な技術が必要であり、また、蠕虫が音を感じるとは考えにくかったため、やるだけの価値があると思う科学者がいなかったのだろう。

 C.エレガンスが音を感知できるかどうかを調べるために、シェ氏の研究室では、まずはダーウィンがやったように、彼らに向かって大きな音を鳴らしてみた。C.エレガンスがシャーレの振動ではなく、音を感知していることを確認するために、研究チームは遺伝子組み換えによって通常の触覚を取り除いたC.エレガンスを使用した。

シェ氏の研究室に所属する大学院生で、論文の共著者のエリザベス・ロナン氏はまた、下に敷かれているゼラチン状物質の振動が原因でC.エレガンスが動いているのではないことにも注意を払った。触感がなくとも、C.エレガンスは頭上で音が鳴ると後ずさりし、逆に後ろで音が鳴ると前方に向かって這い進んだ。これを「走音性」という。

「C.エレガンスに向かって音を鳴らすと彼らが体を動かすのが確かめられたときは、とても興奮しました」とロナン氏は言う。世界中の土中から見つかるC.エレガンスが音を処理する能力を進化させたのは、ムカデや羽のある昆虫などの捕食者の音を聞いて逃げるためではないかと、ロナン氏は推測している。

 研究チームはさらにC.エレガンスに聞かせる音の周波数を変えたり、走音性には音による皮膚の振動が本当に必要かなどを確かめたりなど、多くの実験を行った。そして、一連の高度な遺伝子検査を行って、最終的に音を感知する分子と神経を突き止めた。

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 音を感知する分子の正体は、多くの動物に見られ、すでによく研究されてきた「ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChRs)」だった。ただし、C.エレガンスの皮膚で音を感知するnAChRsは、脊椎動物や節足動物とは違ってニコチン性アセチルコリンとは関係なく働き、皮膚のあらゆる部分に存在して物理的な刺激を神経への信号へと変換する。nAChRsを持たないように遺伝子を組み替えた個体は、音に反応しなかった。

「この分子は、ほかのどんな神経伝達物質の受容体よりも長い間研究されてきたものですが、今回の研究チームが発見したようなことに気づいた人は、これまでだれもいませんでした」と、米ニュージャージー工科大学の神経行動学者ガル・ハスペル氏は言う。

 この研究手法には非の打ち所がなく、研究チームは「あらゆる部分を調べ尽くし、反応(行動)の背後にある細胞メカニズムを正確に解明してみせました」と、氏は述べている。

無脊椎動物の多くに聴覚がある可能性も

 今回の実験により、C.エレガンスが遺伝的に独特かつ人間の聴覚にも似たメカニズムを使って音を感知し、反応していることが明らかになった。

 しかし、C.エレガンスがほんとうに“聞いている”のかは、また別の問題だ。科学者の中には、「聞く」という行為には、意識や音を認知マップに結びつけるといった、より深いレベルの知覚が必要だと考える人もいる。シェ氏の考えでは、空気中を伝わる音を感知し、それに反応することだけでは、その基準に達していることにはならない。

「知覚とは、信号を処理し、そこに何らかの意味を持たせることです」とシェ氏は言う。

 一方で、もう少しゆるく考えている科学者もいる。「ほかの多くの下位生物は、意外な方法で音を感知している可能性があります」とロナン氏は言う。「C.エレガンスは、いわば(音の)感覚をもつ液体チューブです。この発見は、少なくとも人々が、音を聞くとはどういうことかを新たな視点で探るきっかけになるのではないでしょうか」

 米ニュージャージー工科大学の神経行動学者ダフネ・ソアレス氏は、物理的に音波を感知することと聞くことには重要な違いがあり、C.エレガンスの場合は前者だと考えている。「すばらしい発見ではありますが、これは聞いているとは言えません」

 それでも、ソアレス氏もハスペル氏も、この研究にはさらなる発展の可能性があり、現実の環境条件を反映させて、捕食者の走る音に対する蠕虫の反応を調べるといったこともできると述べている。

 今回の研究は、進化の歴史の深い部分にまで問いを投げかけるかもしれないと、ソアレス氏は言う。なぜなら、地球の初期の動物はほとんどが軟体動物だったからだ。「彼らも、何らかの方法で周囲の環境を感知しなければならなかったはずです!」

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